大阪大学 経営企画オフィス 研究支援部門

大学のこれからを考える

Policy Seminar

RA協議会第4回年次大会
URA組織における人材育成

2018年12月28日(金)【講演録公開】
URA組織における人材育成
開催概要

リサーチ・アドミニストレーター協議会(RA協議会)の第4回年次大会(http://www.rman.jp/meetings2018/)において、大阪大学は「URA組織における人材育成」というセッションを企画・運営しました。

■開催日:2018年9月20日(木)
■場所:神戸国際会議場
■セッションオーガナイザー:
 高野 誠  (大阪大学 経営企画オフィス シニア・リサーチ・マネージャー)
 佐藤 祐一郎(大阪大学 経営企画オフィス リサーチ・アドミニストレーター)
■講演者:
 山口 光男 (福井大学 総合戦略部門研究推進課 課長)
 藤村 悠一 (山口大学 大学研究推進機構研究推進戦略部 URA室URA部門・IR室 URA)
 舘  正一 (関西大学 学長室 リサーチ・コーディネーター)
 藤原 明  (りそな総合研究所 リーナルビジネス部長)

登壇いただいた方々のお話と全体討論の概要を下記にまとめました。なお、本資料はRA協議会の協力を得て作成したものです。

セッションの趣旨

セッションオーガナイザー:
 高野 誠(大阪大学 経営企画オフィス シニア・リサーチ・マネージャー)

本日は、「URA組織における人材育成」というテーマで議論させていただきます。このセッションを企画した背景ですが、そもそも人材育成って何だろうかというところをしっかり考えたうえで、われわれの人材育成、そしてその深化を図っていくということが重要だと考えました。

図1には、本日講師の1人としてお越しいただいている、りそな総合研究所の藤原部長の言葉を書かせていただきました。

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図1

人材育成とはこの図のような観点から非常に重要であり、「深く」考える、「考え抜く」ことができる人材を育成できると、組織としても「新機軸」をつくることができ、環境変化にも対応できるということをおっしゃっています。私自身、人材育成というのは非常に大事なんだということを、この文章を拝見して認識を新たにしたというところです。
URAという観点から、この人材育成について改めて考えるということが今回のセッションの趣旨です。

図2は、本日の議論の観点です。人が人生を通してどのようにキャリアアップをしていくのかという観点で見たときに、われわれURAというのは、様々な生き方をしていくと思います。

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図2

例えば、現在は機関2というところに所属していますが、その前は別の機関にいて、今後はまた別の機関に移るというような生き方をされる方もいます。一方で、一つの機関にずっといるという方もいるでしょう。このようにURAには「機関跨り」という多様性があります。
また、「職種跨り」という多様性もあります。今はURAという仕事に就いていますが、以前は別の仕事をしており、将来は別の仕事に就くという方もいます。一方、「URAは天職です、ずっとURAを続けます」という方もいるわけです。

このようなURAの多様性という観点に立ったときに、人材育成というのはどうあるべきなのかということを、皆さんと考えてみたいというのが本日のテーマです。それは大きく二つの観点があります。一つ目は、組織としてどのように人材育成をしていくのかということです。二つ目は、URA個人の観点です。どのようにして自分自身を育成していくのか、自分自身どのようなキャリアプランを描いているのかということです。そして、もうひとつ大事なのは、今われわれがやっている仕事は、人生のステップアップにつながるのだろうかといった観点で自分自身も育成していかないといけないのではないかという視点も重要だと思います。

本日は、4名の講師の方に来ていただいています。福井大学の山口さん、山口大学の藤村さん、関西大学の舘さん、このお三方は、URAに非常に近いところでご活躍されている方々です。もうお一方は、先ほどご紹介させていただいた人材育成の文章を書かれた、りそな総合研究所の藤原さんです。藤原さんには民間企業における人材育成の考え方という視点も踏まえてお話しいただけると思います。

RA協議会第4回年次大会 全発表資料(ログイン必要)
http://www.rman.jp/meetings2018/session.html

講演1「URA組織における人材育成 <福井大学の事例>」

  山口 光男 氏
Yamaguchi
福井大学 総合戦略部門研究推進課 課長
≪プロフィール≫
福井県立大学大学院経済・経営学研究科博士前期課程修了。1982年から福井大学文部事務官として主に人事系を担当。2003年から研究推進課で主に産学官連携体制やURAシステムの構築,研究推進関係制度設計に従事。2013年から研究推進課長・URAオフィス副所長。現在,同オフィスは産学官連携本部に統合され,同本部研究企画・管理部がその機能を引き継いでいる。同部副部長を兼任中。修士(経営学)。
はじめに

福井大学の山口です。よろしくお願いいたします。本日は福井大学の取り組みをご紹介させていただきます。福井大学の取り組みが優れているとかそういうことではなく、ひとつのデータを提供するという感じでいますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私はURAではなく事務系職員です。国家公務員として福井大学に採用になりまして、おもに人事系の仕事をやっていました。平成15年に福井大学と福井医科大学が統合し、研究推進課が新たにできまして、その時に人事から研究推進の業務に移りました。当時は、新しい組織ということで、10人ぐらいで細々とやっていましたが、今はURAと事務系を合わせて30人ぐらいの体制でやっています。
また、私は大学院で経営学を学んでいたこともあり、組織論の観点で、URA組織について産学連携学会などで発表させていただいております。ご覧いただければ幸いです。
また、私は昨年度、科学研究費補助金をいただきまして、産学連携の分析などにも取り組ませていただいております。

福井大学の概要

福井大学は中規模の病院を有する大学のなかでも、かなり小さい方です。学生数は5,000人ほどで、4学部あります。中規模の大学ですが、就職率が全国1位でして、国立大学で11年連続です。
また、科学研究費補助金の1人当たりの獲得額は、平成28年度は中規模の病院を有する25大学のなかで2番目です。平成29年度はかなり落ちましたので、あくまでも参考になります。

福井大学のURA組織

福井大学のURA組織は産学官連携本部に所属しています(図1)。

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図1

もともとは産学官連携本部とは別の組織で、文部科学省からいただいた補助金でURAオフィスを設立しました。それを一昨年に統合しまして、事務系職員、URA、コーディネーターが同じ組織で業務にあたっています。

科学研究費補助金についてもここで扱っているというめずらしい組織です。

URA人材に求められる役割

これはあくまでも私個人の見解なのですが、もともと大学は、個人の階層と、機関・組織の階層とで価値観がまったく違います。これはもう皆さんご存じだと思いますが、様々な文献でも明らかになっています(図2)。

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図2

そのことを前提として、それぞれの関係者の価値基準も異なります。このようなこともひとつの背景となって、どのような知識を組み合わせれば何が生み出されるのか、どのような問題が解決されるのかを予測し、実行する役割を果たすことが重要になると考えています。

この知識ですが、例えば事務局のなかには、様々なデータや情報、契約関係のルールなどがあります。それもすべて知識なんですね。それをどんなふうに組み合わすと、どのような良いことが起きるかといったことを考えて実行することが、URAの役割であろうというのが個人的な見解です。

URAシステムを導入した理由

それでは次に、福井大学はURAシステムをなぜ導入したのかということを説明させていただきます。図3は、立命館大学さんのマッピングの図をお借りしています。

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図3

福井大学の場合、リサーチ・アドミニストレーションというものを俯瞰的に考えています。この業務は必ずしもURAだけが取り組むのではなく、例えば産学官連携本部の教員や、URA、そして事務系職員、すべての関係者が取り組む業務と考えています。それをシステムとして活動しています。従来は上半分のアカデミック寄りの部分が弱かったと思います。そこをURA導入により強化していくといったイメージです。

福井大学URAシステムによる産学連携支援

図4は福井大学の活動成果を表していますが、産学連携タイプのURAの活動になります。

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図4

近年、国の事業でも出口を見据えた事業がかなり多くなっています。そして、地域創生の観点からも共同研究の推進や、出口を見据えた活動が非常に重要になってきています。この図でご覧になってもわかるように、URAが伴走型の支援を行っています。関係者が各場面で異なりますが、そこで適材な人材の方とコンビを組んで、チーム制で伴走しています。

福井大学URAの人事制度

URAの人事制度について、図5で説明します。6年ほど前に専門職人事制度をURAのために導入しました。

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図5

国家公務員では専門行政職の俸給表がありまして、特許庁の審査官や航空管制官などが適用される俸給表や人事制度で、それを学則に明記しました。そして人事の関連規則にも制度化しています。

また、当初は任期が付いていますが、審査のうえ、パーマネントにもなります。その実例もあります。

人材育成プログラム

望まれる人材像に関する個人的な見解を述べましたが、そのような人材を育成するためのプログラムをご紹介します。先ほど述べましたように、われわれは産学官連携組織と非常に近いところで仕事をしています。そこで、産学官連携組織が中心になって行っているMOT教育や博士後期課程の実践道場カリキュラムを活用しています。博士前期にはマーケティング論や技術経営のすすめ、ベンチャービジネス概論などがあります。博士後期では企業戦略概論のような経営学系の科目を活用しています。これを仕事の合間に受講してもらっています。

また、SD研修も活用しています。これは福井大学の知財担当の樋口教授に、現場に即したプログラムとしてシラバスに立案していただき、URAや事務系職員も受講しています。
それから、文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」に採択された平成25年度にも、企業の方や社会人の大学院生などが対象でしたが、企業実践塾というものを行っていました。この実践塾はURAの育成にも活用しています。

現在、文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」が走っています。これはご存じのように、事業化に向けての具体的な戦略というのが求められています。これについては、市場調査やベンチャー設立も考える必要があります。企業出身の教員の方にご指摘いただきながらURAが中心になり進めています。これもURAのOJTという捉え方をしております。

図6はAMEDの資金と民間資金とをうまくコーディネートしながら事業展開を図っている例です。企業との共同研究においては、実際に企業の方との厳しい議論の場にもURAが参加し、今までにないような感覚のなかで業務を行っています。

図7は研究実践研修という位置付けになります。私が科研費をいただきましたので、URAにも手伝ってもらって分析を進めています。このポスター発表は去年のものです。こういった科研費を実際に獲得して、理論と実践を肌で感じていただいて、研究者支援に役立てていただこうと考えています。また、そういった感覚を持っていただくことによって、教員との距離を非常に近いものにする、信頼を得るということに役立てたいと考えています。

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図6
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図7

URA人材の育成のあり方・課題

URA人材育成のあり方としては、人材像を示すということです。そのなかで、その役割にふさわしい必要な能力が何かを考えることが重要です。そして、必要な能力を養成するためのツールの検討、理論研修やOJTなどの実施、学外研修の活用なども必要だと思います。
課題としては、福井大学では人事制度はできていますが、キャリアプランを示して各階級に必要な能力を導き出せないかということです。それから、専門職にあまりにも偏った研修になってしまうと、価値観が偏り活動範囲が狭まってしまう可能性があるのではないかと考えています。
今後の取り組みとしては、キャリアプランを具体的なプランとして示すということと、他のセクションとの協働や、他分野業務の理解促進に資する研修などへの参加を推奨したいと考えています。

図表は山口氏講演スライドより抜粋

講演2「URA組織における人材育成 <山口大学の事例>」

  藤村 悠一 氏
Fujimura
山口大学 大学研究推進機構研究推進戦略部 URA室URA部門・IR室 URA
≪プロフィール≫
九州大学法学部卒。平成16年に山口大学事務職員として採用。異動により庶務系、研究協力系、会計系の各部署を経験したのち学内公募を経て平成25年7月からURAと事務職員の中間職としてURA支援事務部門に配属。平成30年4月より現職。平成27年6月からは学長直属のIR室員を兼務。主な業務として共同研究等に係る契約交渉や事務経験を活かした各種制度設計など。
はじめに

山口大学URA室の藤村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、どちらかというと完全に現場の人間で、人材育成についても、組織が設計したものを受ける立場になります。本日は現場の立場で、山口大学におけるURAの人材育成の実情をご説明させていただきます。

私はもともと大学の事務職員として採用されました。そして、URA支援事務部門という半分事務、半分URAというような学内公募されたポジションに手を挙げて、URA職としての活動をスタートすることになりました。その後、学長直属のIR室のスタッフも兼務しつつ、今年度から正式にURAとして活動しています。

URAではありますが、諸事情により本籍は事務職員として身分を残しております。また、渉外用の名称としては教員の身分もあわせて持っておりますので、URA、事務職員、教員の3つの身分を持って活動しているという、少し変わった立場で仕事をしています。

山口大学におけるURA組織の位置付け・構成

図1は山口大学におけるURA組織の位置付けです。研究担当理事のもとに大学研究推進機構という研究支援を目的とした全学組織が置かれています。このなかに、知的財産センターや産学公連携センターと並ぶかたちで、研究推進戦略部URA室が設置されています。

図2はURA組織の構成です。URA室は2部門制を取っております。URAが所属するURA部門と、URA支援事務部門があり、これらが適宜必要なチーム形成をして業務にあたっています。

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図1
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図2

URA支援事務部門の設置目的

URA支援事務部門は、基本的には半分事務職、半分URAというようなイメージです。皆さんご存じのように、大学の事務職員というのは2~3年で定期的な異動があります。ジェネラリストとして様々な経験を積むためにそういった形態になっています。ところが、近年、業務が多様化・高度化しまして、専門性の高い業務が発生してきました。このような背景で、専門性の高い事務職員を育成し、組織として事務処理に関するノウハウをきちんと継承できるような環境を整える必要があるということで、URA室を設置する時にあわせて設置した部署になります。

山口大学URAのキャリアパス

URA支援事務部門では、基本的には一般事務職員やポスドクなどを対象に公募をかけ、将来URAに移行するということを前提にして、事務的な業務をベースにURAと一緒に活動して、URA業務についての適性を見定めていきます(図3)。

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図3

大学として、この人はURAとしてきちんと適性があるかということを見ていきますが、同時に本人にとっても、URA関係の業務が自分に合っているかどうかを確かめることができます。本人が実際にやってみて、もし自分に合わないと思えば、通常の事務職員に戻れるという制度になっていまして、これである意味、業務上のミスマッチを防ぐことができます。

また、元研究者や企業出身のURAにとっては、大学特有の管理業務、例えば制度や手続きの面でURA支援事務のサポートを受けることができ、そのような管理業務のノウハウについても学ぶことができるということで、個人的にはなかなかよい制度ではないかと思っています。

次に、一般のURAも含めたキャリアパスの概要をご紹介します(図4)。

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図4

先ほどもご説明しましたが、事務職員やポスドクは一度URA支援事務部門で活動を行い、URA部門に異動していきます。元大学の研究者や企業出身の方については、URAとしてそのまま採用して、職階が上がるとともに将来的には副学長までのキャリアアップが想定されています。

URAの雇用形態については、当初は任期付きの契約専門職員として 事務職寄りの第三職として採用されますが、後にテニュア審査を行って、支援系教育職員という教員型のURAとして無任期雇用になることになっています。

山口大学URAの配置状況

山口大学の場合、図5のように大きく3つに分かれたキャンパスに分散してURAが配置されています。活動内容に応じて、適宜地区を跨いでチーム形成して業務にあたっています。

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図5

URA室の業務

URAの業務内容については、プロジェクト支援を中心に、資金獲得や分析、広報活動など幅広く対応することになっています(図6)。基本的には、各URAの専門に応じた活動を行うことになっていますが、実際には現場の要請を受けて何でもやっているというのが実情です。

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図6

例えばある研究者の支援をするというだけでも、シーズ発掘から育成、独自権利化から資金獲得、広報活動に共同研究と、多様な業務に対応しなければなりません。このうち共同研究ひとつを切り出してみても、実際になかでやっていることは、図6のように様々なことがあるわけで、1人で対応するというのは非常に難しいと感じています。

それから、近年、大学改革を進めていかなければならないということで、企業的な視点や経営手法を活用するといった大学経営に関する事項についてもURAが関わっています。これは、特に企業出身のURAの方の優位性のひとつであると思っています。

山口大学におけるURA人材育成の現状

こうした多様な業務に対応するために、山口大学でどのような能力開発や人材育成を行っているのかをご紹介します。
まず、学内の大学院講義などによる知財等の知識の習得、それから、外部開催のセミナー等の活用というような既存の講座を活用しています。この部分の設計については特別なコストはかけてはおりません。その内容についても研究支援活動を行うために必要な汎用的なものに留まってはいますが、このような基礎的な事項というのは全員が習得する必要があると思います。
特にURAとして着任された直後というのは、URA活動というよりは研究支援活動全体を俯瞰しておく必要がありますので、個人的にはJSTの目利き人材育成研修などは知識の習得に加えてロールプレイで経験もでき、人脈もつくれるのでお勧めです。

それから、体系化したものではありませんが、最も機能しているのはOJTと考えています。山口大学では、案件に応じてチームを形成して仕事をしていますが、異なる専門やバックグラウンドを持つURAと一緒に働く、また場合によっては、知財のスタッフやコーディネーターと一緒に仕事をするということが、知識だけでなく自分自身の仕事に対する視野を広げるという意味で重要なことと思っています。

このように、山口大学でのURAの人材育成は、基本的な事項にはある程度対応できるように考えていますが、各URAの特性に合わせて、足りないものを補ったり、専門的なことを掘り下げていったりという部分については、体系的に対応できていないことが課題と感じています。

人材育成に関する私見

人材育成に関する私見ですが、これまでのURA関係の活動を通じ、必要になる素養ないしは能力的なものが三つあると考えております(図7)。

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図7

一つ目は、アカデミックな観点で研究者コミュニティの理解など、研究者的な素養が必要かと思います。二つ目は、共同研究等を通じて技術移転して社会に成果を還元していくという場合には企業的な素養も必要だと考えています。三つ目は、大学という特殊な環境下でこれらを円滑に進めていく、場合によっては大学の仕組みそのものを変えていこうという場合には、事務職的な素養が必要になると考えています。これに加えて、基本的なことではありますが、多様な関係者と一緒に仕事していくために必要な社会人基礎力というものも当然あるべきだと思っています。また、幅広な業務に対応するために、自分でできないこともきちんと別の方につないでいく必要があり、このためには人的なネットワークが重要になると考えています。

これをすべて兼ね備えて対応できる方というのが世の中にはいらっしゃるとは思いますが、おそらく非常に限られていると思います。したがって、組織としてはチーム形成をして、お互いの不足部分を相互補完しながら活動していくことが必要と考えています。
人材育成とは、できなかったことをきちんとできるようにするためのツールだと私は考えており、現在の組織方針やチームの人員構成のなかで、自分は何ができるのか、何ができないのかをきちんと把握し、そのなかで、自身の特徴や強みを見出していくことが重要です。われわれの組織でいうと、チーム制での実務を通じて、自分自身に足りない素養について把握して、チームメンバーからきちんと教わっていくということを今後仕組み化していくことが必要であろうと考えています。

構造的な課題と対応

RA協議会でも毎年こうした人材育成に関するセッションが行われていますが、全国的にURA育成に関する方法論がなかなか確立できていないのが実情かなと感じています。これを踏まえて、最後に私個人が感じている課題についてお示ししたいと思います。

まず一つ目が、組織の方針の問題です。文科省のURA事業でも三つのタイプで公募がかけられるほどURAの活動範囲というのは広いです。URAの業務内容や必要な能力については、所属組織の方針によるところが大きいと考えています。このため、所属機関が異なった場合には、そもそもミッションが異なりますので、必要とされる能力というのも当然異なります。したがって、もちろんスキル標準などもありますが、複数機関でURAの将来像を議論するときには、それぞれの機関でイメージしているURA像が異なるので、なかなか話が噛み合わないということがあるのかなと思っています。
また、同じ組織であっても、上司が交代することにより仕事の方針が変わることもあるので、経年によってその活動内容や必要とされる能力は変化していくということも考えなければなりません。このような多様性や経年変化について、うまくバランスが取れるようなモデルをつくるのが課題ではないかと思います。

それから、二つ目は任期の問題です。URAは当初は有期雇用ということで採用されるケースが多いです。しかし、お金と時間をかけて育成しても他大学に流出されるということになれば、出て行かれた大学の立場としてはどうなのかということがあります。URAについては流動性によるキャリアアップという話もありますが、組織の単位で見れば、そもそも有期雇用者に対してどれだけの投資をするのかという問題があります。
有期雇用のURAは、多くの方は将来的には無期雇用に転換することを希望されていると思いますが、例えばその組織のなかで無期雇用のポストが限られていた場合には、他のURAとポストの取り合いの構図になってしまうというのが問題としてあると思います。山口大学でも、OJTでチーム形成して業務にあたっていますが、自分自身の評価のベースになるような業務ノウハウを、どれだけ競合相手に開示するのかという問題が出てきます。

こうした課題に対する明確な答えは持ち合わせてはいませんが、一つの手段として評価によるコントロールは検討しなければならないと思っています。キャリアアップも無任期化も、ある意味評価の結果です。URA業務の多様性を適切に評価して、各URAが長期スパンで本当に必要な能力開発をするような後押しをする、URAが協働する環境を組織としてコントロールしてつくっていくということが重要ではないかと感じています。

図表は藤村氏講演スライドより抜粋

講演3「URA組織における人材育成 <関西大学の事例>」

  舘 正一 氏
Yakata
関西大学 学長室 リサーチ・コーディネーター(イベント・コーディネーター/サイエンス・コミュニケーター)
≪プロフィール≫
1973年生まれ。学生時代にデザイン会社を起業。その後、大手広告代理店にて広報・広告の企画に従事。2016年より関西大学学長室リサーチ・コーディネーター(イベント・コーディネーター/サイエンス・コミュニケーター)着任。文科省私立大学ブランディング事業においてブランディングの戦略立案、ディレクションに携わる。研究広報という視点で大学広報、研究戦略の業務全般に従事。
はじめに

皆さん、こんにちは。関西大学の舘と申します。本日は、マネジメントする側ではなく、される側の立場でお話しさせていただきます。後半は「こうやってもらわんと困りまっせ」というお話をしたいと思っています。

関西大学のURAシステム

まず、関西大学のURAシステムについてご紹介します(図1)。

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図1

私は学長室URAという立場にいます。学長のそばにいるというかたちにはなっていますが、実際には研究推進部研究支援課に席があり、研究支援グループの事務の方々と一緒にデスクを並べています。ですので、科研費やその他の外部資金申請業務をやっているURAと事務職員のエリアにいます。URAだけエリアが独立しているということはありません。それから、産学連携という部分でいうと、コーディネーターの方もいらっしゃいます。関西大学では、平成24年度からURA体制を導入しています。研究大学強化促進事業は不採択でしたが、学内予算で組織化しました。偉いなと思います。さらに、私立大学唯一のRA協議会組織会員です。かっこいいですね。

関西大学URAの業務

次に、URAの業務について図2で説明させていただきます。

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図2

「外部資金申請支援者」ですが、これは職員と一緒に行っています。「プロジェクト運営支援者」は外部資金等に採択された後、各研究プロジェクトの特性に応じた運営支援を担っています。「学術研究支援者」は先生の研究室に入ってサポートするというような研究室にコミットしている業務です。「産学官・知財マネージャー」は社会連携における事業支援や管理などを行っています。「研究環境マネージャー」は機材の管理などを行っています。「成果公開促進担当者」はいわゆる研究広報の仕事で、私はこちらを担当しています。公的資金で行った結果をすべて見える化しています。

関西大学URAメンバー

関西大学のURAは現在9名です。シニアのURAとそれ以外に分かれます。そのなかに、研究広報URAは4名います。9名のうち4名が広報業務なので大きな勢力となっています。先ほどお話ししましたようにURAと研究支援の事務スタッフは一緒に業務を行っており、事務スタッフにもURA業務と同じようなことを行っている人材が多くいます。広報業務のような専門性の高い仕事をURAが行っているためURAと名の付く専門職が多いからだと思います。職員では対応しきれない学内のニーズに対応するスタッフをURAと呼び、職業名としてはとても便利なのかもしれません。

雇用形態についてですが、5年間の嘱託契約です。我々は事務職員という立場です。第三というような言い方をしていますが、実際には職員という扱いになっています。

プロフィール

私のプロフィールについてお話しさせていただきます。私は元広告屋です。高校卒業後、大学を出ずにそのまま社会に出ているのですが、映像制作やウェブ制作、シャープやパナソニックの仕事を二十歳前後からやっていました。食えない時期もあり、もう本当に波がある生活を送っていました。

それから、電通にしばらくいた時期がありました。例えば「コンビニエンスストアのお弁当がどうしたら売れるか」ということで、株式会社ポケモンに行って、「セブンイレブンさんがこんなことをやっているんですけど、ポケモンさん今度キャラクター出してくれませんか」というような交渉をずっとやっていました。これは本当に怒濤の世界でした。マス広告の消耗戦で楽しくない期間でした。しかし、多くの仕事をこなす経験値はつけさせてもらいました。たいへん感謝しています。

その後、「ソーシャルビジネスの立上げ」や、「まちおこし」などをたくさん経験しました。その時に、大阪大学の浅田稔先生がお持ちのNPO法人に呼ばれて、レオナルド・ダ・ヴィンチアンドロイドをつくりました。これには学際的な教育を子どもたちに向けて発信したいという意図がありました。このようなプロモーションをやり始めたのが、大学の研究との関わりのきっかけです。
そして、関西大学のURAの声がかかり、関西大学学長室URAに着任しました。私の得意なことは、広告的視点でのブランディング戦略とプロモーションの企画・戦略・実行です。

関西大学ブランディング戦略

では、大学で何をやっているのかというと、「私立大学研究ブランディング事業」に関わっています。平成28年度と29年度に、関西大学は私立大学研究ブランディング事業に選定されました(図3)。

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図3

これは研究とプロモーションをセットで進めて、大学の機能強化を促進する事業です。この計画書作成や設計を先生たちと一緒に行いました。

私は元広告屋ですが、プランニングの仕事もやっていましたので、どのような研究戦略を立てていけば大学にプラスになるかということを、先生たちと一緒に組み立てていきました。研究戦略の組み立てサポートですね。私が絵を描くわけではなくて、先生がわーっと絵面事を語られたことを見える化していく作業です(図4)。

また、それを学内に落とし込むことが重要になります。ブランディング事業は学長がリーダーということになっています。すなわち、大学全体としてやる事業ですので、そこにはいろんなプレーヤーが存在します。そこの学内調整や情報共有活動を行っていました(図5)。

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図4
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図5

それから、どこまで、何人の人に、研究が認知されるとよいのかという設計も必要でしたので、そのあたりのKPI化も行いました(図6)。

そして、イベントやウェブ、映像や紙など様々なものに落とし込んでいきます。プロモーションの企画や制作指示といったことは、私自身、経験もたくさんあるので、イベントを企画したり、チラシやウェブつくったりなど、今もずっと続けています(図7)。

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図6
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図7

関西大学の人材育成の取り組み

関西大学は人材育成に関してはOJTのみです。何もプログラム化されていませんし、キャリアデザインの設計もされていません。できていることといえば、OJTを通じた専門知識の学習です。それから、専任職員向け研修や学外研修の活用です。今回のRA協議会や関西RA交流会などもそうです。関西RA交流会とは、大阪大学、京都大学、神戸大学、奈良先端大学、関西大学で行っている情報交換会のことです。勉強会も含めてやっていますが、個人的に皆さんとつながることができて、たくさんのことを学ばせていただいています。他には、外部講師を招いての研修も実施しています。この研修の多くはわれわれが企画していて、先日はオープンデータ、オープンサイエンスの研修を行いました。

課題点ですが、ニーズへの対応が業務化され、戦略的な業務構築がされていないことです。研究戦略による業務構築がないです。要するに、目的があって手段があるはずなのに、それがないということです。それから、不安定な雇用環境も課題のひとつです。基本的にURAは期限雇用です。異動が解決の手段といった渡り鳥のような状態です。また、研修プログラムの未整備という問題もあります。有能なURAを育て、受け入れるためには「現場で話を聞く」というようなことも必要かと思います。これはすべて私の個人的な意見です。また、私のようなアカデミア出身ではないURAもちらほらいらっしゃいます。そういう方々はスキル標準に該当しないのでどう評価するのかという問題もあります。それから、職位と業務担当の未整備という課題もあります。

最後に私がこうなってほしいなと思う点をお話しさせていただきます。多様な人材を確保するためには様々な方法があります。JREC-IN Portalだけでは十分ではありません。マイナビやリクナビのような一般的な求人活動も考えられます。JREC-IN Portalは偏った人しか見ませんので、探し方にもミスマッチが起こっているのではないかと思います。それから、パラレルワークとしてのURAも良いと思います。別にURAだけでなくても、他の業務や仕事をやっている人たちをどんどん受け入れてもよいのではないかということです。「他で社長をやっています、それからURAもやっています」というような人材ですね。それから、パーマネントか期限雇用か選択できる自由が欲しいです。選択できる環境が、多様な人材を集めるためには重要だと思います。また、雇用の話ではありませんが、お金の計算ができる人がもっと増えてほしいなと思います。コスト意識といいますか、見積書を読めない人が多い印象です。大学では言い値でやるということが多いです。根本的に予算消化型の流れですので、このあたりが課題ではないかと思います。その課題を解決するためには、マーケティング視点が重要だと思います。誰に向けてやっているのかという点が欠如していることを感じます。

図表は舘氏講演スライドより抜粋

講演4「URA組織における人材育成 <民間企業の視点>」

  藤原 明 氏
Fujiwara
りそな総合研究所 リーナルビジネス部長
≪プロフィール≫
りそな銀行営業サポート統括部(大阪)地域オフィサー・コーポレートビジネス部(大阪)アドバイザー。りそなホールディングスグループ戦略部アドバイザー・オムニチャネル戦略部アドバイザー。立命館大学大学院経営管理研究科客員教授。米国国務省IVLP(インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム)招聘。雑誌AERA「日本を突破する100人」に選出。
※REENAL=RESONA+REGIONAL

はじめに

皆さん、こんにちは。りそな総合研究所の藤原でございます。私は人材育成のプロフェッショナルでも何でもないのですが、本日は私たちが展開しているプロジェクトと人材育成を重ねて考えてみたいと思います。

REENALとは

りそなグループでは「REENAL(リーナル)」というプロジェクトを15年ほどやっています。これは「RESONA(りそな)」と「REGIONAL(地域の)」を組み合わせた、地域活性化プロジェクトです。単独でやるものではなく、様々なところとコラボレーション、協働していくというプロジェクトです。
何かあるところに乗っかるのではなく、協働者と「はじまりのはじまりをいっしょにつくる」ということで、最初のところからつくり上げるというモデルです。おそらくそのプロセスを通じて、私自身や関わった方々に対して人材育成機能も発揮しており、様々な分野や領域で、人材育成について、プロジェクトをケーススタディにしてお話しすることも多くなってきました。

先ほど、産学連携や地域連携のお話がありましたが、私もそういったことをたくさんやってきました(図1)。

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図1

例えば、FM放送局さんと連携してアートなキャッシュカードをつくったり、マイボトルやマイ水筒を、ボトルメーカーさんが手掛ける前にクリエイターさんと仕掛けたりもしました。それから、ペットボトルをリサイクルして繊維に再生し、それでTシャツをつくって販売していただくなど、環境意識活動も行いました。また、チャリティ寄席の開催など古典芸能を盛り上げる活動を行ったり、通帳ケースをつくって通販会社で売ってもらったりもしました。他にも、オリジナル清酒醸造による商店街の活性化活動にも取り組んできました。そういった様々な活動が目に留まって、現在は自治体さんとの連携もたくさんやっています。

転換点1:銀行を変えたい!

ここからは、私の転換点についてお話ししたいと思います。まず、私の考え方のベースにあるのは、「銀行を変えたい!」という想いです。これをライフワークにしています。

転換点2:りそなショック

2003年に、われわれはりそなショックを経験しました。このりそなショックを契機に始まったのが、先ほどのREENALプロジェクトです。
りそなショックの後、「新しい銀行像を創ろう!」という方が経営トップになりました。私はもともと銀行を変えたいと思っていましたが、このような経営者が現れなかったら、先ほどのプロジェクトを実現できていなかったかもしれません。この方が口酸っぱく言っていたことが、「自ら考え、自ら行動せよ」ということです。他律・依存ではなくて、「自律・自立せよ」ということをおっしゃっていました。

転換点3:500を超えるケーススタディ

私は「自律・自立せよ」という言葉を正面からまともに受け止めて、先ほどのようなプロジェクトを始めて、500を超えるケーススタディを積み上げることができました。多くの事例をかたちにすることでわかったことは、「協働」というのはすごいということです。それぞれの強みで足りないところを補い合うということはものすごい力を発揮するということに気付きました。
ですが、銀行らしくないことをどんどんやっていたので、社内では「ちゃんと儲かっているのか」というような評価もありました。それを回避するために、いろいろと工夫をしてきました。

転換点4:悪戦苦闘モデルの展開

まずは、予算ゼロ宣言をしました。もともと予算は結構ついていたのですが、その予算をゼロにして、なんとかプロジェクトを存続させました。さらに、プロジェクト自身で利益を生んでいるのかという指摘に対しては、手法の体系化によって、マネタイズできるようになったことで対応できました。
このように、制約のなかでの仮説・検証、理論と実践の行き来をしています。本日も他流試合だと思っているのですけれども、こういった実践のなかで常に体系化されたものをアップデートさせていただいております。このように悪戦苦闘してモデルができあがりました(図2)。

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図2

どんどんいろんなものがつながっていくので、「わらしべ長者的展開」とよく言われています。協働のケーススタディをたくさん積み上げ、その手法を体系化し、それを日々試し続けています。この循環があったからこそ、図2のようなモデルができて、様々なセクターの方々にもご利用いただいております。

また、グループの社内ベンチャーのような位置づけで、りそな総合研究所の中にも「リーナルビジネス部」という独立部ができています。

転換点5:注目した二つの要素「やるべきこと×強み」

われわれが注目したのは、「やるべきこと」と「強み」の二つの要素です。成功したモデルを因数分解すると、必ずこの「やるべきこと」と「強み」に分けられるようです。この二つを明確化させることで、様々な「化学反応」を起こせるということがわかってきました。

この「やるべきこと」と「強み」を図にしたものが図3です。

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図3

多様な方々に集まっていただき、テーマごとのやるべきことを明確化するということを行っています。2時間×4回ぐらいのワークショップのなかで、様々な強みを持ち寄って、事業案の卵をつくるということをやっています。限られた時間のなかで、多様な意見をまとめることができるというやり方が広がり、たくさんの分野で使っていただいています。ワークショップで明らかになったやるべきことを実現させるために、様々なセクターの強みとマッチングさせます。こういったかたちで新しい価値をつくれるということがわれわれのやり方の特徴です。

では、「やるべきこと」とはいったい何でしょうか。シンプルに図解すると図4のようになります。理想と現実を比較すると、そのギャップである課題が見えてきます。その課題に対して、今までの取り組みを徹底的に振り返って、何が足りていないのか、すなわち、限界点や阻害要因、工夫のいるところなどをみんなで議論していきます。そうすると、だんだんピントが合ってきて、「やるべきこと」が明らかになります。これは非常に当たり前のことですが、経営者の方や様々なセクターの組織のなかでも、この「やるべきこと」が明確になっているところは非常に少ないと感じています。

先ほどのプロセスを丁寧にたどることによって「やるべきこと」が明確化された次は、「強み」をぶつけていきます。われわれは「強み」を把握するために、三つの質問を設定しています(図5)。「原点」、「成功談と成功の秘訣」、「苦労談と克服の秘訣」といった三つの転換点におけるエピソードとその秘訣を探ることで、強みを把握し続けています。

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図4
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図5

やるべきことが明確になると、様々な強みや機能、支援メニューなどが勝手に集まってくるということをわれわれは体験しております。いろんなものがどんどんつながっていく「わらしべ長者的展開」とは、こういうことかなと理解しています。

体系化された手法の活用

では、この手法をどのようなところで活用しているのかということについてお話しします。まず、われわれが一番はじめに取り組んだのは、地域のコミュニティ支援でした(図6)。地域連携をされている方は実感していただけるかと思うのですが、地域コミュニティの意見集約は非常に難易度が高いです。この手法の特徴は、多様な方々が集まるなかで、その方々に地域課題を明確にしてもらい、事業案の卵までつくることができるということです。非常にシンプルなかたちでできるというのが、われわれの強みでもあります。

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図6

限られた時間のなかで地域の方々が自分たちでテーマを決めて、複数ある課題をひとつに絞ります。そして、これまでの取り組みを振り返りながら、裏付けの数字も付けて、やるべきことを明確にするということを行っています。そして、そのやるべきことをみんなで共有できた瞬間に、様々な方々に呼びかけて強みを集めてきます。事業案の卵ということで、それを実現したいという方々に手渡すことで新しい価値をつくっていただけます。この体系化された手法が広がり、大阪市や東大阪市など大阪府下市町村で、さらに埼玉県・愛媛県など全国へと展開しています。体系化ができたということがわれわれの強みとなり、広がっていきました。

また、このやり方を企業でも実践しました。経営者あるいは組織、創業者の方々の支援です。やり方は、先ほどの地域コミュニティ支援とまったく同じです。地域コミュニティ支援と一部上場企業の中期経営計画のベースの作成を、まったく同じやり方でやっているということです。
まず、テーマを決めて、やるべきことを見出していきます。その間にトップが考えていることと現場レベルの意見の集約をすり合わせることによって落ち着きどころを見出していきます。すなわちトップダウンとボトムアップの止揚を図ります。やるべきことが明らかになれば、それを実現するために、社内外のリソースをすべてぶつけていきながら新しい価値をつくっていきます。これができると、多様な人材の力も活用できますし、新しい共有価値も創造できるということです。

りそなグループにおける展開

先ほどの手法は様々なセクターで使っていただいていますが、銀行業務のなかでも、法人のヒアリングやインタビューに使っています。先ほどの強みを引き出す三つの転換点と同じ質問を経営者や主要人物に聞いていくと、その会社の強みが明確にわかります(図7)。

それから、最も気になっているテーマについて、あるべき姿、現状、課題、課題に対する取り組み、やるべきことを明確化するということも行っています(図8)。
このインタビューは約4,000社やっていまして、それをデータベースとして分類もしています。そうすると、今、企業さんがどんな強みがあり、どんなことを悩んでいるのかが明確になるので、このデータベースを使って、マッチングや企画策定のヒントにするなど、様々な取り組みに活用し始めているところです。

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図7
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図8

それから、やるべきことと強みの分類を集約するということも行っています。図9は、インタビューを実施した3,342社について集約したものです。

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図9

今、話題になっているような課題や、どんなところが強みなのかということが見えてきます。やるべきことについては、人材や総務関係といったところは42.3%もあり、やはりどの企業でも相当悩まれておられます。それから、強みについても対応力や社長力、人材といったところが出てきていますが、意外と個々の力に頼っているという印象です。日本は、99.7%を中小企業が占めていますが、個人の力に頼っているところが多いんだなと感じました。すなわち、様々な知見やノウハウというようなことを体系化できていないというところがポイントです。そういう意味で、仕組み化やシステム化が今、非常に求められています。ITやAI活用が声高に言われていますが、その前提として、そういった仕組み化の業務プロセスがいるのではないかという課題認識がインタビューを通じた実態把握によって持つことができました。

企業に求められている人材戦略

では最後に、企業に求められている人材戦略についてお話しさせていただきます。問題として、表面的に人材が不足しているということは今よく言われています。ところが、これを少し深掘りしますと、先ほど言いましたように、仕組み化や働き方改革、人材育成などそれぞれの企業によって課題は少し違ってきます。では、もっと深い本質的な課題、すなわち、やるべきこととは何なのかということですが、やはり人材戦略の総合プロデュースが必要なのではないかと感じています(図10)。

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図10

人材が不足している、人材が定着しないということがよく言われていますが、これを課題と捉えてイノベーションを起こしていくということが求められています。仕組み化や働き方改革、人材育成などにおいて、様々な支援制度がありますが、それらの課題の奥底にある本質的課題に対して求められている支援メニューが意外とありません。例えば仕組み化ですと、AIやIoTを導入する前の業務のプロセス化や棚卸というところに意外と支援がなかったりします。働き方改革ですと、福利厚生や年金制度、人事制度などが実効性を発揮するためにはどのように支援していったらよいのかということになります。それから、本日のテーマである人材育成についてですが、いかに他律・依存ではなく、自律・自立できる経営者の視点を持った人材を育てるか、ということが重要だと考えます。すなわち、仮説・検証の繰り返し、理論と実践の行き来によって自身のスタイルを確立できる場を与え、いかにそれを自分なりに意識させるかということが必要になります。

以上のようなことを人材戦略として総合的にプロデュースするということが、今求められているのではないかと思っています。シンプルに言うと、業務を作業ではなく、仕事としてそれを意識でき、深掘りできる人間を実践で育成するということです。人材戦略のパラダイムシフトと図10には書きましたが、机上で学ぶということではなくて、プロジェクトなどを通じて、実際にそれで儲けてみろ、というようなことが、その人にとっての意味のあるキャリアを積むことになると思います。それは経営者の目線を育てることにもつながり、イノベーションを起こしていくということにもつながるのではないかというように思っています。

今、私は社内では5部署兼務しており、様々な組織で活躍の場をいただいていますが、すべての機会が、そういった自分自身の育成の場になっているので、そういったことの実証ができているのではないかと考えています。

図表は藤原氏講演スライドより抜粋

全体討論

高野:いろんなキャラクターを持っておられる4名の講師の方にご登壇いただき、それぞれの観点でお話しいただきました。本日はURAの人材育成ということですが、先ほどの藤原さんのお話をURAに置き換えてみるとどうなるのかなと思って聞いていると、非常に興味深いお話であったというように思いました。

簡単ですが、本日の論点を書いてみました(図1)。

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図1

一番下は、最初にもご紹介させていただきました藤原さんの言葉にある「自ら考え自ら行動する人材の増加」で、これが非常に大事だと考えています。そのような人材が増えると、「現状に留まらず、深化し続ける組織」になるのだと思います。これは、URAの組織もまったく同じことが言えるのではないかと考えています。こうなるためにはどのようなことが必要なのかをしっかり考えていくことが重要だと思います。
そして、この左上の「URAの役割・必要な能力」のところは、関西大学さん、福井大学さんのスライドから借用しました。
それから、その下の「URAの制度(雇用・キャリアパス)」については、福井大学さんと大阪大学の例を載せています。考え方は大学によって様々だとは思いますが、やはり経営的なマインドを持った人材がURAにも必要だということは間違いないと思います。では、そういった時に、どんな能力開発方法があるのだろうかということを、まず考えてみたいと思います。

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「能力開発方法(人材育成)」については、右上に本日お話ししていただいた資料をいくつか切り出してきました。SD研修や大学院課程で人材育成について学んでいらっしゃったり、学外研修やセミナー等を活用されていたり、OJTを通じて専門知識を獲得されていたりなど、様々なお話がありました。

まず、図1の①の点線でくくった観点で議論を進めたいと思います。他の大学もしくは他の機関や企業がこんなことをやっているよということをお聞きになられて、ご自身の大学などと比較してどのような感想を持たれたのか、4名の講師の方に伺いたいと思います。

山口:りそな総合研究所の藤原さんのご講演のなかで、やはりそうかと思ったことは、あるべき姿を定めるというところと、そこから導き出されるやるべきことというのが大事だということです。
ただ、大学の場合、あるべき姿というのが非常に難しいです。大学も一応、戦略や理念はあるのですが、「教育」「研究」「社会貢献」というように網羅的で非常に漠然としています。そのなかで、われわれのような研究支援者のあるべき姿を考えようとしたときに、大学という組織がとても複雑階層になっていて、経営者レベルと現場レベルでの価値観が異なるので、統一されたあるべき姿を導き出すことはなかなか難しいという点があります。そのあたりについて、藤原さんは立命館大学の客員教授もされていらっしゃるので、何かご助言をいただけますか。

藤原:あるべき姿というのは、大学に限らず企業のなかでも結構多様な考え方があります。先ほど経営者が代わればというようなお話もありましたが、ただ、やはり企業文化のようなものは大学にもおそらくあるのではないかと思っています。そして、そのなかで、多様な意見を持つ方々が議論する場があるのかないのかということに、私はすごく興味があります。われわれの仕掛けというのは、そういう多様な意見を持つ方々が議論する場をつくっていきましょうというもので、それをやっていくと、意外と企業理念や企業文化に則した着地点を見出すことができる「止揚」ができるのではないかと思っています。
それから、私は立命館大学のビジネススクールで講義を持たせていただいています。そこでは、りそなショックを契機に生まれた「変な」人材3類型というようなことを教えています。私も含めてあと2名いて、プロデュース型、コーディネート型、オーガナイズド型があります。その3類型がなぜ生まれてきたのかというと、その3人は皆、経営者目線を持ってずっとやっていたからです。講義ではこの3類型の創造人材にゲストスピーカーとして話していただき、チームに分かれてぞれぞれの創造人材のスタイルを読み解いていただき、創造人材とはどのような人材で、どうすれば自身を創造人材化できるのか、創造人材を輩出する組織デザインとはどのようなものか、ということを考えてもらっています。

藤村:舘さんのご講演のなかで、関西RA交流会というお話がありましたが、いいなと思いながら聞いていました。そのときにふと思い出したのが、実は数年前に、徳島大学の角村さんのお声掛けで、九州・山口地区で産学連携実務者交流会というものをやりました。
当初は10人ほどの規模で、同じような業務を担当している人が、相互に悩みを共有したり解決法をシェアしたりできたらというぐらいの感覚で公募されたのですが、実際には40~50人ほど集まりました。大学の関係者も事務だけではなくコーディネーターの方も参加されていたり、JSTの方も唐突に参加されたりという規模になっていました。やはり同じような職種で同じ業務を担当している人にとっては、その業務のノウハウや悩みについて、相談したり解決したりできる場というのは、一定のニーズがあるのかなと思いました。
それをひとつの大学のなかだけでやっても、そもそも同じ仕事をしている担当者の絶対数が違うわけですから、そういう意味では、ひとつの大学のなかだけで研修をやって完結する必要はなく、多機関でそのようなことをやっていくというのはひとつの選択肢になるのかなというふうに考えました。

高野:角村さんの話題が出ましたが、角村さん、なぜ成功したかのというようなお話をいただけますか。突然すみません。

角村(徳島大学):おそらく需要があったからだと思います。ですが、産学連携実務者交流会をやったときのコメントとして、継承がすごく難しいなと思いました。私自身が業務上わからないことがあって、人に聞こうと思ったのがきっかけでやったのですが、うまくネットワークに乗って40~50人集まりました。ですが、その次を誰がするのかというところがなかなか決まりませんでした。このように個人では継承が難しいから組織的にやるのだなと思いました。そのあとは結局、1回きりで終わってしまいまして、残念でした。

舘:今、RA交流会やURA同士の交流の話になりましたが、継承の話もやはりそれぞれの個人のパッションにすごく差があると思います。興味を持って質問をする人としない人、そもそもそこに参加する人としない人の差というのはすごくあると思います。それは仕事への取り組みや人生観がそのまま反映されてしまうので、それに対してこうあるべきだと言う気はありませんが、URAという職種は試行錯誤の段階で、まだまだ確立されていないところがあるので、パッションのある人同士のコミュニティはとても大事だとは思います。

藤原:大学の場合は学術研究機関になりますので、学術や研究の場がたくさんあって、自分が今欲している知見などが学べる機会があるという点は羨ましいなと思いました。
それから、先ほどの舘さんのパッションの話ですが、そこをどう引き出すのかというところが人材育成なのかなと思っています。

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私も人から教えていただいたのですが、人材育成を考えるうえで、啐啄(そったく)の機をどれほどつくることができのるかが大事であると言われました。要するに、雛が卵からかえろうとするときに、雛が内からつつき、母鳥が外からつつき合って、タイミングが合ったときに殻が割れるというような、そんな瞬間をいくつつくれるかということが、気付きを与えるということだとよく言われました。答えを言うのではなく、その気付きを与えることがパッションにつながるのではないかと思いました。

高野:ありがとうございます。二つ目の観点に移る前に、ご参加いただいている皆さんの方からコメントや、もしくは講師の方々に対する質問など何かありますでしょうか。

参加者A:貴重なお話ありがとうございます。私はJSTの知財部で仕事をしております。本日お話を伺って、各大学の環境はそれぞれだと思いますが、皆さん人材育成に意外と時間を割いていらっしゃるんだなと思いました。JSTでの人材育成ですが、先ほど藤村さんのご講演で少し話題に出た目利き研修や、昨年度からは、TLO(Technology Licensing Organization / 技術移転機関)さんでOJT形式の研修をしてもらっています。ところが、なかなか大学のニーズと合わない部分もあり、そこをなんとかしたいと思って、本日この機会に参加いたしました。そのような印象を持ったので、引き続き様々なご意見をいただきながら考えていきたいなと思っております。ありがとうございます。

高野:ありがとうございます。今のご意見に対して、何かありますか。

舘:人材育成研修について、皆さんそれぞれご紹介されていましたが、関西大学にはそのようなものはないというお話をしました。ですが、「うちの大学には人材育成研修はありません」ということは駄目なことではないと考えています。先ほど交流のお話がありましたが、共通した課題を持っているという点は確かにあるので、それを皆で学ぶ場が欲しいです。今もすでにありますけど、さらに欲しいなと感じました。
それから、本日の皆さんのお話には出てきませんでしたが、学内の先生方、研究者の方々とのコミュニケーションのなかで学ぶことというのはものすごくあるなと感じています。その世界で極めようとされている方々との接点というのはとても重要で、先生方から学ぶことは大いにあります。先生方は世間に出ておられますし、職員よりよっぽど外に出ておられるので、お金のこともよくわかっていらっしゃいます。どうやったら叩かれるのか、どうやったら称えられるのかということをよくわかっていらっしゃるので、先生方とのつながりを、もっともっとつくれたらなと思います。個人的には、先生方とやりとりをするのは楽しいという印象を持っているので、そういうものも学内のリソースとしてはあるのではないかと思いました。

参加者B:北海道大学の研究支援課の者です。山口大学の藤村さんにお聞きしたいことがありまして、手を挙げさせていただきました。URAの資格や認定というお話があったので気になっていたのですが、URA支援事務部門からURA部門に移られる方がいらっしゃるとのことでしたが、そこに認定や資格などそういったものがあるのでしょうか。それから、事務職とURA職、そして教員職という身分も持っていらっしゃるというお話をされていましたが、給与体系というのは行政職の俸給なのか、もし差し支えなければ教えていただきたいです。

藤村:私自身が学内の事務職からURA部門のURA職に移って活動している第1号になりますが、まず、移行するときの評価については、実績がベースになっています。URA支援事務部門で数年間活動している実績があるので、そこを見ていただいて、URAに移行することになりました。

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給与体系の話ですが、先ほどご説明したとおり、事務系のURA職というのは独自のものが設計してあります。また、最終的には教員出身であれ、中途採用であれ、われわれのような支援事務から移行した者であれ、支援系教育職員という無任期URAの受け皿を作ってありますので、そこに統合して差をなくすという設計になっております。
しかしながら、現在、別の制度設計の関係により、私自身については事務職員の給与をベースに特別手当の支給というかたちで差額調整してもらっています。なお、勤務形態は一般のURAと同様、裁量労働制となっています。

高野:時間がなくなってまいりましたので、まとめさせていただきたいと思います。本日いろんな方のお話や討論をお伺いして思ったことは、ひとつは、藤原さんがおっしゃった経営人材、経営者的マインドを持ったURAというのが非常に大事だということです。もうひとつは、ではどうやってそのような人材を育成するのかという観点ですが、本日皆様からご紹介いただいた様々な研修制度を使っていくというのは、それはそれで必要だとは思いました。一方で、先ほど徳島大学の角村さんのお話にあったようなネットワークや、関西RA交流会のようなURA同士で刺激し合う、学び合う場が大事だと思います。舘さんはパッションとおっしゃっていましたが、そこは高いパッションを持って学び合う場だと思います。そのような場をうまくつくっていく、そこを活用するということが能力開発のひとつの肝ではないかなと、本日の講師の方々のお話をお聞きして思いました。
そういう意味でいうと、本日ここに集まっていることは、その場のひとつというわけですよね。ですので、ぜひこのような場もうまく利用しながら、われわれ自身、人材を育成する側とされる側、両方ありますが、しっかりとスキルアップを図っていきたいと思っています。
以上で終わらせていただきますけれども、最後に4名の講師の方に拍手で締めたいと思います。どうもありがとうございました。


2018年12月28日(金) 更新
ページ担当者:経営企画オフィス 北室