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URA MAIL MAGAZINE vol.60

日本発の破壊的イノベーション創出を目指して--「ムーンショット型研究開発制度」が始動します

2019年3月 発行

社会の困難な課題の解決を目指して、挑戦的な研究開発を推進する「ムーンショット型研究開発制度」が動き出しました。今号ではこの制度に関する情報や、デンマークからゲストを招いて開催した人文・社会科学系研究の「インパクト」に関するシンポジウムの開催報告などをお届けします。新任URAの紹介もあります!

■INDEX
  1. 日本発の破壊的イノベーション創出を目指して--「ムーンショット型研究開発制度」が始動します
  2. シンポジウム開催報告「オープンイノベーションにおける人文学・社会科学系研究の役割とインパクト〜デンマークから見た日本と欧州間のCo-Creationを考える〜」
  3. 大阪大学経営企画オフィスに新しいメンバー(モリソン アンドリュー リサーチ・アドミニストレーター)が着任しました!
  4. URAによる新任教員研修プログラム実施報告
  5. 外国人にとってフェアな研究環境を構築するためにURAができることとは
  6. 【学内向け】英語論文の投稿支援(FY 2019前期)/Publication Support for English Research Papers, FY 2019 (First Half)
  7. 【学内向け】2020年度採用分 日本学術振興会 特別研究員 申請支援について/Support for the Applicaton of "JSPS Research Fellowship for Young Scientists"
  8. 大阪大学URAだより--2019年2月・3月の主な活動
  9. 大阪大学ホットトピック
  10. ●長澤丘司教授(生命機能研究科)が日本学士院賞を受賞

    ●研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について

    ●海外大学オフィス開所式(マヒドン大学)を開催

    ●ノーベル賞受賞者 湯川秀樹博士の姿が蘇る!湯川博士の研究史料99点や写真39点が閲覧可能に

    ●第1回日本オープンイノベーション大賞(文部科学大臣賞)を受賞しました 基礎研究段階からの産学共創 --組織 対 組織の連携--

    ●文部科学省Society 5.0実現化研究拠点支援事業による「Society 5.0がめざす未来社会 ライフデザイン・イノベーション研究拠点キックオフシンポジウム」を開催しました

    ●「#DO IT ALL」人材募集!2019年度大阪大学職員採用試験募集要項を掲載

    ●全国ダイバーシティネットワーク組織・大阪大学シンポジウム「挑戦する女性が拓くダイバーシティ時代へ(Progressive Initiatives of Empowering Network for Diversity)」を開催しました

    ●大阪大学ニューズレター2019春号を発行しました

    ●第8回 サイエンス・インカレで本学の学生が受賞

    ●第13回大阪大学近藤賞の募集について

    ●「大阪大学 学生向け 災害時情報」Twitterアカウント開設

    ●2019年度いちょう祭開催

    ●5/3(金・祝)大阪大学ホームカミングデイを開催!!

    ●最新の研究の成果リリース

【1】日本発の破壊的イノベーション創出を目指して--「ムーンショット型研究開発制度」が始動します

(菊田 隆/大阪大学経営企画オフィス研究支援部門)

2019年3月15日から「ムーンショット型研究開発制度に関する提案・アイデア公募」が始まりました。ムーンショット型研究開発制度は2018年6月14日の第39回総合科学技術・イノベーション会議で提案されて、12月20日の第41回総合科学技術・イノベーション会議で実施が決定された、挑戦的な研究開発を推進するための制度です。
本稿では、この制度が発足した背景や制度の狙い・仕組み、アイデアの公募などについて、現在までに公表されている情報を整理して紹介します。

破壊的イノベーション創出のための仕組みの必要性

日本では、将来の産業や社会の変革(破壊的イノベーション)の可能性を秘めた独創的な研究開発成果が基礎研究領域から多数生み出されています。しかしながら、それらの研究成果を産業や社会に実装して広く展開していく仕組みが整っていない状況にあるといわれています。例えば、1987年に当時大阪大学の石野良純先生が発見したDNAの繰り返し配列が、ゲノム編集技術CRISPR-CAS9の開発の基礎になっていることはよく知られていますが、このように日本の基礎研究の成果が欧米で破壊的イノベーションに結びついている例がいくつかあるようです。

現在、世界各国では破壊的イノベーションの創出を目指した戦略的で挑戦的な研究開発への投資を拡大中であるため、日本においても課題解決型の挑戦的研究開発(ムーンショット)を推進する仕組みを整備することが重要になっています。これまで革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)がこの役割を担ってきましたが、本年度でこのプログラムが終了するのを受けて、ImPACTの研究開発手法を改善・強化した新たな仕組みが必要になりました。このような背景で発足したのがムーンショット型研究開発制度です。

ちなみにムーンショットというのは、困難ではあるが、実現すれば大きなイノベーションを生む壮大な目標・挑戦のことで、米国のアポロ計画に由来しているということです。

ムーンショット型研究開発制度

ムーンショット型研究開発制度は、少子高齢化の進展や大規模自然災害への備え、地球温暖化問題などの我が国が抱えるさまざまな困難な課題の解決を目指して、研究者と関係する府省が一体となって挑戦的な研究開発を推進するための仕組みです。

制度のポイントとして、以下の3点があげられています。
1.人々を魅了する野心的な構想を掲げ、世界中から研究者の英知の結集を目指す → グローバルな環境でイノベーションを創出!
2.我が国の基礎研究力を最大限に引き上げつつ、失敗も許容しながら革新的な研究成果を発掘・育成 → 我が国の独創的な基礎研究がイノベーションを生み出し、次なる基礎研究投資を呼び込む好循環を目指す!
3.研究マネージメント手法の刷新、最先端の研究支援システムの構築、オープン・クローズ戦略の徹底等 → 世界動向を常に意識し、スピード感のあるチャレンジングな研究マネージメントに転換!

これらの実現のために、司令塔である総合科学技術・イノベーション会議の指揮の下に関係する府省が一体となって、破壊的イノベーションの創出につなげることを目指します。

制度の枠組み

困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象に、総合科学技術・イノベーション会議が未来の姿(ムーンショット目標)を描きます。具体的には、公募によるアイデアや国内外の研究開発動向等に関するトップ研究者等からのヒアリング結果等を参考にして、有識者で構成されるビジョナリー会議で検討してムーンショット目標を設定します。その後、JSTとNEDOが設定されたムーンショット目標の実現に向けた斬新な研究アイデアを国内外の研究者等から広く募集します。

つまり制度は、①ムーンショット目標のアイデア公募、②ムーンショット目標の設定、③研究開発プログラムの応募、④研究開発プログラムの実施、という流れで進行することになります。
研究開発の期間については現時点で明確にはなっていませんが、途中にステージゲートを設けたうえで、最大で10年間のプログラムになるようです。

制度の推進に必要な予算は、平成30年度第2次補正予算案で1,000億円(文部科学省800億円、経済産業省200億円)が計上されています。

ムーンショット目標設定のためのアイデア公募

先に述べたように、現在、ムーンショット目標の設定に向けてのアイデアの公募が始まっています。これは、ビジョナリー会議における議論の参考にするために、最先端技術を応用して解決を目指すべき未来の社会課題等について広く一般にアイデアを募るものです。提案すべき内容は、これから日本が優先的に取り組まなければならないと考える領域・分野を選び、その領域・分野において解決すべき社会課題の具体的な内容や目指すべき社会像です。

領域・分野は選択制になっており、選択肢として、○健康・医療(ライフサイエンス)、○食料、○都市、○エネルギー、○環境・資源、○産業・労働、○情報通信・テクノロジー、○宇宙開発、○その他、の9つが挙げられています。このことからは、ムーンショット目標の検討段階においては、領域・分野に制限はなく、全方位からの提案が求められていることが分かります。

アイデアの提案に興味がある方は、以下のURLをご参照ください。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095190270&Mode=0

ムーンショット目標が設定された後の動きや研究開発プログラムの公募内容等については今のところ十分な情報が公表されておりませんが、研究支援部門では引き続き情報を収集するともに、研究開発プログラムの申請の際には必要に応じて支援させていただきます。

ムーンショット型研究開発制度のホームページ
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/index.html


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【2】シンポジウム開催報告「オープンイノベーションにおける人文学・社会科学系研究の役割とインパクト〜デンマークから見た日本と欧州間のCo-Creationを考える〜」

(クリスチャン・ベーリン/大阪大学経営企画オフィス研究支援部門)
開催の背景

近年、国内外の大学に対して、産官学民連携による持続的な共創 (co-creation)の基盤構築の要請が益々高まっています。同時に、co-creationにより社会的インパクトを生み出すオープンイノベーションを実現するため、人文・社会科学系(以下、人社系)研究のより良い活用のアプローチを模索する様々な取り組みが増えています。こうした取り組みの試行錯誤を通して、持続的で責任ある社会の変革のみならず、人社系研究の新しい役割が創出されること、さらには、これらの活動の結果、人類にとってより明るい未来へ続く道が見えてくることが期待されます。

これらの期待に応じたアクションについて議論するため、デンマークから有識者2名を大阪大学へお招きし、欧州とデンマークにおいて人社系研究を活かすco-creationとco-designを促進する現状の取り組みについてご講演いただくシンポジウムを、2018年11月9日に大阪大学豊中キャンパスにて開催しました。また、大阪大学からは、社会ソリューションイニシアティブ及びUNESCO Chair「健康推進のソーシャルデザイン」の関係者に話題提供いただき、人社系研究に焦点を当てる日本と欧州との間のco-creationに関わる課題と可能性について活発な議論を行いました。

4氏の講演内容
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Budtz氏による基調講演

デンマークからお招きしたゲストの一人目は、David Budtz Pedersen氏(オルボー大学ヒューマノミックス・リサーチ・センター 准教授)です。Budtz氏のご専門は社会科学技術論で、政策立案や大学のガバナンスと共創の取り組みに関わる研究をされています。Budtz氏の基調講演では、ヒューマノミックス・リサーチ・センターの活動および、人社系研究の社会における価値創出の方法や課題について研究するACCOMPLISSHプロジェクトの取組等が紹介されました。特に科学技術の社会的・倫理的リスクや可能性と人社系研究との関係に焦点が当てられ、民主主義と「嘘」、人工知能の現在、そしてこれらの課題認識などについて事例紹介と知見を提示していただきました。

二人目のゲストJan Andersen氏はEARMA (European Association for Research Managers and Administrators)の前会長で、現在はデンマーク工科大学(DTU)研究支援チームの責任者です。Andersen氏は、自らのキャリアや実務経験に基づいて、デンマークと欧州におけるURA類似職の役割をお話しくださったほか、学外ステークホルダーと連携するプロジェクト創出のベストプラクティスの共有から学ぶことを目的としたプロジェクト"BESTPRAC"の成功事例を紹介されました。

大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)長の堂目卓生氏は、持続可能な共生社会を「命を大切にし、一人一人が輝く社会」として捉え、命を「まもる」「はぐくむ」「つなぐ」という視点から、社会課題に取り組むというSSIの理念を説明されました。また、学内外及び国内外の多様なステークホルダーと共に社会の課題の解決に取り組む、SSIの研究プロジェクトの活動にもふれられました。

大阪大学人間科学研究科教授の山中浩司氏は、健康のための社会デザインを目指すUNESCO Chairプロジェクトについて、2018年10月10日にパリのUNESCO本部で開催されたイベントや、学内外の国際共同研究パートナーとの活動の構想などを紹介されました。

パネルディスカッションや質疑応答における「インパクト」についての議論の一例

●インパクトの罠
パネルディスカッションは、最近欧州で話題になっている「インパクトの罠」に関する議論から始まりました。インパクトの効果を「見える化」しようとデータに固執する結果、本質的かつ長期的「価値」の創生の議論が妨げられる状態(罠)に嵌らないために、どのような対策があるのか、どのように考えたらよいかについて、知見を共有していただきました。

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パネルディスカッション風景

Budtz氏は、インパクトを生み出そうとする努力をすればする程、それを生み出し難くなっているのではないかという問題提起をされました。自然科学系研究における実用的な基準に基づいて、人社系の研究領域も評価される傾向が強い中、人社系の領域を科学の多様な分野と融合させる取り組みおよび、新しい対話のモデルの創出が求められていると考えておられるBudtz氏は、「インパクト」(結果)そのものに焦点を当てるのではなく、新しいネットワークとコミュニケーションの仕方に着目する必要があり、インパクトを生み出し得る条件や環境を備える「プロセス」に重点をおく必要があると強調されました。

それに対して堂目氏は、SSIが学内の人社系研究を統合する役割を果たして、社会的インパクトにつなげることを目指していると語りました。これ自体は間接的インパクトと理解して良いとの見解が共有されました。

Andersen氏は、「私は研究を遂行するに当たって、プロジェクトを達成して何かの成果を生み出すために打ち込んでいるわけではない。末長く続く後世のために研究を行っている」という、DTUに所属している人文学の研究者の言葉を引用しながら、短期的成果を測りやすい研究と人社系研究とは異なる側面があることへの認識を高めると同時に、政策を決める政治家と官僚の認識も変える必要があるだろうという考えを示しました。人社系の研究は社会の文化(過去と未来)を支える役割を担っているので、その価値またはインパクトを測ろうとすること自体が間違っているという本質を貫く発言もありました。欧州で最も評価の高いERC (European Research Council)の競争的研究資金プログラムにおいては、学術界に対して想定できるインパクトがピアレビューに基づいて審査され、採否を決める評価基準となっているそうです。このような視点を尊重して、研究者に良い研究ができる余裕を与えることによって、社会的インパクトを生み出すという考えも参考になるとの意見をいただきました。

●インパクトや価値を測る基準
上記のような議論を受けて、山中氏は、UNESCO Chairの元で行う大阪大学の研究プロジェクトを立ち上げている段階にあり、近い内に各プロジェクトのゴールと出口を議論して考えなければならない状況にあると述べ、プロジェクトを評価するに当たって一番大事なポイントは何か、他のパネリストに問いかけました。

Budtz氏は、「インパクト」と考えられるものは必ず何かの視点及び価値観に基づいて評価されなければならないので、基本的な価値概念が極めて重要だというポイントを強調し、しっかりした価値の基準に基づいた戦略又はミッション・ステートメントがあれば、インパクトを評価することが容易くなると述べました。具体的な方法としては、例えば、幸福(well being)という価値を増やしていきたいと考える場合、「幸福」とはそもそも何か、何故重要か、我々はどのように捉えているか等、金銭的又は実用的な基準と異なる定義をどう説明するかが重要となります。Budtz氏は、定義があればこそ、自ら設定したインパクトを測る指標の使用と合わせることができるという論理を主張しました。

また、「価値」とその評価や、大学経営・研究のマネジメントとの関係にも議論が及びました。Budtz氏は、UNESCO ChairやSSIの活動の効果を測る上で、SDGsに定められたある程度標準的な指標を基盤として参照してはどうかとのアドバイスを提示しました。同時に、大学の戦略やミッション・ステートメントへのつながりを意識することの重要性にも言及しました。

●外部資金申請書で用いられる用語の空洞化
参加者から出された質問の一つに、外部資金の申請書において社会的インパクトやイノベーションに関する用語が過剰に使われている状況に対してどう考えるか、というものがありました。

Andersen氏は、外部資金の申請書作成支援において、「イノベーション」「イノベーティブ」「ワールドリーディング」等の言葉を使うのではなく、そうした質に値する具体的な要因・要素を表現するような工夫を促しているとのことです。「何を」しようとするかの説明を、「どのように」それをしようとするかという説明に変えることによって、具体的に何がイノベーティブであるか、何が実際に世界屈指なのか、インパクトに繋がる期待をもたらしている点がどこか等の問いにきちんと答えることが重要だそうです。Budtz氏は、競争する上でそうした言葉の濫用を無くすことはできないかもしれないが、提案を説明するための論理的な根拠として、定性的なケース(事例・ナラティブ)と定量的なデータの両方が必要だと述べました。両者のバランスは永遠の課題だと考えられます。

今後の日欧連携への期待

今回のシンポジウムでは、人社系研究のインパクトにまつわる課題は日欧共通点が多いことが確認されたほか、最後には、デンマーク・日本双方のパネリストから、今後の先進事例調査や研究プロジェクトにおける連携等、今後のコラボレーションの可能性が提案されました。このシンポジウムが、日欧連携で人社系研究のより良いあり方のこれからを探っていく一つのきっかけになることを願っています。

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【3】大阪大学経営企画オフィスに新しいメンバー(モリソン アンドリュー リサーチ・アドミニストレーター)が着任しました!

Morrison(モリソン) Andrew(アンドリュー)/リサーチ・アドミニストレーター、特任学術政策研究員

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モナシュ大学 ビジネス管理修士課程(MBM)修了 

オーストラリアの国家政府、および州政府に勤務した後、日本の大学において国際化推進業務を担当。その後、シドニー大学(The Office of Global Engagement, The University of Sydney)においてURAとしての役割を担い、研究者および大学間の研究力を中心とした戦略的なパートナーシップの締結支援に従事。2019年1月に大阪大学経営企画オフィスURA部門に着任。

【ひとことメッセージ】

1月16日より、大阪大学経営企画オフィス研究支援部門に着任しましたモリソン・アンドリューと申します。この5年間オーストラリアにあるシドニー大学のOffice of Global Engagementで働いていました。業務は様々でしたが、海外にある大学との戦略的な提携関係を結んで、その戦略的なパートナーとの共同助成金プログラムを立ち上げることが 主な仕事でした。戦略的なパートナーと共同研究を促進するために、シドニー大学の研究者に外部資金の獲得をサポートし、戦略的なパートナーとの研究プロジェクト、 ワークショップやセミナーなどを企画・立ち上げる支援を担当しました。やりがいのある仕事でしたが、もう一度海外に出たいという思いがあって、家族を連れて日本に 来ました。

日本に住むのは初めてではありません。2013年まで6年間東京で働いていましたが、大阪に住むのは初めてです。東京と色んな違いがあると感じています。大阪に来てから 数週間しか経っていないのに、その違いを少し経験することができました。この間地下鉄に乗っていて、隣りのおばちゃんに「あめちゃん、いる?」と聞かれました。6年間 東京に住んでいた間に、知らない人から話しかけることはありませんでした。

日本で働いた経験があるからといって、今回の大阪大学の仕事は「なんの問題もないやん!」・・とは思いません。言葉と文化の違いがあるし、分からないことがたくさん ありますが、大阪大学の皆さんと協力し合って、研究力の強化に貢献できたら幸いに思います。皆さんと一緒に様々なことを経験できることを楽しみにしております。 これから、 どうぞ宜しくお願い致します。


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【4】URAによる新任教員研修プログラム実施報告

大阪大学ではFD(ファカルティ・ディベロップメント)に積極的に取り組む一環として、新規採用する教員に対しては新任教員研修を必須化しています。本プログラムでは多岐にわたる研修が開講されており、そのうちの「研究能力開発プログラム」として、当部門主催で、外部資金獲得に向けての2つのプログラムを開催しました。

2月13日の「研究を進めるにあたっての外部資金獲得および本学における支援制度等について」では、外部資金の概要および資金配分事業例についての説明、本学における外部資金獲得支援制度およびURAによる支援の紹介、外部資金獲得に係る申請書作成における留意点等について解説しました。その後の質疑応答では、科研費の研究種目などについての具体的な質問があった他、「URAの方からのご説明は本当にわかりやすくためになり、また学内でさまざまなサポート制度があることも大きな発見でした。」といった声もお寄せいただきました。

2月22日は、"An introduction to research funding schemes in Japan and Kakenhi Application"と題し、主に外国人教員を対象とした英語による研修プログラムを実施しました。外国人研究者としてのキャリアディベロップメントや日本の外部資金制度の概要、そして科研費制度の説明や学内での申請支援について説明し、参加者同士で外部資金獲得などに対する課題の共有も行いました(詳しくは今号の記事5でも紹介しています)。後日、さっそくある外部資金の申請に関する問い合わせがあり、対応しました。また、"I hope that such services will continue and grow in the future. "とのコメントもいただきました。
経営企画オフィス研究支援部門では、今後も本学の研究力強化に向けて、研究支援を行っていきたいと考えています。

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【5】外国人にとってフェアな研究環境を構築するためにURAができることとは

(姚 馨/大阪大学経営企画オフィス 研究支援部門)

大阪大学研究企画オフィス経営支援部門は、2019年2月に外国人研究者向けFDプログラム"An introduction to research funding schemes in Japan and Kakenhi Application"を、また3月には外国人向け日本学術振興会特別研究員説明会を、それぞれ開催しました。これらの試みでは、外国人研究者のキャリア・ディベロップメントの支援も視野に入れ、外国人にとってなかなか理解するのが難しい、日本の大学や研究関連制度に関する基礎知識を提供し、個別の質問にも丁寧に対応しました。

本稿では当日の様子を紹介するとともに、外国人研究者にとってのフェアな研究環境の整備について考えます。

①大阪大学における外国人研究者向け新任教員研修プログラム開発の試み

大阪大学では、2017年10月以降に新規採用される講師、助教等の新任教員を対象に、採用後3年間において30時間のファカルティ・ディベロップメント(FD)研修プログラムを受講することを必須としています。

そのための豊富な研修プログラムが用意されていますが、つい最近まで、英語による、内容も外国人教員に特化した研修はありませんでした。実際、30時間の受講義務は当分外国人に適用されないことになっています。

そこで我々大阪大学経営企画オフィス研究支援部門では、今年度から、外部講師による研究成果の発信をテーマとしたワークショップ等を積極的に新任教員研修プログラムに組み込むと同時に、URAが講師を務める外国人研究者向けの研修にも初めて挑戦しました。その試みは、2月22日に開催の"An introduction to research funding schemes in Japan and Kakenhi Application"と題したプログラムでした。

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外国人向けFDプログラムのチラシ

今回のセミナーは、外国人研究者としてのキャリア・ディベロップメントや日本の大学の雇用システム等、大学人にとっては基礎知識のはずなのに外国人にとってはなかなか理解するのが難しい話から始めました。実際、参加者全員がかなりこの話題に食いついたと感じましたし、Q&Aセッションでも関連の質問が複数ありました。

競争的資金ついては、基本的な概念やその獲得がどのように研究者のキャリアに影響するのか、また外国人が研究資金の獲得において特に注意すべき点や、日本の公的競争的資金制度・民間助成・学内助成等それぞれの特徴、注意事項、情報を得る手段等を説明しました。

日本の競争的資金に関するランドスケープ全体の話が終わった後、今度は大多数の研究者が(外国人にとっても比較的に情報を得やすく、提案書を英語で作成できる数少ない競争的資金の筆頭なので)一番重視している科研費の制度、資格、申請・運用にあたっての注意事項、学内の申請手続きと支援プログラム、研究者自身の責任等に関して、一連の情報を提供しました。

終わりに、当部門作成の科研費英語マニュアルを活用しつつ、申請書の書き方についても簡単に説明しました。

Q&Aセッションでは、まず参加者より事前に共有いただいた競争的資金に関する経験談や質問を取り上げ、最後に会場から出された質問に対して回答しました。キャリア・ディベロップメントから科研費制度や提案書の書き方まで、バラエティーに富んだ質問が多かったため、Q&Aセッションは40分以上にも及びました。私たち主催側にとっても良い刺激になりましたし、今回の初めての試みでこちらの狙い通りだった部分とまだ不足している部分を知ることができました。

参加者は10名ほどで、多いとは言えませんが、周知方法の制限や外国人研究者の人数等の影響要素も考えますと、良いスタートを切れたと考えます。

アンケートの結果から、全体的に良い評価を得たと知ってホッとしたと同時に、各セクションの内容量が大きいため、2回分けてもっと詳しく話してほしい等の要望もあり、今後のコンテンツの改善やさらなる展開に活かしたいと考えています。

この研修のために、実は我々担当者でかなり多くのエフォートを投入し、コンテンツを作成しました。特に外国人にとってのキャリア・ディベロップメント、日本の大学の雇用システム、日本全体の競争的資金体制等の内容に関しては元々英語の資料やデータがほぼないため、まさに外国人のニーズを考えながらゼロから作り上げ、正直大変でした。

それでもこのような外国人研究者に特化したFD研修を企画し、その中でも特にキャリア・ディベロップメントの内容を盛り込んだのは、演者の一人であった私自身が外国人として、今になって「遠回りしたな」、「あの時これを知っていたらな」等しばしば思うようになり、その悔しさがあったからです。大阪大学に初めて来た当時、日本の大学の体制や競争的資金の仕組みはおろか、自分の肩書についている「特任」の意味すら分かりませんでした。更に遡っていくと、修士号も博士号も日本で取得していますが、その当時日本の大学の体制や国の教育研究政策について勉強する機会がありませんでした。このようなことは、日本人にとって知っていて当たり前かもしれませんが、留学生や外国人研究者にとってはそうではありません。彼らに対して、それぞれ適切なレベルの内容を扱う勉強の機会を提供できることは、自身のキャリア・パスをデザインするのに大事なことだと思いますし、その大学の国際化の発展にも関わると考えます。

外国人研究者に対してのフェアな研究環境の整備は、国、助成機関、大学、部局、研究室、さらに外国人研究者個人のそれぞれのレベルにおいて責任と努力が必要であり、それぞれにしかできないこともあります。我々URAは、競争的資金や大学の運営において多くのノウハウ、外国人研究者としての実体験、多言語に対応できるスキル等の強みを持っていますので、私たちにしかできない支援をこれからも考えていきたいと思います。

②開催報告:外国人向け日本学術振興会特別研究員説明会

2019年3月13日に、大阪大学経営企画オフィス研究支援部門主催、研究推進部・国際部・全学教育推進機構・キャリアセンター協力の、外国人向け日本学術振興会特別研究員説明会を開催致しました。

説明会では、URAが特別研究員制度、申請手続き、学内支援、申請書の書き方等について解説し、その後2019年度より特別研究員として採用された留学生が、実体験を共有してくれました。また参加者には、講演資料の他、当部門作成の最新版英語マニュアル、審査区分の英訳等の参考資料も配付しました。

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(写真左から)多くの参加者が集った会場、個別相談の様子

最後には個別相談の時間を長く設け、研究推進部、国際部、URAがそれぞれ申請資格・手続き、外国人特別研究員制度、申請書の書き方等について、参加者からの一つ一つの質問に対して個別に回答しました。

今回は多くの関係部局の協力もあり、当部門史上最大の72名からの参加がありました。ここ4年間続けてきた英語マニュアルの作成等、外国人に対する様々なサポートの効果がじわじわ出てきたと感じました。URAとしては今後も外国人の若手研究者に応援を送りつつ、彼らにとってフェアな研究環境作りに努めていきたいと思っています。


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【6】【学内向け】英語論文の投稿支援(FY 2019前期)/Publication Support for English Research Papers, FY 2019 (First Half)

本学が平成25年8月に実施機関として採択された文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として、研究成果の国際的発信力を一層高め、大阪大学の研究力の強化を促進することを目的に、若手研究者・女性研究者・外国人研究者を対象とする海外の学術誌への英語論文の投稿支援を実施しています。

学術英文校正費用の支援とともに、経営企画オフィス研究支援部門のリサーチ・アドミニストレータ(URA)によるコンサルティング等を行います。また、支援の全過程において、URAによる日本語・英語・中国語での相談に対応できます。

As part of the Program for Promoting the Enhancement of Research Universities (研究大学強化促進事業), the Research Management and Administration Section, Office of Management and Planning is providing financial and academic support forresearchers to publish their papers on international journals. The purpose of this support is to promote the international recognition of the research results originated from Osaka University.

The financial support for using external English copy-editing service, as well as consultations on article submission and proofreading are provided by our university research administrators (URA). In addition, consultations in Japanese, English, and Chinese are available during the whole support process.

詳しくはこちら/More information
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/researchdissemination/fy2019.html

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【7】【学内向け】2020年度採用分 日本学術振興会 特別研究員 申請支援について/Support for the Applicaton of "JSPS Research Fellowship for Young Scientists"

経営企画オフィス研究支援部門では、2020年度採用分日本学術振興会特別研究員申請者を対象として、申請書作成マニュアル作成・学内公開や申請書アドバイス等、各種支援を行っています。

To those who are planning to apply for the JSPS (GAKUSHIN) Research Fellowship for Young Scientists this year, individual consultation on proposal writing via e-mail is available. Research Administrators (proposal development experts) from the Research Management and Administration Section, Office of Management and Planning will provide
advice on your proposal (Japanese or English).


詳しくは以下のページをご覧ください/More information
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/grantsupport/post_13.html


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【8】阪大URAだより―2019年2月・3月の主な活動

2019年2月・3月の大阪大学経営企画オフィス研究支援部門の活動例を紹介します。

●外部資金獲得支援いろいろ
・ムーンショット型研究開発制度への応募検討支援
・JST/RISTEX「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」への応募検討支援
2020年度採用分 日本学術振興会 特別研究員 申請支援を開始
・外部資金獲得支援に関する問合せをもっと便利に:大阪大学公式サイト上に窓口メールフォームを公開(マイハンダイログイン必要)

●学内支援プログラムを運営しています
平成30年度(後期)研究成果の国際的発信支援プログラム 英語論文の投稿支援(FY 2018後期)
教員等「公募要領(英語・日本語)作成支援ツール」の配付をしています
平成30年度研究成果の国際的発信支援プログラム 若手教員等研究情報発信支援事業(マイハンダイログイン必要)

●各種セミナーやシンポジウムなど
新任教員研修プログラム「研究を進めるにあたっての外部資金獲得および本学における支援制度等について」"An introduction to research funding schemes in Japan and Kakenhi Application"実施
セミナー「サイエンス誌から見る論文発表のメカニズムと学術ジャーナルのトレンド」実施
大阪大学附属図書館主催の研修「オープンサイエンスの基礎知識:大学と研究データ」共催
第10回学術政策セミナー「大学職員の知恵と力を生かすしかけ」実施
第11回学術政策セミナー「エビデンスに基づく政策立案を考える--大学の研究や教育の推進を事例として--」実施
・全学教育推進機構主催「大学院生のためのスキルアップ講座 Transferable Skills Workshop」に講師として協力(講演タイトル「研究費を獲得するために必要な申請書作成ノウハウ」)

●国内外のURA等ネットワークでの活動に参画しています
第5回 人文・社会科学系研究推進フォーラム「人文・社会科学系研究を振興するファンドとその支援 --これからの社会を共創する人社系研究のために--」の共催、ポスター発表「そのままの人文・社会科学系研究をお金につなげる--大阪大学・りそな銀行による回り道アプローチの経過報告」
・25th EARMA Annual Conference 2019でのポスター発表および、日欧URA連携によるセッション実施

●大阪大学の研究成果を学外に届けるための取組に関与しています
大阪大学社会ソリューションイニシアティブの活動支援
・「人文・社会科学系研究から考える企業の課題」プロジェクトの事後研究会開催

●その他
・本部と部局の研究推進・支援業務担当者の情報共有や意見交換のためにURAミーティングを定例開催(2週間に1回)
・研究力強化施策の検討サポート
・順次部局を訪問させていただき、情報交換・意見交換させていただいています
・各種学内会議・委員会への参画


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【9】大阪大学ホットトピック

長澤丘司教授(生命機能研究科)が日本学士院賞を受賞

研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について

海外大学オフィス開所式(マヒドン大学)を開催

ノーベル賞受賞者 湯川秀樹博士の姿が蘇る!湯川博士の研究史料99点や写真39点が閲覧可能に

第1回日本オープンイノベーション大賞(文部科学大臣賞)を受賞しました 基礎研究段階からの産学共創 --組織 対 組織の連携--

文部科学省Society 5.0実現化研究拠点支援事業による「Society 5.0がめざす未来社会  ライフデザイン・イノベーション研究拠点キックオフシンポジウム」を開催しました

「#DO IT ALL」人材募集!2019年度大阪大学職員採用試験募集要項を掲載

全国ダイバーシティネットワーク組織・大阪大学シンポジウム「挑戦する女性が拓くダイバーシティ時代へ(Progressive Initiatives of Empowering Network for Diversity)」を開催しました

大阪大学ニューズレター2019春号を発行しました

第8回 サイエンス・インカレで本学の学生が受賞

第13回大阪大学近藤賞の募集について

「大阪大学 学生向け 災害時情報」Twitterアカウント開設

2019年度いちょう祭開催

5/3(金・祝)大阪大学ホームカミングデイを開催!!

●最新の研究の成果リリース


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2020年10月30日(金) 更新
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