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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.2

「異分野融合?!」特集

2013年11月 発行

最近ますます耳にすることが多くなった「異分野融合」というキーワード。言うは易し、行うは難し、やるならきちんとやるべし。ということで、大阪大学関係者による異分野融合の丁寧な取り組み事例をいくつか紹介します。読書の秋にちなんだ「大学本」の話題もあり、思いがけず特大号の様相です。。。

■INDEX
  1. 研究者達が自ら本気で切り拓いた融合研究

    ~科研費新学術領域研究「細胞内ロジスティクス」(領域代表:吉森保教授/大阪大学)を例に
  2. 大学執行部により支援される研究者コミュニティ育成と新たな研究分野の創出

    ~未来研究イニシアティブ・グループ支援事業
  3. URAが企画。分野やセクターを横断する場づくりの試み

    ~大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業(イノベーション対話促進プログラム)における取組み
  4. 出張報告2013 SRA International Annual Meeting
  5. エッセイ「大学に於ける研究活動と大学院教育」
  6. URA関係イベント情報
  7. 大阪大学ホットトピック

    ●博士課程教育リーディングプログラムフォーラム2013

    ●最新の研究の成果リリース
  8. 次号予告
  9. URA(大学におけるリサーチ・アドミニストレーター)とは

【1】研究者達が自ら本気で切り拓いた融合研究
~科研費新学術領域研究「細胞内ロジスティクス(領域代表:吉森保教授/大阪大学)」を例に

科学研究費助成事業「新学術領域研究(研究領域提案型)」は、新たな研究領域を設定して異分野連携や共同研究、人材育成等を図る大規模なグループ研究をサポートするために、2008年度に創設されました。文部科学省において公募・審査業務が、日本学術振興会において交付業務が行われています。

オートファジー研究の第一人者として知られる本学の吉森保教授(生命機能研究科/医学系研究科)が領域代表を務める「細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究」は、本助成事業の支援を2008~2012年度に受け、事後評価で「A+」という高評価を得ました。プロジェクトフォーメーションから、お互いに感じた大きな隔たりを乗り越えプロジェクトが成功裏に終わるまで、研究者達が自ら切り開いた道のりを吉森教授に取材しました。

(川人よし恵/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)

科学研究費助成事業「新学術領域研究(研究領域提案型)」細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究サイト

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吉森保教授(大阪大学生命機能研究科/同医学系研究科)

大阪大学吉森研究室サイト


それまでの領域研究の流れに新味を出すべく3分野からなるチームを構築

日本においては、今世紀に入った頃から、真核生物の細胞内物流ネットワーク(メンブレントラフィック)に関する研究コミュニティが科研費「重点領域研究」や同「特定領域研究」助成の支援を受けながら育ち、持続的にクオリティの高い仕事を発信できるようになりました(ちなみに、今年のノーベル医学生理学賞を受賞したのはこのメンブレントラフィック分野の研究者で、今非常に注目されている分野と言えます)。

私が領域代表を務める形で科研費「新学術領域研究」の第一期公募にトライするに当たり、こうした領域研究の流れを引き継ぐことは当然意識しました。しかし、"新学術"と言うからには、自分たちにとっても、社会的インパクトとしても新味を出したいということで、私たちが持っている人脈をたどった末に構成したチームは、細胞生物学(大阪大・理研・徳島大・群馬大・東北大)、ケミカルバイオロジー(慶応大)、情報科学(理研)の3分野からなるものでした。プロジェクトの目的は、「細胞内ロジスティクス」という新たな概念を導入し、デジタル画像解析や化合物スクリーニングなどのアプローチを細胞生物学と融合させ、病態を理解することに設定。チーム編成に紆余曲折が無かった訳ではありませんが、結果的にとてもいい出会いに恵まれたと思っています。

[プロジェクトメンバー構成とそれぞれの研究課題名(総括班)] 

※各研究者がリーダーを務める計画班に、公募班員が参画した。

・領域代表者:
 吉森 保(大阪大学・教授)
 「細胞内分解系ロジスティクスの疾患における役割と作動機構の解析」

・計画研究代表者:
 大野 博司(理化学研究所・チームリーダー)
 「上皮細胞極性物流システムによる粘膜免疫制御機構の研究」
 佐々木 卓也(徳島大学・教授)
 「高次神経機能を支えるロジスティクス機構の解明」
 泉 哲郎(群馬大学・教授)
 「調節性分泌の分子機序と内分泌代謝性疾患の発症・病態への関与」
 福田 光則(東北大学・教授)
 「リソソーム関連オルガネラの細胞内動態とその破綻による疾患発症の分子基盤」
 牧野内 昭武(理化学研究所・プログラムディレクター)
 「細胞内物流システム解明のためのイメージデータを基としたデジタル解析システムの開発」
 清水 史郎(慶応技術大学・専任講師)
 「ケミカルバイオロジーによる細胞内物流システムの理解と制御」

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細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究サイトより)

実際の申請書作成段階では、全員でのブレーンストーミングの後、船頭多くして何とやらにならないよう私がほぼ一人で執筆し、主に細胞生物学者2人と相談した上で研究分担者全員の了承を得ました。私自身門外漢の情報科学に関する部分は、記載するための素材を担当研究者に提供してもらい私の言葉に直してリライトしましたが、正直なところ、この時点では、採択されたとして実際にどんなことができるのか全く不安が無かったとは言えません。

ディスコミュニケーションを乗り越えて感じた融合研究の可能性と必要な時間

細胞生物学と、低分子化合物を用いて生体高分子の働きを調べるケミカルバイオロジーとは比較的近い分野なので、チームとして動く上でそれほど苦労は感じませんでした。しかし、今回初めてコラボした画像解析を専門とする情報科学者とは当初は話が全く通じず、正直どうしようかと思った時期もあります。

違和感たっぷりの状態を打開できたのは、プロジェクト立ち上げ時に関係者全員で打合せをした後、理研の画像解析チームがラボのメンバーほぼ全員で、他のメンバーの研究室6か所を回ってくれたことが大きかったと思います。画像解析チームは、各ラボで2日ずつかけて、他のメンバーの研究内容や本プロジェクトでやりたいことについて聞き取りを行ったり、画像解析技術についての説明をしてくれました。

このようにじっくり話す機会を持ちながら、プロジェクトが全体として動き出すまで1年ほどかかりましたが、そのプロセスで融合研究の意義や面白さを改めて確信しました。それと同時に、実際に役に立つところまで研究成果を出すには時間がかかるという覚悟もしましたが。新しい分野を作るにはやはり時間がかかるので、枠組みをつくる一歩を踏み出すことそのものが重要だと思います。

相手の領域に入り込み、win-winの関係を築く

ここからは、主に細胞生物学と情報科学との融合に焦点を当ててお話します。プロジェクトの中間評価において、情報科学を専門とする評価委員からは、単に情報科学を道具にするだけでwin-winの関係が築けなければ意味がないという厳しい指摘を受けたこともありますが、そこは最終的にお互いに新しい分野を創ろうという思いが一致していたので乗り越えることができました。実際に事後評価では「細胞内画像処理」という新しい分野を創生できたという評価をいただいています。

プロジェクト発足時のそれぞれの状況をふり返ってみると、情報科学者の面々は、ちょうど画像解析技術分野でやりがいのある新しいテーマを探していたタイミングで、防犯カメラや笑顔認識の技術とは全く違う、細胞内のスケール感にやりがいを感じてもらえたようです。他方、私たち細胞生物学者は、細胞内の物流ネットワークに関わる小器官(ミトコンドリア、オートファゴソームなど)をマニュアルで数えるか市販の簡単なアルゴリズムのソフトを使うかしており、それらの挙動分析に時間がかかり、また主観的になってしまうのが課題でした。
両分野の融合のきっかけとして有効に作用したのは、本プロジェクトと精密工学会との連携です。私自身の研究について精密工学会で講演を行った他、精密工学会主催のアルゴリズムコンテストにおいて、2010年から2012年にかけて3年連続で、細胞内ロジスティクスの研究を課題の一つに盛り込んでもらいました。このコンテストは、細胞内の点(小器官)を数えたり動きを追うといった課題設定の下に開催し、プロジェクト関係者以外の研究者からも非常に大きな反響がありました。

細胞内画像処理の技術はまだまだ発展途上ですが、以前に比べればデジタル化が進んでいます。一部の画像解析ソフトの無料公開は継続中で、異なる技術を集めた普遍的な統合プラットフォーム構築につなげたいと考えています。このプロジェクトを経て、画像解析のメンバーは「細胞内画像処理」の専門家になり、彼らを含めた各計画班員の面々とは今も研究交流が続いています。

若手が経験を積める研究コミュニティを作れたことも大きな成果の一つ

再び全体の話に戻ります。本プロジェクトの体制は、7名からなる計画班を軸にしていますが、1期と2期で延べ60名の公募研究も募り、多数の若手研究者がプロジェクトに参画しました。このように、若手研究者が融合研究プロジェクト内で経験を積めたことも、実は大きな成果の一つだと感じています。
現在、多くの学会は巨大化し過ぎて、会員同士の関係は希薄。各分野の研究の発展のための活動がしづらい状態です。実際に自分の研究の意義を再確認したり人脈を広げる機会に恵まれずに心細さを感じている若手研究者は多く、今回のプロジェクトはそうした若手の受け皿としても有効に機能しました。30名以上の若手研究者が昇進あるいはポストを確保した事実は、若手が本プロジェクトに参画した成果の一面に過ぎません。今後彼らが私たちの研究コミュニティを活性化し、一層活躍してくれることを期待しています。

URAに望むのは出会いの場づくり

お話してきた通り、本プロジェクトは私たち研究者が自ら立上げ、進めたものです。融合研究に関して、もしURAの力を借りたい場面があるとしたら、それは出会いの場づくり。日々時間に追われてはいますが、他の研究者がどんな研究をしているのかには非常に興味があります。面白い研究者が集まる情報交換の機会をオーガナイズしてもらえれば、そこから先は研究者同士で進めていくことができます。URAの業務の一つとして、ぜひ実現してください!

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【2】大学執行部により支援される研究者コミュニティ育成と新たな研究分野の創出
~未来研究イニシアティブ・グループ支援事業

文部科学省の平成25年度「研究大学強化促進事業」の支援対象に選定されたことを受け、大阪大学では様々な学内施策を展開しています。

研究大学強化促進事業
大阪大学における研究力強化実現構想の概要

本学の未来戦略を推進していく方策の一つにも位置付けられる「未来研究イニシアティブ・グループ支援事業」も、「研究大学強化促進事業」の一環として実施されることになり、研究推進部研究推進課を窓口に学内公募が行われました。「未来研究イニシアティブ・グループ支援事業」は、今後3年間にわたり、選出されたグループに、研究プロジェクト拠点事務経費、シンポジウム開催経費などの支援を行うこととしています。大阪大学ならではの基礎研究の推進や、国家的課題解決に向けた研究にイニシアティブを発揮するため、学内の研究者コミュニティ育成や分野融合を促し、大型の外部資金獲得を目指すものです。

未来研究イニシアティブ・グループ支援事業選出結果はこちら

10月18日(金)には、本学吹田キャンパスにて、未来研究イニシアティブ・グループ支援事業に選出された11グループによる共同主催で、基盤研究・リスク管理担当の相本三郎理事・副学長による講演会および討論会が行われました。

選出グループの若手メンバー等約50名が参加した前半の講演会では、相本理事が「大阪大学の研究戦略と若手に期待すること」と題して、科学技術基本計画や大学改革実行プランから大阪大学の研究推進方針・施策まで、本学の研究者を取り巻く状況の変化について説明した後、若い研究者・大学院生に望む8つのメッセージを語りました。

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選出グループ同士の顔合わせを兼ねた後半の討論会では、お互いの研究内容等についての情報交換が、そこここで活発に繰り広げられていました。中には、田中仁教授(法学研究科・社会歴史学専門/「21世紀課題群と中国」グループ代表)のように、理系研究者と接点を持って自分の研究活動に新たな展開を望む文系研究者の姿も。

本支援事業の発案者の一人・北岡良雄(研究担当)理事補佐(基礎工学研究科教授)によると、本支援事業は、研究交流を目的にした懇親会等、他から支出しづらいものにも充てられるよう、より柔軟に運用できる学内助成金として構想したもの。2010年度から2012年度まで3年間実施され、大型競争的研究資金の獲得、科研費新学術領域研究の採択にもつながった学内助成事業「研究企画ワーキング」の発展形として、より一層文系・理系が混ざり合い、お互い刺激を受けて、新しいものが生まれることを期待していると、北岡理事補佐は語りました。 年度末には、本支援事業選出グループによる合同報告会が予定され、助成金の査定が行われる予定です。大学執行部のリーダーシップの下に支援される研究者コミュニティ育成および分野融合の試みにご期待ください。

(川人よし恵/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)

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【3】URAが企画。分野やセクターを横断する場づくりの試み
~大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業(イノベーション対話促進プログラム)における取組み

大阪大学では、文部科学省の「大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業(イノベーション対話促進プログラム)」に採択されました。この事業は、「異なる発想・経験・価値観を持つ多様な知的活動主体が互いに刺激し合い、これまでイメージされていなかった全く新しいシーズ・ニーズの組合わせや、アイデア等が発掘されるような「仕掛け」をデザイン」し、大学発のイノベーションの創出が加速されることをねらいとしています。

そこで、大阪大学ではまず多様な人々があつまる場づくりに関心を持ち積極的に運営を担える人々を増やすことを目的としてファシリテーター研修を企画しました。ファシリテーターは対話型ワークショップなどで議論を調整する役目であると広く認識されています。しかしながら、実際にはファシリテーターも含めて会合の目的に沿って議論の積みあげ方(アイデアを発散するだけなのか、収束させる必要があるのか、なにか提言を出す必要があるのか等)、集まる人々の発する情報共有の方法を整えることでより豊かな議論が行えます。

本事業のねらいとしている産業界と大学との連携の場以外においても、異分野や異業種の人との交流という表現をよく耳にします。案内をかけてひとつの場所に集めればよいのかというとそういう訳でもありません。どのような人が集まろうとなにを目的にどのような結果を期待して議論をするかという設計が大切ですし、集まった人々にはそれらを伝える必要があります。
このような問題意識を背景にこの研修では、多様な人々があつまる場づくりにおいて企画・運営をするために配慮する点を学ぶことと当日のファシリテーションの技術を学ぶこと、どちらも重視した内容としました。また、演習形式で実際に参加者のみなさんが手や頭や身体を動かしながら感じとることも企画する上で大切にしました。

まず9月9日に開催した第1回目は、ロジを含めた「場」の雰囲気づくりを考えることや会議の「適切な」参加者の選び方や呼びかけ方について演習形式で考えました。具体的に架空のある会合を設計することで想像力が働き、より豊かな議論を行うためにテーマを深めるグループもあれば、じっくり会場レイアウトを練るグループやステークホルダーの分析を進めるグループなど様々でした。もちろん、正解はありませんがそれぞれの発表を聞きながら更に新しい気づきを得ることができました。そして10月17日に開催した第2回目では、「産学連携を進める上でゆずれないこと」をテーマに、「企業」「大学」「ファシリテーター・記録係」という役割に参加者が成りきって議論を進めました。このようなロールプレイを経験することで、議論に参加する人々がどのような思いをされるかなど想像力を働かせてファシリテーションをする思考ができました。

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また今回は、研究者、事務職員、研究支援者など幅広い方々の参加がありましたし、女性の参加が全体の6割強であったことがユニークな点と言えるでしょう。そして、この研修に参加したメンバーの中から数名が(独)科学技術振興機構科学技術コミュニケーションセンターが主催するサイエンスアゴラ「みんなでつくる7連続ワークショップ」においてファシリテーターとして実践を経験するという機会にも恵まれました。

今回の事業では、大学発のイノベーションの創出が加速するためにはこれまでの企業と大学の共同研究とは異なる多様な関係性があり得るのではないかという仮説から、現在企業や大学関係者へのインタビュー調査をすすめています。そして調査で得られた知見をもとに、年明けには企業や大学関係者を中心とした対話型ワークショップの開催を予定しています。こちらにもファシリテーター研修の参加者の方の協力を得て進めていく予定です。本事業の進捗報告はこのメールマガジンを通じて改めて行いたいと考えています。

(福島杏子/大阪大学 大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)

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【4】出張報告2013 SRA International Annual Meeting

米国に本拠を構えるリサーチ・アドミニストレーターのNPO団体Society of Research Administrators(SRA)Internationalは、10月26日(土)~30日(水)の5日間、ルイジアナ州ニューオリンズで2013年の年次総会を開催しました。37カ国から1,400名以上、日本からは6機関から10名が参加しました。

SAR internationalとは

SRA internationalの主たる事業はリサーチ・アドミニストレーター向け教育プログラムの提供で、情報交換の場やキャリアセンターサービスを提供するほか、ジャーナル(Journal of Research Administration)も発行しています。米国州政府、病院、大学等で働くリサーチ・アドミニストレーター約4,000名の会員を擁しており、国外からの参加会員比率はおよそ5%です。創立は1967年、ワシントンDCに近いバージニア州フォールズチャーチに本部を構えます。

年次総会の構成と認定制度

SRA international は、リサーチアドミニストレーションに関する12の認定プログラムを運営しています。認定取得には、プログラム毎に定められたワークショップ(1つ)とセッション(4~8コマ)受講が必要で、ワークショップは半日から1日のボリュームがあり、セッションは講義形式です。年次総会のセッションは午前2コマ午後2コマの時間割で組まれていましたから、1つの認定を取得するためには、おおむね1日半~3日間の受講が必要になる計算です。たとえば「Financial Management」の認定プログラムなら 、10月27日(日)にワークショップWS16 を受講し、続く月曜日・火曜日・水曜日で、次の7セッション、M8、M36、M49、T8、T21、T49、W19 を受講すればよいといった調子です。
※M、T、Wは月曜日・火曜日・水曜日の頭文字で、続く数字は曜日別の通し番号です。今年は5日間の会期中、26のワークショップと135のセッションが提供されました。

このように、一度のミーティングだけで規定のワークショップとセッションが全て揃うケースはむしろ少なく(今回の場合は、12プログラム中4プログラムのみ)、そのためワークショップ・セッションへの出席記録は3年間有効です。会員は各地で開催されるこうしたミーティングに参加しながら、有効期限内で認定に必要な出席数を積み上げるようです。
年次総会の参加費用は、早期割引でも860ドル(新規申込、年会費含む)です。日本の学会やカンファレンスの参加費用と比較すれば高額に見えますが、認定プログラムの講習会受講料を兼ねていると考えれば、納得できる金額なのかも知れません。年次総会の案内サイトを見ると、開催地の特色を取り入れたデザインが採用されており、ディナータイムのオプショナルツアーなども目に入ります。全体には「年に一度のお祭り」という側面が協調されていますが、早朝7時30分からのセッションに参加し、認定取得を目指してワークショップなどに取り組み、夕方以降は息抜きをするというようなメリハリのあるイベントとして会員に根付いていることを伺わせます。 (岩崎琢哉/大阪大学 大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)

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開催基調講演会場に集まる参加者(撮影:10月28日)

今回の参加者リストも公開されています。国籍の他、所属機関も分かります。

<情報源>

SRA international ホームページの、About SRA International
年次総会の案内専用サイト
プログラムなどのダウンロード

セッションについて
 トラック別の日程表
 各トラックの概要説明
 参加者のバックグラウンド・目的別のワークショップおよびセッションの紹介
 Journal of Research Administration について
 認定プログラムについて
 認定プログラムのスケジュールについて

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【5】エッセイ「大学に於ける研究活動と大学院教育」

大阪大学 大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチームのシニアURA、高尾正敏による5回連続シリーズエッセイの第一回です。「大学」についてもっと勉強したい方におすすめの本もご紹介します。

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以下読書の秋ということで受け売りですが・・・。 ベルリン大学の創設者 フンボルト(Wilhelm von Humboldt(1767-1835))が 大学は、教師と学生が一体となった共同体で未だ解決されていない学問の問題を絶えず研究する場所とするところであると定義したといわれています。最近ではこの所謂『フンボルトの理念』を本当に彼が提示したかどうかについて疑問もあるようです*)。明治以来日本の大学は常にこの理念と向き合ってきました。大学では研究と教育が一体であり、よい研究が学生を教育するということが唱えられてきています。大学での教育と研究の関係については古く明治時代、(東京)帝国大学が発足した時以来延々と議論されてきていますが、常に、一体論と分離論が錯綜して未だに決着が付いていません。明治時代では、大学に学ぶ学生は選抜されて、志が明確な少数の「エリート」のみでした。そういう時代では、一体論でも分離論でもそれほど問題は生じていなかったと思います。また、研究活動も後進国日本ゆえ、実学が中心であり、西洋の学術成果を日本向けに役立てる翻訳・移転で十分でした。

翻って、今はどうかというと、文部科学省の学校基本調査によれば、大学進学率が50%を超え、専門学校等を合わせた高等教育を受ける学生が約80%に達している現実があります(図参照)。巨視的には、高等教育を受けている学生は既に厳しく選抜されているとは言えない状況です。微視的には入学するのが難関である大学では選別が行われていますので正確ではありませんが。こういう状態を高等教育のユニバーサル化と言うそうです。それもアメリカに次いで二番目に達したそうです。

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学校基本調査 平成25年度(速報)より

ここからは、筆者の意見ですが、ここ一年ばかり諸先生方の著作を勉強させて頂いて以下述べる持論が先生方のご意見と概ね一致していることを確認してきました**)。現在の日本では、すべての高等教育機関で研究と教育が一体であるというのは、理想としてはあっても、現実には無理であることは明白です。『フンボルトの理念』は破綻しています。難関大学に於いても、入学してくるすべての学生が研究を通して教育を受けたいと思っているとは言えない状況で、研究と教育が一体であるということを前提にカリキュラムを組めなくなってきています。一体化を望まない学生は、研究を通しての教育よりも、大学を卒業したというブランド獲得を目指しています。大学自体が教育と研究の一体化をすべての学生に提供すべきという妄想に憑かれているとしたら、完全な時代遅れです。「昔はよかった」、「昔の学生は大志があった」というのは、単なるノスタルジーです。 現実は別のところにあることを認識した行動、大学経営が必要です。つまり、教育と研究の一体化を望む学生とそうでない学生それぞれに別のカリキュラムを提供することが必要です。大学はそれを望んでいないことは当然ですが、社会情勢が変わってしまっているので、従わざるを得ません。大学の常識が世間での非常識になってしまわないようにしなければなりません。初期コストはかかりますが、最終的にはその方が、顧客満足度が上がり、コストパーフォーマンスもよくなると思います。(第2回へつづく


*)『フンボルト理念の終焉?』 潮木守一 (教育学 名古屋大学、桜美林大学) 東信堂 2008 

**) 今月から数回連載予定です。読ませていただいた多くの著書のほか、筆者の企業在籍時代、大学へ異動後の様々な経験と、多くの先輩・同輩・後輩、および学生さんたちとの議論の中から得た貴重な意見をもとに持論を形成してきました。持論は、世間の常識と合致したところ、あるいは世間からみて非常識、暴言・暴論のところもありますが、先に述べたように、筆者の現場での実体験に基づくものであり、日頃の筆者の行動規範となっているものです。勿論日々マイナーチェンジしていますが、今のところ大きく振れることはないと思っています。そういう状況をご理解の上、毎回気楽に読み流していただけると幸甚です。 書籍のリストは最終回にまとめて示します。

(高尾正敏/大阪大学 大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)

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【6】URA関係イベント情報

今月は、大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチームが企画・運営支援に携わったシンポジウム等のご案内です。

●(学内向け Internal announcement)First Osaka University-EPFL International Symposium/First Osaka Unviersity-EPFL International Symposium

http://www.lserp.osaka-u.ac.jp/ura/activity/international/2013101506.html

大阪大学とスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)との研究や人材交流を目的とした国際シンポジウムです。

2013年12月2日-4日、
大阪大学吹田キャンパス


●大阪大学学術研究機構会議の研究ときめき*カフェ

「"省く"を究める。データセンターにおける 省エネルギーの追求から学ぶ考え方のヒント。」
(ゲスト:松岡茂登さん)2013年11月29日、アートエリアB1

「『1分子DNAシークエンシング』とはどんな技術なのか」
(ゲスト:谷口正輝さん)12月1日、大阪市立科学館


●文系研究アウトリーチ企画の新シリーズ「二頁だけの読書会」

【満員御礼】Vol.1「グローバルヒストリーと帝国」
(ゲスト:桃木至朗さん)

2013年12月7日
りそな銀行梅田支店

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【7】大阪大学ホットトピック

●博士課程教育リーディングプログラムフォーラム2013

http://leadingprogram-forum2013.jp/

2014年1月10日-11日
ナレッジキャピタル(大阪市梅田)
主催=大阪大学 

文部科学省事業博士課程教育リーディングプログラムに採択された全国の新しい博士課程教育プログラムが大阪に集まります。プログラムを履修する大学院生によるチーム(48チームがエントリー)が次世代のビジョンを提案する"Next Visonary"が行われます。


●最新の研究の成果リリース