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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.44

大阪大学URAシステム整備の『これまで』と『これから』、最終回

2017年5月 発行

3月末の本学における文部科学省URAシステム整備事業終了を受け、
大阪大学URAシステムの検証・展望をする連載記事もいよいよ最終回。

池田雅夫シニア・リサーチ・マネージャーが、日本における、また大阪大学における
URAシステム整備発展の足跡を語ります。

その他、第6回学術政策セミナー「IRの深化とIRとの共創」の講演録や、
日欧URA連携による国際共同研究促進に向けた活動報告などもお届けします。

■INDEX
  1. 大阪大学URAシステム整備の「これまで」と「これから」

    〈その8〉開拓の精神を持って
  2. 第6回学術政策セミナー「IRの深化とIRとの共創」講演録
  3. 国際共同研究促進に向けた日欧URA連携による挑戦

    -EARMA 第23回年次大会セッション"Collaboration with Japan"をきっかけに
  4. 科研費改革説明会が開催されます(西日本は6/15関西学院大学にて)
  5. 大阪大学ホットトピック

     ○「Osaka University Global Alumni Fellow」の称号を授与しました

     ○平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰に5名が受賞しました!

     ●大阪大学司馬遼太郎記念学術講演会「デジタル世代におくる司馬遼太郎」(6月15日開催)

     ●「大阪大学の集い in 名古屋」を9月23日(土・祝)に初開催!!

     ○最新の研究の成果リリース
  6. 次号のお知らせ

【1】大阪大学URAシステム整備事業の「これまで」と「これから」
〈その8〉開拓の精神を持って

 本連載の趣旨は、大阪大学において平成24年度~28年度に実施した文部科学省「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)事業(以下、URA整備事業と呼ぶ)を振り返り、将来を展望することである。これまでの7名の執筆者はいずれもこの事業が始まってから参画したURAであったが、筆者だけは、この事業が文部科学省で検討されている段階から、大阪大学の対応を考える立場であったため、事業開始前のことも含めて執筆する。


1.大型教育研究プロジェクト支援室に着任
 大阪大学は主に研究支援業務を行う部署として、大型教育研究プロジェクト支援室を平成21年7月に設置した。大阪大学として、URA整備事業が始まる前から、URAのような人材の必要性を認識していたということである。しかし、筆者が着任する平成22年4月の前までは、新たな研究支援を行うというよりも、大学全体のプロジェクトの情報収集をして研究支援を束ねることが主であった。

 ところで、なぜ、筆者が採用されたのか、それは想像の域を出ないが、工学研究科において平成13年度~17年度の科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成」(スーパーCOE)事業や平成18年度~22年度の科学技術振興調整費「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラム(テニュアトラック)という大型のシステム改革プロジェクトの申請書作成、運営、中間評価・事後評価対応等に従事し、経験が豊富だと見られていたからであろう。これらのプロジェクトの予算規模は年間約10億円と約3億円であり、大規模であった。

 採用される前に、研究推進部長に呼ばれ、仕事内容について説明を受けた。そのとき、私から『学会へ出張することは構わないですか』と質問すると、『行ってもいいけど、休暇を取って、自費で行って下さい』という答であった。そのとき、私は「もう研究者ではなくなるのだ」と実感した。つまり、大学としては、研究支援業務に就く人材として雇用したのであって、その趣旨に合わない活動は、勤務の中では認められないということである。それは当然のことであって、大阪大学の本部URAの全公募においては、自己の研究から離れて「URA業務に専従すること」を応募条件の一つにしている。

 着任してからの最初の仕事は、「最先端・次世代研究開発支援プログラム」(NEXT)に応募する研究者の申請書に対するアドバイスであった。メールでのやりとりで約90件に対してアドバイスを行った。次に、日本学術振興会特別研究員に応募する大学院生に対する支援であった。この年は、個別にアドバイスする時間的余裕がなかったため、チェックシートを作り、各自に自己点検をしてもらうこととした。次年度から、申請書に対する個別アドバイスを開始した。

 その年の秋、研究推進部長から、平成23年度より始まる博士課程教育リーディングプログラムのオールラウンド型の申請に向けて学内調整をするようにという指示があった。学内のベストメンバーの方々の尽力で「超域イノベーション博士課程プログラム」が提案され、採択された。このプログラムは、オールラウンド型の趣旨を最も反映しており、高評価を得ている。


2.RU11におけるURAの検討
 筆者は平成22年4月から研究支援業務に携わった後もしばらくはURAという職があることを知らなかった。その年の秋、RU11(北海道大学、東北大学、筑波大学、東京大学、早稲田大学、東京工業大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学で構成されるコンソーシアム)の研究担当理事・副学長懇談会の下に、URA制度検討タスクフォースが設置され、そこに筆者が参加したことで、初めてその名前を知った。そして、その第1回の会合で鳥谷真佐子先生(当時、金沢大学)、第2回の会合で高橋真木子先生(当時、理化学研究所)のURAについての説明を聞き、それは自分がしていること、そのものだと感じた。そうすると、自分の仕事が社会にオーソライズされたような気持になり、より一層やりがいが感じられるようになった。

 RU11のURA制度検討タスクフォースでは多くのことを学んだ。タスクフォースとして、これまで4回の海外調査を行っているが、筆者はそのうちの第1回(平成24年3月、アメリカ)、第2回(平成25年2月、イギリス、スイス)、第3回(平成26年2-3月、シンガポール、オーストラリア)に参加した。まず、アメリカにおいて、リサーチ・アドミニストレーターと呼ばれている人たちの業務に研究支援というよりも研究管理に近いものが多く、我々タスクフォースが描いていたイメージと少し異なるということを感じた。

 イギリスとスイスにおいては、リサーチ・アドミニストレーターというより、リサーチ・マネージャーと呼ぶほうが我々の業務を表す職として合っているように感じた。そして、オーストラリアにおいて、そう確信した。

 そうしたことに基づき、大阪大学の本部URAには「リサーチ・アドミニストレーター」、「チーフ・リサーチ・アドミニストレーター」、「リサーチ・マネージャー」、「シニア・リサーチ・マネージャー」という呼称を設けた。これは教員に対する助教、講師、准教授、教授に対応するものである。呼称は内規によって定められており、各自がキャリアパスを描きやすくなっていると考えている。なお、これらは呼称であって、職名は雇用財源によって異なっている。第3の職である学術政策研究員、特任学術政策研究員のほかに、教員の職である特任助教、特任講師、准教授、特任准教授、特任教授を適用している。

 上に書いたように、大阪大学本部URAについては採用の際に、自己の研究から離れて「URA業務に専従すること」を求めている。これは研究業務全部を否定するものではなく、URA業務、たとえば海外の大学との連携の進め方等に関する研究は積極的に行うこととしている。各種支援業務についても、支援の高度化が研究対象である。


3.URA整備事業
 文部科学省によるURA整備事業が平成23年度に開始された。この年は、上で述べた博士課程教育リーディングプログラムの申請書(計画調書)の作成(1件)とアドバイス(2件)に掛かりきりで、URA整備事業の申請業務に割く時間がほとんどなかった。それでも、それなりに自信をもった申請書(構想等調書)を作成し、提出したが、ヒアリングにも呼ばれないショッキングな結果であった。いくら良い申請であったとしても、他により良い申請があれば落ちると理解して気を取り直し、次年度に応募し直し、「世界的研究拠点整備」の実施機関に採択された。

 採択後は、すぐに立ち上げに掛かり、即戦力として、国の政策に明るく、多くのプロジェクトを内外から見た経験が豊富な高尾正敏特任教授、産学連携の経験が豊富で、筆者とは共同研究講座や博士課程教育リーディングプログラムの立ち上げを一緒に行った経験がある宮田知幸特任教授に参画していただいた。そして、公募によって、川人よし恵特任研究員、菊田隆特任研究員、岩崎琢哉特任研究員、望月麻友美特任講師、福島杏子特任研究員(着任順)という多様な経験をもつ人材の参画を得て、8名の体制が整った。このチームのリーダーであった者として、大阪大学URAの多彩さと有能さを誇りに思っている。

 URA整備事業の採択校の義務として、その活動が他機関の参考になるような情報発信が求められている。このメルマガはその重要な媒体である。また、URA体制の立ち上げ途上にある機関からインターンを受け入れている。そのほかに、URAに関する研究会やシンポジウム、リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会年次大会、関連の学会等(大学技術移転協議会、日本知財学会、研究・イノベーション学会、博士課程教育リーディングプログラムフォーラム等)で積極的に情報発信をしてきた。また、URA関係の制度や施策について議論する学術政策セミナー(平成26年度までは科学技術政策セミナー)は学内の職員研修の場と位置付けられているが、学外の方の参加も可能にしている。

 URA整備事業に採択されて約1年後の平成25年8月に大阪大学URAシンポジウムを開催し、大阪大学におけるURA体制整備の方向性を学外に広く示した。このシンポジウムでは日本学術振興会理事長である安西祐一郎先生に基調講演「変革の時代に直面する大学とURAの役割」をしていただいた。日本の大学が置かれている厳しい状況のもとでのURAの位置付け、目標とすべきこと、働き方等について、多くの課題を提起された。安西先生は学生時代には筆者と同じ制御理論の研究をしておられ、1974年にIEEEの論文集に発表された『ディジタルでアナログはどこまで制御できるか』を議論された論文の素晴らしさがずっと脳裏に焼き付いていた。同学年であることもあって、当時、筆者が勝手にライバル視していた方である。また、理化学研究所の古屋輝夫理事(当時)に話題提供「リサーチ・アドミニストレーターと事務職員 ~理研における研究マネジメント強化の事例から」とパネルディスカッション「変革の時代を生き抜くためのURAシステム整備に向けて」のパネリストをしていただいた。古屋理事は事務系の方であるが、研究者と事務職員のどちらにも偏らない大局観をもっておられ、その後も多くのことを学ばせていただいた。

 URA事業は当初は平成26年度までの3年度間の計画であり、3年度目の初めに進捗状況評価を受けた。そこでA+の評価をいただき、3年度目の終わりの継続審査を受けて、平成27年度からの2年間の継続が認められた。ただし、その2年間はシニアURA2名の雇用経費が主であって、残りの6名は自主経費雇用に移行した。その意味で、26年度末は一つの区切りであり、東京と大阪で大阪大学URA報告会を開催して、8名のURAが各自の活動を総括し、報告した。また、東京会場では、京都大学のURA代表として、学術研究支援室長(当時)の田中耕司先生に基調講演「URAに期待されること:越境あるいは跨境のすすめ」を、大阪会場では、文部科学省科学・技術学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室の山下洋室長(当時)に基調講演「イノベーションの創出を支えるURAの今後の展開」をしていただいた。


4.大型教育研究プロジェクト支援室から経営企画オフィスへ
 この大阪大学URA報告会と同じ時期である平成27年3月に、文部科学省委託調査研究URAシンポジウム「大学の研究経営システムの改革に向けて ~URAへの期待とURAシステムの課題~」が開催された。そこでは、URAの業務はもっと大学経営に関することを含むべきとの意見が多く聞かれた。また、経営人材へのキャリアパスも考えるべきという意見もあった。このシリーズのシンポジウムは、平成28年3月には「大学の研究経営システムの確立に向けて ~経営を担う・支える人材確保にどう取り組むか~」というタイトルで、また平成29年3月には「大学等の研究力・経営力の向上に向けて ~大学等が求めるURAシステムの確立・強化にどう取り組むか~」というタイトルで開催された。これは、大学の研究力強化は、ヒト、モノ、カネという資源の配分を考える経営と深く関わっており、URAに経営の視点が必要であることを意味している。

 この流れと軌を一にして、大阪大学では、経営判断に資する情報の必要性が認識され、平成28年4月、URAが所属していた大型教育研究プロジェクト支援室と学内外のデータを収集・解析していた未来戦略機構戦略企画室を合わせて、経営企画オフィスを発足させた。大型教育研究プロジェクト支援室長が研究担当理事であったのに対して、経営企画オフィスのオフィス長は総合計画担当理事である。

 この組織再編により、URAは従来の研究支援業務に加えて、経営支援の業務に携わることとなった。競争的資金獲得支援等の従来のURA業務については、希望する研究者が増加しており、URAへの理解と必要性は一段と高まっている。経営支援業務としては、経営企画のためのベンチマーク大学の選定や関連するデータ収集等において、総長・理事等への適切なデータの提供に努めている。今後、より高度な経営支援業務の増加が予想される。これらの両業務においては、研究推進課や経営デザイン課の事務職員と協働しており、大阪大学全体の事務系人材・業務の高度化にも効果が現れていると考えている。


5.終わりに
 以上、URA整備事業に関係する活動に絞って記述してきたが、大阪大学には「研究大学強化促進事業」で別に7名のURAが雇用されている。URA整備事業で雇用されていたURAとは完全に一体で活動しており、全体から見て必要な能力をもつ人材を採用してきた。

 本部URAは現在13名の体制である。今後も充実していく計画であるが、20名に満たない人数で今後も増え続ける大学全体のニーズに対応することは困難である。そこで、部局に研究支援のノウハウを広めて、部局と協働する必要があると考えている。本部URAの2週間ごとのミーティングに理学研究科、工学研究科、法学研究科、国際公共政策研究科、微生物病研究所、免疫学フロンティア研究センターのURAや類似職の方にも出席していただいて情報共有を図っている(人事異動等のため、現在は欠席の部局もある)。また、これらの部局以外に、附属図書館や大阪大学のアウトリーチ活動を担っている21世紀懐徳堂(学内組織)、附置研究所・センターの集合体である学術推進機構会議などと、論文執筆講習やサイエンス・カフェ等の活動を協働して行っている。

 筆者は5年間に渡り、大阪大学URAのリーダーを務めてきた。本年3月のURA整備事業の終了という区切りを機会に、リーダーを菊田シニア・リサーチ・マネージャーと交代した。と言っても、仕事をしなくなったわけではなく、筆者にしかできない(と自分で思っている)業務に携わっている。また、RA協議会の副会長として、もうしばらく、日本のURAとURAシステムの高度化に貢献したいと考えている。

(池田雅夫/大阪大学 経営企画オフィスURA部門)

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【2】第6回学術政策セミナー「IRの深化とIRとの共創」講演録

【開催概要】

近年、日本の大学において、IR(Institutional Research)が活発に行われるようになりました。このIRは「己を知ること」とも解釈でき、現状を正しく理解した上で、大学の経営戦略に関する立案、実行、検証をするために不可欠です。今後、国立大学でも、企業で一般的に行われているPR(Public Relations)やIR(Investor Relations)に取組むことが、ますます重要になってきます。

本セミナーでは、前者のIRに関する国内有数の研究者である山形大学の浅野茂氏からその最新動向を、また、私立大学でPRや後者のIRに関連した活動を通して大学の発展に尽力されておられる立命館大学の野口義文氏からはその効果について、それぞれお話し頂きました。

■日時:2017年2月23日(木)14時~16時
■場所:大阪大学 吹田キャンパス テクノアライアンス棟1F アライアンスホール
■プログラム:
  ・講演1:浅野 茂氏(山形大学 学術研究院 教授)
  ・講演2:野口 義文氏(立命館大学 研究部事務部長 産学官連携戦略本部副本部長)
  ・総合討論
■主催:大阪大学経営企画オフィスURAプロジェクト
■共催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)

【全体討論の抜粋】(全文はこちら
質疑応答

質問者A:浅野先生に質問です。図11、12で説明しておられたIRの体制・機能としての4つの顔のお話を特に興味深くお聞きしておりました。おそらく今の日本の大学はよちよち歩きの段階で、とりあえず情報を集めるところから始めるケースが多いのでしょう。一方でアメリカは、先ほどのスライドですと2名から5名程度で業務を回しているというお話でした。アメリカでもさまざまなタイプの業務があると思うのですが、それらがどのように変わってきたのかに関心があります。

次に、野口先生への質問です。最後にお話があった教員と職員の「スピード」観、「面白い」観、「出来た」観、「報連相」観には違いがあり、立命館大学ではURAを職員の系列に置いて運営しているとのことでした。また、研究部で2名の政策系の教員を採用したというお話がありました。それから、第3期研究高度化中期計画をつくるときにも、教員の方々が参加されたとお話をお聞きしました。その中で、ゆったりしたスピード観で、報連相もあまりしないと評された教員の方たちは、どういう役割を果たしているのでしょうか。

浅野:アメリカは大学によって全然違うと思います。例えばジョージア大学のIRは 20人程度で、役割がかなり専門分化されており、先ほどの講演でお話しした4つの顔のそれぞれの方がいらっしゃいます。反対に、ご覧いただいたスライドにありましたように、多くの場合IRは2名から5名程度です。そうした場合に強くなってくるのは、情報精通者としての側面だと思います。この傾向は日本においても変わりません。

一方、アメリカの最近の状況を見ていきますと、実はどんどんIRオフィスそのものが減っていっているという状況があります。特に州立大学では、日本で言う運営費交付金と自己負担の割合が、当初7対3だったのが3対7に逆転していって、さらには2対8、1対9になろうとしているところもあり、財務的に厳しい大学も出てきています。こうした状況から、これまで個々の大学に置いていたIR室をとりやめ、上のレベルの州立機構などに置くという動きが起こっています。しかしながら、これはIPEDSにしろ、個別の大学にしろ、州レベルでしっかりデータを集める基盤が整っているために、移行できるのだと思います。こうした状況を鑑みますと、日本ではまだまだそこには到達できないと思います。また、これから個々の大学でどれだけIRのスタッフが配置されるかですが、決して楽観視できないと思います。どちらかというと、職員あるいは教員であっても、各人がさまざまな業務に対応していかなければならなくなりますので、それを効率化する上では、情報精通者としてのIRの顔の確立とデータベースの構築は、いずれ不可欠なものになるのだろうと考えています。


野口:ご質問は、研究政策をつくって運営する上で、教員がどのようにコミットメントしていくかということだと思います。研究政策の原案をつくる際は、私ども職員を中心に研究担当理事や研究部長、副部長とも話しながら進めていきます。IRで分析をしたデータに基づいて、立命館大学のどこを伸ばしていかなければならないか対応を考えるとき、例えば、まだまだ数少ない若手研究者の数を増やす方策や、1,000万円以上の大型の産学連携を増やすためにはどうしたらいいかといった政策を立てます。一方、研究費をもらって制度を運用していくのは教員です。ですから考える研究部長、副部長などの教員幹部にはここでも登場してもらいます。自身が研究部の教員幹部として教員の観点から、その政策にエントリーするモチベーションはあるのか、採択されたあと1年間運用できるのか、目標を達成し得るのかといった部分について、シミュレーションします。その上で運用の見通しが立てば、全学の研究委員会に諮ります。全学の研究委員会では、研究担当の各学部・研究科等の委員によるディスカッションがありますが、その前に、研究部の教員部長2名、副部長2名、研究担当理事と理事補佐の各1名で検証します。このような役割で教員幹部にコミットメントしていただきます。

質問者A:野口先生の6つの効能のお話の中にあった、意見集約で全学の共有、全学合意といったことを、そういうプロセスで行っているということでしょうか。

野口:そうです。そのプロセスの前段をつくるのが研究部です。先ほどお話ししましたが、14学部7独立研究科があって、ポスドクを含め1,400名の教員と研究者がいらっしゃいます。そこで合意形成を図らないことには、こちらがよかれと思ってやったものの実際に学内提案公募してみたら、エントリーが数十名にも満たないといったケースが出てきてしまいます。こちらでよかれと思ってつくったものに対して、教員主体の研究委員会でかなりの議論をするという、丁寧なプロセスで進めていきます。

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【3】国際共同研究促進に向けた日欧URA連携による挑戦
-EARMA 第23回年次大会セッション"Collaboration with Japan"をきっかけに

 欧州の大学・研究機関にも、Research ManagerやGrant Advisorなど呼称は様々ですが、研究支援を専門とする人たちがいます。そうした研究支援者の欧州団体、EARMA(European Association of Research Managers and Administrators)の第23回年次大会が、2017年4月25日・26日にマルタ共和国の首都バレッタで開催されました。年次大会の回数で言えば、日本のリサーチ・アドミニストレーター協議会(RA協議会)は今年8月で3回目ですので、それに比べるとEARMAは専門職団体としてかなり"先輩"に当たります。

 EARMA年次大会は、毎年600~700名規模が集まり、研究資金プログラムの動向や研究支援者としてのスキルアップなどをテーマにした数十のセッションが開かれています。今年は、38カ国から654名の参加があり、全54のセッションが実施されました。
 ◎詳しいプログラムはこちら
 http://www.earmaconference.com/programme-2017/

 大阪大学URAは、以前から協力関係にあるアムステルダム大学Grant Advisor(外部資金獲得支援担当者)と共催で、また広島大学神戸大学京都大学のURAとの連携により、日欧共同研究促進をテーマにしたセッション"Collaboration with Japan"を実施しました。私たちのセッションは、International Collaboration and Fundingトラック*1に位置づけられるものでした。

 欧州では、研究支援者が資金プログラムの公募情報を研究者に提供し、新たな研究プロジェクト立上げを促すことが広く行われているようなので、本セッションでは、まずは国際共同研究に使える資金プログラムの情報をきっかけに、日本との共同研究に対する欧州URA*2の関心を高めること、更にはURA連携による国際共同研究促進を欧州URAに呼びかけることを目指しました。具体的な資金プログラム紹介についてJSPSロンドン研究連絡センターおよびJSTパリ事務所にもご協力いただき、セッションは以下のような構成としました。

[1]Research funding landscape for Europe-Japan collaboration seen from a wider perspective(日本の4大学URAの共同発表。日欧共同研究促進のための資金プログラムの選択肢紹介とURA連携による国際共同研究促進の呼びかけ。写真は筆者の発表場面)
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[2]JSPS programmes for Europe-Japan collaboration(JSPSロンドン研究連絡センターの上野信雄センター長による、JSPSの資金プログラム紹介)
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[3]JST programmes for Europe-Japan collaboration(JSTパリ事務所の中山久美子副センター長による、JSTの資金プログラム紹介)
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[4]Q&A Session(左手はセッションオーガナイザーのOlga Gritsai博士/アムステルダム大学)
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Photos by Mr. Tamaki SUZUKI

 EARMA年次大会で、日欧共同研究促進をテーマにしたセッションが開かれたのはおそらく初めてのことで、大会参加者654名のうち、40名(講演者含む)の参加を得ました。Q&A Sessionでは、資金プログラムの審査期間など制度面についての質問だけでなく、欧州連合の研究開発投資フレームワークHorizon 2020が日本からはどのように見えているのかといった問いかけまで、様々なコメントが出されました。セッション全体を通じ、運営側・参加側双方にとって実り多い時間を創出できた手ごたえを感じています。参加者アンケートの結果でも非常に満足度が高く、日本との共同研究に使える資金プログラムに限らず、日本のURAの組織や活動・ノウハウについても知りたいという声が予想以上に聞かれました。日本のURAを広い意味での同僚や仕事のパートナーとして見てくれている海外のURAの存在をうれしく感じると同時に、こちらが"先輩"に一方的に学ばせてもらうだけでない関係性を改めて意識し、身が引き締まる思いでした。

 このセッションは、実施して終わりではなく、準備段階を含む一連のプロセスの結果、国際共同研究促進を目的に、日欧URAで連携していこうという流れにつながりました。EARMA年次大会期間中に実施した関係者ミーティングでは、政府系機関に対する共同研究の資金プログラムの提案、日欧の研究者マッチング、日欧共同研究事例の共有等、様々な活動アイデアが出され、既に一部の案件について具体的なやりとりが始まりつつあります。活動がどのように形になっていくのかはこれからのことですが、個人的には、研究者自身による動きを下支えするしくみの構築や政府系機関への働きかけ等、研究者とは異なるアプローチによる実務者ならではの展開を通じて、国際共同研究促進に貢献できればと考えています。

(川人よし恵/大阪大学 経営企画オフィスURA部門)

*1 EARMA 2017年次大会のトラック(セッションのカテゴリ)
1. Pre-Award: Proposal Development and Funding Opportunities
2. Post Award: Grant Management
3. Professional and Career Development; Transferrable Skills
4. Post-Award: Research Strategies and Policies, the Global Dimension and Collaboration with non-Academic Partners
5. International Collaboration and Funding
6. Sponsors/ EARMA

*2 本稿中、URAとは、日本のリサーチ・アドミニストレーターのような研究支援専門職を全般的に指すものとする。

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【4】科研費改革説明会が開催されます(西日本は6/15関西学院大学にて)

現在、科研費改革の一環として「研究種目の見直し」や「審査システムの改革」が進められており、平成30年度公募(平成29年9月実施予定)より、新たな審査区分表及び審査方式の導入など大きな変化が生じます。

これに伴い、制度の変更点や考え方等も含めた研究者対象の科研費改革説明会が、以下の日程により2会場で開催されます。

東日本会場:平成29年6月8日(木)13時30分~16時00分、東京大学にて
西日本会場:平成29年6月15日(木)13時30分~16時00分、関西学院大学にて

説明会の詳細はこちら(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1385136.htm

※大阪大学URAはこの説明会に参加し、学内の教職員の方々に適宜情報提供する予定です。

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【5】大阪大学ホットトピック

「Osaka University Global Alumni Fellow」の称号を授与しました

平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰に5名が受賞しました!

大阪大学司馬遼太郎記念学術講演会「デジタル世代におくる司馬遼太郎」(6月15日開催)

「大阪大学の集い in 名古屋」を9月23日(土・祝)に初開催!!


○最新の研究の成果リリース

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【8】次号のお知らせ(予告なく変更する可能性があります)

大阪大学における「研究大学強化促進事業」の実施状況について報告します。

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【企画・編集・配信】
大阪大学経営企画オフィスURA部門(旧 大型教育研究プロジェクト支援室)
川人・岩崎

◎配信停止やご意見・ご感想はこちらまで


info-ura@lserp.osaka-u.ac.jp

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1 大阪大学産学共創(旧 産連本部)B棟(2階)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/
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2020年10月30日(金) 更新
ページ担当者:川人・新澤