大阪大学 経営企画オフィス URA部門

大学のこれからを考える

Policy Seminar

RA協議会第5回年次大会
URAが生み出す価値とは

2019年9月 4日(水)【講演録公開】
URAが生み出す価値とは
開催概要

リサーチ・アドミニストレーター協議会(RA協議会)の第5回年次大会(http://www.rman.jp/meetings2019/)において、大阪大学は「URAが生み出す価値とは」というセッションを企画・運営しました。


■開催日:2019年9月4日(水)
■場所:電気通信大学
■セッションオーガナイザー:
 高野 誠(大阪大学 経営企画オフィス シニア・リサーチ・マネージャー)
 尾瀬 彩子(同 リサーチ・アドミニストレーター)
 モリソン アンドリュー(同 リサーチ・アドミニストレーター)
■講演者:
 杉原 伸宏(信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 学術研究支援本部長/学長補佐・教授)
 小左古 学(広島大学 学術室 研究企画室 室長(併)高度専門職)
 岩井 善郎(福井大学 産学官連携本部 特命教授(前 研究担当理事))

■連携セッション:A-6 ポスト「研究大学強化促進事業」時代のURA組織運営(筑波大学)

登壇いただいた方々のお話と全体討論の概要を下記にまとめました。なお、本資料はRA協議会の協力を得て作成したものです。

セッションの趣旨

セッションオーガナイザー:
 高野 誠(大阪大学 経営企画オフィス シニア・リサーチ・マネージャー)

大阪大学の高野でございます。本日は、「URAが生み出す価値とは」というタイトルで皆さんと、ディスカッションさせていただきたいと思います。

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図1

セッション企画の背景ですが、一つは、URAはそもそも何のためにいるんだろう、どういう価値を提供しているんだろうということを改めて考えたいということです。
そしてもう一つは、我々を雇ってくれている方の期待にきちんと答えているのだろうかということを知っておきたいということ、また、我々自身が我々が提供する価値に気付いてない部分もあるのではないかということです。(図1)

このような話を、いろいろな場で、いろいろな人と議論することは重要ではないかと考えています。それが結果的には、我々の機能、我々が提供することやものの高度化にもつながっていくだろうと考えています。
そのときの視点として、我々を雇用している側と我々雇用されている側、こういう、少しドライな観点で割り切って、それぞれの立場で議論するということも意味があると考えました。

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図2

少し似た話題を扱う筑波大学さんのセッションが本日の午後にあります。「ポスト「研究大学強化推進事業」時代のURA組織連携」というセッションです。筑波大学さんに事前にお話を伺ったところ、両者のセッションには明確な違いがありました。この大阪大学のセッションではURAの機能を学内の方に提供するという観点でその価値を議論する、筑波大学さんのセッションはURAの機能を学外の方に提供するという観点で議論を進められる予定です。すなわち、両者のセッションはある意味で相補関係にあるということができます。ここで皆さんと議論させていただいて、その後、筑波大学さんのセッションにご参加頂くと、より深みのある議論ができると考えています。(図2)

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図3

URAのステークホルダーとして、執行部、事務組織、研究組織それぞれにおられる方を考える事ができます。ステークホルダーそれぞれに対して、我々は何らかの価値を提供しています。また、URAへの期待はそれぞれの立ち位置によって違うと思います。このように、我々はいろいろな立ち位置の方に価値を提供しなければいけない、期待に応えないといけないということを理解した上で議論することが大事だろうと考えます。(図3)

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今日は3名の講師の先生をお招きしています。
一人目は執行部の立場からで、福井大学の岩井先生です。第二回RA協議会年次大会は福井大学のお世話になりましたが、そのときの研究担当理事でいらっしゃいます。URAやRA協議会に対する深い理解と愛情をお持ちの先生です。元研究担当理事ということで現役時代には言えなかったようなこともお話しいただけるのではないかと期待しております。
二人目は信州大学の杉原先生です。すごく活躍されておられる先生で皆さんもよくご存じだと思います。URAの現場のトップとして大学の執行部と丁々発止のやりとりをされておられるとの噂も伺っております。
三人目は広島大学の小左古研究企画室長です。広島大学URAのボス的な存在の方で、事務組織のことも非常にお詳しいので、URAと事務組織双方の立場でのお話を伺うことができると思います。

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図4

URAの議論をする前に、URAとはどのような人なのかを少し議論したいと思います。大阪大学に花岡さんという結構かわった事務職員がおられます。その方は以前URAと一緒に仕事をされており、URAと事務職員は、こういう関係になるのがいいのではないかという持論をお持ちです。図4は花岡さんの考えです。誤解を恐れずに簡単に言うと、事務職員とURAが互い切磋琢磨し、事務職員は自身の業務領域を増やしていく、URAは従来大学で行われていなかった業務に取り組んでいく、それにより大学における業務を質・量ともに変えていく、ということです。見方を変えると「新しい仕事を開拓するのがURAさんですね、事務職員と協働して大学の業務を深化できますよね」ということです。URAはそのようにも見られているということを意識しておく必要があると思います。

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図5

私は大阪大学のURAの価値を図5のように分類して考えています。定量的効果・非定量的効果という軸と、お金的効果・非お金的効果という軸です。個人的には、非定量的な効果で大学から評価されたいと思っています。URAさんがいたのですごく助かりました、といってくれる先生が9割くらいいるとURAの価値があるということは疑う余地はないと思います。しかしながら、執行部にURAの価値を説明する場合はやはりお金的な効果で攻める必要があります。

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図6

一つの外部資金のプログラムでURAが支援した場合とそうでない場合を比べるとURAが支援した方が、採択率が良い場合が結構多いと思います。この採択率の差の全てがURAの支援効果とは言いにくいですが、結果としての差は存在します。そこをお金に換算して執行部に説明することは多くの機関で行っていると思います。大阪大学でも同様です。(図6)

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図7

今日は図7のような論点で杉原先生、小左古先生、岩井先生の順にお話しいただき、その後パネルディスカッションで議論を深めたいと思います。参加いただいている皆様もうちの大学ではこう考えているとか、私はこう思っているというご意見があると思います。是非ご発言いただきたいと思います。
それでは、杉原先生、よろしくお願いします。

RA協議会第5回年次大会 全発表資料(ログイン必要)
http://www.rman.jp/meetings2019/session.html

講演1「URAが生み出す価値とは」

  杉原 伸宏 氏
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信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 学術研究支援本部長/学長補佐・教授
≪プロフィール≫
2000年 信州大学 医学研究科 助手。2004年 同 医学部知財活用センター 助手。2007年 同 産学官連携推進本部 講師。2011―2014年 同本部 RA室長。2011年 同本部 准教授。2013年―現在 学長補佐。2014―2016年 信州大学 産学官・社会連携推進機構 RAセンター長。2015年 同機構 教授。2016年―現在 信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 学術研究支援本部長。国立大学が法人化した2004年から、3代の学長・理事の下で研究・産学連携支援に従事し、2011年からURA組織を統括。

信州大学の杉原です。よろしくお願いします。

信州大学のお話をする前に、研究大学強化促進事業があと数年で終わる状況においてURAが今どういう状態なのか、文科省の大学技術移転推進室さんのデータを活用して、自己経費で雇用されているURAが具体的にどれぐらいの人数なのか、そしてその人たちはどのような業務を主体としているのかといったところを見ながら、研究大学強化促進事業が終わったときにURA体制がどうなるのか、あるいはURAにどういう価値が求められるのだろうかというところを、少しマクロな視点で見ていきたいと思います。

今URAとして雇用されている人には、外部資金で雇用されている方と、大学の自己経費で雇用されている方がいると思います。外部資金が切れたときに、皆さんの雇用はどうなるのでしょうか。大学側はどこまで身銭を切ってURAの枠を作るのでしょうか。これは誰も分かっていないのですけれども、マクロで見ると、なんとなく数字が見えてきます。

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URAの定義ですが、産学連携コーディネーターを含めると幅が広いので、狭義のURAというところで、ここに挙げたような形で一旦整理します。平成29年度以降の調査では、URAの定義に産学連携コーディネーターが入っていますので、平成28年度までで解析しています。また、広島大学は年度ごとにURAの数がばらついているので、広島大学を除いた解析もしています。

日本のURAの状況
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図1

平成23年度からURAが配置されている大学は徐々に増えています。URAの人数も増えています。一方、1校当たりの自己経費で雇用されているURAの数は広島大学を除くと、だいたい4、5人が続いています。(図1)

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図2

URA配置大学の種別を次の様に分けてみました。すなわち、研究大学強化促進事業に採択されている大学、URA整備事業に採択されたが研究大学強化促進事業に採択されていない大学、両事業に採択されていない大学は研究者規模別に区分しました。(図2)

研究大学強化促進事業に採択されている大学では、平均8.33人の自己経費で雇用されているURAがいます。ですから、研究大学強化促進事業が終わったときは、この8.33人に加えてあとどれだけのURAが大学自己経費等で雇用されるのかという事になります。既に国からの補助が切れていますが、URA整備事業である程度URAの組織的な運用を経験した大学は、1校当たり7.38人のURAを自己経費で雇用しています。こういった大学は、ある程度組織的にURAを運用することが分かっているのではないのかというところが読めます。

一方で、両事業に採択されていない大学の場合、研究者規模500人以下では、だいたい2人ぐらい。500人から1,000人で2.23人。研究者規模が1,000人以上の大学でも、立命館大学を除くと3.13人しかいません。

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図3

ではURAはどのような業務をしているのでしょうか。全大学のURAを見ますと、やはりプレアワードの業務が圧倒的に多いです。(図3)

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図4
研究大学強化促進事業に採択されていない大学だけを抽出してみると、プレアワード業務が自分の業務の一部であるという人は8割を超えています。研究大学強化促進事業に採択されている大学では6割まで下がりますが、それでも多いと思います。(図4) これは、大学が身銭を切ってURAを雇用するときに、URAにプレアワードを担わせるという説明が学内で理解を得られやすいということだと思います。一方で、ある程度国からお金もらっているところは、チャレンジングにいろんな業務をさせているのだろうなと思います。しかし、国の補助が切れたときに、よりプレアワード重視に移行するのではないのかなとも思います。ですから、URA個人個人のスキルアップをプレアワードベースですることは、おそらく今後重要になってくるのかなということが読み取れます。
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図5

国のてこ入れ、要するに研究大学強化促進事業がなくなって大学が自己負担でURAを雇用するとした場合、シビアな予測をしますと、研究者100人当たりURAはだいたい0.4人ぐらいになります。前向きな予測として、研究大学強化促進事業や他の外部資金で雇用されているURAを全員自己資金で雇用するという場合でも、研究者100人当たりURAは0.7~0.8人になります。全ての大学が研究大学強化促進事業に採択されている大学並みにURAを配置した場合でも、研究者100人当たり最大1人程度になるという状況がマクロのデータから見えています。(図5)

ですので、大学が自己経費で雇用できるURAは、平均するとだいたい1校当たり5人ぐらいしかいません。研究大学強化促進事業採択校でも8人。URA整備事業採択校でも7人程度になります。こういった人数規模でどう価値を生み出すのかが論点になると思います。

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図6

URAの業務はプレアワード重視だとデータから見えています。自己経費で雇用しているURAしかいない大学では、8割以上をプレアワードに関与させています。URAが整備されて5年、6年たつ大学も多いと思いますが、その間に執行部の交代があるケースがあります。そのときに新執行部に説明しやすいのは、お金を稼げますということです。そういったところから、URAはプレアワード業務を重視せざるを得ない状況になっていると思われます。(図6)

URAの規模感や重視される業務内容というのは、先ほどから申し上げているように、だいたいこれぐらいの規模感です。政策のご担当者様へのメッセージとして「この規模感で、研究力強化が本当に図れるだろうか」という思いがあります。この人数規模で多くの研究者の支援をしようと思っても、限界があります。すなわち、本当に研究力の強化をURAに期待するのであれば、国がてこ入れしないと難しいのではないのか、ともいえます。企業から共同研究費を取って、そこからURAの人件費を出すという話もありますが、そうすると、企業との共同研究のマネジメントにURAを割くことになり、大学の基礎研究にはなかなか人が割けないということになります。本当に研究力を強化するのであれば、URA組織はコストセンターだと割り切って定常経費化することを国が考える必要があると思います。

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図7

大学幹部の皆様へのメッセージでとしては、研究者100人当たり、0.4人から1人ぐらいのURAで、どのようにして費用対効果を最大限に発揮するかを考え直した方がいいのではないかという点です。ボトムアップを中心にURAを配置しても、おそらくURAの人件費をカバーする効果は出ないと思います。


URAの業務はプレアワード重視ですので、URA個人個人の皆さんは、キャリアパスは、プレアワードベースで形成して行く必要があると思います。(図7)

信州大学のURAの状況
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図8

信州大学は地方大学でそんなにお金もあるわけではないので、強い研究分野に人もお金も特化するという戦略を取っています。具体的には、先鋭領域融合研究群という5つの研究所を立ち上げまして、ここに研究者を研究エフォート80%を目指して集めて強い研究分野を伸ばそうという戦略を取っています。全学で研究者が1,000人ぐらいですが、ここに専任59人、併任79人の研究者を集めています。(図8)

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図9

信州大学は産学連携がとても積極的に行われている大学で、共同研究の数は、地方大学の中でトップクラスです。今申し上げた先鋭領域融合研究群という研究所のメンバーも、ほとんどが産学連携を行っています。特にナノカーボンや、繊維・ファイバー等の材料研究がものすごく強いので、そういった材料研究者は100%産学連携をしています。ですからURAは、研究と産学連携を両立させるような支援を行う配置になっています。(図9)

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図10

材料研究シーズをベースにライフサイエンスやエンジニアリングの分野に研究を横展開します。さらにそこに、各研究所の強みのある研究分野とそれに連携できる研究所を組み合わせて分野融合を図りながら、OPERA事業、COI拠点、地域イノベーションエコシステム等の文科省系の大型イノベーション拠点形成事業を組み立てています。外部資金獲得においてもURAが申請書を書きます。企画自体もURAが行い執行部に提案します。(図10)

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図11

こういった企画を、本部長2名とURA16名の体制で行います。部局横断の大型事業は大学本部にいる9名が、ボトムアップを期待するような支援は部局担当のURA7名が担当します。双方が週1回のミーティングで情報共有して戦略を実現化しています。(図11)

研究者総数が約1,000名で、URAは18名ですので、かなり多い配置になります。背景として、大型事業をかなり獲得できており、執行部に費用対効果的があると判断していただいていることがあります。私自身も申請書を書き、外部資金を150億円ぐらい取っています。それを執行部に説明しています。

どの層の研究者を支援するか
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図12

一方で、大学自己経費を投入するわけですから、お金が取れる研究者だけを支援するのではなく、次世代研究者を育てて大学全体の底上げをしなければならないという話もあります。従って、トップ支援を本部のURAが行うと同時に、部局からの要望が強いボトムアップの支援を部局担当URAが行い、バランスを取りながら支援をしています。全てのURAが基本的にはプレアワードを分担して行います。(図12)

まとめとして、繰り返しになりますが、研究者100人に対して、URAは1人以下という規模感が現状です。ですから、大学の自己経費を投入することに対して学内理解を得るためには、プレアワード業務が主体になります。お金を取ってこられるトップ研究者を対象に大型外部資金獲得支援をすることが、費用対効果的に非常に優れていますので、おそらく執行部から価値を評価されやすいだろうと思います。また、執行部が交代するときにURA体制をきちんと維持するためにも「お金を取れる」ということが強いキーワードになると思っています。信州大学でも、先ほど申し上げたように、分野融合やイノベーション拠点形成事業などをたくさん取ってくることができるというアピールをして、URAの黎明期から発展拡大期を経過しようとしています。

URAの生み出す価値

一方で、URA投入効果を客観的に検証しにくい活動もあります。その場その場で上からの指示で行いますが、代替わりしたりすると「それ何の意味があるの」のような厳しいご意見が出たりします。このあたりの業務をどう住み分けていくか、あるいは組み合わせていくかが重要だと思っています。

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図13

大学の中にはトップだけでなく底上げもしてほしいという意見も当然あります。費用対効果的には厳しいところでしょうけれど、実行には、ある程度のURAの規模感が必要だと思います。しかしながら、現状の100人の研究者に1人のURAという規模感で、ボトムアップにURAを回すというのは難しいのではないかと考えます。ここは国の政策的介入が必要だとは思っています。(図13)

以上になります。どうもありがとうございました。

図表は杉原氏講演スライドより抜粋

講演2「URAが生み出す価値とは」

  小左古 学 氏
広島大学 学術室 研究企画室 室長(併)高度専門職
≪プロフィール≫
広島県出身。宮島のある廿日市市在住。平成5年4月から平成20年10月までの15年間、文部科学省(旧文部省)の予算編成業務に主に従事。平成20年10月より広島大学財務・総務室経理グループのグループリーダー。平成23年4月より広島大学学術室研究企画室の室長。趣味はランニング。
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図1

ご紹介いただきました、広島大学の小左古です。
私はURAの組織の長ですが事務方です。事務方の長でもあります。文科省で予算と政策を見てきた経験もありますので、その辺も含めてお話しいたします。

広島大学について
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図2

本学の研究力強化の目標ですが、AKPIという本学独自の目標管理指標を1,000点にすることです。そうすれば世界トップ100に入るということです。それに向けて先生方にも論文数を2倍にするといった目標を持ってもらっています。(図2)

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図3

図3は研究大学強化促進事業の中間評価の際に定めた将来構想です。最後5番目のところに、グローカルな協働を基盤とした社会連携の推進を強化方針に追加して、今後5年間取り組んでいくということにしました。この辺がURAの今後の活動の中にも関わってきていますので、後で説明いたします。

広島大学のURAの状況

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図4

図4に示す本学の体制の特長は、スピード感のある意思決定を行う体制になっている事です。教員人事も大学全体で一元管理しています。大学の研究戦略も研究推進機構が一元的に行います。ここには学長、研究担当理事を含めて理事クラス、それから部局の長もみんなが入っています。ここで意思決定を全部行います。それを支えているのが、URAが所属する私どもの研究企画室です。アソシエイトURAは事務職員で、以前は文科省の産学連携基本調査のURA数に含めていましたが、去年から含めないことにしました。URAとは明確には言えないだろうという解釈です。

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図5

本部のURA組織は意外に少ない人数でやっています。皆さんと同じURAとしては、シニアURA2名と、学術系URAと呼んでいますがその10名の合計12名が、いわゆるURAです。ここに、事務系の9名が入ります(図5)。

これが本学の売りです。事務系と学術系が一緒の組織で一緒にチームでやっています。さらにアソシエイトURAと呼ぶ部局の事務とも連携しています。実は10月1日から更に産学連携部門とも組織を統合する予定があります。すなわち産学連携コーディネーターや知財マネジャーとも一緒の組織で仕事をするようになります。宣伝になりますが、来年広島でINORMSがありますので、ぜひ皆さんご参加ください。

URAの生み出す価値
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図6

本学のこれまでのURA配置による効果を実績ベースで紹介いたします。(図6)

結構産業界、地域自治体と連携したプロジェクトをURAが支援して採択されています。この「赤鶏プロジェクト」というのは、知財化も含めてブランディング活動をやっていこうという取り組みです。また、理化学研究所さんとの連携や、医療系データの臨床研究も組織だって取り組んでいるところです。この図の左側は産学連携コーディネーターが従事するところですが、10月に組織が統合されたら更にうまくいくと考えています。それ以外に、国際共同研究の方面の取り組みも結構やっています。今はやりのSDGsに関しては、拠点をつくって全学的に取り組んでいきます。このほかインドとの連携を強めています。こういったことはURAがいなかったらできていないと思います。すなわちURAはこのような新機軸を作ってきた事になります。

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図7

広島大学のURAでは三代川さんが有名ですが、三代川さんにライティングセンター、国際会議支援、国際科学広報、国際共同研究等の取り組みを企画していただいています。これもURAがいなければできていない取り組みだと思っています。(図7)

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図8

研究マネジメントの取り組みにもURAに関与してもらっています。(図8)

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図9

具体的に直接サポートに入ってもらっているものもあります。情報収集システムの構築や運営、各URAに併任で部局の担当をしてもらい、各部局で研究推進委員会をつくり、いろいろ研究大学強化促進事業の目標に向けて部局での取組を議論してもらっています。また、国の情報収集、外部資金の情報収集を積極的にやっています。
この自ら企画するということが、実は、去年まであまりできていませんでしたが、今はなるべくURAだけでミーティングをしてもらい、そこで企画立案していくことをすすめています。
研究大学強化促進事業の前半は、このようなシステム改革ものの事業にサポートに入る程度でなかなか拠点形成や個別の研究費の申請支援に当たれなかった部分がありましたが、ここ数年はURAの増員もあり採択が結構増えています。科研の支援はURA効果の見える化にもつながりますので従来からやっていますが、少し伸び悩んでいます。(図9)

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図10

また、AMEDもいろいろな取り組みの結果、採択が増えてきています。霞地区にURAを別で増員して、霞地区のAMEDだけではなく科研の支援を、チェックだけではなく面談までやって、それが科研費の採択増につながっています。(図10)

URAに対する期待
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図11

高野さんからステークホルダーの分類がありましたので、私なりにどのような事を期待されているのかを挙げてみました。(図11)

執行部と教員、事務というのはそれぞれ期待しているところが違うかもしれませんよね。執行部に期待されていることをやろうと思うと、実は、教員からは嫌がられること、面倒くさいことになるかもしれません。例えば知財の獲得は基礎研究の先生なんかはおそらくやりたくないでしょう。けれども外部資金獲得を大きく増やそうと思えばそこに手を入れないといけないので、そういうところにURAが関与できるようになればいいかなと考えています。

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図12

教員とか事務からの期待は細かいことが多いですよね。「URAって何やってくれるの?」のようなところから、「これもやってくれるんじゃないの?」というところまで、教員へのサポートの観点ではいろんな雑用をお願いされたこともありました。ですが、それをやると感謝されます。そういう取り組みも、定量的には見えない価値にもなると思っています。またURAは事務の仕事なども理解しておいた方がいいのではないかと思っています。
これは少々挑戦的な言葉になりますが、教員でもない、職員でもない、第三の職と言っていますけど、何なのかというのは、特に事務の人事部門や財務系に言われます。(図12)

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それでずっと考えてきているのですけれども、少なくとも、言ってはいけない、やってはいけないのは、「いたしません」と言うことです。URAの長の立場としても、分野が、自分の専門分野ではないからできないとか、外部資金支援の経験がないから自分はできないとか言われると困ります。もちろん広島大学のURAがそう言っているということではありません。

教員でもできない、職員でもできない仕事、URAにしかできない仕事とは何だろうと私もずっと考えています。教職協働とよく言われますけれどもなかなか難しいところです。ですがURAだったら、教員のことも理解できるし、職員のやっている仕事も少し勉強すればできる、理解できるのではないかなと考えています。すなわち、職員、教員の両方を理解できるのがURAで、そうすることで、URA一人ではできなくても、一緒にやれば何かできる、そのようなことがもっと増えていくのではないかと思っているところです。

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図13

URAの評価とキャリアパスですが、広島大学の場合はT型人材が理想だと考えています。分野の広さや多様さをある程度持ちつつ、知識の深みが必要だと思っています。最後に一つ言いたいのは、「何をするにも人と金」ということです。URAの制度を作り維持するにしても人件費の確保が重要になります。URAがそのようなこともある程度理解していくことも、結果的にはURAの価値につながっていくだろうと考えます。(図13)

図表は小左古氏講演スライドより抜粋

講演3「URAが生み出す価値とは -大学執行部はどう見ているか-」

  岩井 善郎 氏
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福井大学 産学官連携本部 特命教授(前 研究担当理事)
≪プロフィール≫
1978年より福井大学工学部機械工学科・講師、その後、助教授を経て、1991年工学部機械工学科教授。2000~2001年スウェーデン、連合王国文部省在外研究員。2012年同大学院工学研究科長・工学部長。2013年~2019年理事・副学長、研究、国際、産学・社会連携、地域貢献を担当。専門分野は機械工学のトライボロジー、機械材料学、表面工学。日本機械学会、日本トライボロジー学会等に所属。

皆さん、こんにちは。福井大学の岩井です。
ご紹介いただきましたように6年間、理事、副学長を務めて、この3月に退任いたしました。

福井大学について
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図1

福井大学は、教育学部、国際地域学部、医学部、工学部の4学部からなり、学生数約5,000名、教員数約550名の大学でございます。就職支援、産学連携、そしてCOC+事業を含めた地域創生への取組に対して強みと特色を持っています。(図1)

URA組織の整備につきましては、平成24年度に『リサーチアドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備(URA整備事業)』に採択されました。私は平成25年度から4年間この事業の責任者を務めました。事業終了に伴って、平成29年度に組織改編し、現在まで活動を継続しております。

福井大学のURA組織
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図2

事業の開始のときURAは7名おりましたが、今は専任が2名、兼任が2名の4名の体制です。所属は、この図にありますように、産学官連携・地域イノベーション推進機構の下に、産学官連携本部、そして産業化研究特区として地元の産業である繊維・マテリアルに関する研究センター、ならびに地域創生推進本部がございます。URAは、産学官連携本部の研究統括部門の知的財産・技術移転部に所属しており、他の専門職員、あるいはコーディネーターの方々と共に活動しております。(図2)

最初に少し私とURAの関係をご説明させていただきます。私は機械工学が専門で、その中の摩擦・摩耗・潤滑を対象としたトライボロジーと呼ばれる工学の基盤技術に当たる分野で実験研究を続けてまいりました。学生時代から、現物あるいは現場とか、そういった「観察によるエビデンスを重視する」ということを指導されてきましたので、大学の管理運営にあたってもエビデンスを気にしながら務めてまいりました。理事になった当初に、外部資金獲得の推進を図るために、旗振り役の私自身が実践するということで、JST のA-Stepのシーズ育成タイプに申請をいたしました。これが1回で採択になれば、こういう話はできなかったと思いますが、実は2回落ちて、3回目に採択になりました。その1回目の申請では、私と企業さんとURAが集まって申請書を出そうということになりましたが、その時点では、お互いに誰かがやってくれるだろうという雰囲気でした。1年目が終わったときに、URAの数名の方々が、もう1回やりましょうよと言ってくださり、いろんな資料も集めてこられました。そういう中で、われわれ教員や企業の人たちがだんだんその気になってきました。URAが背中を押してくださったことが大変ありがたかったですね。まさに私は、現場で、URAの価値を実感したわけです。

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一方、大学の執行部につきましては、学長が医学部の臨床医の出身でございます。その前職は研究担当理事で、平成24年度のURA整備事業の申請責任者でしたので、その事業が終わった後URA体制をどうするのかが大きな課題であることもご存じでした。まして学長にあって人件費削減は急務の課題である中で、URA体制を、URAの存続をどうするのかということを、強くおっしゃっていました。

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図3

研究担当理事としての考え方ですが、その役割は「構想し、具体化し、実現する」ということだと思います。チームプレイで「研究力の見える化と強化」、それを「社会還元」、それによって「大学の価値、ブランドの向上」ということに尽きるかと思います。(図3)

URAのミッション

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図4

URAが考える知的創造サイクルとURAのミッションをこの図に示しています。知的創造サイクルの各ステージでURAの方々が関わっているわけですが、研究シーズ・技術の育成、技術の保護と活用、エコシステムの形成、未来ビジョンの策定支援というようなことを、URA自らがミッションと考え、私もそのように思っております。(図4)

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図5

執行部とURAがそれぞれへの期待、またそのモチベーションについて、図5のようにまとめてみました。左側は大学執行部の期待です。これはある意味、URAの価値をどう捉えているかを示していると言ってもよいと思いますし、さらに「こういうことが、執行部が考えているURAの評価事項です」との言い方かもしれません。右側は「URAが主体性を発揮して元気が出る取組とはこういうことですよね」というのをまとめて書いてありますが、前のスライドのミッションそのものです。併せて、それぞれの主な相関ということで結んでみると、このような矢印になります。

大学執行部の期待、あるいは評価の一つ目は、競争的資金の獲得に向けた支援およびその成果です。二つ目は、産学共同研究の質・量的拡大です。これは今、いろいろなところで、組織対組織による真の産学協働研究が必要と言われていますけれども、なかなか難しいところではありますが、それらにURAがどう貢献していけるのかといったことです。そして三つ目は、大型あるいは将来を担うプロジェクト研究のシーズ・ニーズの情報の収集と分析です。

URAの価値

そういう活動の中で、URAの価値の見える化における課題があります。これはどこの大学でも同じだと思いますが、社会ニーズの把握のために集めていただいた生の情報を、役員、教職員に伝える場をつくることです。このような役割は産学官連携本部長や研究担当理事が担ってしまいがちですが、URA自身が、このような場を執行部と一緒につくって、定期的に学内に発信することが重要だと思っています。
プロジェクトの推進という意味では、いわゆる単純なシーズ・ニーズマッチングということではなくて、新しい視点でのプロジェクトの構築に対する取組、あるいは早期社会実装のために、戦略的な営業活動や広報活動が必要です。そういったことに対する提案や実践の活動がURAの価値の見える化につながるのだろうと考えます。

人材の配置ということでは、先ほど私のA-Stepの申請の例を申し上げましたが、取組のプロジェクトチームの中心的役割あるいは幹事役などを務めて、チームプレイの中での貢献を見える化することも、大きな課題ではないかと思っております。

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図6

最後に人材の育成、URAの自律性の確立です。URA自らが何かそういうことを仕掛けることが重要だと思います。学長や研究担当理事、また執行部に働き掛けることも大事ですが、自ら、そういうことを図っていく、あるいは人件費を確保する手段を考えることも、必要ではないかと考えます。(図6)

「URAの価値っていったい何だろう」ということを、本質に立ち返って問い直してみることも必要だと常々思っています。というのは、私はさまざまな規模の産学共同研究、またベンチャーマインドの企業経営者との共同研究により新しい材料表面強度評価技術を開発し、それを実現する試験装置を数千万円の商品として国内で十数台の規模で使ってもらっています。そういう新しい技術に対して、産業界からいただく意見には、2通りあります。

一つは、「私の研究の価値はまだ定着してない、良さはまだ十分わからないけれど、定着していないからこそトライする価値があるんじゃないのか?」といわれるパターンです。これは新しい研究に対する目利きという点での意見かもしれません。どちらかというと、イノベーション型の企業のトップであったり、技術開発者であったり、そういう人が多いようです。ですから、本日のこのようなURAの価値に関するセッションがあるということは「URAはこの段階なのかな?」と言うことなのかもしれません。

もう一方は、全くの反対で、「世の中の大部分のことは、価値が明解でないと次のステージに行かない、行けない」という姿勢です。私の研究の場合ですと、例えば、企業から繰り返し無償の試し試験を依頼され、それらの最終結論として、「何かうちでやった昔の結果と合わないので、先生の研究って実用上適用できないですね?」というわけです。私は、一致しないからやってみる値打ちがあると思っているのですが、新しい評価技術の良さや価値が明解ではないから次のステージには行けないということが世の中の大部分かも知れません。

そう考えるとやはり価値の伝え方が、大変難しいと思います。私自身は、非常に簡単に、わかりやすく説明しているつもりでも、結局自分の強みを言おうとすると、どんどん専門性が高くなって、わかってもらえなくなります。

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図7

ですから、「価値をいかに伝えるか」は大変難しいことであるという現実があります。そういう中で、URAが価値を認められ評価を得るにはどうするか、これには二つの視点があるのではないかと思っています。一つ目はShort Rangeでの視点、価値をお金に換えて見せる・伝えることです。これは一番大事なことかもしれません。その次は、Long Rangeということで、大学の大型プロジェクトの立ち上げや外部資金獲得にあたって、URAが支援するプロセスが採択の有無に関わらずいかに波及効果が大きいかを知ってもらうことです。そのプロセスを通じて、教員のいわゆる新しい経験、新規の研究へのチャレンジに対するマインドの変化であったり、地域の産学官連携の土台作りができたり、あるいは全国規模での情報の収集と分析が後々生きてくることにつながります。そのことがLong Rangeでの視点です。これはお金に換わらない価値であり、先ほどの高野先生のお話と通ずるところだと思います。(図7)

最後に、URAの価値の評価を得るにはどうするか、執行部にどのように価値を伝えるかについてです。これがこのセッションにおいて私に課せられたテーマだと思います。全ての交渉事に言えることだと思うのですが、執行部メンバーの研究経歴、イノベーションや産学官連携に対する考え方を日頃からウオッチして対応することが大事です。URAの価値だけではなく、研究に対する姿勢も十人十色ですから、説得しないといけない執行部メンバーが、どういう価値観を持っているか、研究に対するポリシー、あるいは向き合い方などを十分研究して臨むことが必要だと思います。私は、価値が明確でないものへの投資は、イノベーションの第一歩だと考えています。URAの方々を見ているとポテンシャルも意識も高いです。おそらくそういう人たちは、大学のイノベーションの牽引者になる存在だろうと思っています。そのことを理解してもらえる教員や、実際に支援を受けてうまく仕事が進展した教員の人たちを増やし、サポーターの拡大につなげることが、評価を得るためには大事なことだと思います。

ホンダを立ち上げた本田宗一郎さんの精神が、『ホンダイノベーション魂!』という小林三郎氏の書物にまとめられているのですが、改善( Improvement )ではなく革新(Innovation)のためには、すなわち挑戦・独創・革新を起こすには、現場を見ること、異質な人と議論すること、そして失敗を恐れずにやり続けることが、重要だと説いています。

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図8

執行部の中では日々、学内の様々なイノベーション、例えば新しい学部をつくるとか、組織をつくるとか、組織改編をするとかを、経営会議や人事会議、役員会などで議論しているわけです。そこでは、ゴーという意見もあれば、ちょっと待って慎重にという意見も出ます。私は、最後の判断では「そういうことを提案している先生方のやる気と覚悟に賭けるしかない」を基準とすることが多かったように思います。世の中の経済や社会の状況がどうなるかは十分に予測できないわけですから「そういう人たちがいるのであれば改革は大丈夫、きっとやってくれるだろう!」という思いでした。(図8)

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図9

私はURAの存在そのものが価値だと思っています。大学のイノベーションを起こすためには、大学教員の仕組みや体質がなかなか変わらない中で、URAはわずか1人か2人かもしれませんが、そういう人たちがイノベーションを起こすきっかけをつくる牽引者になり得るのではないかと思っています。そういう意味からもURAの存在そのものに価値があるのではないでしょうか。非常に意識の高いURAの皆さんですから、覚悟を持って、そういうことに地道に取り組んでいる姿勢をアピールされることが大事だと思っています。Change、Challenge、Collaborate、この三つのCをキーワードとして、ますます頑張り活躍いただければURAの地位、あるいは価値は、より高くなり、定着するものと期待をしているところでございます。

ご静聴ありがとうございました。

図表は岩井氏講演スライドより抜粋

全体討論

高野:それでは、少し時間をいただいて、皆さんとディスカッションを進めていきたいと思います。先生方のお話を伺っていると、お金的な価値で示すことは必要ということだったと思います。URAの活動を「外部資金の獲得支援」、「産学連携」、「それ以外」の3つに大きく分けたときに、皆さんのURAの活動で一番エフォートを掛けているのはどれでしょうか。前者2つは明らかにお金的な価値に直接関係しています。お手数ですが挙手をお願いします。「外部資金の獲得支援」という方、結構多いですね。「産学連携」という方、意外に少ないですね。「それ以外」という方、結構多いですね。「それ以外の方」には後ほどご意見を伺います。

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岩井先生のお言葉に、Short RangeとLong Rangeがありました。Long Rangeの方が大事だと思いますが、やはりShort Rangeのことを考えておかないと生き残れないのではないかなと思います。お金で執行部や周囲りのステークホルダーに説明していくところです。URAとして、このShort RangeとLong Rangeを、どのようなバランスで実施するのが良いのでしょうか。本来URAが何をすべきかという問いは一旦脇に置いて、URAという組織を経営する、要は存続させるために、という議論です。

岩井:私はそう言いながら、Short Rangeがおそらく8割方、大部分はShort Rangeだと思います。URA組織がなくなってしまったら元も子もないので、それを存続するというのは、やはりShort Rangeではないでしょうか。Short Rangeの中で培ったノウハウが、Long Rangeにつながっていくのだと思ってはおりますけれど。

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杉原:わかりやすいのはShort Rangeだと思いますが、お話にあるように、Long Rangeで大きな戦略を立てて、企画して、それを具体化して実行していって、そして次につなげるという、その「企画して実行できる」というところがURAの強みだと思っています。僕もお金を稼げると言いましたが、その大半が、拠点形成といった、かなり長い目で見たお金を取ってきています。おそらくURAのビギナーの方はShort RangeのJSTやAMEDなどの個別研究の事業の支援をしながら、まずはお金の稼ぎ方、外部資金の取り方を学びながらキャリアを重ねていく中で、大学全体の戦略とか研究分野の戦略が見えてくるでしょう。その中で、少し視野を広げてLong Rangeの戦略を組み立てるようなフェーズがあるのではないかと思っています。徐々にステップアップしていく過程で、お金の取り方や狙う外部資金の性質も、変わってくると思っています。

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小左古:ShortかLongかで考えるのは、どうなのでしょう。最近ショッキングなことがあって、科研費の支援についてうちの理事から、「あんまりそこを支援しても、意味がないんじゃないの」と言われました。大学によって、たぶん違いがあると思っています。前のセッション(注:京都大学企画のセッション「URA活動の高次元化を実現する戦略的活動アーカイブ」)でも言っていましたけれど、書ける先生は書ける、取れるわけですね。どこを支援するかといったときに、全体を支援してもそれは非効率だという事になります。やはりある程度は対象を絞っていかないといけない気もします。たかだか10人ですから、それこそ杉原先生の分析だと、教員当たりのURAの数はもう本当に限られているので、支援も限られるということです。まずお金を取るところでも限られてくるでしょう。また広島大学の場合、URA配置以来ずっと取り組んできているのは、場の提供です。ネットワークをつくるとか、研究者が融合研究を進めていくために、どういう場をつくればいいか。そういうところに、注力してきましたので、拠点形成システムというものも作りましたが、そういう意味では、やはり両方必要だと思っています。

高野:ありがとうございました。小左古さんに質問ですが、場の提供や三代川さんが担当されている国際化の支援の場合、直接お金的な効果は見せにくいと思います。その状況で多くのURAが居られることの効果をどのように説明されているのでしょうか。

小左古:もともと、国際共著論文数を増やすというところに大きな目標を挙げていますので、国際共同研究を今まで研究者個人のネットワークに頼っていたところを、組織的にURAはつなぎの場をつくるということは重要です。それによって、特に国際共同ですから、かなり大きな額のお金を得られることへの期待を持っています。

高野:ありがとうございます。フロアからご発言を頂きます。高橋先生どうぞ。

高橋:金沢工業大学の高橋です。RA協議会の副会長をしております。杉原先生の分析に関連して補足のコメントをさせてください。まず、いつもの杉原先生らしい分析で、シャープな素晴らしい結果を教えて頂きありがとうございました。私も文科省のデータで、URAとコーディネーターが分かれる直前までの4カ年について分析を行っている関連での伺いです。常勤の助教以上の研究者規模を500で切ると、その上下双方に大きな私立大学が入ります。杉原先生の分析では国立私立は分けておられませんよね。

杉原:そうですね。研究者規模だけです。

高橋:そうすると、おそらく今一番皆さんが興味のある、自主財源で雇用されている人が何の仕事をしているのか、そこが恐らく雇用の継続につながるのではないか、という暗黙の前提の下に分析をしていておられて、とても重要な分析だと思います。一方、日本には大学が800あり、そのうち国立大学が78ですから、数的にはマジョリティーであるURA関連事業費をもらっていない私立大学も含めて、規模の大小として区分されるとノイズが入ってしまうのではないか、ということを理解しておく必要があると思います。もちろん、杉原先生の結論をゆがめるものではありません。
 また、私はGRIPS兼任として同じような目的で分析をしたことがあります(注1)。杉原先生と私のデータは時期が合っていて、だいたい4年分です。URAとコーディネーターの存在が、科研費の件数と金額、企業との共同研究の件数と金額にどのくらいの相関と因果があるかということを、あえて大学の規模をコントロールした上で分析しています。そうすると、いずれの人たちも貢献していると相関が出ています。さっきおっしゃった、100人に何人いると本当に効果を出せるのかというと、ご存じのように個々の大学の個々の年数に関して言うと、研究のネタによってかなり振れがあるのですが、4カ年分をマクロで見て制御変数をしっかりとると、プラスに出ているので、おそらく全体としては「相関があると言える」と言っていいのかなと思いました。相関のところは、今分析中ですが、年内にはレポートを出せると思います。

杉原:おっしゃるとおりです。

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高橋:最後に、ここにいらっしゃるURAの方々は本当に貴重な集団なので申し上げますと、こういうデータドリブンのURA機能の効果の検討は、実は日本以外ではかなり難しいのです。というのは、大学のいろいろなファクトベースの情報がきちんと文科省のようなパブリックドメインに蓄積されていないからです。行く行くは少し匿名化されてでも、さらにデータが蓄積されれば色々なことをデータドリブンで理解できると思います。RA協議会として分析をやってみるというのもとてもいいことだと思うので、ぜひ皆さんで、こういう試みを進めていただければと思います。

高野:高橋先生ありがとうございました。冒頭3つの分類で質問をさせていただきました。3番目、すなわち「外部資金の獲得支援、産学連携以外を主に従事」に挙手頂いた方はどのようにして自分の価値を上司や執行部に示しているのでしょうか。白井さんお願いします。

白井:京都大学KURAの白井です。私がやっている仕事はいろいろありますけれども、ひとつは大学経営関係の仕事、その中にはブレークダウンすると研究力強化に関する学内ファンドの設計であったり、また広報関係の支援であったりと多様です。先ほど高野さんがおっしゃっていた、どうやって評価されているかですけれども、まず個人の評価としては、個々のURAが立てた年度計画を認めていただいて、その年度の終わりにはそれが達成できたかどうかというところで見られています。その個人の評価は、全て室の計画・評価に紐付いています。室の計画の中でもプレアワードだけではなくて、先ほど紹介した大学経営に関連する仕事や学内ファンドのような研究力強化の項目があり、全て紐付いています。そして、KURAがどういう活動をして、その活動の価値があるかどうかを年に1回KURAの運営委員会が評価しています。つまり、KURAが運営委員会から評価され、ブレークダウンされて、個人の活動もそこに紐付いてという構造になっています。

高野:ありがとうございます。組織の計画がブレークダウンされて個人の計画になる、すなわち組織が計画を達成し評価されると各個人の評価につながるという仕組みが完成しているということですね。もう一名程度、久保さんお願いします。

久保:信州大学の久保と申します。主担当としてIRをやっていまして、間接的には外部資金獲得につながるような研究力分析等をやっているんですけれども、直接的にそれが価値といえるかというと、そうではないだろうなとは思っています。あとは、特に杉原先生には報告はしていないんですけども、価値として申し上げると、例えば外注すると何百万円単位でかかるような仕事を、自分の手でできるという点は、経費削減に貢献しているのではないかなと思っています。

高野:杉原先生、今お話にあったことはちゃんと評価されておられるのでしょうか。

杉原:ちゃんと評価しています。報告は受けていませんが知っていますので大丈夫です。

高野:今お話しいただいたように、結果的には外部資金につながるけれども、やや遠い、直接的ではないというような支援もありますね。また、外注せずに自分でやることによって投資を抑制するということもお金につながる話だと思います。
 杉原先生から「ちゃんと報告を受けなくても見ていますよ」という話もありましたが、先生方のご講演を聞いて、URAの価値をどう周囲に伝えるのかが非常に大事だと感じました。自分の価値を正しくステークホルダーに伝えるということが大事だと思います。先ほどコメントをいただいた京都大学の白井さんは以前、URAの大事なスキルの一つはコミュニケーション能力だとおっしゃいました。URAの価値を伝えるコミュニケーション能力も大事だと改めて思いました。URAの価値をステークホルダーにどう伝えたらよいのでしょうか。

杉原:私どものところは、年に2回、URA全員が執行部と面談するような場を設けています。そこでミッションアポイントメントシート、自分のミッションを書面にしたものを執行部が理解できるよう説明させるといったやりとりをしています。そこで、まずは執行部、あるいは管理責任者への説明能力は見ています。一方で、基本的にはURA全員が同じフロアにいます。信州大学URAは、事務職員やコーディネーター等のさまざまな職員と同じ7、80人の大部屋の中にいます。まさに横のコミュニケーションが必要な環境です。とにかく相手にわかってもらえないと、一緒に仕事ができませんので、きちんと説明をするような訓練をさせて、コミュニケーション能力を日々鍛えている、指導しているという状況です。

小左古:京都大学の白井さんがおっしゃったような、面談も年2回やっています。今年からは計画を出させるようにしており、それに対して、理事と私で面接しています。そこで説明力を確認しているかというと、そこはやってない気がします。あるURAはポスドクの時に、先生から必ず「この論文はひとことで言えば何だ、言ってみろ」ということを言われて、鍛えられたそうです。私も同じように学長から言われたことがあります。外部資金の申請をこんな申請内容でやりますと言った際、学長からひとことで言ってみろと言われました。いかに簡潔に説明できるかというスキルが必要なのではないかと、私は思っています。

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岩井:私は副学長という立場で、学長が最終判断する立場におられるので、ある意味何でも勝手なことを言っていいようなところも若干あって、こういうことを申し上げるのですが、いろいろな報告がアウトプットの報告になっているのではないかと思っています。アウトカムというか、大学の研究マインドはどう変わったのか、あるいは先生はどう変わりつつあるのか、そういうことを聞かせてもらいたいと思っています。それはもちろん研究担当理事の仕事ですけれども、URAの方々もShort Rangeの話をアウトプットに集約するだけではなく、やはりアウトカムの説明を意識すべきではないかと思います。

高野:ありがとうございました。時間が押してしまいましたのでこれで終了したいと思います。本当はもう少し皆様から質問やご意見を受けたかったのですが、申し訳ございません。大阪大学URAのホームページに、講演録等を掲載いたしますので、それに対するご意見もいただければと思います。
先生方、今日はどうもありがとうございました。

2019年12月 3日(火) 更新
ページ担当者:経営企画オフィス 高野