大阪大学 経営企画オフィス URA部門

第6回科学技術政策セミナー開催報告~多様なステークホルダーの対話の蓄積から科学技術政策立案を考える(2014年5月12日開催)

隔月程度の頻度で科学技術政策について学ぶ「科学技術政策セミナー」を大型教育研究プロジェクト支援室主催で開催しています。第6回目となる今回は、文部科学省の斉藤卓也さんを講師としてお招きし、2014年5月12日に実施しました。斉藤さんは省内全体の政策評価にかかわっている他、文部科学省内に2013年に設置された横断的な組織「科学技術改革タスクフォース戦略室(注1)」の室長も兼任されています。また、昨年の日本分子生物学会年会で開催された「日本の科学を考える(注2) ガチ議論」や、科学技術に関して有志メンバーにより結成された「サイエンストークス(注3)」などにも積極的にかかわっていらっしゃいます。斎藤さんは、当日に講演をするだけではなく、企画段階から研究者を含め科学技術に何らかの形でかかわる当事者との対話を重ねながら取組みを実現されており、その姿勢に惹かれて今回依頼をしました。


セミナーでは、国や文部科学省の予算状況を概観した後、「政策形成プロセス」に関しての話題となりました。社会保障などが大きく伸び、科学技術予算は長い眼でみると全体予算に占める割合が減っている中で2010年に事業仕分け(行政刷新会議)が行われ「国の戦略と予算の効率的使用」が求められていることがより明確になったこと。また、そのような契機もあり、「政策や事業の優先順位を付けられる仕組み」についてより深く考える仕掛けが必要になったこと、などが語られました。これまでは、「一部の意見のみを反映」して政策立案が行われる傾向が強かったように思われるが、今後は「大多数の中堅・若手研究者の意見を反映」しながら政策をつくり込むプロセスが重要なのではないかという指摘でした。その具体的な取組みとしての文部科学省内の横断的な組織「科学技術改革タスクフォース戦略室」では、科学技術政策のあるべき姿を描き、そこからさかのぼって今やるべきことを考える試みを、外部機関や省内課室と対話を重ねながら進めていらっしゃいます。これによって、「政策や事業の優先順位を付けられる仕組みを構築」し、「膨大な情報の中から、細部にとらわれず全体を見て、本質をイメージ、整理」することが可能となり、意思決定速度の向上をねらっているとのことでした。


また、同様のプロセスで文部科学省が進めている事例として、2014年1月に発表された「夢ビジョン2020」が取り上げられました。2020年のオリンピックを「日本にとって新たな成長に向かうターゲット・イヤー」と位置づけ、課題先進国として世界に先駆けて社会課題の解決を加速するために、省内の中堅・若手職員が中心となって、省内アイディアを公募したほか、若手のアスリートやアーティスト、研究者らとの対話を重ね、「夢ビジョン2020」が作成されました。開催地となる東京だけではなく、日本社会を新たな「成長」に向かうきっかけとなるために、「夢」の実現に向けて改めて国民参加型熟議イベントや若手クロストークなどの取組みが本格的に動きはじめるそうです。


その他にも文部科学省の事業や取組みに関する事例紹介がありましたが、セミナー後半の参加者との意見交換でも、「組織横断型チームで政策をどのように考えているのか」、「既存の組織の中でこれまでとは異なる取組みを実際にどのように可能にされたのか」、「そもそも日本の文化の中で対話を広げることは可能なのか」など対話を通して政策立案を考える取組みへの関心の高さがうかがえました。


STP_seminar06.JPG

わたくし自身は、本セミナーを通じて、大学と文部科学省は科学技術或いは学術政策に関して上下関係があるのではなく、両者共にステークホルダーであると強く感じました。特に大学は、研究においても教育においても現場であるということが強みかもしれません。大学という現場は、多様な分野の研究を行っている研究者だけでなく、細かな手続きを日々行っている事務職員や研究の支援をしている人など様々な人材で構成されています。このような現場の声と文部科学省や他省庁等を含め政策づくりにかかわる人の声が交わる場を提供できるのは大学ならではのことかもしれないと考え、そうした場の実現に向けて少しずつ検討をはじめているところです。



(福島杏子/大阪大学 大型教育研究プロジェクト支援室 URAチーム)


(注1)科学技術改革タスクフォース戦略室
2012年12月に、文部科学事務次官決定で大臣官房政策課に「科学技術改革タスクフォース戦略室」を設置。政務三役や関係幹部をメンバーとする「科学技術改革タスクフォース」の調査・企画・政策立案機能を充実強化するための事務局機能との位置づけ。(科学技術改革タスクフォース戦略室資料より抜粋)
(注2)日本の科学を考える http://scienceinjapan.org/
(注3)サイエンストークス http://www.sciencetalks.org/





大阪大学URAメールマガジンvol.8掲載記事)

2017年3月26日(日) 更新(担当:URA 福島 )