大学経営におけるURAの役割

開催概要

URAの実務者が情報交換と相互研鑽を行う場として開催されたRA協議会第2回年次大会
http://www.rman.jp/meetings2016/)で大阪大学は「大学経営におけるURAの役割」というセッションを企画・運営しました。登壇いただいた方々のお話の概要と当日行われた全体討論に関する記録を下記にまとめました。

開催日時:2016年9月1日(木)
場所:福井県県民ホール

なお、本資料はRA協議会の協力を得て作成したものです。

セッションオーガナイザー:高野 誠(大阪大学 シニア・リサーチ・マネージャー、特任教授)

経営している大学の姿とURAの役割

文部科学省の「国立大学経営力戦略」(平成27年6月16日)において、各国立大学に対して、「学長のリーダーシップの下、責任ある経営体制を構築し、法人化のメリットを最大限に生かしていくこと」が求めらました。そして、そのために、「学長を支え、経営の一翼を担う人材として、マネジメント能力を有するとともに教育や学術研究に深い理解のある人材」が必要とされました。本セッションではこの要請に対して、「国立大学を経営する」とはどういうことかについて議論を行いました。またその際、国立大学の「経営者」や「経営スタッフ」にはどのような技能が求められるのか、について認識を深め、更に、「URAの経営スタッフとしての役割」について議論を行いました。このために、「民間企業」、「国立大学」、「文部科学省及び大学」における経営やそれに関係する業務に造詣の深い講師をお招きし、ご講演をお願いしました。

RA協議会第2回年次大会 全発表資料
http://www.rman.jp/meetings2016/doc2.html

講演1:産業界経営の経験から


Watanabe Yuji

渡辺 裕司 氏

  株式会社小松製作所 顧問

【主なご経歴】
小松製作所執行役員経営企画室副室長
ギガフォトン株式会社代表取締役社長、取締役会長
産業競争力懇談会(COCN)実行委員

はじめに

私は産業界で長く経営に携わって参りました。産業競争力懇談会(COCN)元委員として、また、個人的にも大学に対して期待をしております。


URAの役割とは

日本の大学においては、URAは比較的新しい職種だと思います。一方、企業では研究を行う人と研究マネジメントを行う人は比較的早くから分化していました。大学と産業界の関係が密になればなるほど、企業の研究マネジメント人材の相手となる人材が大学側にも必要となってきます。そのような観点でも大学におけるURAは重要であると考えています。

URAの役割は多岐にわたります。また、URAには「研究者を支援する」という立場に加えて、「経営者を支援する」という役割がますます重要になります。従って、URAは経営についてよく理解しておく必要があります。アメリカの大学にはプロボスト(学長を補佐する教務局長の役割をする要職)が居ますが、URAもプロボストに似たことを行っていくようになると思います。その意味で、今は日本におけるプロボスト黎明期と言っても過言ではありません。


なぜ今大学経営を議論するのか

また、大学自身も社会からも様々な変革を求められています。大学の入試制度の改革、また、国立大学の場合ですと、大学に地方経済立て直しのリーダーシップを執ってもらいたい、というような期待があります。産業界からは、産学連携の拡大のために産業界と大学の距離を縮めることが求められています。また、大学のIT教育に関しては更なる充実が必要であり、人材、特にグローバル人材も慢性的に不足しているとの懸念が持たれています。私は大学に対して、このような社会や産業界からのニーズを汲み取った体制の改革を迅速に進めてほしいと強く思っています。

大学の先生方に大学改革の話をすると、なかなか大学は変われないとおっしゃいます。大学は組織として動くのが非常に苦手です。なぜなら、学問の自由や大学の独立といった哲学があり、また、先生方一人ひとりにも、学問の自由というようなことが憲法で保障されているからです。しかしながら、産業界としては、大学に組織的に動いていただかないと、非常に困ります。
一方で、学問の自由や大学の独立については保障されていますが、それを実現するための財政基盤の保障は与えられていません。宗教の自由が憲法で保障されていても、宗教法人を財政的に国が保障しているわけではないのと同様です。ですから私は、財政問題については、大学も自己努力でやるべきだというのが、基本的な考え方だと思っています。


運営費交付金の減少と欧米に遅れるオープンイノベーション

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図1

図1は、運営費交付金が、約10年間で1割減ったことを示したデータです。これを大変なことだと言うのは、産業界から見て少し違和感があります。なぜなら、公的研究費はむしろ増加傾向にあり、合計では決して減っていないからです。

運営費交付金の人件費や研究直接費等のルールは実に硬直的です。その辺を改善すべく、例えば、公的研究費から30%人件費に使っても良いとか、企業からの研究費を20%か30%は人件費に使って良いというような議論が行われています。だんだんその辺が整理されてきてはいますが、問題は企業からの研究費が非常に少ないというところです。

では、運営費交付金が減少していますが、アメリカの州立大学はどうでしょう。

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図2

図2を見ると、アメリカの州立大学に比べて、日本の大学がどれほど恵まれているかがわかります。現在、アメリカの州立大学の収入に、州政府補助金の占める割合は、8%まで減少しています。この外に、研究費としての入金が州政府なり、連邦政府の方からも入ってきますが、それでも30%~50%、60%ぐらいが、公的な資金配分となります。それに対し、日本の場合は、95%ほどが公的資金で運営されています。

今後、運営費交付金はおそらくもっと減っていくでしょう。なぜなら、昨今、社会保障費がどんどん膨らんでいる状況ですので、なかなか文教費用に充てる余裕がなくなってきているからです。

その一方で不思議なのが、なぜ産学連携、産業界からの資金投入が、各国と比べるとこれほどまでに低いのかということです。図3を見ると、ドイツの5分の1ほどしかありません。

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図3

産業界と大学経営のトップ同士では、産学連携の拡大の合意はほぼできていると私は感じています。産業界からすると、産学連携をもっと増やしたいと考えていますが、大学側の受入れシステムが出来上がっているのか、非常に心配です。

産学連携においては、大学と企業の特性を生かして、社会的分業と連携をどう行うかが重要です。また、産業界のニーズの中にも、学問領域を広げたり深めたりすることにつながるものは、たくさんあると思います。そこに取り組むことにより産学連携が学問の発展につながる、という思いをより多くの大学の先生方に持って頂きたいと思います。


産学連携と博士人材

産学連携の間口を広げていくと、大学の中で誰が産学連携を請け負ってくれるのかという課題が出てきます。大学の先生は今でも研究の時間が減っていると聞きます。そう考えると、博士人材がこれから重要な役割を果たすであろうと想定しています。博士課程修了者は、なかなか安定した職に就けないということがしばしばあるようですが、そのような博士人材が大学で産学連携に従事することにより、より産業界への理解も深まるのではないでしょうか。

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図4

図4は、2012年にNISTEPが民間企業に対して、博士課程修了者を研究開発者として採用しない理由を調べたアンケート調査の結果です。

この赤色のところが注目すべき点で、一つは、「特定分野の専門的知識は持つが、企業ではすぐに活用できないから」という理由です。もう一つは、「企業内外で社内研究者の教育訓練をする方が博士人材を採用するより、企業にとっては効果的な活動ができるから」という理由です。もう少し噛み砕いて言うと、博士人材は、自分の専門分野に固執して、他のことを嫌がる傾向があるため、企業ではすぐに活用できないと考えているということです。

博士人材というのは、10年、20年先、技術トレンドがどの方向に行くのか、自分自身で情報収集や探索的な研究を行います。そして、いろんな結果を出し、これは間違いなくこの方向でうまくいくという確信を生み出す、技術戦略の先兵になる人材だと思います。しかし、そのようなコンセンサスが、企業と大学で共有されていないのが現状です。大学の博士人材が産学連携に従事することにより、この現状を変えることができるのではないでしょうか。


日本の人口減少

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図5

少し視点を変えますが、イノベーションを起こすにしても、日本のこれからの最大の課題は、人口の減少問題だと思います。図5に見られるように、1995年から、日本はずっと成長が止まった状態が続いています。仮に1人当たりのGDPが一定であったとしても、人口が減っている分だけ、日本のGDPは自動的に下がります。ですから、人口減少をまず止めないといけないという大きな課題があります。また、人口問題というのは、手を打ってから成果が出てくるまで、どんなに早くても20年、30年ぐらい時間がかかります。その間の時間を、イノベーションによって、1人当たりのGDPを改善して持ち堪えていく活動を行わなければ、日本の経済はどんどん縮小していくという状況に今我々は置かれています。

一方で団塊の世代が福祉予算をどんどん拡大させていくわけです。それ以外にも日本社会には、構造問題を先送りする、時代を先取りできない、多様性対応が苦手、といった様々な問題があります。このような問題の中では、イノベーションを起こすために、また、大学の経営をもう一度立て直すために、運営費交付金を増加させるということにはならないでしょう。

平成25年の20代の人口は1,200万人、60代は1,800万人です。ところが、投票率(平成24年)は、20代が38%、60代が75%で、有効投票数にすると480万人対1,370万人です。政治家からすると、高齢者を大事にしましょうと言った方が、得票数が上がるわけです。大学を何とかしましょう、あるいは、若者の雇用問題を何とかしましょう、と言っても当選しないのです。このことからも、社会保障費が膨らんでいくのは、自明の理だと思います。現に、社会保障費が32兆円で、文教科学技術費は4兆600億円です。尚且つ、社会保障費は、1年に3,000億円ずつ増えていくのに対し、文教科学技術費は減っていくというのが現状です。

では、大企業に頑張ってもらい、産学連携の額を増やしていけば良いのでしょうか。しかしながら、大企業の行うこと全てが日本の構造問題を解決するというわけではありません。大企業にとって、得意なことと不得意なことがあります。大企業は、日本の人口が減り始めて、日本市場がシュリンクする中で、どうやって頑張ってきたかというと、外に市場を求めてグローバル化するということで乗り切ってきました。ですから、今生き延びている大企業というのは、売り上げが伸びています。成長率も相当健全な状態です。ただし、海外で売り上げを伸ばすということは、必然的に国内産業の空洞化を招いていることになります。工場閉鎖を招き、シャッター街が増えていくという状況で、一番弱い部分の地方経済が疲弊してしまいます。また、大企業は、既存ビジネスのイノベーションは大得意です。ところが一方で、国内経済は、製造業からサービス業が主体になってきています。サービス業の1人当たりのGDPは、製造業に比べて相当低いです。日本の1人当たりのGDPは、どんどん下がっていく一方で、改善方法がなかなか見つりません。そこで、中小企業、ベンチャー企業、サービス産業の活性化が地方再生と人口問題の鍵となってきます。そして、大学もこのような部分の構造的な問題に着目すべきだというのが、私の意見です。


女性の社会進出

次に、女性の社会進出についてお話しします。平等主義の名の下に、女性の社会進出について、日本社会は大きな間違いを犯したのではないかと思います。働く人材を供給するために、女性を社会に迎えたのは良いが、それは同時に人口の減少に繋がっていることになります。要するに、子育てができない環境で、女性を社会に招き入れたことによって、何とか経済が下がっていくのを止めようとしたのですが、反対に、この方策によって、余計に人口が減るというようなことになってしまったのではないかと、私は考えています。高学歴の女性に社会で活躍してもらうということは、決して間違いではないですし、止まらない傾向だと思います。ただし、女性を社会に迎え入れるにあたって、考えなければならないことは、母性を尊重しつつ、働きながら女性が母性を発揮できるような社会をつくる必要があるということです。そうしない限り、日本経済は何をしてもなかなか効果を現さないでしょう。女性の高学歴化と人口減少はリンクしています。従って、大学の中で、女性がいかに活躍できるかが主要になります。URAや研究員は、ある意味で女性にとって非常にマッチしやすい職種だろうと考えます。ところが、母親が出産・育児をしながら、学問の教育レベルを上げながら、あるいは、研究員やURAの仕事をしながら、活躍できる環境が整っているかというと、まだまだ十分とは言えないと思います。


大学に期待すること

イノベーションを最も起こしやすい国にするために、大学に期待することは、大学の経営陣と、研究を行う研究員の人たち、教授や准教授などが、日本が抱える構造的リスクについてよく話し合い、危機感を共有することです。それから、URAについては、冒頭でも話しましたが、プロボストの仕事によく似たことを行っていくようになると思います。そこに、博士課程の学生を参加させると、より広い視野で日本社会を見ることで、自分の研究技術の使い道や社会が求めていることに気付き、研究管理ができるようになります。あるいは、大学経営ができるような視点を育てることができ、非常に良い訓練の場となるのではないかと思います。私は、大学改革をこのように進めていただきたいと考えています。学内のコンセンサスをつくり上げるためには、危機感を共有することから始まると思います。大学は社会とともに存在し、社会を引っ張っていくところです。そのために大学は、社会が必要とする人材を、20年、30年も前から訓練して社会に供給していく、そのような気概を持っていただきたいと思います。

また、研究プロセスの見える化を実施しなければ、URAは研究者とうまくコラボできません。産業界も、大学が研究プロセスの見える化をしないと、付き合い方がよく分からなくなってしまいます。すなわち、具体的な目標設定、日程を公表していただく必要があります。それを共同管理していくことは、研究規模が大きくなれば、必ず必要なプロセスだろうと思います。博士課程の人材、URAが、広い視野を持って、学長や経営層をサポートしていけば、まさにプロボストのような職種というのが新しくできてきます。そういう意味で、URAという新しい職種が完成してくると思います。そして、URAは社会にとって非常に重要な職種であると理解されるようになるでしょう。

図表は渡辺氏講演スライドより抜粋



講演2:国立大学経営の経験から


Aimoto Saburo

相本 三郎 氏

  一般財団法人蛋白質研究奨励会理事長

【主なご経歴】
日本ペプチド学会会長
大阪大学蛋白質研究所所長
大阪大学理事・副学長(基盤研究・リスク管理担当)

はじめに

私は2015年8月まで大阪大学の理事・副学長をしておりました。その際、大学の経営協議会で、企業経営者やマスコミ関係者、官公庁のOBの方などから様々な意見を聞く機会がありました。そこで、大学はこんなことでいいのかと、喝を入れられていました。私自身はそれを非常に温かい声援だと思っていました。本日は、執行部の一員として、私が4年間どのように大学を改革していこうとしたのかについて、お話しさせていただければと思います。

まず、最初の論点「国立大学を経営するとはどういうことか」というお題については、大学経営において、我々執行部が念頭に置いた事項と、策定した大阪大学の将来構想についてお話しいたします。その次の論点「国立大学の経営者や経営スタッフにはどのような技能が求められるのか」ということに対しては、URAの参加した大学改革プログラムの企画、支援、検証について話題提供等させていただきます。最後の論点「URAの経営スタッフとしての役割は何か」については、経営スタッフの役割分担とURAへの期待ということで、お話しさせていただきます。



大学経営において執行部が念頭に置いた事項

図1は、18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移を表したグラフです。昭和41年、私が大学へ入った年ですが、この年をピークに、現在18歳人口はその半分ほどしかいません。そして今から10年後になると、更に下がって100万人を切ることになります。

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図1

それから、図2は、予測GDPの世界順位です。この表を見ると、日本は将来PPPベースのGDPで世界の上位から下落するであろうことが予測されております。この大きな原因の一つが人口減少であると思います。更に、一人当たりのGDPも労働人口の割合がもっとも高かった1995年を境に、日本はどんどん落ちて行くであろうと予測されております。

図3は、主要15か国における学術論文数の推移です。世界の学術活動に力を入れている国の学術論文数は皆上がっているのに対し、国立大学法人になった2004年から、日本だけが下がりつつあります。

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図2
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さらに、大学の財政についてですが、図4のグラフは、東京大学が2007年に調査し、出版したデータです。ハーバード大学は自己資金を、およそ3兆5,000億円持っています。イェール大学でだいたい2兆円ほどです。スタンフォード大学、MITは、1兆円以上の自己資金を持っています。しかも、ハーバード大学に至っては自己資金を、年平均11%程度の運用益で回しており、イェール大学にしても6%ぐらいで回しているとのことです。それに比べ、日本のトップ大学である東京大学でさえ本当に僅かな自己資金しか持っていないという状況です。

図5は、世界の有力大学の財務状況のグラフです。日本は、蓄えがまるでない状態で世界と競争しています。このグラフには病院や特殊財源が含まれていません。ハーバード大学では、寄付金や基金運用益等と書かれている自己資金で得たお金を大学運営に使っています。そして、それは、1千億円以上あり、このお金を使って世界中から優秀な若者や研究員をリクルートしてきます。一方、日本では、運営費交付金が年々減少傾向にあります。東京大学のグラフでは政府機関補助が運営費交付金にあたりますが、これが毎年減っていっているということです。

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では、そのような状況にある日本の大学は世界的に見てどのような位置にあるのでしょう。図6は、世界大学ランキングの推移表です。東京大学、京都大学はそれなりに世界のトップの大学と互角に戦っています。それから大阪大学、東京工業大学、東北大学が続いているという状況です。ランキングによっては、順序が異なっているものもありますが、目安としてこのような状況にあるといえます。

さらに、大学を運営していく上で、学内の強みを把握しておくことも、非常に重要です。図7の大学ランキングで見ると、大阪大学は、化学、免疫学、材料科学、生物学・生化学、物理学、分子生物学・遺伝学等の分野が健闘しております。このような状況をできるだけ客観的な数値で把握しておくことが、その後正しい経営判断を行う上で重要になります。

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策定した大阪大学の将来構想

このようなことを念頭に置いて、我々執行部は「大阪大学未来戦略」というものをつくりました。これは次のような項目からなります。

1.大阪大学未来戦略機構の創設
2.本質を究め未来を創造する研究
3.世界に通用する人を育む教育
4.世界が大阪大学を目指す国際戦略
5.豊かな社会を生み出す産学連携
6.大学と人と地域が交流する社学連携
7.質と倫理を兼ね備えた大学病院
8.教育と研究の基盤を支える大学運営

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このような戦略を実施するために、図8にありますように、大学改革の司令塔となる「大阪大学未来戦略機構」という組織をまず創設しました。現在は経営企画オフィスと名前を変えましたが、当時の大型教育研究プログラム支援室のURA組織が大学の未来戦略の企画に直接関与し、総長以下執行部とともに戦略を練っていくということを始めました。そして、URA組織とともに、教育改革、研究企画、大学のグローバル化や研究支援を着実に実行する組織として未来戦略機構はスタートしました。

このような戦略を立てる過程で、大阪大学とは何か、というところから振り返りました。「適塾」という蘭学塾が江戸末期、大阪にありました。これが大阪大学の源流と言われています。ここに日本全国から若者が集い、互いに切磋琢磨し学び、そしてまた日本各地に帰っていき、新しい時代を切り開きました。これに倣いまして、我々は、明治の日本に果たした適塾の役割を、これからは世界で果たそうということで、大阪大学は「世界適塾」になろう、という方針を立てました。世界から優秀な人材が集まり、地球規模の課題解決へ貢献する研究活動を行い、大阪大学でしか提供できない教育と知の交流の場を形成し、そのような人材が世界へ羽ばたく、そして、世界で認知される大学になろうということです。


URAの参加した大学改革プログラムの企画、支援、検証

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そして、そのような大学になるために、大型教育研究プロジェクト支援室のURA及び未来戦略機構の戦略企画室の方々と様々なプログラムを策定してまいりました。第4期科学技術基本計画ができた後、すぐ翌年に、国立大学改革強化推進事業という事業が文部科学省から出されました。その翌年には、研究大学強化促進事業、そして大学機能強化推進事業と続きました。図9に記載されているような事業が国や文部科学省から提案され、募集が掛けられました。

それに対して我々執行部は、URA及び本部事務機構の方々と共に対応しました(図10、11)。まず、最初に我々が取り組んだことは、先ほどお話しした「未来戦略機構」という組織の設立です。そして、外国人教員を招致する取組として「クロス・アポイントメント制度」を創設しました。さらに、内部人材の更なるパワーアッププログラムとして、「外部資金の獲得支援」や「科研費チャレンジ支援プログラム」、「未来研究イニシアティブ・グループ支援プログラム」、「未来知創造プログラム」を行いました。また、独自の財源を確保するために、基金室と「大阪大学未来基金~創立100周年ゆめ募金~」を開始しました。グローバル化の強化にも力を入れて取り組んできました。日本社会の中で、大学の果たす役割として、人材を育てて供給するということは、極めて重要です。大学のグローバル化は、単に飾りではないと思います。「これが大阪大学の将来を決める」という覚悟でグローバル化に取り組みました。その中で、「国際共同研究促進プログラム」を開始しましたが、こちらについてはまた後ほどお話しいたします。また、教育プログラムとして、「博士課程教育リーディングプログラム」というものがあります。これらの取組の多くにおいて、URA組織のトップであり、ご自身もURAで後に副学長となられた池田雅夫先生が指導的な役割を果たされました。このように、URAというのは、大学になければならない組織であると大阪大学では位置付けられております。

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aimoto11図11

また、大阪大学の産学連携に関しては、通常の共同研究という域を超えて、現在は、共同研究講座、協働研究所というところまで発展しています。Industry on Campusと呼んでいますが、企業の方が大学内に研究所を構えて密に連携して研究をしています。企業と大学が互いに信頼し合って、一緒に研究を行いながら関係を構築していきます。そのようにして、我々は社会に貢献できるような研究をしていきたいと考えています。

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ここで、研究大学強化促進事業の取り組みについて説明します(図12)。
研究大学強化促進事業とは、世界水準の優れた研究活動を行う大学群を増強し、我が国全体の研究力の強化を図り、大学等による研究マネジメント人材群の確保や、集中的な研究環境改革による研究力強化の取り組みを支援するという文部科学省の事業です。この事業で我々は、「国際共同研究促進プログラム」、「研究者の派遣・受入れプログラム」、「国際合同会議助成」、「海外教育機関等への研修出張」というプログラムを提案ました。「海外教育機関等への研修出張」とは、事務職員の方々が海外の有力大学を訪問し、そこで「事務」がどういう役割を果たしているのか、どういうスタンスで仕事をしているのか、ということを学ぶプログラムで、URAが同行することにより、より深い調査を可能とするものです。

それから、国際共同研究促進プログラムについてお話しさせていただきます。国際共同研究促進プログラムは、大阪大学に最低1か月、共同研究をする相手方機関の責任者が滞在する場合に、この共同研究を支援するというプログラムです。3年間実施して、約40機関が既に大阪大学で活動しています。また教員や研究者のみならず、両機関の研究室の学生が相互に訪問し、研究することもあります。このプログラムは非常に好評で、共同研究で大阪大学に来ていた方が大阪大学の教員になった例もあります。また、3年間の支援終了後に、教員が独自に予算を確保し、拡大・継続するというところまで来ています。


経営スタッフの役割分担とURAへの期待

学長・理事の役割というのは、大学の目指すべき姿を明確にすること、改革の方向性とプロセス並びにロードマップを策定すること、そして、学内の諸事案への対応並びに対処方針を指示することです。URAの役割としては、まずは、国の施策に対する情報収集や国の事業の内容と目的について、様々な委員会を聴取し把握してもらうことです。それから、本部事務機構と協同し改革プロセスの案を作成することも期待しています。また、国の各種プログラムの学内への周知と応募支援、学内の各種支援プログラムの学内への周知と応募支援並びに選考、学内で進行中のプログラムの把握と評価・検証についても執行部と一緒になって考えていく、そのようなことも期待しています。
最後に、これからのURA組織への期待についてお話しします。執行部は、どんどんいろんなプログラムを作って部局に発信します。しかし、それが部局でどのように理解されて、どういう認識で応募しているかということを、執行部が正確に把握することは結構困難です。そこで、URAは、中枢神経として執行部を支えるとともに、末梢神経として学内のいろんな意見をきちんと把握して頂き、それを執行部に正しく伝えて頂くことが重要になります。そのためには、本部のURAとともに、部局のURA組織を充実させることが非常に重要であると思います。このように、URAは経営者を支える、まさに経営スタッフであることが期待されております。本日はURAの方が多くお集まりと思いますが、皆様が経営スタッフとして活躍され、更には経営者となられて日本の大学を率いる力強い存在になられることを期待しております。

図表は相本氏講演スライドより抜粋



講演3:文科省・国立大学・私立大学の経験から


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喜久里 要 氏

  早稲田大学研究戦略センターAdministrative Staff

【主なご経歴】
文部科学省私学助成課課長補佐
大阪大学総長室長
文部科学省官房人事課長補佐

はじめに

私の前にご講演された渡辺先生、相本先生より、産業界から大学へどういった期待が寄せられているのか、また大学はどのようにしてそれに応えようとしているのか、という視点のお話がありました。この2つの歯車をどのようにうまく噛み合わせながら、持続性を持った大学の将来展望、あるいは、そのための仕掛け作りなどをどう行っていくのか。それら全てをどうシナジーの下で組み込んでいけるのかということについて、個人的な提案も含め、お話しさせていただきます。


国立大学経営力戦略

ここ1年ぐらいで急に、本日のセッションのテーマでもある「大学経営」という言葉が出てきました。その発端は、昨年6月に文部科学省が出した国立大学経営力戦略にあると思います。「大学経営とは何か」と言ったときに、私学的な視点では、利潤を得つつ予算面での持続可能性を担保していく、という側面も例えばあります。一方、この国立大学経営力戦略を文部科学省が検討していたときには、その肝は、図1のえんじ色の文言のところにあると、感じていました。
目新しいフレーズではありませんが、まず、学長は、リーダーシップを発揮し、組織全体の改革の方向性を示すような将来ビジョンを構築することが必要です。それから、戦略的な資源配分を意識した経営的視点ということを強く求められています。同時に、公的資金のみに依るのではないということが書かれています。これは、国立大学は自らの工夫でもっと稼げるのではないか、という意味が込められています。この「公的資金のみに依るのではなく」というところに関してですが、基盤的経費の削減の話は、必ずしも国立に限られず、私学助成についても言えることです。

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図1

一方、海外の大学に目をやると、様々なところからお金を調達してきて、新しい教育研究の展開を試みている大学が、圧倒的なプレゼンスを示していると思います。これからの大学においては、お金をどこから持ってくるかということと、自身の大学のプレゼンスをいかにして示すかということが重要です。そして、それは例えば質の高い共同研究に繋がり、優秀な学生や先生を集めることにもつながり、いわば大学づくりの新しい本懐自体とも言えると思います。諸外国のそのような状況の中で、日本の国立大学も、世界を牽引するようなビジョンを創るべきではないのか、ということが、この大学経営という言葉に込められた思いでありました。


大学の経営とは何か

では、大学の経営の内実は、どのようなことでしょうか。まず、学長が将来ビジョンを構築し、それを学内の構成員に対して示し、また、学外のステークホルダーに対しても、「本学はこうしたコンセプトで、このような内部人材が活躍していくイメージでやっていきます」というようなコミュニケーションができることが重要であるとよく言われています。確かにこれは大事なポイントです。
しかし、それだけではなく、大学には部局がいくつもあるとか、教育・研究関係の沢山のマネジメントラインがあるとか、その他にも様々な管理運営の仕組みがあります。このようなマネジメントラインがどんどん複雑化していく中で、大学、特に研究大学を、シナジーを持って動かしていけるかということが重要なポイントとなってきます。
要するに、学長がビジョンを示して、執行部を中心にそれを学外に向かって伝えるのみならず、同時に学内に対しても届くメッセージを発していく必要があるということです。そのことで、大学のコンセプトに関するある程度のシナジーの下で、大学の構成員が自律的に動くことができるようにする。指示して動くような関係でなく、このような仕組みを作ることが大学経営において非常に重要であると感じています。

先ほどのご講演で、相本先生が、大阪大学が行っている様々な事業についてご紹介してくださいましたが、当時、相本先生は雑多な仕事を含め、多忙を極めていました。それは、そのよう仕事を理事より下の任せるマネジメントの仕組みが、うまく作れていなかったということであり、とりもなおさず、当時の大阪大学の経営企画課長であった私の責任だと思っています。
例えば、大きな風呂桶に水が入っていて全体を温めようとしたときのことを想像してください。熱い水を注いで表面でかき混ぜても、なかなか全体に回らず、温かくなりません。全体が対流する仕組みが必要なのです。大きな組織である大学にも同様に対流の仕組みが必要となります。学長がビジョンを示し、それに対して執行部が動き、そこに構成員が共感して動いていくという形にする必要があるのです。ですが、なかなか掛け声だけでは、対流は起こりません。こんなに構成員が関わっている大きな大学で、せっかくいろいろな良いことを考えているのだから、大学全体を一歩でも動かしていく仕組みにするために、もう一工夫する必要があった、これは私の反省点です。

例えば大学がもっと産学連携を進めていくとした場合に、その一方で現実的には産学連携に関心がある教員は限られています。大学という風呂桶の水に熱い水を注ぐように、そのような教員だけが頑張っても、すぐに疲弊してしまいます。大学の中で、いろんな教員が混じり合い、風呂桶全体を温めていくような仕組みを組織として作っていく必要があります。おそらく、大学経営や大学運営とは、そのような個別の教員や組織を全体として動かしていく仕組みを作ることではないかと理解しています。


ドラッカーが言う「公的機関不振」の原因と対策

ドラッカーの本に、「公的機関不振説」ということを扱っているところがあります。基本的に公的機関というのは、予算で運営され、予算を取ってくることが成果です。予算を通じて、何かを達成するということは、もちろん予算の趣旨の中に込められていますが、そのこと自体に対して、実は責任を負っていません。予算を取れたか取れなかったかということで、良い執行部である、良い研究者であるということが判断されるのが現実ではないでしょうか。もちろん、予算を取るためには、そのためのビジョンがないといけませんが、一義的には、予算があるかないかという結果で判断されています。さらに、この予算というのは、基本的に、毎年度ゼロベースで考えるのではなく、前年度比何%という形になります。ゼロベースで考えるような仕組みは予算主義にはなく、基本的に前年踏襲で、そこから若干のアレンジはありますが、そこがスタートになってしまいます。先ほどの風呂桶の例であれば、下の方の水温の低い部分も残念ながら温存されてしまいます。大学は、特に国立大学は、文科省から配分される予算で運営されるという側面が強くありますので、古いものを捨てられないという仕組みから脱却することが難しいのだろうと、予算を配分する側と受け取る側の両方に身を置いてみて感じました。

私は文部科学省で、予算配分の過程で大学の自己点検評価に関わるセクションにいました。大学からは、予算をもらって何に取り組んだかということと、お金をもらえたら次はこういうことをやって成果を出しますということは出てきます。ですが、その結果どのような大学に変わるのか、というような大学の執行部が考えているビジョンや、構成員のコミットメントのイメージはなかなか出てきません。残念ながら「公的機関不振」が当てはまるのではないでしょうか。やはり予算に頼るということは、それだけの弊害があるのだろうと考えています。ですので、「公的機関不振」からの脱却を、大学がどの程度実現できるのかということがポイントになってきます。渡辺さんの講演の中で、UCSDの州政府の補助金率が8%というお話がありましたが、現在、日本の私立大学の私学助成の補助割合は1割です。要するに、日本の私立大学並みの財務構造の中で経営しています。しかし、UCSDは、日本の私立大学、あるいはそれ以上の基金を持っていますので、それ以上の自律性を持って運用していることになります。つまり、日本の大学もファンディングの多様性ということをこれから本当に考えていかないと、大学のレベルが一歩上がるというところには到達しないのではないでしょうか。


大学の特質に由来する特殊性と大学経営の課題

一方、大学には大学の特質があります。それは大学の特長でもあり、重要で、なくしてはいけない部分でもあります。まず、大学の先生方は、やれと言われてやるのではなく、自分のやりたいことをやるという内発的動機があり、それが教育研究の上での最大のモチベーションに繋がります。これを何らかの形で強制してしまうと、パフォーマンスを落とす方向にしか働かないということは、大学の特質に由来する最大の特殊性だと思います。また、総合大学は分野がたくさんあり、組織も大きくなるので、その中には部分最適というものが生まれてきます。全体最適との関係についても、そんなに簡単に全部がシナジーを持って組み立てられないということがあります。部分最適と全体最適には必ず、学内政治の問題も含めて、相互関係があります。これは大規模組織であれば起こって当然で、大学経営をどうするかを検討する際の前提条件として組み込まないといけないのです。それから、会議形式の多用による決定など責任分散体質な部分も、大学の特質に由来する特殊性ではないかと考えます。
また、大学では経営層と教員は、非常に同質的です。すなわち理事はほとんど教員の持ち上がりということが多いのです。その中で、経営層は何をやるのか、教員は何をやるのかということが、実はそんなに明確に分かれていないのではないかと思います。アメリカには、プロボストとかVice Councilという大学経営のプロが行う職種が人材層として確立されていますが、日本の場合はまだそこまで進んでいません。いずれ日本にもそのような専門職ができてくるのではないかと思いますが、少なくとも現在はそうではありません。そのような状況を前提条件として、大学経営を考えざるを得ないということです。

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図2

そこで、教員とミドルマネジメントとトップマネジメント、この3つの局面を意識した大学経営を実施しなければならないと思います(図2)。
このためには、トップは現場の教員をよく知る必要があります。現場の教員とのコミュニケーションが重要になります。それをするためには、マネジメント側が現場の教員側と共通言語を持つ必要があります。大学側としては経営状況のエビデンスなどを提供する必要がありますし、また、教員の学問分野での議論が今どういうふうに進んでいるのか、教員がどこの海外の大学とコラボしているのかというような情報が必要になります。この情報が、コミュニケーションの前提になり、共通言語になって、トップが現場の教員とのコミュニケーションを繰り返す中で、大学全体としてシナジーを持つような中長期戦略策定や大学組織の持続可能性に繋がる可能性を持ちます。このような仕組みを作れないかと私は考えています。

基本的に研究というのは、教員の内発的動機で行ってもらうことが大前提です。それは、裏を返せば、その責任を教員が持つということです。研究プロセスというのは、目標や最終的な到達点のために、今年度は何をやるか、来年度は何をやるのかということを、教員が作っていきます。そこにおいて、教員はまず、研究の責任を一義的に持つ必要があります。自由に研究をやっていただくのですが、その自由というのは、どのような責任を持った上での自由なのか、ということを明確することが前提になります。そして、ミドルマネジメント層はそこをちゃんとマネジメントしていくことが必要です。


海外の大学の経営体制

トロント大学を訪問して調査したことがあるのですが、自分たちの大学の教員に対しどのような給与体系を準備しているかということを内外に公表しています。基本的に、ユニット長が個々の教員に対して、年初に必ず面談を行います。そのときに教員は、前年度までのパフォーマンスに対して進捗状況を明らかにするなど、エビデンスを提出します。それに対し、どこまで今年度中に進めるかというような計画を立てます。これを、単に教員の評価の話というふうに話せば、すぐにそれが良いか悪いかという話になってしまいますが、教員が自身で目標を立てている部分に対して、どのような状況にあるのかをユニット長と教員が相互に確認するというプロセス自体は、研究遂行上自然なコミュニケーションと思えます。このような体系を日本の大学も少し参考にできないかと考えています。

それから、渡辺さんが最初におっしゃっていたように、内部でのコミュニケーションが大事です。学内対話を通じ、いろんな機会を通じて、組織のミッションと個人の研究計画のすり合わせを行う過程が欠かせません。ですが、おそらく両者が完全に一致して同じ方向を向くということはないでしょう。利害関係があるということを正しく認識することが重要になると思います。例えば、早稲田大学に教員として所属していて、早稲田大学の教育研究環境を使っているのであれば、「ここまでは早稲田のことにコミットします」という程度、ある意味ドライかもしれませんが、そのぐらいで良いのかもしれません。これくらい自律した関係の中で、教員が研究をやっていくことが、逆に教員の良いパフォーマンスをもっと引き出せる部分があるのではないかと思っています。

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図3

エジンバラ大学では、図3のようなStrategic Planを作り、うまくまとめています。これは基本的に、内部人材をこうしていきたいというプランです。ですので、この文書を以て、学外向けにプロボストや学長などがコミュニケーションを取って、大学のビジョンを示します。このように、内部人材をどのように回していくのかという仕組みと共に、大学のプランを学外に説明していくことがあると良いのではないかと考えています。


URAの役割

最後に、URAの役割についてお話しします。先ほども説明した図で見てみますと、URAは、教員のマネジメント、ミドルマネジメント、トップマネジメント、いろんな部分に関わっていると思います。文科省から経営人材という話が出てきたときには、何となくトップに近いところにいるURAをイメージされたのではないでしょうか。

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図4

しかし、一方で、教員の外部資金獲得のサポートをするURAもいます。また、効果的な奨励策の検討や、学内対話の共通言語に生かすエビデンスを提供するミドルマネジメントをもっと活発化させる、その辺りに関わってくるURAというのも必要ではないかと思います。すなわち、図4にありますようにURAには執行部支援型、部局支援型、教員支援型のように多様な役割があるということです。

そして、URA自身がどの部分に関わっているのかを自覚しておくことも重要ですし、大学の執行部もどのURAをどのような支援に使うのかということを考える必要があります。そのようにして、URAが各階層で執行部、部局、教員と共にうまく車の両輪となって回っていく、それにより少しでも大学の経営が新しい次のステージに移ればよいのではないかという期待を持っています。換言すれば、URAの皆様への期待が非常に高い、ということでもあります。

図表は喜久里氏講演スライドより抜粋



司会:様々な観点でお話がありましたが、3人の先生方に共通しているのは、「コミュニケーション」です。相本先生は神経系という言葉をお使いになりましたが、学内でしっかり、いろんなレベルのコミュニケーションを取っていかないと、経営というものはできないし、産業界の期待には応えられないというお話でした。そういった観点に絞って、まず渡辺先生に、大学経営は産業界からどのように見えているのかということをお話しいただけますでしょうか。

渡辺:産業界でも全く同じことが言えると私は思っています。やはり企業の中にも様々な考え方の人、価値観の人がいるというのは当たり前です。ただ、そういう状況のままでは、会社や組織は守れないですし、それこそ潰れていくと思います。そうすると、それを一つの方向に向けるのが、まさに経営者の力量です。経営者は人事権と予算権を持っているわけですが、人事権と予算権だけで強権政治のようなことをやっても、変わりません。一番肝心なことは、危機感を共有して、この危機をどうやって乗り越えるかを共有することです。「こういうふうに会社を変えていきましょう」「こういうふうに大学を変えていきましょう」ということを共有することです。そうすると、構成員にしても、我々経営層にしても、あるいは外から見ている社会の人たちも、みんな理解すると思います。つまり、ビジョンを共有し、危機感を共有し、根気強く説得することが経営の本質だと思います。私は会社生活で2回もリストラをやりましたが、その2回のリストラの中で、つくづくこのことを実感しました。

司会:ありがとうございます。相本先生に質問です。実際に大学経営をされて、相本先生は神経系のところがある意味で不十分だったというお話でした。今の渡辺先生のお話も関係すると思いますが、なぜ不十分だったのかというところをお話しいただけますでしょうか。

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相本:やはり、考えていることがきちんと正確に伝わらないということです。一例ですが、我々はグローバル化が、大学の将来を握っていると考えて、いろいろ取り組んできました。その結果、学内で、様々な外国との共同研究や留学生を招致するなどの取り組みが行われました。そこまでは良いのですが、「これで評価が上がる」と考える人もいたのです。評価のためにグローバル化を進めているのではないのです。大学が生きるか死ぬかの問題なのです。お互いよく理解して進めていると思っていたのですが、表面的なコミュニケーションで終わっていたということです。このようなことをなくすためにもURAの役割は重要です。さらには、本部だけにURAがいるのではなく、各部局にもURAがいて、施策の本当の意味をきちんと部局内で説明する、そういう仕組みが必要であるということが、退任してから分かりました。

司会:ありがとうございます。喜久里先生がご講演の最後の方におっしゃっておられたURAの役割について質問です。「執行部支援型」、「部局支援型」、「教員支援型」のようなURAがそれぞれの役割を持って活動しないといけないということですが、大学の特質に由来する特殊性によるやりにくさというものがあると思います。どうすれば、URAはそういうことができるようになっていくのか、ご示唆いただけますでしょうか。

喜久里:イノベーションを起こすためには、見えているところだけを見るのではなく、見えないところを見るともいえるような余裕がないと組み立てられないわけです。これからの大学経営でも似たようなところがあって、そのためにしっかりと議論をして、危機感の共有も含めて、そういう前提条件込みで議論をして組み立てていく時間が必要です。そのような仕組みをいかに、執行部やURAの中で作っていくかということが重要だと思います。ただ、一方で注意しなければならないのは、情報共有する仕組みがありすぎるということです。情報があり過ぎて、重要なことと軽微なことをごちゃ混ぜにして議論を始めると、本当に重要なことが議論できないし、意見交換や互いのコミュニケーションを取る時間がなくなってしまいます。したがって、情報の整理を行うこと、つまり、例えば今やらなくていいこととやるべきことの仕分けをする環境を、執行部や経営陣の中に作っていくべきだと思います。そうすることにより、本当の戦略を考えることができると思います。そういう意味では、URAの役割として、研究環境、意思決定環境に対するコンサルテーションのようなことも、あってもよいのではないかと思っております。

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司会:ありがとうございます。渡辺先生がおっしゃったように、大学には社会とのギャップ、産業界とのギャップがまだまだ残っています。そこをしっかり埋めていかないといけません。併せて、学内にもギャップがあるというお話をいただきました。もっとコミュニケーションを取る必要があるということです。相本先生、喜久里先生からは、そういうところをしっかりと埋めていくのがURAの役割はないかというお話をいただきました。我々URAとしても、しっかりと産業界の期待に応えた大学経営ができるように頑張っていかなければならない、ということを改めて認識して、今回のセッションを終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。





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