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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.77

最終号「『研究力強化』とは何か・URAの役割とは何か」特集

2023年3月 発行

文部科学省の2021年度の調査によると、日本においては206機関に約1,600人のURAが配置されているとのことです。国が政策的にURAの配置・育成を進め始めた2011年に比べると、URAの人数は数十倍になりました。

こうしてURAが増えてきた背景には、「研究力強化」という国・研究機関の方針があります。そうした方針のもとに実施され、URAの配置促進に大きな役割を果たしてきた文部科学省「研究大学強化促進事業」(2013年開始)がこの3月で終了となり、日本のURAシステムは次のフェーズに移行していくと思われます。

そこで今回は、日本の大学等が目指すべき「研究力強化」とはどのようなものか、またURAは今後どのように進化していくのか、皆さんと一緒に思いを巡らせてみたいという趣旨で特集を企画しました。

そしてこのメルマガ自体も今号を最終号とし、新しい情報共有・意見交換のあり方を模索する予定です。これまでご愛読くださった皆様、そしてご寄稿くださった皆様、本当にありがとうございました。

最終号にふさわしい、豪華執筆陣による多様な視点の記事をお楽しみください!

■INDEX
  1. 研究力強化の基礎
  2. 出会いの場、気付きの場、反応の場:交流が生み出す未踏への挑戦力
  3. 大阪大学における研究大学強化促進事業を振り返る
  4. 日本のURAの更なる貢献のためのRA協議会への期待
  5. 今後のURAを展望する
  6. 第7回大阪大学豊中地区研究交流会レポート
  7. 大阪大学ホットトピック
  8. ●「OU RESEARCH GAZETTE」を創刊しました
    ●大阪大学が単独3位 -THE 日本大学ランキング 2023-
    ●大阪大学先導的学際研究機構と坂出市が連携協定を締結
    ●李 长久教授への「Osaka University Global Alumni Fellow」授与式を執り行いました
    ●2022年度世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に選ばれた、大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点のウェブサイトが公開されています

【1】研究力強化の基礎

遠山祐典/シンガポール国立大学メカノバイオロジー研究所 主任研究員・副所長
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2003年大阪大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士)。兒玉了祐教授指導の元、レーザー核融合特に高速点火方式に関する研究に従事し、世界最先端の研究を体感する(Kodama et al., Nature, 2001, 2002, 2004)。博士号取得後にDuke大学物理学科にて博士研究員としてショウジョウバエ胚発生の力学に関する研究に取り組み、細胞死の力学的役割を提唱(Toyama et al., Science, 2008)。2010年シンガポール国立大学生物科学科にAssistant Professor(テニュアトラック)として着任、2018年同学科Associate Professor(テニュア)に昇任。2010年よりメカノバイオロジー研究所主任研究員兼任。2019年から同研究所副所長。研究分野:メカノバイオロジー、形態形成、細胞死、免疫、老化。

●はじめに

先日World Baseball Classicで日本代表が14年ぶりに優勝した。Twitter界隈でも大盛り上がりであったが、あるツイートが目に留まった。

"野球の栗山監督、サッカーの森保監督、若いゆとり世代、Z世代以下を束ねる令和のチームリーダーに求められる人物像が何となく見えて来たよね。選手を勇気づけるポジティブな発言を徹底、選手を信じて駄目な場合の責任は全て被る、柔和で親しみやすい雰囲気、選手を引っ張るより選手に慕われる監督。_@pondebekkio"

各自のポテンシャルを最大限に引き出しつつ選手をまとめる監督の人物像が、自分が所属している研究所の所長・執行部のそれに近いと感じる。本稿では、研究の基礎である「人」を中心に、シンガポールでの研究力強化への取り組みの一部を紹介する。

●MBIの概要

1990 年後半まで、シンガポールの大学は主に教育機関しての役割を担っていた。2000年代に入り、大学の研究力を強化するため5つのResearch Center of Excellence (RCE)が設置され(*1)、各RCEには計150億円相当の予算が10年間にわたって投じられた。これらのRCEには、国家戦略に直結しうる量子技術、地球観測、がん科学、環境生命科学工学をテーマとする研究所に加え、機械的「力」と生物の相互作用を探るメカノバイオロジー研究所(Mechanobiology Institute, MBI)も含まれた。研究内容が基礎研究寄りなことから、当時MBIがRCEに採択されたことが驚きをもって受け止められたとされる。一方で、国がworld-beater(世界一/第一人者)になり得るメカノバイオロジーという新興分野の可能性と、研究所を率いる人々のポテンシャルに賭けることで採択したとも考えられている。実際、当時のNUS生物科学科の学科長であったHew Choy Leongの働きで、Columbia大学教授であったMichael Sheetzをセンター長として、また生物科学科の新学科長として着任したばかりのPaul Matsudaira(前マサチューセッツ工科大学教授)を副センター長として迎えることに成功していた。Mikeのリーダーシップの下、研究に集中できるVibrantな(活気のある)環境がゼロベースでつくられ(次項参照)、2010年の設立後5-7年には国内で最も生産性の高い組織の一つとして、また世界的にもメカノバイオロジーに特化した唯一無二の研究所として認識されるようになった(*2)。2019年にはMikeが退任し、Johns Hopkins大学教授であったRong Liが新センター長として就任。現在はRongのリーダーシップの下で、これまでの強みである基礎研究に加え、医学との連携も強化している。

●MBIの研究環境

MBIを設立する際にMikeが掲げた理念は「研究に集中できる組織」と「Vibrantな環境」を実現することであった。

○研究に集中できる組織
庶務を軽減する方針は徹底されており、例えばPI会議(Assistant ProfessorからFull Professorまで参加する会議)は1-2ヶ月に1度開催され、1.5時間程度で終了。内容は主に各委員会からの報告、PI間での議論や承認。各委員会は、数名のPIと数名の事務職員で構成される。事務職員は各部門の専門家であり(ジョブ型雇用)、PIと緊密に協力しながら実務を進める。担当PIは大まかな方向性を決め、最終的な承認を行う。なお、テニュアトラックのAssistant Professorは最低限の庶務に携われば良く、より研究に集中できる仕組みになっている。

○Vibrantな環境
MBIのPI達は「Vibrantな(活気のある)研究環境を維持する事が重要である」という共通認識を持っている。そのためには、各PIが精力的に研究に取り組むことが求められる。若手のテニュアトラックPIに加え、中堅・シニアPIも庶務もこなしながら質の高い研究を行っており、活気にあふれた環境になっている。ただ、PIの顔ぶれが固定化してしまうと、やはり活気が失われてしまうものである。しかし、新たなPIが加わると空気感は一変する。Assistant Professorも含めPIの採用は、研究所を挙げて労力と時間(例えば1人の候補者を数回、計1週間弱にわたり面接をする)をかけて行われ、新PIは大きな期待を持って受け入れられることとなる。テニュアトラックのAssistant Professorは、スタートアップ、教育の軽減、庶務の軽減などのサポートを受けながら、7年間の任期中に生産性の高い研究室を立ち上げ、テニュアを目指すこととなる。NUSやMBIの若手教員支援については、大阪大学経営企画オフィスURA 部門が2021年に企画した「若手研究者支援の良い塩梅とは」の講演録に詳しい (*3)。また、Mike、Paul、RongをはじめとするテニュアPIは、若手PI達を気にかけ、勇気づけるポジティブな声をかける。『成功して欲しい』『必要な場合はいつでもサポートするぞ』感は若手にとって心強く、若手のポテンシャルを引き出すための重要な要素となっている。MBIは、PIの採用に加えて、積極的に客員教授を招聘している。過去10年間に24名を招聘し、日常的な議論に加え、共著論文発表、国際グラント取得を通して研究所の活性化に貢献している。

●おわりに
本稿を書き終えるにあたり、MBIのセンター長を務めていたMikeが当時「リーダーはego-less(エゴのない人)でなければならない」と折に触れ言っていたのを思い出した。リーダーは、自分だけではなく、組織に所属する各研究者のポテンシャルを最大限に引き出すために、局所最適解ではなく全体最適解を追求し全体をまとめあげる。一方、各研究者は、それぞれが質の高い研究を行い、Vibrantな環境の形成に貢献していく。この組み合わせがチームとしての研究力強化の基本であり、正攻法なのかも知れない。


(*1) https://www.nrf.gov.sg/programmes/research-centres-of-excellence
(*2) 現在では世界各国に同様の研究所/組織が存在する。
(*3) https://www.ura.osaka-u.ac.jp/images/vol74_ambai_transcript_v2.1.pdf


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【2】出会いの場、気付きの場、反応の場:交流が生み出す未踏への挑戦力

服部 梓 (Azusa N. HATTORI)/大阪大学産業科学研究所 准教授

はじめに

研究者は誰しもが独自の研究ポリシー、こだわりを持っているのではないでしょうか。私自身は無機固体の材料科学研究者であり、ナノスケールの機能の根源にアクセスし理解・制御する、をポリシーとしています。こだわりは独自性を生み出し研究推進力を高めますが、時としてこだわり過ぎたために知らず知らずの内に足かせになっている場合があります。世の中の変化のスピードが非常に早く、VUCA※の時代に求められる研究力とは何でしょうか?世の中の多様性にフィットするために、あらかじめ定義・予想された設計図・未来予想図が存在する過去の実績にとらわれた研究スタイルでないことは間違いありません。

研究力を向上させるため、研究者は学会に参加して当該研究分野の動向だけでなく、最先端の技術などの情報を収集して、自身の研究にフィードバックさせます。しかし学会で得られる情報は、往々にして自身の研究分野と近い分野に限られます。ローマの英雄、ジュリアス・シーザーの「人は見たいものしか見ない」という言葉の通り、誰しもが情報を知らず知らずのうちに、自分が潜在的に関心のある情報を取り込む、情報の選択的接触を行っています。失敗を恐れず長期的に取組む必要のある挑戦的・独創的な研究を行う創発研究者であっても、例外ではありません。私はJST創発的研究支援事業に採択いただき、2022年度から北川パネルで研究を行っていますが、創発研究者仲間との会話している内で、「我が国が誇る研究推進のためのサービスが、意外と使われていない」ということに気付き、創発研究者とマテリアル先端リサーチインフラの出会いの場 (2023年3月7日(火)大阪大学産業科学研究所開催)を主催することになりました。
※不安定性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)

創発研究者とマテリアル先端リサーチインフラの出会いの場

材料研究者にとって、最先端の計測評価装置・計測技術と得られた情報の活用方法は研究遂行に必須です。特に最先端装置群は非常に高額で、若手の研究者は自前主義では優れた成果は出せません。私は、所属している産業科学研究所内で文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業という全国の最先端設備の共用と技術サポートが実施されており、10年以上に渡って最先端装置群を利用できるという大変恵まれた研究環境におりました。大阪大学だけでなく、他大学での共用装置も利用しており、他の多くの研究者も利用しているものだと思い込んでいました。ですから、創発研究者仲間が、「服部先生はARIM使っているんですか?私も使いたいと思っているんですけど、なかなかハードルが高くて。。」と言った時に衝撃を受けました。会の開催を決めてから、北川パネルの創発研究者約40人にアンケートを取ったところ、60%以上がARIMの利用経験がありませんでした。

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そこで、創発研究者が自発的に開催するパネル内の研究者の交流の場であるパネル会議に、ARIMの施設見学などを取り込んだ会議を開催しようと決意し、大阪大学ARIM拠点にお願いしたところ、ARIM-JAPANの中から7拠点、京都大学、山形大学、奈良先端科学技術大学院大学、千歳科学技術大学、分子科学研究所、物質・材料研究機構、さらには、文部科学省のARIM関係者の方にもご参加いただく大規模な交流会が実現しました。(左のフライヤー参照)

交流会のコンセプトは、以下の通りです。

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研究分野横断を含む、多様性と融合を意識した創発的研究を遂行するポテンシャルのあるマテリアル分野の若手の研究者(創発研究者)と、最先端装置の共用、高度専門技術者による技術支援、加えてマテリアルデータを提供するARIM拠点がざっくばらんに交流、議論を行うことにより、日本のマテリアル革新力の一層の強化に貢献するようなアクションプランの提案に繋げる。
・創発研究者側:北川パネルの創発研究者が一同に会し、ARIMが提供する最先端の技術を知り、自らの野心的研究構想を具現化する手段を得る。
・ARIM拠点側:マテリアル分野の創発研究者が機関の保有技術の有効活用方、ユーザーの(潜在的な)希望を把握し、究を大きく進展させる場を提供すると共に支援力向上につなげる。

コロナ渦で交流が途絶えていた中で、さらに日頃は会うことのない人たちの交流ということもあり交流会は大変盛会で、創発(46人(5人))、ARIM(62人(11人))を合計108名(内オンラインが16名)の参加者がありました。交流会の午後の部では、創発研究者はポスター発表、ARIM各拠点はブース発表をして、斬新なアイディアと高度で最先端な共用施設が交わる場を提供できたと思っています。

研究力の強化とは

交流会を通じて、多くの出会い、気付き、反応(アクション)がありました。交流会後に、あるARIM拠点からの参加者から頂いたお言葉、「『ARIMの利用が簡単だということを知らない』ということを知ってもらう機会を増やしていきます」。認知度と利用率のギャップは研究の場でだけでなく、あらゆる場所で起こる事です。

ARIM共用装置の利用相談は、ハードルはとても低いです。こちらの[お問い合わせ]フォームより簡単にできます。
「〇〇を計測して〇〇を観たい(〇〇の解析まで行いたい)のですが、最適な装置を教えてほしい。」こんな感じで大丈夫です。14名のARIMマネージャーがチームで対応します。

私自身も新しい研究のアイディアがいくつか浮かび、早速思案中です。読者でARIMを知っているけど使ったことが無い方々、ぜひアクションを。

最後に、交流会の準備から閉会までを通じて実感したことは、「人は見たいものしか見ない。研究力を上げるためには、会って、話して、行動しよう!」です。行動制限も無くなってきた今こそが契機です。新たな出会いが、認識や関係の固定化を打破し、未踏への挑戦力を生み出すのではないでしょうか。


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【3】大阪大学における研究大学強化促進事業を振り返る

高野 誠/大阪大学経営企画オフィスURA

大阪大学(以降、本学)は「各大学等における研究力強化を促進し、世界水準の優れた研究活動を行う大学群の増強に資することを目的」とした文部科学省の研究大学強化促進事業(以降、本事業)に2013年度に採択され、Aメニュー「研究戦略や知財管理等を担う研究マネジメント人材群の確保・活用に関する取組」、Bメニュー「Aメニューと効果的に組み合わせて実施する、その他の研究環境改革の取組」を進めてまいりました。

本学では、2009年にAメニューと同様の趣旨で大型教育研究プロジェクト支援室(室長:基盤研究担当理事)を開設し、さらに2012年度に採択された「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備事業(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)」でURA業務とURAの普及・定着事業を進めていたため、本事業で雇用されたURAも同室に配置され、全学のURAとして一体的に活動することとなりました。

それから10年。いくつかの出来事を振り返りたいと思います。

副学長URAの誕生

本学のURA確保・活用において画期的な出来事の一つは、大型教育研究プロジェクト支援室の池田雅夫URA(同室、統括マネージャー)が2013年に副学長に登用されたことです。「URA担当副学長」の配置はよく見られますが、「URAが副学長になる」ことはURAの配置が拡大した現時点でも珍しいことだと思います。またこれは、本学においてURAのキャリアパスが副学長までつながることを示しており、本学のURAが本学でURAのキャリアを形成する意欲を高めることに繋がりました。

2015年度フォローアップ

研究大学強化促進事業のフォローアップは毎年実施されることとなっていましたが、大きな節目としての最初のフォローアップは、2015年度に実施されました(9月28日締切)。私自身は2015年4月本事業雇用URAとして民間企業から本学に着任しましたので、URA1年目の出来事でした。着任後しばらくして私が立てた目標は「池田先生がおられなくてもまわるURA組織を創る」でした。それくらい池田先生の力と影響は阪大URAにとっては絶大なものであったということです。

そのノリの一貫で、同事業で雇用されている私を含む6名のURAで議論し、フォローアップ調書のドラフトはこの6名で作ることを合意し、池田先生に提案・了承して頂きました(8月11日)。これは池田先生にとっては忍耐の始まりでした。何度かの進捗レビューの後に池田先生に下案を提出したのが9月6日でした。この間、池田先生からは「そろそろ私に執筆権を・・・」との話が何度かありましたが、RA協議会第1回年次大会(9月1、2日)の準備でお忙しいだろうという6名の部下URAの優しい思いから全て丁重にお断りしました。
下案を池田先生に提出したのが9月6日、翌7日には生まれ変わったような調書が池田先生から戻ってきました。その後、学内関連部署との調整、幹部説明を経て完成した調書を9月26日に文科省に郵送しました。この間の経験は6名のURAにとってポストアワード業務のまたとないOJTの機会であったと思います。また、フォローアップ結果では高い評価を頂き、自信にもつながりました。

Bメニューの取組

本学のURAは事務職員の方々と密に連携・一体化して業務を行っています。Bメニューの施策の検討においても研究推進部の方々と共に考え企画・推進してきました。国際ジョイントラボ、英語論文投稿支援、外部資金獲得支援等を研究者にとってより魅力的になるよう、両者で侃々諤々の議論を行いました。2013年(研究大学強化促進事業開始年)以降減少現象傾向にあった本学の論文数が2016年から増加傾向に転じたこと、国際共著論文数が一貫して増加していることは、これら施策の効果も出ているためと考えています。施策の詳細や成果は、後述のWebサイトでご覧ください。

URAと事務職員との連携活動そのものを対象とする施策としては、「事務職員の海外教育研究機関等への研修出張」をBメニューで実現しました。グローバルに活躍できるポテンシャルのある事務職員は多くおられますが、海外出張する機会は多くはありません。そこで、本事業では海外の大学等に出向いて調査する事に興味のある事務職員を募集しURAと共に調査の企画、先方との調整を実施する事と致しました。URAが同行する事を想定していましたが、事務職員だけで海外出張調査をする猛者も現れるようになりました。限られた人数ですが、事務職員の国際対応力が強化されたと実感しています。また、上記の猛者の内1名は現在「URA業務を担う事務職員」として経営企画オフィスでURA業務に従事しており、事務職員とURAの更なる連携・一体化にも貢献しています。

広報活動とその反響

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本事業では、各機関における研究活動の強み・弱みや課題等の状況分析(人材登用、国際化、研究分野、研究推進体制等の分析)、本補助事業の取組内容、進捗状況、成果等について、機関のWebサイトにページを作成・掲載し、広く情報を発信することが求められています。大阪大学では本事業採択以前よりWebサイトで情報発信に取り組んで参りましたが、本事業の成果を積極的に発信する特設サイトも構築しました。
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/researchuniversity/former.html (前半5年間)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/researchuniversity/ (後半5年間)

また、最近はWebサイトの「お問合せ」フォームをご利用頂き、他機関からのご連絡も多く頂くようになりました。特に、近隣の大学でこれからURAを配置する機関、URAを配置して間もない機関からのご相談を頂く機会にも恵まれ、URA組織とURA組織の連携により共にお互いの課題を考える事に努めるようにしています。

事業終了後に向けて

2016年より本学では、本部のURA機能とIR機能を経営企画オフィスに集約して、同オフィスにて本事業を実施しています。現オフィス長の粟津が考案した「URA×IR活動」という両機能の相乗効果を生み出す本学オリジナルな活動を推進しており、経営企画オフィスは本学にはなくてはならない組織となっています。大阪大学の中期経営計画であるOUマスタープラン2027においてもURAが要所要所に取り上げられています。

本学では本事業で実施したURAの確保・活用(Aメニュー)については、自主財源を充ていっそう拡充する計画としています。また、厳密な審査に基づくURAの無期雇用化も実施します。

研究大学強化促進事業で培った「URA力」で以て日本の研究機関の更なる研究力強化に貢献する大阪大学であり続けることが出来るよう、努力を続けたいと思います。

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【4】日本のURAの更なる貢献のためのRA協議会への期待

池田雅夫/元 大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室統括マネージャー

筆者は2010年3月、大阪大学工学研究科を定年退職し、4月に前年7月に設置された大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室の統括マネージャーに採用されました。最初の仕事は、若手研究者と女性研究者を対象とした内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラム(NEXT)の申請支援でした。その次が、日本学術振興会特別研究員の申請支援でした。いずれも、申請書類をより良くするためにコメントをするというプレアワード業務でしたが、当時はそのような語はまだ知られていませんでした。また、リサーチ・アドミニストレーターと呼ばれる人達の業務であることも知りませんでした。

そうしているうちに、学術研究懇談会(通称RU11、北海道大学、東北大学、筑波大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学がメンバー)にリサーチアドミニストレータ制度検討タスクフォース会議ができることになり、筆者が大阪大学からの委員になりました。2010年10月に第1回、11月に第2回の会議が開催されました。1回目の鳥谷真佐子先生(当時、金沢大学)、2回目の高橋真木子先生(当時、理化学研究所)の情報提供により、世の中にリサーチ・アドミニストレーションという業務があり、筆者の業務はその中に入るということを知りました。自分がしていることが認められたような気持になりました。また、そういう職種の人達をURAと呼ぶことも知りました。

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その第1回会議の資料に、右図の平成23年度(2011年度)概算要求のポンチ絵が含まれており、文部科学省がURAの普及、定着を図ろうとしていることが分かりました。

この概算要求の内、「スキル標準の策定」を東京大学が受託し、「研修・教育プログラムの整備」を早稲田大学が受託しました。また、各大学にURAを配置するリサーチ・アドミニストレーションシステムの整備」には平成23年度に5校、24年度に10校が選ばれましたが、大阪大学は24年度採択の中の1校でした。

この概算要求の中の「全国ネットワークの整備」に、「リサーチ・アドミニストレーターの資格制度・人材供給システムに向けた検討」という項がありましたが、これは実際の予算には含まれませんでした。その後、平成30年度に文部科学省のリサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会による「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」が出され、令和元年度(2019年度)から文部科学省の委託事業、補助事業として制度設計が行われ、URA関連団体の協力の下、リサーチ・アドミニストレータースキル認定制度として実現しつつあるところです。

概算要求の中の「全国ネットワークの整備」にはもう一つ「リサーチ・アドミニストレーターの全国ネットワークの構築」という項もありました。これについては、文部科学省の事業に参画していた機関を中心に平成27年(2015年)3月にリサーチ・アドミニストレーター協議会(RA協議会、2021年4月より一般社団法人リサーチ・アドミニストレーション協議会)という形で実現しました。文部科学省のURA整備の政策に賛同する組織会員(大学等)と個人の賛同者である個人会員からなる団体で、個人会員が中心の学術団体(学会)とは異なる構成になっています。大阪大学は当初から組織会員として入会し、2020年3月まで副会長(筆者)を出していました。

しかし、一般の個人会員は、URA個人が集う団体という意識をもっていると思います。会員相互がグッドプラクティスを交換し、互いに高め合うことはもちろん必要です。しかし、それだけではなく、RA協議会には、URAという人々が我が国の研究力強化にどのように貢献し、学術及び科学技術の振興並びにイノベーションにどのように寄与するかを、国と共に考えることが求められていると思います。第4、5期科学技術基本計画、第6期科学技術・イノベーション基本計画にURAへの期待が書かれています。それに応えていく必要があります。そうすることがURA個人の処遇の改善にもつながると考えられます。

しかし、残念ながら、現在のRA協議会は、スキル認定制度の実現のために大きなマンパワーを割いており、その検討ができる状況にありません。2015年の設立時のメンバーの多くが今も中心を担っており、余力がありません。新たな人材を発掘し、活動の幅を広げていくことをシステムとして考えていく必要があります。筆者自身、これまでの学会活動の経験を活かし、5年先、10年先のことを考えながら、RA協議会が持続性のあるシステムになることに貢献したいと考えています。そのために、スキル認定制度を早く完成させるために日々努めています。

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【5】今後のURAを展望する

URAに深くかかわってこられた方々に、URAの未来についてご寄稿いただきました。実は当初、ChatGPTにも寄稿してもらおうかと思ったのですが、生成された文章は日本語として正しいものの、わくわく感は全くありませんでした。やはり未来を構想し、拓いていくのは、私たち自身なのだと感じた出来事でした。


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大学における研究の変化とURAの今後

森本行人/筑波大学 URA研究戦略推進室 副室長

大学で研究をする必要はあるのか。この問いへ答えようとする時は、欧米と日本の大学の成り立ちの違いも押さえておかないとなりません。特にProfessorと教授の違いです。ProfessorとはProfessする人、つまり公言する人、明言する人です。一方教授は教え授ける人です。したがって日本では知っていることを若い世代に教え授ければ良いとされていたので、研究も教育の一部であると考えられてきました。

また大学は企業とは異なり、研究で失敗しても減俸や降格の条件にはなりません。それだけではなく、研究者の自由が認められています。

時代は変わり、公的資金が給与に充てられている大学教員は、論文を世に出さないと責任を果たせていないという風潮になってきました。加えて、Impact Factor(IF)の高さへの偏重、企業にとっても価値のある研究が良しとされる世の中となり、IFの高い雑誌に挑戦し、アクセプトされなかった研究成果は世に出なくなります。そのような中で筑波大学が、ネガティブデータでも公表してもOKなF1000Researchプラットフォームを採用した、Japan Institutional Gateway(JIG)を世界で初めて多言語で導入したことはかなり意味がある(と思っています)。

URAの今後は、研究を公的に行うことの使命を果たせるような研究環境を作ることも求められていくようになり、やがて"U"も取れ違う呼び名が出てくると思っています。


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研究プロデューサーはURAの未来になりうるか

鳥谷真佐子/慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 特任教授

私は金沢大学で9年間URAとして活動した後,2017年に慶應義塾大学に移ってからは,URAという形ではないものの,大学の研究を社会に繋ぎ価値を生み出すことに一貫して興味を持ち,教育研究を行なっています。今,私は,学内外の多様な分野の研究者や大手企業・ベンチャー企業が集うコミュニティを形成しつつ,これからの社会に必要なサービスや社会システムを発案し,その開発に必要な研究者や企業を募り,超高齢社会の課題解決を目指す様々な研究開発プロジェクトのマネジメントを行なっています。いわば研究プロジェクトのプロデューサーのような役割です。

最近,URAの業務に,IR,利益相反マネジメント,ELSI関連業務などの専門的な業務が加わってきていることを知りましたが,一方で,研究を統合していくようなプロデューサー的な役割も,URAに期待されていくのではないかと思います。なぜなら,これからの社会で求められるものは,専門や業界を越えた連携からこそ生み出されるものであると思うのですが,複数のステークホルダーが関与すればするほど増加するマネジメントコストは,研究者にはあまりにも大きすぎる負担だからです。"支援"という言葉に縛られず,研究プロジェクトをリードする存在としてのURAがあってもいいのではないでしょうか。URAの枠自体も進化していくことを期待したいと思います。


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研究力強化に向けたURAと事務職員への期待

古屋輝夫/大学共同利用機関法人自然科学研究機構 理事

私は、理化学研究所で事務職員、理事として43年間勤務させていただき、現在、自然科学研究機構で理事を拝命しております。URA協議会発足前から、多くのURAの皆さんとお付き合いをさせていただき、URAの重要性を強く認識している一人です。

理研では、事務職員として研究者の皆さんと一緒になって、脳科学研究センターやSpring-8など多くのプロジェクトの立上げ・運営に従事し、事務職員の立場でURA的な仕事をさせていただきました。

組織にとって、事務部門はとても重要ですが、「事務事務した事務」は、余り楽しくありません。研究側から見ると雑務を作り出し、研究力低下を招く要因にもなります。

私は、大学や研究機関がサイエンスの実験研究をする場であると同時に、「研究運営(研究システム)の実験場」であると考えています。国の制度や規制が目まぐるしく変わり、研究環境の制約が多くなっている現状では、「より研究し易い環境を創る」ため、プロジェクトや組織改革という実験の場を活用し、URAと事務が一体となって「最適な研究システム」を創出することが必要と考えます。

URA、事務職員の皆さんには、研究者の皆さんと一緒に研究システムの実験場を活用し、研究運営力を醸成していただきたいと思います。


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文部科学省のURA施策について

三田洋介/文部科学省 科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室 室長補佐

日頃より、大学等における研究マネジメント向上のため、URAの普及・定着にご尽力いただいており、この場をお借りして感謝申し上げます。

現在、我が国が本格的な人口減少局面を迎える中、人々が制約なくその能力を最大限に発揮し、活躍できる環境を整備していくことが不可欠となっております。
特に大学等を取り巻く環境は激しく変化し、教育研究環境の革新を進めることが求められております。このような状況において、大学経営から研究戦略、研究推進支援に至るまで研究環境の充実に関与するURAには、その中核的な役割を担うことが期待され、更に、URAの業務内容や業務の実施手法等を絶えず変革していくことが必要です。
そのため、URAが担う多様な業務に必要とされる専門的な知識の習得機会や、専門性の高い職種としてURAの能力が可視化されることなどにより、URA等のマネジメント人材の育成と配置が一層促進され、大学等における更なる教育研究推進体制の強化が期待されています。

我が国のURA施策は平成23年にスタートし、12年目を迎え、スキル標準の策定、研修・教育プログラムの整備など、URAを育成し、定着させる全国的なシステムを整備する取組を進めるとともに、研究開発に知見のある人材等を大学等がURAとして活用・育成することを支援しております。
令和3年度からは、文部科学省事業により、URA等のマネジメント人材に必要とされる知識の体系的な専門研修の受講機会の提供や、実務能力を踏まえた客観的な質保証および認定を行う質保証機関の運営を実施しております。
また、大学等における産学連携実施状況調査においては、令和3年度実績でURA配置数が1627人まで増加しており、各機関におけるURAの普及・定着が進んでいるものと考えております。

URAには、一貫した目的を実現するために、社会の様々な変化に即応し、新たな研究ニーズの把握や新たな研究マネジメント手法の開発に取り組むことが求められ、加えて、近年、科学技術・イノベーションに係る支援の枠組みや守るべきルールも多様化し、必要な知識の幅・量が増大し、URAに求められる新たなニーズ・知識への対応のための手助けとして、今後は、更にURA間のネットワーク交流や研修等が重要になります。
また、ファンディング・エージェンシーにおける組織体制の強化として、JSTにおいて研究開発マネージャーの確保に向けた取り組みが開始され、今後は、URAと研究開発マネージャーのネットワークによる、競争的資金を通じた研究支援施策の立案や実施体制の強化なども考えられます。

最後に、限られた人員体制の下で、研究者とともに新たな科学技術・イノベーションの創出に寄与されているURAの皆様に感謝申し上げますとともに、今後のURA施策にご協力をお願いします。


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【6】第7回大阪大学豊中地区研究交流会レポート

坂口愛沙/大阪大学全学教育推進機構(大学院理学研究科兼任)助教

2022年11月4日(金)大阪大学会館アセンブリーホールにて、第7回大阪大学豊中地区研究交流会を開催し、学内外の教職員、学生、企業関係者など174名の参加者がポスター発表会と意見交換会を通して交流を深めました。今回は3年ぶりの対面開催でしたが、開始時間の前から会場のあちこちで議論や談笑が始まり、活気溢れる会となりました。

<第7回大阪大学豊中地区研究交流会 関連資料>
 ・チラシ
 ・プログラム(ポスター発表リスト・要旨集)


開催経緯-研究者が研究分野や所属を超えて自由に交流できる場を作る

大阪大学は世界屈指のイノベーティブな研究大学を目指し、卓越した学術研究を行うのみならず、その成果を通じて社会にイノベーションをもたらし、人類的、社会的課題の解決に貢献することを目指しています。社会的課題の解決には、異なる経験や価値観、知識を備えた人材や組織の力を結集し、課題意識を共有し、解決に向けて共創することが重要であると考えられます。本交流会は、「文理融合・異分野連携・産学共創への架け橋」というテーマを掲げ、大阪大学豊中地区の理系部局、人文・社会科学系部局の研究者が互いの研究を知り、交流を深めるとともに、新たな産学共創活動への発展を目指し産業界とも交流を深めることを主な目的として2016年度から毎年開催しています。

新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大を受けてオンラインで開催した2020~2021年度(第5~6回)についても好評を得ましたが、参加者アンケート等で対面開催を望む声があり、今回は感染防止対策をとりながら会場開催しました。ポスターセッションでは、各研究科等から分野を問わず計42組の研究グループが研究内容についてポスターを用いて発表し、フリーディスカッションを行いました。一日を通じて活発なディスカッションが行われ、参加者の所属や専門分野の壁を超えて交流を深める機会となりました。

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写真左から:開会挨拶 西尾 章治郎(大阪大学総長)、人文学研究科からの発表ポスター前で議論する西尾総長

企画運営-所属の壁を超えた部局の連携

今回の運営は、理学研究科が世話部局となり、大阪大学豊中地区の各部局の代表者から構成される豊中地区研究交流会委員会が行いました。企画立案については、主に理学研究科・豊田岐聡教授、水谷泰久教授、法学研究科・北村亘教授、基礎工学研究科・細田耕教授、実務については、主に筆者ら部局に所属するURA3名(筆者、法学研究科URA山田綾子助教、基礎工学研究科URA藤原稔久助教)が、委員および事務職員らと連携して行いました。

コロナ禍での工夫-感染防止対策下のポスターセッション

企画段階では、新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念されていたため、様々な感染防止対策を検討しました。まず、開催日について、これまで本交流会は12月または1月に開催していましたが、窓を開けて換気しやすい季節の開催を検討し、教員や学生が参加しやすいよう授業が休講になる大学祭(まちかね祭)期間中の11月4日に開催することにしました。ポスターボードについても、これまで縦型A1サイズのボードを使っていましたが、発表者や参加者が距離をとって話しやすいよう横型にし、A1サイズのポスターを縦横どちらでも貼付できるようにしました。また、飲食コーナーは窓際に設け、飲みきりサイズのペットボトルや紙パックで飲料等を提供しました。会場内ではマスク着用やアルコール消毒を呼びかけました。

ポスター発表数については、十分な距離をとってポスターボードを配置できるよう上限を設けたうえで、例年通り各部局のサイズ(所属教員数)に応じて件数を割り振り、発表者を募集しました。共通のテーマは決めませんでしたが、発表タイトルと要旨からテーマや関心が近そうなポスターを推測し、物理的に近くに配置するなど工夫しました。また、発表者が普段接することの少ない他部局の人と交流できるよう同一部局がかたまらないようにしました。

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写真左から:法学研究科からのポスター発表の様子、理学研究科からのポスター発表の様子

広報-異なる経験や価値観、知識を備えた人が集まる場にするために

今回は学内の教職員、学生だけでなく、企業や一般の方を含め学外の方にも積極的に参加を呼びかけました。ホームページやSNSに加え、豊中市、吹田市に拠点をおく企業等向けのメーリングリスト、大阪大学21世紀懐徳堂の一般向けメーリングリスト、大阪大学卒業生向けのメーリングリストで案内する等、様々な方法で広報を行いました。その結果、発表者・関係者を除く参加者(109名)のうち約3割(34名)が学外者となりました。

アンケート結果-全体評価と今後の課題

交流会後の参加者アンケート(回答数57)では、交流会全体の評価(5段階評価)について、回答の6割以上が「大変良かった」、3割が「良かった」、1割が「どちらともいえない」で、好評だったことがわかります。教職員からは、「非常に活発な意見交換が行われ、他部局の教員の研究を知る良い機会」、「様々な分野が一堂に会しているところが素晴らしい」といった声が多く、「研究者が互いの研究を知り、交流を深める」という当初の目的にかなった会になったと言えます。また、「まちかね祭期間中は普段に比べて気持ちにゆとりがあり、交流会をゆったりと楽しみことができよかった」という声もありました。企業関係者からは、発表内容が多岐にわたること、異分野の研究者と直接話せること、先進的な研究成果が発表されていたこと等に対して評価が高く、産業界とも交流を深めることができたと考えられます。学生からも、「勉強になった」、「面白かった」という声がありましたが、「もっと学生に参加を呼びかけた方が良い」という意見が教職員だけでなく参加学生からもありました。学生に向けた広報については、これまでも課題となっていましたが、今後さらに工夫が必要と言えます。

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写真左から:基礎工学研究科からのポスター発表の様子、ポスター発表会場の様子

情報交換会の課題-より充実した交流会を目指して

本交流会の課題の一つに、情報交換会の参加者を増やすこと、ポスター発表コアタイムの活気を情報交換会にも継続させることがあげられます。今回は昼休みに1時間半の情報交換会の時間を設けましたが、ポスター発表者を含め参加者が少なく、盛り上がりませんでした。アンケートでは、「ポスター発表だけでなくセミナーやショートプレゼンテーションもあると良い」、「立ちっぱなしはつらい」といった声もありました。今回は、感染拡大防止のため軽食の提供を断念しましたが、例えば、ポスター発表の合間にランチョンセミナーを行い、座って昼食をとりながら研究発表等を聴ける機会を提供できると良いかもしれません。情報交換会にはなりませんが、参加者同士の会話による感染拡大リスクを回避でき、参加者はより充実した時間を過ごせると考えられます。

運営体制の課題-無理なく継続・発展させるために

本交流会は、今回7回目を終えましたが、アンケートでは継続開催や発表数増加を望む声が多く、発表についても、これまで参加していない部局からの参加希望が出てきています。今後さらに充実した会になることを期待したい一方、運営面でマンパワーが足りないことが最大の課題です。本交流会は、大学本部からの経費支援により実現していますが、専門のスタッフがいるわけではありません。現在の体制では、世話部局の教職員、特にURAは通常業務に加えて本交流会の企画運営に相当な時間を割かなければならず、複数部局をとりまとめながら進める業務は負担が大きくなっています。例えば、本交流会の事務局を設置して人員を配置するなど、より効率的で負担軽減につながる体制を整えることが必要かもしれません。

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写真左から:閉会挨拶 豊田 岐聡 (大阪大学大学院理学研究科副研究科長)、
司会 水谷 泰久(大阪大学大学院理学研究科副研究科長)

おわりに

一人の研究者、一つの大学、一つの研究分野では乗り越えられない壁、社会課題に挑むには、異なる経験や価値観、知識をもつ人材や組織が課題意識を共有し、解決に向けて共創することが重要で、これらは個々もしくは組織の研究力強化にも繋がるのではないでしょうか。URAには、課題意識やアイデアを共有する場・機会の提供、共創しやすい環境の整備と工夫等を通じて、人と人、組織と組織を繋ぐ役割を期待されていると感じます。

最後になりましたが、本交流会の開催にあたり、企画運営にご協力、ご支援いただいた大阪大学、豊中市、吹田市をはじめとする関係者の皆様、発表者、すべての参加者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。なお、筆者は2022年8月に理学研究科URAを退職し、全学教育推進機構へ所属を変更しましたが、第7回の本交流会開催までは企画運営に携わることになりました。ご理解いただきました皆様に感謝申し上げます。

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運営メンバー集合写真:左から、北村教授、水谷教授、藤原URA、筆者、山田URA、豊田教授


<参考> 過去の交流会開催レポート
第1回(2016年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_040.html#04
第2回(2017年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_052.html#01
第3回(2018年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_059.html#02
第4回(2019年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_065.html#03
第5回(2020年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_071.html#03
第6回(2021年度)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/uramagazine/vol_075.html#01

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【7】大阪大学ホットトピック

●「OU RESEARCH GAZETTE」を創刊しました
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2023/03/29001

●大阪大学が単独3位 -THE 日本大学ランキング 2023-
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2023/03/28001

●大阪大学先導的学際研究機構と坂出市が連携協定を締結
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2023/03/24003

●李 长久教授への「Osaka University Global Alumni Fellow」授与式を執り行いました
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2023/03/24002

●2022年度世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に選ばれた、大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点のウェブサイトが公開されています
https://prime.osaka-u.ac.jp/


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担当:川人

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2023年4月19日(水) 更新
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