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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAGINE vol.18

「春にして"これからの研究"を想う」特集

2015年3月 発行

大阪も急に春めいてきました。新しいことをしたくなるから不思議です。今月は、研究や研究支援の"これから"に関する記事をお伝えします。巻頭記事は、学部生と教員が合宿形式で研究について2日間語り合った大阪大学生命機能研究科「春の学校」。仲野徹研究科長による軽快なレポート記事をお楽しみください。

■INDEX
  1. 「おもろい研究! 君ならできる、ここでできる」大阪大学生命機能研究科『春の学校』
  2. グラント・ライティング(競争的資金の申請書作成支援)を考える --SRA International「グラント・ライティングワークショップ」の事例から
  3. (当日参加歓迎!3/24東京・3/26大阪)大阪大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)整備事業報告会
  4. 大阪大学ホットトピック
    ○大阪大学所蔵の野中古墳出土品が重要文化財へ
    ○大阪大学オリジナルウイスキー完成記念イベントを開催しました
    ○国際共同研究促進プログラムを選定(平成27年度開始プログラム)
    ●大阪大学は平成29年度から「世界適塾入試」を導入します
    ●未来トーク第17回「青柳 正規 文化庁長官」のご案内
  5. 次号のお知らせ


【1】「おもろい研究! 君ならできる、ここでできる」
大阪大学生命機能研究科『春の学校』

「おもろい研究! 君ならできる、ここでできる」をキャッチフレーズにした大阪大学生命機能研究科の春の学校も、今年で3回目を迎えることになった。場所は大阪平野を一望できるみのお山荘風の杜。主たる対象は、将来、生命機能研究科に入学する可能性のある学部生たち。今年も四十数名の若者が東は東京から西は福岡まで、全国とまではいかないけれど、各地から集まってくれた。

2日間のスケジュールで、初日の昼食会からスタート。お世話役の八木健教授による「開校のことば」にはじまり、参加学生たちの自己紹介がおこなわれる。まずは、学部学生以外に、生命機能の先輩学生たちも参加してくれているので、その大学院生たちの自己紹介から。学部学生君の中には「大阪なのでおもしろいことを言わなければいけのではないかとプレッシャーです」などという子もいて、和気藹々の雰囲気になってくる。

次は研究室紹介。都合のつく教授は全員参加する、というのが、この学校のひとつの特徴だ。それぞれの教授と独立准教授が趣向を凝らして説明をしていく。持ち時間は5分を厳守。短いけれど、というか、短いからこそ、先生方の性格がわかっておもしろい。今年は、4月から着任される予定の4研究室の紹介もあって、もりだくさん。おおよそ2時間かけての紹介であった。

そして「おもろい研究!」と題したディスカッション。2会場に分かれて1時間ずつのセッションである。この学校のユニークなところは、開校の前から、ネットを通じて、いろいろなことを話し合えるシステムにしてあるところだ。そこで話題になったトピックスからディスカッションのテーマが選ばれる。今回のお題は「精神(意識)は物理的に定義できるか?」、「科学の先端を拓く上で『歴史』の理解は必要か?」、「研究不正を防ぐには何が必要か?」、「研究者のイメージ:かっこいい研究者とは?」の4つ。

私が司会をしたのは『歴史』について。情報が膨大化する中、ネット検索で調べることが当たり前になってきている。そうなると、どうしても最新の情報にばかり目がいってしまい、歴史的な経緯などを知ることがおろそかになってくる。個人的な意見としては、こういったことは「反知性的」な傾向を産み出しかねないのではないか、また、暗黙知が形成されずに、知性が平板化していってしまう恐れがある、と考えている。といったような前ぶりでセッションスタート。

教授、准教授あたりのおじさんたちは、おおむね、歴史を知ることは必要とまではいえないけれど、重要なのではないか、という考えに賛同。一方で、若い人たちからは、必ずしもそうではないのではないか、という意見もだされた。Google検索などがもっと進んできたら、そのうち、この論文を読んだらよろしい、と自動的に勧められるような時代がやってくるかもしれない。

生命科学の進歩はきわめて早いので、若者たちは、一世代前の論文を読むと、ツメが甘くてどうしようもないという印象を持つのかもしれない。しかし、その分、いろいろな思考というものがちりばめられている。内田樹編『日本の反知性主義』(晶文社)に「科学の進歩にともなう反知性主義」というタイトルで書いたのであるが、筆者は研究という営みと知性の育成が乖離しつつあるのではないかと憂えている。そのような時代であるからこそ、歴史を学ぶ重要性はいや増していると思うのであるが、みなさんはどう考えられるだろうか。

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(写真左から)「おもろい研究!」で筆者が語る、参加学生も語る、別会場でも語る

もうひとつ参加したセッションは、「研究不正を防ぐには何が必要か?」。簡単そうに見えて、確実な答えの見いだしにくいテーマである。STAP騒動がどうしておきたのか、から話がはじまり、いろいろな意見が出された。研究分野の関係から、テレビでSTAP細胞の解説などをしたので、この件についてはいろいろなことを知っている。その立場から、STAP細胞の件はきわめて特殊なケースなので、一般化してそこから何かを導くのは不適切である、ということはしっかり主張しておいた。

ここで結果を出さなければ将来が危うくなるという心配から不正をする人がいるのではないか、といった意見などからは、今の若者が抱いている漠然とした不安感などがみてとれて、こちらとしても、大いに参考になった。"かっこいい研究者"セッションは「とりあえず、くさい臭いのするシャツを着て研究室に来るのはやめるべき」という、当たり前すぎる内容が結論だったらしい。

6時からは、ビールを飲みながら、わいわいと夕食。みのお山荘風の杜は食べ物もおいしいし、お風呂もいい。そして、7時半からはエンドレスの情報交換会というか、飲み会である。ビール、ワイン、焼酎などを片手に、椅子席の会議室、ソファーのロビー、畳の部屋、に分かれて、適当にグループを作りながらわいわいがやがや。

お昼のディスカッションの内容や、とりとめのない噂話まで、おおよそ数名ずつにわかれてほんとににぎやか。この飲み会が春の学校のメインイベントではないかと思えるほどだ。おじさん教授たちは、おおむね日付が変わるころに退散するが、朝の5時ころまで続けられたらしい。校長という責任感のためか、ただ単に好きなだけかわからないけれど、八木先生は毎回最後までおつきあい。とってもえらい、ということにしておきたい。

2日目は7時半から朝食。これがまた美味しい。全参加者による記念撮影があって、マイクロバスや乗用車に分乗して、吹田キャンパスの生命機能研究科へ移動。そして、午前中は、体験参加型のラボツアー。各研究室がさまざまなテーマでのツアーを提供するので、学生たちは興味のある研究室に出向いていく。その後、将来、きっと入学してね、という、せこいとは思うが切実な願いをこめての入試説明、そして、校長先生による終わりのことばがあって、閉校。午後は、自由に研究室訪問をしてもらって終了。

ざっとこんなところだ。参加してくれる学生さんたちには、楽しく有意義であると確信している。我々、教授たちにとっても、若い子たちに接する貴重な機会であるし、いろいろな大学の事情を聞けたりする。教授同士で泥酔するまで飲むことができるのも大きなメリットだ。予算が許す限り、研究科のメインイベントとして続けていきたいと考えている。


(仲野 徹/大阪大学生命機能研究科 研究科長・教授)

harunogakko2015_4.JPG 集合写真。みのお山荘からの眺望を背景に。

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【2】グラント・ライティング(競争的資金の申請書作成支援)を考える
--SRA International「グラント・ライティングワークショップ」の事例から

皆さんご存知の通り、リサーチ・アドミニストレーションの業務は、大きく分けるとプレ・アワード(競争的資金獲得のための支援)、ポスト・アワード(競争的資金獲得後の支援)、研究戦略推進支援の3種類がありますが、近年の米国では、プレ・アワード業務の中でも、「グラント・ライティング」が一つのジャンルとして確立されつつあります。「グラント・ライティング」という名前は耳新しいかもしれませんが、実は我々URAの主な仕事の一つとして、日常でよく携わっている申請書作成支援のことです。例えば大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室では、大型プロジェクトから日本学術振興会特別研究員まで、その申請書への助言等を通じて、年間多くの競争的資金の獲得を支援しています。

米国の大学のリサーチ・アドミニストレーション部門の中で、他の研究支援業務と区別を付けて、グラント・ライティングに特化した専門職員(Grant WriterまたはProposal Development Expert、Graph Designer等)を雇用することが多くなっています。私費で学外のグラント・ライティング支援機関に頼る研究者も少なからずいます。米国での競争的資金の獲得率は平均20%前後で、孤軍奮闘ではなかなか取れないのです。最近ではグラント・ライティングを大学院課程に取り込む動きもあるそうです。

文部科学省がURAを育成・確保するシステムの整備に着手してから約4年、URAは日本では新しい職種であり、グラント・ライティングにおいて経験も知識もまだ充分ではありません。そこで、それらの高度化を目的に、SRA International(註1)からグラント・ライティングの専門家を大阪大学に招いて、3月10日、11日の2日間、少人数で密度の高いトレーニングができる「グラント・ライティング(申請書作成支援)ワークショップ」を開催しました。参加者は、大型教育研究プロジェクト支援室、免疫学フロンティア研究センター、国際公共政策研究科、医学系研究科のURA・研究支援者計13名でした。

grantwriting_ws.JPG 講師のDr. Marjorie Piechowski先生

1日目のワークショップでは、主にLogic Modelの基本、構成要素、応用例等について学びました。Logic Modelというのは、教育研究プロジェクトの企画立案や申請書・報告書の作成において、米国を中心に有効な方法論として用いられています。このモデルの二十数年の歴史の中、最初は主にプログラムのマネージャーや評価者がプログラムの有効性を示すために使われていました。ある特定の問題に関連する資源、行動または取組み、対象、短・中・長期成果等の関係性を論理的に説明することにより、プログラムのパフォーマンスを批判的に測ることもできると言われています(註2)。近年では、論理的思考を重視し、柔軟性もあるこのモデルが申請書の作成にも応用されるようになりました。プログラムやグラントによって、実際の構成要素もそれぞれ異なりますが、一つよく使われている例示図(註3)を参考までにご紹介します。

logicmodel.jpg

まだ新しい方法論ですが、米国はもちろん、日本でもファンディング機関によって、最初からこのモデルを使って申請書を作成しなければならない例が増えています。単なる個人の経験に頼りすぎず(URAとしての経験も大事なのですが)、グラントごとのガイドラインに沿って、申請書に求められている要素を順番に論理的に書くというLogic Modelの本質はとても合理的かつ効率的です。日本の競争的資金事情に合わせてカスタマイズすることも可能なので、一つの便利なツールとして今後の申請書作成支援に活用できるのではないかと思います。

2日目は、URAが自分の専門以外の分野の申請書をレビューし、研究者に助言する際、何を、どのような視点で、どう客観的に説得力のあるコメントをしたらよいかについて、講師の三十数年の心得を教わりました。単に「経験上では」や「なんとなく」で説明するのではなく、4段階の申請書レビュー法等整理された方法を駆使し、より俯瞰的な視点で研究者に助言することの大切さが分かりました。その後はこの2日間で学んだ理論に基づき、全体討論とグループワークを通じて、実際の申請書を見ながらコメントをしたり、URAが審査員となって模擬審査をしたりといった内容の実技演習が行われました。参加者からは、

・申請書の論旨に関する違和感をどう論理的にブレークダウンして申請者に伝えるのかについて、今まで自分が説明できなかった部分を説明してもらえて頭が整理できた
・海外の会議等はテンポが速すぎてついていくのが大変なので、今回のように海外から経験豊富なURAを招いて、我々のニーズに応じカスタマイズされたワークショップを行ってもらう方が効果的

等の感想も寄せられました。

嬉しいことに、2014年5月に大阪大学で実施したオーフス大学のリサーチ・アドミニストレーションの先進例を全体的に学ぶ研修会(詳しくはこちら参照)と、今回のような一つのテーマに特化したトレーニングに参加することにより、URAとして少しずつパワーアップしていることを実感しています。大型教育研究プロジェクト支援室が3月から5月にかけて取り組んでいる日本学術振興会特別研究員の申請支援も、こうした研鑽で培った専門スキルを活かし、充実を図っています。それはまた次号以降でご紹介します。


(姚 馨/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室 URAチーム)


註1 SRA Internationalについて:1967年に米国で創立され、現在は世界40以上の国からの約4500名の会員を擁するリサーチ・アドミニストレーターの国際組織。SRA internationalの主たる事業はリサーチ・アドミニストレーター向け教育プログラムの提供であり、情報交換の場やキャリア情報を提供するほか、ジャーナル(Journal of Research Administration)も発行している。

註2 McLaughlin, J.A. and G.B. Jordan. 1999. Logic models: a tool for telling your program's performance story. Evaluation and Planning 22:65-72

註3 Enhancing Program Performance with Logic Models, University of Wisconsin-Extension, Feb. 2003

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【3】(当日参加歓迎!3/24東京・3/26大阪)大阪大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)整備事業報告会

大阪大学では、平成24年6月に、文部科学省の「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)事業の実施機関に採択されたことを受け、大型教育研究プロジェクト支援室内にURAチームを設置し、本部事務機構や部局・プロジェクト等でリサーチ・アドミニストレーション業務を担当している教職員との連携の下、大阪大学版URAシステムの整備を3年度計画で進めてきました。

今年度末で3年となる事業の区切りとして、大阪大学における学内制度の整備及び研究支援活動に係る取組を学内外に向けて報告するとともに、今後のリサーチ・アドミニストレーション活動の展開とURAの果たすべき役割を改めて考える機会とすることを目的として、大阪大学URA整備事業報告会を開催いたします。

くわしいプログラムはこちらの報告会サイトをご覧ください。

皆様のご参加をお待ちしています。

□東京:2015年3月24日(火)13時20分~17時10分、虎ノ門ツインビルディング
□大阪:2015年3月26日(木)13時20分~17時20分,千里ライフサイエンスセンター

当日参加歓迎、参加費無料、各定員150名程度

本報告会は、文部科学省「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)事業として開催します。

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【4】大阪大学ホットトピック

大阪大学所蔵の野中古墳出土品が重要文化財へ

大阪大学オリジナルウイスキー完成記念イベントを開催しました

国際共同研究促進プログラムを選定(平成27年度開始プログラム)

大阪大学は平成29年度から「世界適塾入試」を導入します

大阪大学 未来トーク第17回「青柳 正規 文化庁長官」のご案内(2015年4月20日開催)

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【5】次号のお知らせ(予告なく変更する可能性があります)

新年度。大阪大学の研究支援関連部署の再編も予定されています。
大阪大学の研究支援体制の最新情報などをお伝えします。


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大阪大学経営企画オフィスURA部門(旧 大型教育研究プロジェクト支援室) 川人・岩崎

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2017年7月10日(月) 更新(担当:川人 )