大阪大学 経営企画オフィス URA部門

大学のこれからを考える

Policy Seminar

第4回学術政策セミナー
経営を支えるマネジメント人材とは

2016年9月 9日(金) 13:30
経営を支えるマネジメント人材とは
開催日時
  • 第4回学術政策セミナー
  • 2016年9月9日 13:30-15:30
  • 大阪大学テクノアライアンス棟1F 交流サロン
開催概要

第4回学術政策セミナー(平成28年9月実施)は、「経営を支えるマネジメント人材とは」というテーマで開催しました。平成26年6月に策定された「国立大学経営力戦略」に見られるように、これからの国立大学は責任ある経営体制を構築して戦略的な経営を行う必要があります。その為に、経営を支えるマネジメント人材を大学の内部でいかに育成していくのかが問われています。企業、私立大学の事例から学ぶべく、お招きした講師の皆様の講演を踏まえて議論しました。

開会の挨拶

三成賢次

大阪大学総合計画、評価担当理事・副学長 / 経営企画オフィス長

昨今、特に国立大学に関して、「経営」という言葉がよく使われています。われわれが学生の頃や助教だったころには、国立大学で「経営」という言葉を使用することはほとんどありませんでした。それが現在では経営体制の構築を求められ、国立大学経営力戦略という、まさに経営力を問う言葉が使われ始めました。

国立大学を経営するためには、経営人材やそれを支えるマネジメント人材をどう確保するのかということが課題になっています。国立大学という特性上、外部から即戦力として人を呼んできて就任してもらうだけではなかなかうまくいきません。内部から能力のある人材をしっかりと育てていかなければなりません。これは教員だけではなく事務職員の方も同じことです。

そして、こと経営に関しては、教員と事務職員とが一体となって対応することが必要であり、そのために、組織をマネジメントする力が更に重要になります。経営する能力を持った人材をどう育成していくかというのは難しい課題です。経営側だけでなく、実際に現場で仕事をしている方々、担当の事務職員にも、現場でのマネジメント力を身につけることが求められています。
しかし一方では、経営能力のある人材およびそれを支えることのできるマネジメント人材を、国立大学の内部から生み出すというのは、現段階ではなかなか難しいところがあるのではないでしょうか。ですから先進的な企業や、すでにそういった経験をされてきた私立大学から、多くの事を学んでいくことが必要だと考えています。

本日は民間企業、私立大学で人材育成やマネジメントのご経験が豊富な講師から直接お話を伺うことのできる貴重な機会です。ご参加の一人ひとりが明日の大学運営を支える人材になるんだ、という気概を持ってお聞きいただければと思います。
五藤様、山田様には、ご多忙にもかかわらず、本日の講演のために貴重な時間を取っていただきまして、本当にありがとうございました。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

講演1「私学経営を支えるマネジメント人材」

五藤勝三氏

学校法人関西大学 常任理事・法人本部長

プロフィール:
関西大学法学部卒。
1977年 関西大学入職。23年間にわたって人事制度、研修制度、福利厚生業務等を中心に人事部門の業務をご担当。この間、研修制度の再編、学内年金制度の構築、人事制度の再構築などを手掛けられました。
2008年10月より理事
2010年4月より法人本部長
2013年10月より常任理事
2005年9月~2007年8月 大学行政管理学会 常務理事等多くの学外委員をご担当

大学を取り巻く環境

高等教育は、少子化の中で受験生をどのように確保するかという局面に立たされています。学生の確保は、私立大学にとっては正に生命線です。また、昨今のグローバル化の流れの中で、大学はどのように学生教育を行っていくべきなのか等も考えなければなりません。国公私立の区別なく競争環境が激化する中、私立大学はどのように生き残りを図るかが大きな課題です。

関西大学には13学部、大学院が13研究科と3専門職大学院があり、合わせて約3万人の学生がいます。また、併設校である関西大学第一高等学校、第一中学校、北陽高等学校、北陽中学、そして高槻ミューズキャンパスの初等部、中等部、高等部、それに関西大学幼稚園を合わせると全体で約3万5,000人の学生・生徒・園児が学んでいます。
教職員は今年4月現在で、教員が約750名、教諭が約210名、専任の事務職員が約530名います。常勤、非常勤の教職員全て合わせて、およそ3,500人で大学・大学院、併設校を運営していることになります。

大学と文部科学行政との関わりに関しては、1998年10月に、「21世紀の大学像と今後の改革方策」という答申が出されました。その前年の1月には、事務職員も単に右から左に仕事を移すだけでなく、アドミニストレーターとして活躍していかなければならないということで、大学行政管理学会が設立されました。

人事制度の運用

関西大学では1999年の9月に人事制度の再構築の取組を行いました。実はこれに先立つことおよそ20年前(1980年度)に、関西大学では職能資格制度を提唱された楠田丘先生の人事制度を基にした人事制度を事務組織に導入しました。当時は能力主義ということでもてはやされましたが、能力主義とは言いながらも、実際は年功的要素も加味していました。10年間ほど制度を運用した頃にある疑問を抱きました。
例えば、40歳半ばの課長の年収が10才位年上の課長補佐の年収よりもずいぶん低い(数百万円の差)という状況にありました。これはおかしいだろう、ぜひとも働きに見合った仕組みに変えていかなければならない、ということで人事制度の再構築に取り組むことになりました。そして、2002年に新たな人事制度を暫定導入しました(図1)。

  五藤氏講演資料1
図1
大学事務職員に求める専門性

1998年に出された大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」は、われわれにとって画期的なものでした。
今、大学職員におけるマネジメント人材、経営人材という言葉が話題に上っていますが、事務職員の専門性を高めようという話が、答申等で明確にされたのは、この答申からではなかったかと認識しています。その当時、専門性を高める分野とされていたのは、国際交流と大学入試くらいでした。しかし、事務職員も大学運営に関わって、大学教員の研究支援も含めて対応していかなければならないということがこの答申で述べられていました。
また、学内のいろいろな大学運営に関する諸会議に事務局長も参画すべきだということも、この頃からであったように思います。私が就職した頃は、事務職員は先生方の補助者だという認識があったのですが、この答申後あたりから、事務職員が自主・自律的に仕事に取り組んでいかなければということになってきました。

教職員の職能開発

その後2008年には「学士課程教育の構築に向けて」という答申が出ました。ここで、「大学職員は、管理運営に携わる、また、教員の教育研究活動を支援するなど、重要な役割を担っている」と明記されています。大学経営をめぐり高度化、複雑化する仕事を事務職員がこなしていかなければならない、そのために職員がどんどん能力開発をしていかなければならないということが、この答申で出てきました。また、大学に関連する学会や、職能団体が増えてきた時期でもあったと思います。

大学職員に求められる資質・能力
五藤氏講演資料2
図2

2008年の答申の中で「大学職員に求められる資質・能力」として、このような図が示されました(図2)。事務職員の専門性の在り方について議論されていた当時の状況が、この答申にも反映されているのでしょう。部長、次長クラスの管理職・経営職としてのキャリア形成に対しては、「戦略的な企画能力やマネジメント能力、コミュニケーション能力」などを身につけ、また、課長、主任クラスの専門家としてのキャリア形成としては、新たな職員業務として、「インストラクショナル・デザイナー、研究コーディネーター」等が書かれています。さまざまな部署で経験を積むことが大事だということも、この答申の中で述べられていました。

大学のガバナンス改革の推進について

最近では2014年に「大学のガバナンス改革の推進について」という審議のまとめが出ました。その中で、学長リーダーシップの確立が取り上げられており、全学的な支援体制の構築が必要だと書かれています。
すなわち、大学執行部が学部の研究教育状況を把握して必要な支援を行ったり、大学執行部自らが具体的な方針を出すことが前提となり、そのために、リサーチ・アドミニストレーター(URA)やインスティトゥーショナル・リサーチャー(IRer)、産学連携コーディネーターといった人材の配置を検討すべきことが書かれています。さらに、アドミッション・オフィサーやカリキュラム・コーディネーター、弁護士や弁理士、広報人材等、高度専門職を活用すべく、大学側でしっかりと取り組むよう促しています。
このように、専門性を求める文科省の考え方も、約20年の間で徐々に具体化されてきました。

関西大学が求める事務職員像

さて、関西大学は事務職員にどのような人材を求めているのかを、職員募集のホームページに公開しています。そこでは、職員に求められる特質は、「自主・自律型の人材」、「自己完結型の人材」であるとしています。自分で考えて、立場や役割を自覚して動いてくれる人、仕事を完遂できる人。こういった特質をもった人材を求めるために、以下5つの資質が基盤として必要であることを示しています。

  1.  「誠実で信頼のおける人」
  2.  「社会の役に立つことを生きがいにできる人」
  3.  「人に優しく気配りしながら、しっかりとしたコミュニケーションをとれる人」
  4.  「多角的視点に基づく企画力を持ち、バランス感覚に優れた人」
  5.  「法律知識、語学力、IT技術等の専門能力を創造的に活用できる人」

さらに、採用後の職員に対しては、期待される人材像を明確に提示しています。すなわち、「変化対応型人材」、「自律型人材」、「高度な専門性を有する人材」であり、この3つの人材像に沿って、能力を高めてもらいたいと考えています。

ここで、先ほどの3つの人材像に沿った「人材育成の基本方針」の1つである「ジョブローテーションの計画的な実施」について説明いたします。これは、職員の専門性を高めるために、30歳位までにいくつかの部署(3部署程度)の業務を経験してもらおうということです。「高度な専門性を有する人材」を育成するため、大学の法人業務、学部における教務に関する業務、あるいは学生支援の業務、図書館業務など、複数の業務経験から職員の適性を見出しつつ、専門性を高める配置を行おうとしました。

関西大学の能力開発体系
  五藤氏講演資料3
図3

図3は、関西大学での研修実施・参加状況を表します。研修制度には「啓発研修」、「共通能力向上研修」、「総合研修」、「階層別研修」の大きく4つの枠組みがあります。「啓発研修」は主として学外の諸団体に派遣する研修です。マネジメント能力、企画力、プレゼンテーションスキル等、技術的なものを含めて、学外でのいろいろな研修があります。「共通能力向上研修」は語学やICTなど各階層あるいは業務領域で必要なスキルを修得するための研修です。「総合研修」は人権問題や、ハラスメント、ワークライフバランス、大学に関するものなど、その時のトピックをテーマとした研修です。「階層別研修」は、事務職員の人事制度上の資格・等級に応じて実施する研修です。
啓発研修の一環として、主として大学アドミニストレーターの養成のための大学院にも派遣しています。また、大学行政管理学会に加入して活動する若手職員もいます。今年度は現時点で3名を大学院へ派遣、大学行政管理学会には全体で17名が加入しています。

関西大学の人事制度は8等級制を用いており、それぞれの等級基準において、職員が果たすべき役割を明示しています。今後、大学経営マネジメント人材として、どのような人材を育てていくのか。文科省の方針を踏まえ、グローバル化やICT化等への対応等、どのような能力を身につけ、資質を高める必要があるのかを検討しつつ、本学の人事制度および研修制度の運用を行っています。

大学経営マネジメント人材に求められる知識・スキル

管理職が部下に指導を行う際、「大学を取り巻く社会環境の認識」や、「所属大学の建学の精神、経営・教学精神」について意識付けを行うことは非常に大事です。また先ほどの答申の中にも、職員の能力としてコミュニケーション力が重要だという記載がありました。これは組織で仕事をしていく以上、永遠の課題かもしれません。組織運営において、「コミュニケーション力」は欠かすことのできない重要なスキルです。事務組織を運営する中で、上司と部下、先輩と後輩、同僚同士、どのような関係の場合でも、しっかりとコミュニケーションを取ることが求められています。

大学の先生方は、同じ組織で働いていますが、職員とは立場も役割も異なります。事務職員が先生方とどのようにコミュニケーションを取るかは大学の運営においてとても大事な問題です。コミュニケーションが十分取れていない状態では、いくら教職協働を唱えても始まりません。これからのマネジメント人材としては、先生方の要望や意見をしっかりと聞いて、例えば、要望に沿えないときには、よく考えたうえでなぜできないのかを理由を付して返答するなど丁寧な受け答えが必要です。考え抜いたけれどもどうしてもできない時(要望に応えられない時)には、丁寧に根拠を示して説明するという、ちょっとした配慮で随分相手の受け止め方が変わってくると思います。
さらに、コミュニケーション力の一部として、傾聴力やプレゼン能力など、相手の立場に立ってものを考え、主張をするというアサーション力も身に付けていく必要があります。

次に「戦略的マネジメント力」も求められています。われわれがまだ若かった頃には、決められた仕事を、定められた手順で正確に処理する職員が「できる職員だ」という評価がありました。しかし現在はグローバル化やICT化が進んでおり、さらに高度化、複雑化して、専門化が進んでいる状況です。こうした状況の中で、決まった仕事を決まった処理手順でこなすだけでは対応できなくなってきています。前例がない、明確な答えがないといった課題に対して、どのように答えを導き出していくかが求められているのが、今の時代ではないでしょうか。特にマネジメント人材においては、こうした資質・能力が問われるのだと思います。

組織マネジメントの基本は、自分が所属する組織が、外部環境の動きやその変化に対して、強みや特徴を生かしながら成果を最大限に発揮することだと思います。そのためには、事務職員が戦略思考を身に付け、自分の考えを実行できる実力をつけることが重要です。
マネジメント人材には、さまざまな事柄や事象に対して、「何故」を問う意識が必要です。本当にこのやり方でいいのか、この仕事で利益を得るのは誰なのか、本当にこの仕事は今必要なのかということを根本的に問うていく必要があります。
実際に問題や課題が発生した場合には、その状況や環境等を踏まえながら、一次的な解決策を考えるだけではなく二次的、三次的に発生が予測される問題への対応にも考えを巡らせることが大切です。内外の状況変化も自大学の問題に結び付けて、課題解決を考えていくという姿勢が、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。

皆様も経験があると思いますが、仕事が切羽詰まった時に、「あの人だったら処理してくれる。」ということで特定の個人(よくできる職員)に頼って仕事をする状況もあります。しかし、私たち事務職員は組織能力を活用することを基本とすべきです。特定の個人に頼るのではなく組織の資源を有効に活用することでよりよい組織が形成され、組織力が高まってきます。その組織力をもって仕事を進めていくというのが望ましい形です。特定の個人でなく組織能力を活用して仕事をする。マネジメント人材に不可欠なスキルだと思います。

ただ組織には、いいも悪いも含めて、風土(文化)があります。組織活動を行ううえでこの風土が意外と厄介だったりするわけですが、その厄介な組織をうまく動かしていくのも、マネジメント人材の仕事です。規定や制度は目に見えますが、一番大事な人間の心の問題や、暗黙の了解のような部分はなかなか見えません。組織を運営して行く中で、組織の風土・文化に対する正しい認識を持つことが重要であると思います。

そして一段高い所から自分の仕事を見る、つまり「鳥瞰、俯瞰的視野」を持つということも大切です。例えば主任の方でしたら、課長補佐、あるいは課長だったらどう考えるだろうか、と一段高い視点で考えると、随分物の見え方が違ってくるでしょう。組織全体を見渡す力を「経営を支えるマネジメント人材」身につける必要があると思います。

大学経営マネジメント人材のキャリア形成
五藤氏講演資料4
図4

自分のキャリアを形成するのは自分自身であるということは図4に書いているとおりなのですが、それは自分の人生をどう設計するかということでもあります。さらには、自らの人生設計を考えるときには、自分のことだけでなく、家族の状況等を含めて考えることが必要です。例えば、受験生の子どもがいるとか、介護が必要な家族がおられるとか色々な事情があるはずです。キャリア形成を考えるときには仕事と自分のことだけでなく、家族の状況等を含めて考えることが大切です。

またキャリアの節目、すなわち、昇格や昇進、配置転換等があるときには、これまでの自分の歩みを振り返り、今ここで、自分は何をしなければならないかを考える、あるいは5年先、10年先にどうなりたいかを考えるチャンスになります。特に、将来どうなりたいかという将来設計は重要です。将来設計も持たず、何となく進むより、考えながら進む方がいいに決まっています。また、自分が描く将来設計はその時々の状況に応じて何回でも書き直すことができます。このように、キャリアの節目に何をどう考えるかということを意識することが大切です。

これからの学経営マネジメント人材が目指すべき方向

まず大事なことは、われわれ事務職員としても、マネジメント人材としても、常に学生の目線を忘れずにいる、ということです。「自分の仕事の先には学生がいるのだ」という意識を持って、先生方との教職協働を実践し、教育システムあるいは学生支援の業務の改善に取り組むことが重要です(図5)。
こう言うと、「私の担当業務は学生がいる現場ではないから学生生活の実態が見えません」と考える人もいるのですが、それは違います。本当に見えなければキャンパスを歩いてみてください。学生のクラブ活躍の現場を見に行ったり、試合の応援に行ってみてください。また、大学には学生生活実態調査などの報告書もあるのです。その気になればいくらでも学生のキャンパスライフを見ることができます。そのような機会をうまく使って学生を見る努力をすることも職員やマネジメント人材に求められているのではないでしょうか。そういう部分をマネジメント人材としてしっかり確認するとともに、部下、後輩に指導できるようにすべきだと思います。

五藤氏講演資料5
図5

2つ目に「全体的視野を持って戦略思考ができる。経営的な知見を持って政策提言のできる大学アドミニストレーターを目指す」ということです。先ほど俯瞰的、鳥瞰的な視野を持つと言いましたように大学、職場、仕事、職員の人間性など全体を見てください。その中で自分の立場や役割、仕事の位置づけなどを考えてください。経営的な視点と書きましたが、大学の評価は誰がするのか、ということを考える視点が重要です。大学に対するニーズは学生が持っているのです。経営の起点となるのは、大学でこんなことをしたい、こういう教育を受けたいという学生のニーズをよく理解することです。徹底した顧客視点に立って、学生が何を求めているかを確実につかむ必要があります。この大学はどういう大学なのかを決めるのは、大学ではなく、学生もしくは学資の負担者である親御さんです。その人たちがこの大学をどう評価しているかが重要なのです。
ただ、やみくもに学生の要望を聞くだけではなく、やはり大学としての理念やビジョンを前提にしつつ、学生のニーズを聞いて、取り入れていくということが重要です。これは手間のかかることなのですが、大学を運営する側の考えだけでこんなことは意味がないと決めつけるのではなく、職員も教員も積極的に、学生が何を求めているかということに、しっかりと焦点を当てていかなければならないと思います。

3つ目は、学生の満足度を高め、学生の人間的成長を図ることが自らに課された役割、使命として認識し、その実現のためには労を厭わず、全力を尽くすことができる職員であってほしいと思います。

少し話がそれますが、経済産業省が「社会人基礎力」というものを提唱していますが、学生に「社会人基礎力を身に付けなさい」と言うだけではなく、私たち教職員が「社会人基礎力」のモデルにならなければならないと思います。学生は私たち事務職員を「社会人基礎力のモデル」として見ていますから、職員としてのしっかりした自覚が求められているのではないでしょうか。

4つ目は「学生・教職員その他関係者の声を受け止めて、相手の場に立って、物を考え、誠意を持って対応できる職員を目指す」。常に相手の立場で物事を考えることができる職員でありたいと思います。

5つ目、「大学で起こった出来事は常に当事者意識を持ってコミットする心構えを持つ」。他の部署でトラブルが起こった時に「誰があんなことをしたのか」、「それはダメだ」、「あれは間違っている」と第三者的、あるいは評論家的な見方をして過ごすことはありませんか。そうではなく、「僕だったらこう考えた」、「私の部署だったらこう考えた」、「何か協力できることはないか」などと他人事ではなく同じ組織の中の問題として捉えるのが当事者意識なのです。そしてトラブルに対して、自分自身の問題として関わっていくという姿勢が真に大事なのです。

最後になりますが、「人間的魅力があふれる大学職員」を目指していただきたいと思います。信頼感、安心感を持てる存在であること、人を受容する心を持って誠実に業務に取り組むのがこれからの大学職員の姿だと思います。私自身もそのようになりたいと思っています。

図表は五藤氏講演スライドより抜粋


講演2「経営を支えるマネジメント人材」

山田智彦氏

ダイキン工業株式会社グッドマン社担当部長(兼)人事本部 人事企画グループ長

プロフィール:
1986年 大阪大学大学院工学研究科電子工学専攻修了。同年 ダイキン工業株式会社に入社、CAE(シー・エー・イー)センターに配属。
1998年 経営企画室技術企画担当課長。
2004年 人事部採用担当部長。
2007年 人事本部採用・育成グループ長、部長。
2009年 人事本部人事企画グループ長、部長。2012年 グッドマン社担当部長(兼)人事本部人事企画グループ長。
現在に至る。

先ほどの五藤様のお話をお聞きして、やはりマネジメントという側面では、会社も大学も変わらないと感じました。

それでは、まず簡単に会社を紹介させていただきます。創業は九十数年前になります。JR大阪駅近くに本社を置く、空調機メーカーです。グローバルという意味では約145カ国に展開しております。生産拠点は80カ国、従業員はグループ全体で6万人、ダイキン工業単独で8,000人おります。調べてみたところ、その内大阪大学卒業生は約420人でした。従業員の約8割が外国人なので、日本人が約1万人、外国人が約5万人と考えていただけばよいと思います。
売上高につきましては、2001年は5,000億円、2015年で2兆円ですから、約4倍まで伸ばしてきました。その間に2社を買収しています。

買収というのは企業にとって非常に難しい問題です。ダイキンという文化があるところに、違う文化を入れるということですから。そう考えると、違う文化を許容してマネジメントできる経営人材がこれからますます重要になるでしょう。そういう文化の異なる人たちと一緒に会社を発展成長させていくということが、経営人材の役目であります。

グループ経営理念
 山田氏講演資料1
図1

会社が発展するための要素として、大きく3つの柱があると思います。戦略経営計画の図にも示しております(図1)。一つは、「技術・モノづくりの高度化」、もう一つは「経営管理の高度化」、そしてもう一つは「人材力強化」です。今日は「人材力強化」を中心にお話をさせていただきます。
経営人材についてお話しする前に、当社がどのような考え方をしているかをご理解いただくために、その理念の基となるキーワードを交えながらご説明いたします(図2)。

 山田氏講演資料2
図2
働く一人ひとりの誇りと喜びがグループを動かす力

まず、われわれは一番のキャッチフレーズとして「一人ひとりの成長の総和がグループ発展の基礎」を挙げております。会社が成長するためにはどんどん新しい事をやっていかないといけません。その中で従業員が新しい事に挑戦し、成長していく。従業員の成長が企業の発展につながるわけです。無限の可能性を信じる、人を信じて成長させていくということが一つの理念です。従業員が入社した時にはまずこれを徹底して教えます。対してマネージャーには、これに沿ってマネジメントしているかを問います。そして経営サイドは、会社全体をこういう状況にできているかが求められるのです。要は個人の自助努力による能力の質と向上、自己責任に根差した縦横無尽な活躍が不可欠です。
また会社と個人は互いに選択し合った関係です。会社は個人に能力発揮の機会を与え、個人は会社の期待に応え活躍するという、相互信頼と緊張感のある関係でなければならないということを打ち出しています。

次に「誇りとロイヤリティ」について説明します。多くの人が、恐らく人生の多くの時間を、職場で働いて過ごすことになります。そうした個人が明解な目標を持ち、情熱を持って仕事に打ち込めることは、大きな幸せです。一方、企業側、マネジメント層はそういう場を提供しなければならない。皆が意欲と誇りを持って働き続けたいと思える環境を築いていくというのが会社の役割であります。それと、少し違和感を持たれるかもしれませんが、ロイヤリティつまり会社への帰属意識を求めています。例えば売り上げや利益、株価、お客さまへの新しい商品提供、価値提供など、会社の目標はいろいろあります。そうした目標、方針に自分も参画するのだ、チームとして戦うのだという意味でのロイヤリティを求めていきます。

最後に「情熱と執念」。根性論になっていきますが、方針や戦略、行動計画を展開して期限内に結果を出すのは当然のことです。これを「実行に次ぐ実行」として定着させています。当社のトップはよく、「一流の戦略と二流の実行力」と「二流と戦略と一流の実行力」、どちらかを選ぶとすれば、戦略は二流でもいい、実行力を一流にしたいと言っています。企業として勝っていくためには、いろいろな困難に直面した際、従業員一人ひとりが情熱を持って取組んでいるか、諦めずに成し遂げる執念を持っているかということが大切なのです。

世界に誇る「フラット&スピード」の人と組織の運営

私たちは、縦割りのヒエラルキーのある組織ではなく、もっとフラットな組織を目指しています。
まず、「参画し、納得し、実行する」ということが重要です。新入社員であっても、企業の場合は経営スタッフの一員です。タイムリーに情報を共有していくことが非常に重要です。経営情報をはじめとする様々な情報を末端まで共有する必要があります。その上で自分はこうするという意見を出し合い、侃々諤々の議論でもって衆知結集をはかります。企業においては開発や営業、生産などほとんどの部門が、チームワークで成り立っています。みんなの知恵を集めて、最後は、そのチームのリーダーが衆議独裁して進めるということが必要です。最後は民主主義ではありません。
さらに、「チャレンジャーこそ多くのチャンスをつかむ」すなわち、失敗を恐れず、実現困難に見える高い目標に挑戦し続けることが重要で、その時、人は大きく成長すると考えています。

自由な雰囲気、野性味、ベストプラクティス・マイウェイ

風通しの悪い職場はいろいろな事がうまく行きませんので、自由に意見が言える「自由な雰囲気」が大切です。そして真正面から挑戦して行動しようという「野性味」も必要です。さらに、われわれが非常に重要視しているお客さま志向、徹底したホスピタリティをどこまで貫くかということです。
先ほども申し上げましたが、新入社員からトップ経営者まで全員が、これらの行動規範をとても大切にしております。そうすることで世界中のお客さまから信頼され、働く人が誇りの持てる魅力のあるグループへと進化し続けることができるのです。

人材育成の考え方

次に人材教育、育成の考え方についてお話しします。ダイキン工業の場合は、「教育では人が育たない」と明言しております。やはり修羅場を経験することが人を育てるのです。皆さん、自分が成長したと思うのはどういう時でしょうか。教育を受けた時でしょうか。難しい課題に直面し、どうしようかと悩むことや、人に相談しにくいことなどがあって、それをブレイクスルーした時に「何かできるようになった」と感じることはないでしょうか。

「7・2・1の法則」をご存知の方もいらっしゃるかと思います。アメリカのある研究者が、世の中のトップ経営者に「どのような経験が自分を成長させたか」を調査した結果、7割が自分の経験、2割が上司からの薫陶、1割が教育研修となりました。適正をしっかり見極めたうえでのことですが、従業員に修羅場の経験をさせられるのか、これは困難だと思えるような仕事をどれだけ任せるかということが当社の人材育成の基本になっています。ですからOJTつまり仕事を通じての研修がメインで、座学はほとんどありません。

教育体系

そうはいってもやはり「7・2・1」の1は必要です。「ダイキン経営幹部塾」や「海外拠点の実践研修」という研修を、実施しています。このほかには、語学研修、通信教育といったものについては支援があります。要は自主的にやってくださいねという方針です。

 山田氏講演資料3
図3

もう一つ、マネジメントには、自分の部下についてどこまで理解しているかといった、人の気持ちを察する能力が非常に重要です。管理職のマネジメント力強化の目的で、部課長向けの「マネジメント道場」を開催しました。また、「ダイキン経営幹部塾」は重要な研修の一つです。一般的に、経営幹部研修というと部長クラスが対象と思われるでしょうけれども、部長・課長・一般のメンバー層に関係なく、資質があると思われる人を選抜して行っています。従いまして、50歳の部長と、30歳前後のメンバー層の方々が同じ場で議論します。先ほど外国人は5万人いるとお話ししましたが、「グローバル経営幹部塾」でも同じように選抜して、より一層ダイキンの理念を浸透させるための研修を行っています(図3)。

担当者、幹部・基幹職に求めること ~今年の年頭方針より~

担当者一人一人に求めるのは、失敗を恐れずに挑戦すること、最後までやりきる執念を持つということです。仕事をする上では当たり前のことですが、重要なことでもあります。
幹部・基幹職に求めることは、先見性、洞察力を働かせて、意思決定する決断力です。こうした能力は、先ほど申し上げました修羅場の経験数、意思決定した数などの積み重ねによって磨かれるものです。五藤様のお話にもありましたように、現在のように変化が激しい時代では、やったことがないことにチャレンジしないといけません。チームを動かすためには、最初の一歩を踏み出すのはリーダー自身、つまり率先垂範が大切なのです。こういったことをリーダーの役割として常々言っています。
また幹部・基幹職には、「自分の時間の3分の1は人材育成に使いなさい」と言っています。日ごろ忙しいからと、部下に仕事を渡す時にただ「仕事をやれ」と言って渡すのではなく、どう成長するかを考えて仕事を渡すということなのです。
OJTとは、On-the-Job-Trainingの略です。マネージャー側が仕事を渡す時にトレーニングの意識がなければ、それはOJTとは呼べないのです。

グループの経営幹部に求めるもの

そして実際に経営幹部に近い立場になった人に対しては、グループ経営を背負って立つという決意が求められます。最後はこの会社を自分が背負って立つ、自分がリードしていくという決意、覚悟がなければ務まりません。そのうえで求められる「6つの資質」について説明いたします(図4)。

 山田氏講演資料4
図4

「①リスクを恐れないチャレンジ精神で組織にうねりを起こす」。これは非常に抽象的な言葉ですが、動いている組織と停滞している組織の違いは、直感的にお分かりになると思います。そういう「うねり」を起こしていますかという問いかけです。
次は「②部分最適の視点にとどまることなく、全体最適で考え、行動する」、まさに五藤様のお話にも出てきたことです。部分的な視野でなく、会社全体で考える思考を身に着けてほしいと考えています。
「③健全な危機意識」というのは、危機感をあおるということではありません。高い目標と現状の自分たちの実力のギャップをどう埋めていくかといったことです。例えば、オリンピックで金メダルを目指すのに、まず自分の実力・現状を認識し、次に金メダルを取ろうとしたら、どれだけの事をやらないといけないのかを考えます。これが危機意識を持つということなのです。目標に向けてチャンレジしていこうという精神を、組織内にどれだけ育めるかが、リーダーの手腕だといえます。

そして「④正解のないところに答えを出す決断力」と「⑤現場における気づき、想像力、洞察力」。⑤は、「現場主義」とも呼んでいますが、役員からも頻繁に「行ったのか、見たのか、聞いたのか」と言われます。それだけ現場主義が重視されているということです。最後に「⑥縦のリーダーシップと横の連携」。「縦」とは上司から部下へのラインのことですが、これはほとんどの場合問題ありません。ところが、新しい商品を開発しようとする場合、新しい事業を興そうとする場合は、どうしても「横の連携」すなわち、個々の開発グループ、営業、生産、いろいろな部署が連携する必要があるのですが、みんな忙しく、なかなかできないのです。そういう時に横連携のリーダーシップをとれる人が、これからの時代において非常に重要になってくると考えています。

経営は何よりも覚悟が重要です。富士フィルムの古森会長が、ナンバーワンとナンバーツーの違いについて「ナンバーツーまでの仕事が竹刀の勝負なら、経営トップは真剣の勝負だ」とおっしゃっています。要は本当に切り合うとなった時に、竹刀と真剣では全然違うのです。トップの立場を担うならば、真剣で勝負しているのか。そのためには確固とした自分の軸をもって、会社の発展につながるか、ライバルに打ち勝てるのか、社員の成長につながるのか。こういったことを総合的に考えて、決断するということが非常に重要なのです。

それから「責任」。おそらく数十万の人が、ダイキンとの関わりの下で生活をしています。本当にその人たちを幸せにできているのかを考えていくのが経営トップの責任です。365日、24時間、命がけでcompetitor(競争相手)との戦いに身を置いているか。そういうところまで自分を追い詰めているか。それが経営の覚悟です。そして「実行力」も重要です。競争の世界ですから、competitorから半歩リードしなければなりません。そのためには意思決定して実行していくことが求められます。そして先ほど申し上げました「現場第一線」「実行に継ぐ実行」「戦略は二流でいい」。つまり、走りながら考えて、戦略を見直していこうという姿勢を求めているのです。

最後に

リーダーとは、高い目標を掲げ、自分たちの志、方針、方向性を示す人、要は羅針盤になる人です。ではマネージャーはどういう人か。決められた目標をそのチームできっちりと管理して実現していく人だと、われわれは考えています。そしてプレイヤーとは、真に高い専門性を持って、そのチームに大きく貢献する人。会社というのは、いろいろな役割の人がいて、一緒に仕事を進めています。その中で自分の得意分野を伸ばしていくということが非常に重要です。
会社というのは、業績を拡大していかないと従業員を守れません。業績を拡大しようとすると、ライバルに勝って利益を上げていかなければなりません。そのためには、お客さまにいかに価値のある物を提供していくかが重要です。本当にシビアです。採用面接の時に、学生からよく「会社に入ってからのやりがいは何ですか」と聞かれるのですが、正直なところ、やりがいなんて感じる時はありません。ですが、「やりごたえ」はあります。仕事を進めている時には、楽しい事など何もなくて非常に厳しくて辛くて、けれども、最後にみんなで喜びを分かち合うことができる。やりごたえのある仕事、修羅場を通して一人一人成長させて、最後はチームを作っていくというのが経営者の役割です。私たちはよく「ダイキンファミリー」という表現を使うことがあるのですが、一つの目標に向かう団結力を持ったチームを作ることが、企業の強さにつながるのではないかと考えております。


質疑応答

参加者A:貴重なお話、ありがとうございました。大学でも縦割りだなと思うことがあり、「フラット&スピード」という体制にとても興味があります。世界に誇るフラット&スピードを実現させるために行っていることとして「タイムリーな情報を共有」のほかに、日々の業務の中で工夫しておられる事があれば教えてください。

山田:一番大切な事は、社員が意欲と納得性を持って仕事をしているかどうかということです。仕事を早くこなそうとすると、トップダウンで上司の命令の通りに動くというのが一番早いはずなのです。そうした時に意欲や納得性があるかというと、多くの場合、なくなります。ではどうすればそれらを持たせることができるのか。ボトムアップ、つまり現場第一線の人たちからの提案を汲み上げる、何かやる時には全員参加というのが大切ではないでしょうか。
よく企画部隊だけが検討するという事例がありますが、我々はそういったやり方はとりません。全員が同じ情報を持った上で動いています。何か発言をするときは、当事者意識を高く持って発言します。そして侃々諤々の議論をします。その人の意見が通らないことがあるかもしれませんが、意見参画していれば、納得感は高くなります。
一方のトップですが、多数決で方針が決まるのであればトップは要りません。トップは何をしなければいけないかというと、第三の道を探すのが役割です。皆が思いつかないような、なおかつ、皆の意見を取り入れているような、納得できる第三の意見が重要なのです。本当に強いリーダーは、ほとんどの人が思いつかない発想を打ち出して、皆を納得させます。ですから、仕事のスピードあげた上で、更に納得性を持たせる、この両立が重要になります。そのためには、意見を言いやすい雰囲気だとか、風通しの良い組織風土にしておかなければなりません。この「フラット&スピード」がいろいろな所で定着すると、会社全体の風土や雰囲気が育っていくことでしょう。


図表は山田氏講演スライドより抜粋


パネルディスカッション

大阪大学における事務系職員の育成策と今後の検討課題
山本浩司氏

総務部人事課長

プロフィール:
1986年4月 大阪大学採用
2001年4月 和歌山大学出向
2004年4月 国立大学法人大阪大学総務部人事課専門職員 (以後、係長として人事課勤務)
2009年4月 総務企画部人事課課長補佐昇任
2013年4月 工学研究科総務課長昇任
2016年4月 総務部人事課長(兼:ハラスメント対策事務室長)

事務系職員の主な業務

大阪大学の事務系職員には多種多様な業務があり、学生支援等の「教育研究活動・学生生活を支える業務」、広報・社学連携等の「社会とつながる業務」、そしてこれらの下に、ベースとなる「大学運営を支える業務」が存在しております。
採用された職員は、定期的に各部局の指導の下、さまざまな業務をこなしながら経験を広げ、キャリアを積んでいきます。評価の高い者については試験を受けるなどし、主任から係長、それから事務長、課長級へと、昇任していくことになります。

人材育成策

本学の人材育成策においては、それぞれの職位に合わせた階層別の研修や、さまざまな目的別研修、文科省やJSPSでの1年から3年程度の実務研修を用意し、幅広く能力や経験値を高め、その成果を本学へ還元することを目的としています。

第二期中期計画期間中、つまり2010年度から6年間、五藤様がいらっしゃる関西大学様にも、私立大学での業務を経験させるため、本学職員を毎年度受け入れていただきました。本年度からは、沖縄科学技術大学院大学への職員派遣を予定しております。こちらの大学院大学は教員と学生の半数以上が外国人のため、英語を公用語として運営しています。そうした環境での大学運営を間近で経験し、大阪大学に還元してもらうという流れを考えています。

 山本氏講演資料1
図1

さらに、「職員教養研修」「自己啓発休職制度」も実施しております。勤務場所が大学という地の利を生かした大学の専門的な講義を活用した制度です。前者では通常の講義を研修として受講し、後者では休職して、例えば本学の法学研究科に入学して大学院で労働法や知財に関する法律など、より専門的な知識を吸収して大阪大学での業務につなげてもらおうというものです。

大阪大学においても、期待する職員像を設けております。これは若手職員だけでなく、大阪大学の職員全体にあてはまるものです。段階ごとにどのようなレベル、どういった能力が必要かも詳細に設定しています。階層別研修では外部講師による演習方式を用いています(図1)。

今後の課題等

在職の皆様は重々ご承知かと思いますが、国立大学法人の在り方について各方面から問われ続けています。
私はこの4月に3年ぶりに工学研究科から人事課に復帰したのですが、連日の会議、執行部の先生方にさまざまな決断を仰がなければならない事案を抱えているのが現状です。しかしながら、今後、本学がさらに活動の範囲を広げていくためには、我々事務系職員がいつまでも誰かの判断を仰ぐ立場にとどまっていてはいけないのです。我々事務系職員が力を付けて経営に一層深く参画する必要があるものと考えています。

 山本氏講演資料2
図2

喫緊の課題として、執行部に参画できる人材の育成・確保、質の高い職員や専門人材の育成・確保が必要で、実際に検討が行われています。経営感覚は一朝一夕に身に付けられるものではありませんし、体制整備が必要であることは明らかですので、引き続きさらなる検討を進めたいと考えております(図2)。
これからの国立大学経営は事務系職員が担っていくんだ、という気概で進めたいと考えています。



図表は山本氏講演スライドより抜粋


経営を支えるマネジメント人材とは
貝原亮氏

企画部 男女協働推進・社学連携課 社学連携係長

プロフィール:2004年国立大学法人化とともに大阪大学採用。基礎工学研究科人事係2年勤務後、総務部人事課に4年間勤務。
2010年から広報・社学連携オフィス広報課主任として大阪大学における広報ネットワークの構築、プレスリリースのシステム化などを実践。
2013年PRプランナー取得。2014年1月から社学連携課社学連携第二係長、社学連携第一係長を経て現職。その間、2010年4月から、名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程にて高等教育マネジメントを専攻(2016年3月単位修得退学)。

山本課長のお話に加え、事務系職員はどのようなマインド、キャリア、スキルが必要か。こうした職員の現実についても織り交ぜてお話しします。

国立大学に求められるもの

まず、なぜ国立大学に経営人材が必要になってきたのかを皆さまと共有していきたいと思います。国立大学の運営には税金が投入されており、それには意味があるはずです。
国立大学は投入された税金で運営されています。すなわち、利益を出さなければならない私立大学と違い、たとえば、「需要は高くないけれども重要な学問の継承」が必要な分野にも取り組めますし、高等教育サービスの機会均等の確保も国立大学の役割の一つです。

国立大学は約13年前に法人化しました。そこには、「競争的環境の中で、活力に富み、個性豊かな大学として自ら変革をし続けられるように」という意図があり、今後は、「責任ある経営体制を構築して、法人化のメリットを最大限活かしましょう」というところまで来た、という状況にあります。

大学という組織

大学という組織を考えると、そこには教員集団と事務集団があります。教員集団はPh.D.を持っている人であれば、助教であっても、教授であっても、研究員であっても、対等に研究の話ができます。謂わば「同僚制」の集団です。一方、われわれ事務集団では、階層に分かれたピラミッドがあり、「官僚制」の集団です。

これまでの大学というのは、執行部が教員集団の上にあり、教員集団と執行部の間で話をして、それを「大学運営を支える業務」を担う事務系職員が下支えをするというイメージがあったかと思います。しかし最近では、学長リーダーシップや、教授会の権限見直しを目指し、執行部と事務系職員の距離が近くなっていると思います。
これにより事務系職員は教員と対等に話し、また執行部に対して意見を言い、提案をしなければならなくなった、というのが今の状況ではないでしょうか。

キャリアの考え方

では次に、事務系職員を経営人材として育成するには、どのようなキャリアが必要なのでしょうか。ここからは自分の経験に即して話を進めます。私は2004年4月、法人化と同時に職員になりました。「組織」でみると、最初の2年間はいわゆる部局、その後は本部での仕事に就いています。「職務内容」で分けると、最初の6年間は人事関連業務、その後の7年間は広報・社学連携業務を担当しています。そして「職位」で見ると最初の6年間は係員、次の3年9カ月が主任、現在は係長です。このように事務系職員のキャリア形成には組織の違いや、どういった業務を、どのような職位で行うかということをうまく組み合わせることが重要になります。

 貝原氏講演資料1
図1
スキルについて

次に経営に必要なスキルはどのようなものでしょうか。図1の上段は、私が採用1年目の、とある一日の仕事を示したものです。下段は、一昨日の私の仕事を示したものです。青色がルーチン業務、オレンジ色が企画・調整・対話型業務です。ルーチン業務というのは、規程に即した仕事です。これは五藤様のお話にありましたように、アウトソーシングに移行するなどの効率化を検討する余地のある業務です。但し、無くすことができないものもあります。企画・調整・対話型業務は、企画力、デザイン力、傾聴力、対話力といったものが求められており、より経営に近い人に求められるといわれているスキルかと思います。

 貝原氏講演資料2
図2

私は何かを考える時には、経済学でよく使う'subject to、maximization、minimization'ということを念頭に置いています。資源制約がある中で、何を最大化し、何を最小化するかを軸に考えれば、議論が明確化するはずという考えです。
また、目的と手段を混同しないように注意することにも心がけています(図2)。手段を完璧にしようとする一方で、目的が曖昧になってはいけません。例えば、通知を一つ出すにしても、どうしたら皆に理解しやすい通知になるか、を考えることが必要です。

必要なマインド

経営視点で考えると、私たちはどこを目指すのかというビジョンが重要です。大阪大学では、かなり明確に打ち出されています。日々こうしたビジョン、建学の精神、職員憲章を目にする機会が更に増えると思います。
また、私たち国立大学、大阪大学が考える「市場」とは何か。また誰と、何を、競争していかなければいけないのかを、常に考えなければなりません。それは国立大学間なのか、私立大学を含めた高等教育全体なのか、国内なのか、グローバルなのか。そういった目線で考えることが求められます。

最後に

どのようなキャリアが必要なのかは、自分の立ち位置を客観的に見つめ直すことで、自ずと明らかになるでしょう。必要なスキルも「経営人材になるためにはこれができないといけない」ではなくて、今携わっている作業を分解してみて、何が自分の強みになるのかを考えてみてはどうでしょうか。マインドについても、拠り所とするもの、目指すべきものを考えていくと、経営人材というものに近づくのではないかと考えています。
最後に、経営や効率性を重視するあまりに、教育や研究の同一性、外部性、合意形成といったものを忘れてはなりません。私たちは学生、教員という存在、国立大学の役割や特性を考えて経営をしていかなければならないと思います。

図表は貝原氏講演スライドより抜粋


質疑応答

司会:まず4人の方の発表についてご質問がありましたら、挙手をお願いいたします。

参加者B:国立大学職員です。ダイキンの人材育成について、大変興味深く傾聴しておりました。その人材育成に関する理念は、どのようにして形成されたのでしょうか。

質疑応答1

山田:90年前の創立以来、脈々と流れてきた風土があります。2002年頃に、この風土とは一体何なのか、一度文章化してみようということになり、真に求める会社の在り方や過去および現在の経営トップの言葉を集大成した結果、「人を基軸に置いた経営」となりました。


参加者C:山田様のお話にはファミリーというキーワードがあり、五藤様のお話からも、愛校心がひしひしと伝わってきました。組織を愛する気持ちがなければ、効率的な意思疎通や経営を支えるマネジメント人材の育成は難しいように感じられますが、どのように帰属意識や愛校心といった気持ちを醸成しているのでしょうか。

五藤:具体的に愛校心を育てるための仕組み、ということではありませんが、先ほどお話ししましたように常に私たちの仕事の先には学生がいるということを意識づけることが大切です。例えばクラブ活動等で活躍している学生達の現場を見に行ったり、可能な限り応援に行ったりして、学生が頑張っている姿を直接目にすると、日々の仕事においても、「学生のために何ができるのだろうか」、「学生を喜ばすために何ができるのだろうか」と考えられるようになるのではないかと思います。我々が勝手に「こうやれば学生が喜ぶだろう」という押しつけではだめなんですね。調査で得た学生のニーズや、学生生活の実態調査の結果を踏まえたうえでいろいろ試行錯誤しながら仕事に取り組んでいき、その結果、学生たちが満足している姿を目にし、実感することができれば、自ずと大学が好きになり、大学に対するアイデンティティも高まってくるのではないでしょうか。とにかく、学生のさまざまな場面でのキャンパスライフを目にし、実感することが大変大事だと思います。こういうことを周りの人や、部下、後輩にも求めていき、浸透させていかないといけないのではないでしょうか。

山田:ロイヤリティを帰属意識と説明しているので、ファミリーという言葉を使いました。従業員に会社を好きになれと言っても、好きになれるものではありません。恋愛関係と同じです。従業員が高い目標に挑戦して、新しい商品が出たとか、売り上げが上がったとか、シェアアップした、達成した喜びを皆と分かち合って、経営側は少しでも高い給料、ボーナスを出して応える。そうした中でチームワークが醸成されるのだと思います。そのようなことができるように経営者は自分自身を追い込んでいく、ということではないでしょうか。


参加者D:国立大学の職員です。私立大学と国立大学との相違についての質問です。国立大学は今、URAが事務系職員に先行して経営に関わろうという動きがあり、それに合わせて事務系職員側も、経営に関わろうとしています。一方で、私立大学では事務系職員が既に経営に深く携わり、教員と対等の立場で活動しているというようにも見えます。そう考えると、私立大学では国立大学のURAのような存在はあまり必要がなく、事務系職員が十分経営に関与し、運営できるのでしょうか。

五藤:私立大学の場合、基本的には民間企業であるという意識があり、ご父母等から預かったお金(学費等)を、いかに効率的に活用し、最大の効果を発揮していくかということを念頭に置いています。私たちが大学の経営を支えていくというのがイメージの根幹にあります。そこは国立大学とは少し違うのかもしれません。一方、教育や研究活動、とりわけ、先端科学技術、社会連携の分野、あるいは、大学教員の研究推進の分野においては、研究者とともに研究活動の企画・マネジメント、研究成果の活用促進などにより、研究活動の活性化や研究推進体制の強化などを支えていただくためにURAを配置し、その専門性を活用しながら進めていくというのが非常に大事だと思っています。事務系職員とURAが一体となり、より強固な研究推進体制を築いています。


参加者E:国立大学の職員です。国立大学が法人化する前は、経営というだけで怒られました。つまり経営ではなく運営だと修正させられる状況があったわけです。その後約12年間、民間的経営手法を導入するなど、いろいろなことを検討しながら経営をしてきましたが、民間企業から見れば、国立大学は収益を上げるという概念が希薄かと思います。これだけのリソースを持っているわけですから収益についても自分たちで考えないといけないですが、民間企業および私立大学の立場から国立大学に対して、一言お願いできればと思います。

山田:企業という立場でお話ししますと、要は「何がやりたいのか」だと思います。教員も事務系職員も一緒に目指すことのできる共通の目標を作ることが重要ではないでしょうか。

五藤:今でこそ私立大学も経営という言葉を使っていますが、10年ほど前までは、私たちも大学の管理運営という言葉を使ってきました。しかし、文部科学省から「今後は私立大学も自由にやりなさい、その代わりに財政基盤も自分たちで確立し、責任も自ら取りなさい」ということになり、私立大学でも徐々に経営という言葉が使われるようになりました。先ほど山田さんがおっしゃったように、共通の目標を持つことが大切だと思います。関西大学はどこに向かうのか、教職員全員が同じ方向を向けるのかどうかだと思います。特色を出し、それを世間にアピールしながら、大学の価値を高めていこうということなのです。おそらくそれは国公私立大学とも一緒だと思います。経営という点では同じ道を歩んでいて、あまり大きな違いは無いのではないでしょうか。


司会:発表していただいた大阪大学のお二人に質問です。企業、それから私立大学のお話を聞いて、国立大学と違う、もしくは同じだと感じる部分があったと思います。本日のお話から感じた事をお話しいただければと思います。

山本:五藤さんと山田さんのお話を聞いて、現実はやはり企業でも私立大学でも同じなのかなと感じました。大学はさまざまな考えをお持ちの方がいて、なかなか難しいところもあるのですが、やはり組織全体で目標を持って一つの方向に進むことが重要だと、お二人のお話から強く感じ取ることができました。例えば今、大阪大学では2031年の創立100周年に向け、いろいろな取り組みを行っています。まさしく一つの目標に向かっている状況です。それで今、修羅場になっているのですが、山田さんのお話にあったように、この修羅場を経験することにより多くの事務系職員が大きく成長するのではないか、そんな事を考えました。

貝原:私たち事務系職員としてはやはり、文科省からの政策や予算削減などの表層的な部分ばかりに目線が行っている気がします。五藤さんと山田さんがそれぞれおっしゃった「学生を見ているか」、「従業員の家族を見ているか」という言葉が印象的でした。そういうところまで考える想像力を、私たちがどこまで持ち得ているか。それを持つことによって、見えてくる世界が広がるのではないかと感じました。


司会:今のお話にもありましたけれども、組織の中で意識を統一して目標に向かう。山田さんのお話では、健全な危機意識を組織内で育むために、トップのビジョンを末端まで浸透させるとありましたが、どんなやり方、どういう工夫が必要なのでしょうか。大学という組織ではなかなか難しいところもありますが、何かヒントになるようなことがありましたら教えてください。

質疑応答2

山田:まず基本は、一人ひとりが経営情報を知って動いているのだという意識をどれだけ持てるかだと思います。われわれも完全にはできてないのですけれども、役員会が開催されたら、参加した役員は2、3日以内にどういう議論がされたのかという情報を部長、課長まで下していくことになっています。その時に結果だけを言うのではなく、どういう議論を経てそうなったのかという背景も伝えるようにしています。
もう一つ、例えばある部署のトップの人に外部から来客があった場合、話している内容が周囲に聞こえるようにするのです。そうすると、「だから部長がこういう動きをしているのか」とわかる、これは非常に重要なことです。ですからうちは基本的にパーティションを置かず、できるだけオープンな環境作りをしています。実際に、専務までは役員室に入らずに普通の席に座っています。
このようにして、自然に情報が共有されるようになっています。トップのビジョンも同様に自然と共有されることになります。

五藤:私どもも、大学が今どっちに向かっているのか、何をしようとしているかということについては、構成員全員がしっかりと確認できるような状況にないとダメだと思っています。そういったこともあり大学全体として、現在から10年後、20年後の将来に向けての長期ビジョン、「関大ビジョン」を考えております。これは教職員一体となっての検討作業が必要です。
先ほどの人事制度の話では触れませんでしたが、事務組織については、人事制度のサブシステムとして目標管理制度を取り入れております。毎年4月の一回目の管理職会議で、その年度の事務組織の重点目標を4、5点挙げます。それを管理職がしっかりと認識した上で、それぞれの部署目標にブレイクダウンします。さらに部署目標からブレイクダウンされたものが個人目標となり、上司との面談を経て、所定の目標管理シートに記入して、提出されます。これを基に年度末に人事評価を行い、人事考課にも反映させるということを行っています。実際に行うのは非常に大変ではありますが、自分が取り組んでいる業務が大学全体の達成すべき目標の中で、どの目標に関連しているのかを認識できるような制度にしています。

司会:ありがとうございます。今お二人にお話しいただいた内容をまとめると、末端まで情報をうまく伝える。そして個人は得られた情報によって気付きの機会を持つことができる、ということかと思います。大阪大学も今後、そういったことができるように取り組みたいと思いました。


本日は、ダイキン工業の山田様と関西大学の五藤様から、人材育成に関する奥の深い事例をご紹介いただき大変勉強になりました。また、大阪大学の人事制度や現場の声を聞くことにより、大阪大学の人材育成も結構頑張っているのではないかと感じました。本日、山田様と五藤様に教えていただいたことも参考にさせていただくことにより、大阪大学の事務系職員が経営を支えるマネジメント人材としてより多く、深く活躍できるようになると確信いたしました。本日はありがとうございました。

2017年3月10日(金) 更新(担当:経営企画オフィス 長島 )