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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.56

「Research Meets World!」特集

2018年7月 発行

2012年に文部科学省がURA制度を日本に導入し始めた当時は、プレ・アワード(主に外部資金獲得支援)とポスト・アワード支援(プロジェクト進捗管理や報告書作成支援など)がURAの主な役割として期待されていました。しかし近年では、例えば研究成果の国際的発信支援や研究活動の国際化支援など、URAが担う研究支援業務には広がりが見られます。

今号では、本学の異なる分野・研究経歴を持つ外国人研究者に対するインタビュー記事、日本の大学で活躍している外国人URAからの声、大阪大学が誇る世界的研究拠点IFReC(免疫学フロンティア研究センター)の新任研究支援スタッフによる寄稿の三本立ての特集で、そうした研究支援業務の多様化・国際化の現状を考えます。

■INDEX
  1. 外国人研究者に対する支援を考える―インタビュー調査から見えてきた大阪大学の外国人研究者インサイトを手掛かりに
  2. 4つの問いから紐解く!日本の大学で活躍する7名の外国人URAの思いとは
  3. 「国際化する」~免疫学フロンティア研究センターにおける外国人研究者支援~
  4. 平成30年度行政事業レビューにおける「研究大学強化促進事業」レビューの公開プロセスについて
  5. 【学内向け】科研費説明会・セミナーのご案内
  6. 第7回学術政策セミナー「社会から共感を得る大学となるために」講演録を公開しました
  7. リサーチ・アドミニストレータ―協議会 第4回年次大会の参加申込受付中です。大阪大学URAは2つのセッションを担当します(9月19日-20日、神戸にて)
  8. 「研究者のためのオープンデータセミナー」開催案内(7月18日、関西大学)
  9. リサーチ・アドミニストレーター協議会スキルプログラム専門委員会による「資格認証ワーキンググループ」報告書が公開されました
  10. 阪大URAだより―2018年6月・7月の主な活動
  11. 大阪大学ホットトピック
  12.  ●【地震関連】学生のみなさんへ(小林副学長からのメッセージ)

     ●大阪北部地震における大阪大学の被害状況等とその対応

     ○8月18日(土)「大阪大学の集い in 福井」を初開催!!

     ●大阪大学と独立行政法人日本貿易振興機構が包括的連携推進協定を締結

     ●大阪大学「JFEウエルディング協働研究所」開所記念式典とシンポジウムを開催

     ●最新の研究の成果リリース

【1】外国人研究者に対する支援を考える―インタビュー調査から見えてきた大阪大学の外国人研究者インサイトを手掛かりに

(姚 馨・川人よし恵/大阪大学経営企画オフィス URA部門)

大阪大学に限らず、日本の多くの大学では、教育・研究等における国際的展開の増加・高度化に連れ、外国人教職員の人数も増えています。そのため、研究支援においても、外国人研究者を対象とした様々の取組みが各大学で実施されてきました。

大阪大学経営企画オフィスURA部門では、主に外部資金の獲得、研究情報の国際的発信及び関連セミナーの開催等において、外国人研究者に対して支援を提供しています。今号のメルマガを機に、我々の支援に対する認識度や、異なる分野・研究経歴を持つ外国人研究者が感じている支援ニーズを調べるために、3名の外国人研究者に対してインタビューを行いました。

本稿では、3人の先生方のお話の中で特に印象的だった内容を、著名人の名言を小見出しとして紹介します。


Cevayir Coban教授(大阪大学免疫学フロンティア研究センター/先導的学際研究機構)
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出身国:トルコ
日本歴:15年(ポスドクからスタート)
阪大歴:15年
研究分野:免疫学、マラリア

Winning is not a sometime thing; it's an all-time thing.
Vince Lombardi(常勝で知られた米国のアメリカンフットボール・コーチ)

大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)で独立PIを務めるCoban先生は、さすがに外部資金に関しての経験も豊富だと、インタビュー開始後すぐに感じました。今までに科研費の若手Bを3回、基盤Bを2回、AMEDを2回、他に上原記念生命科学財団、山田科学振興財団等の民間助成や、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成等の海外助成を受けたことがあるそうです。

ここまでのお話では順風満帆に思われますが、外部資金獲得に関して意外に失敗も多いとお聞きしました。勝敗は兵家の常だと言いますが、優秀な研究者ほど、失敗に惑わされないのかもしれません。

外部資金の獲得においては、IFReCの研究支援者からのサポートが大きいそうです。本部から届いた助成金公募情報は、IFReCが選別、英訳し、外国人研究者に送付されているとのこと。例えばAMEDの一部や民間助成のように、提案書作成や提出の際に日本語が必要な場合は、IFReCでは企画室の教職員が手伝ってくれます。文部科学省の世界トップレベル研究拠点(WPI)に採択されて発足したIFReCでは、多くの外国人研究者が活躍しているので、外部資金獲得支援において人的リソースもワークフローも明確に決まっています。

「IFReCにいるのでスポイルされているかもしれない」と、Coban先生は笑って言いますが、大学のシステムや外部資金に詳しい、バイリンガルで熱心な研究支援者が身近にいることが、どれくらい大事なのかが改めて確認できました。

一方で、IFReC内部の外国人研究者支援制度が比較的整っているからか、Coban先生は我々URA部門の支援活動に関しては残念ながらご存知ありませんでした。外国人研究者への周知ルート、方法を検討する余地があると思いつつ、Coban先生のラボの学生や助教が大学の日本学術振興会特別研究員の申請支援や科研費支援を必要としているお話も伺い、PIクラスの外国人研究者の場合は、必ずしも本人を対象とするだけではなく、そのラボにいる若手研究者の育成を意識した支援も必要かもしれないと感じました。

Knowledge exists to be imparted.
Ralph Waldo Emmerson(米国の思想家・哲学者・作家)

助成金を取ってきて研究プロジェクトを進め、その成果などをどのように発信しているかを尋ねると、まずオープンアクセスのジャーナルで論文を出すことを非常に重視しているとのお話でした。ハイブリッド誌の場合、Coban先生は、たとえ自分で追加費用を負担しても、可能な限り論文をオープンアクセスにしているそうです。オープンアクセスにすると、より多くの人が読んでくれますし、引用数も比較的上がりやすいというメリットがあります。

また、インパクトファクターの高いジャーナルに論文を発表すると、IFReCが部局のウェブサイト上や、EurekAlert!等の国際研究広報メディアにおいて、プレスリリースを出してくれるそうです。そのプレスリリースを見て、取材を依頼してきたニュースメディアもあります。Coban先生の研究は、国内の大手新聞や、時に海外の雑誌でも取り上げられています。

他にも、自分の科研費申請経験を学内の説明会で外国人研究者にシェアしたり、高校生を対象とした科学普及事業等に関わる等、とてもアクティブに活躍しているCoban先生。助成金獲得から成果発表まで、Coban先生が研究サイクルを回していく姿勢は、外国人の若手研究者だけでなく、研究支援者にとっても刺激になりますし、活動のヒントにもなるのではないかと思いました。


El Balti Béligh准教授(大阪大学大学院法学研究科 法学・政治学専攻)
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出身国:チュニジア共和国
日本歴:10年(修士課程学生からスタート)
阪大歴:1年
研究分野:国際私法、アラビア諸国法律

Knowledge is a process of piling up facts; wisdom lies in their simplification.
Martin H Fischer(米国の医師・作家)

IFReCのような研究センターと異なり、各研究科では、外国人教員も日本人と同様に、教育、研究、大学運営の三つの責任を負わなければなりません。大阪大学に来るまで研究だけに専念してきたBéligh先生にとって、阪大での1年目は講義や学生の対応に追われる日々で、研究助成金の申請は、知らぬ間に二の次になってしまったといいます。

しかしながら、近年では多くの人文・社会科学系の研究者も積極的に外部資金を取りに行こうとしています。Béligh先生もまた、すでに研究課題を決め、今年度からでもぜひとも科研費に挑戦してみたいとのことです。

一方、科研費改革に伴う制度の変更、申請手続き、電子申請システム、提案書の書き方等、外部資金を初めて申請する外国人研究者にとっての様々な不安についてのお話も出ました。日本語の事務連絡メールは日々たくさん届きますが、その中から有用な情報を抽出・整理することがとても難しく、その分対応の遅れ等が出てきてしまうそうです。周りの職員や研究支援者が皆優しく手伝ってくれるので、Béligh先生は自身が良い研究環境にいるとしばしば感じておられますが、それでも、外国人研究者向けの外部資金申請時の事務手続きチェックリストのようなものを大学として提供してもらえると、とても良いのではないかとのことでした。

Béligh先生へのインタビューは、阪大独自の英語版科研費申請マニュアルを毎年作成している我々URAにとって、マニュアル改善のヒントが得られたと同時に、外国人研究者の外部資金の申請経験等に応じた支援フローや必要なリソースを考える機会にもなりました。

知は行の始めなり。行は知の成るなり。
王陽明(中国の儒学者、思想家)

研究情報の発信の話になると、Béligh先生の法学分野における外国人研究者ならではの貢献が見えてきました。Béligh先生の場合は、日本の新しい法令や判例を英語やフランス語に翻訳し、海外向けに発信することもされています。アラビア諸国の法律を専門とするBéligh先生にとって、論文のように直接的な業績にならないにも関わらず、何故自分の時間を使ってまでそうした取組を進めているのでしょうか。

Béligh先生によれば、海外でも日本の法律に関心を持っている法学の研究者が多数いますが、法律文書の翻訳が難しいため、タイムリーに翻訳してくれる人が少なく、日本語のわからない人にとって情報へのアクセスが大きな問題になっているそうです。海外の研究者との繋がりを作り、いずれ国際共同研究も目指したいからこそ、こちらから海外への情報提供を大事にしているという姿勢が伺えました。


Heun Tae Lee講師(大阪大学大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻)
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出身国:韓国、カナダ
日本歴:9年(ポスドクからスタート)
阪大歴:9年
研究分野:核融合学、原子力工学、材料力学

Success is where preparation and opportunity meet.
Bobby Unser(米国の著名なレーサー)

Béligh先生と同じく、日本語が大変上手なLee先生も、相当な労力を使って日本語で教育活動等を行うのと並行して、研究助成金にも挑戦し続けている状況だといいます。

今までは科研費の若手Bに採択された経験があり(H26-28年度)、学内外のベテラン教授の大型プロジェクトにおいて研究分担者を務めることも多いLee先生の場合も、やはり、外部資金に申請して不採択のケースは珍しくないそうです。それでも、研究費を定期的に取ることは、研究室の維持にも研究者個人のキャリア・ディベロップメントにも影響するため、絶えず科研費や、JSPSの国際共同研究プロジェクト、民間助成等に積極的に応募しています。

核融合のように企業からの大規模な助成があまり期待できない分野においては、科研費、JSPSのプログラム等、国からの基礎研究助成金がとても重要になります。ある程度慣れている科研費はともかく、大量にある日本語での助成金情報、しかも新しいプログラムもある中から申請すべきものを選別するのは、外国人研究者のLee先生にとって一苦労だそうです。単純に日本語の情報を理解するだけでなく、公募プログラムは自分の分野とどのくらいマッチしているのか、お金はどの領域によく配分されているのか、エフォートをかけて申請するべきなのか、申請する場合比較的に早いペースで論文を出せる安全な課題にするのか、それともより面白いがリスクの高い課題を選ぶのか等、様々な質問が出てきますが、誰に相談すれば良いのかがわからないとおっしゃっていました。

Move beyond the old assumptions, practices, and language that can be barriers to equal access.
Frances Hesselbein(米国の女性経営者、作家、大統領自由勲章の受賞者)

インタビュー中感銘を受けたのは、Lee先生は日本語が大変上手にも関わらず、提案書はいつも英語で書こうと決めているというお話です。審査員にとっては日本語のほうがより読みやすいに違いありませんが、外国人研究者として英語で申請をしなければ、日本の研究助成システムの国際化がなかなか進まないのではないかとのことでした。

一方で、Lee先生は、国内の学会において日本語で発表をしたり、学生の誘致・育成も意識しながら雑誌において日本語で研究成果をわかりやすく伝えたりといった努力もされています。

「外国人研究者は、言葉のみならず、日本の科学技術や助成機関の政策、大学の制度等様々な面においても、日本人研究者が当たり前に知っていることで戸惑い、つまずく場合が多々あります。研究においては実力と中身が大事であるのに、これらのバリアによって研究がうまく進められないことや評価されないことがあったらとても残念です。言葉を始め、様々なバリアによってできないことがあるとしたら、外国人研究者は定着しないでしょう。大学組織として、そのようなバリアをなくすしくみが求められます」と語るLee先生。上述した通り、自身もまたバリアをなくそうと尽力されているLee先生の言葉には、非常に説得力がありました。

研究支援の国際化とは、単純に英訳によって外国人研究者を支援することだけではなく、外国人研究者の活動によって国際化そのものが支えられている部分を意識し、そうした個々の努力を組織としてのしくみに持っていけるよう、私たちURAも何をすべきか考えなければならないと改めて思いました。


終わりに

今回インタビューに協力してくださった先生方は、分野や経験の点からまさに三者三様でした。しかしながら、期せずして一致する部分もありました。例えばここ数年、日本の研究支援の国際化に関して、助成機関、大学、部局いずれのレベルでも目に見える進歩があったことが挙げられます。特に阪大歴の長いCoban先生とLee先生によりますと、外部資金の獲得においては、英語で情報が届くタイミングの遅れが依然して存在するものの、10年前の状況に比べると、今は英語での情報提供が一通り揃うようになり、研究を支援するスタッフも身近にいるようになったとのことです。これからは、単なる情報を英語化するだけではなく、情報の選別や伝達、相談体制作りをより効率的に実現するにはどうしたらいいか考えることが、より一層重要になってくるでしょう。また、研究情報の国際的発信においては、外国人研究者は支援の対象になるだけではなく、時に私たちURAが行う支援のパートナーとして力をお借りできればありがたいと、今回のインタビューで思いました。


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【2】4つの問いから紐解く!日本の大学で活躍する7名の外国人URAの思いとは

(企画:姚 馨・望月麻友美/大阪大学 経営企画オフィスURA部門)

最近のURA関連イベントに参加した際、外国人URAが増えていることにお気付きの方も多いのではないでしょうか。今回は他大学の外国人URAの方々が活躍されている様子を、一問一答の形式でお届けしたいと思います。

協力者(敬称略、苗字アルファベット順):
Chen Chen/陳 晨(熊本大学 大学院先導機構URA 推進室&国際先端科学技術研究機構(IROAST))
Charles DaSalla(東京工業大学 研究・産学連携本部)
Marc Hansen(東北大学 研究推進・支援機構URAセンター)
Kate Harris(東京大学 大学院理学系研究科研究支援総括室)
Harold Kusters(九州大学 学術研究・産学官連携本部)
Jason M. Sanderson(熊本大学 大学院先導機構URA推進室)
Hongxiang Wang/王 鴻香(長崎大学 研究開発推進機構)


Q1. なぜ日本の大学でURAになろうと思ったのか、キャリアパスについてのお考えを教えてください。

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Chen Chen: 本大学で博士後期課程を終了した時に、熊本大学の知り合いのURA から声をかけられました。それをきっかけに、日本の大学において研究者と違う立場で様々なスキルを使える仕事にチャレンジし、プレゼン力、交渉力を含む総合力を高めたいと考えるようになり、URA に応募しました。キャリアパスはまだ決まっていないですが、「研究」というキーワードから離れることはないと思います。笑


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Charles DaSalla: One of the things I enjoy most about being a URA is getting exposed to research that is completely different from my own. When I first visited Japan, it was through a summer fellowship organized by NSF and JSPS. I saw the work NSF officers were doing to promote various scientific fields and thought that was work that I would like to do. Since then, I have connected with more and more people at my institution and throughout Japan, and with that, a desire has grown within me to see them succeed. That desire is what drives me.

Marc Hansen: 2013年4月に東北大学に「リサーチ・アドミニストレーションセンター」が設置されました。本学だけでなく、日本全体で大学改革の風が再び吹き始めました。大学は知の共同体です。私はその一員としてまた外国人としてその形成のプロセスにより積極的に関わりたいという想いからURAに転職しました。第3の職種のURA制度は当時本学でできたばかりでしたので、正直あまり深くキャリアパスについて考えていませんでした。但し、多くの可能性を秘めている重要な橋渡しポストであると確信していました。

Kate Harris: 小さい頃から日本人のペンフレンドと手紙を交換して、いつかに日本に住みたいと思っていました。7年前にポスドクとして来日しましたが、研究より、研究について書くことや、研究者を支援することのほうに向いていると気づきました。URAになる前に日本の学術英文校正の会社で働いていましたが、日本語の能力を活かしながら、日本の研究者をもっと全般的に支援できる仕事をしたくなって、URAキャリアパスにしました。

Harold Kusters: 前職は日本の国立大学で国際産学官コーディネーターとして仕事していましたので、URAへの応募はロジカル選択でした。また、当時、九州大学は「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」の下で「世界的研究拠点整備」という事業で採択になりましたので、私に合う業務と思いましたので、応募しました。九州大学では、URAのキャリアパスが導入されるところですが、もし定着したら、URAとして仕事を続けたいと思います。

Jason M. Sanderson: To be honest, I didn't choose to become a URA. During my last year as a doctoral student in Japan, an unfortunate family event kept us in Japan a few years longer than expected. When my research funding ran out, I applied to a URA position. After starting the job, I found that I rather enjoy playing a part in various types of research performed around the university, from fund acquisition to international press releases. Unfortunately, my own research has not grown as I would like, but the window I now have into the assorted activities around my university is invaluable. I try to use this knowledge to help our researchers as best I can.

Hongxiang Wang: URAに着任する前の約20年間、実験的研究に没頭しました。研究者時代に競争的大型外部資金を獲得する機会もあり、その過程で研究支援職に興味を持ったためか、ごく自然の流れで4年前にURAに転身しました。URAの業務の中でもサイエンスの面白さに触れる機会がたくさんありますし、それがURA業務に精進する原動力になって、今後も研究支援を通してサイエンスの発展に貢献したいと思います。


Q2. 現在担当しているURA業務の内、ご自身の国際的バックグラウンドや語学力を活かした仕事は何でしょうか。

Chen Chen: 現在は熊本大学 URA 推進室と国際先端科学技術研究機構の両方で働いています。特に、外国人研究者向けの科研費支援申請(申請書ブラッシュアップ、セミナー企画、個別相談)、国際共同研究推進ための国際グラント申請支援(申請書ブラッシュアップ、セミナー企画、個別相談)、国際シンポジウム、国際セミナー企画などの業務に自身の国際的バックグランドと語学力を活用しています。

Charles DaSalla: In any career, it is easier to simply follow along with established approaches. However, URAs were introduced to bring about change in the academic landscape, and much of my work entails advocating internationalization, which by definition is change. I try to use my international background and views on internationalization to sow new ways of thinking.

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Marc Hansen: 私のバックグラウンドは日本学と第2外国語としてのドイツ語です。日本に来るまでは、ドイツで日本語教育および政治教育に携わってきました。また、日本に来てからは、本学で国際交流オフィサーとして国際交流に関わりながら、ドイツ語の授業も行いました。現職では、主に書誌情報や助成金等の分析を担当していますが、「分析」の他に時々「教育」および「国際」案件にも関わることがあります。例えば、外国の学術動向について調査を行う際に言語能力が活かされます。また、来客対応やカンファレンス参加の際に、外見もメンタリティーも西洋人であることがプラスに働くことがあると個人的に感じています。特に、相手の構え方が違ってくることがよくあります。仲間意識のようなことでしょうか。

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Kate Harris: 日本以外、イギリス、ドイツ、スイスで勉強や研究をしたことがあります。この国際的なパックグラウンドのおかげで、同僚と異なる視点から課題を考えられます。以前と違う考え方は国際関連のプロジェクトやグローバル人材を育成するために大切だと思います。




Harold Kusters: 現在は、外国人研究者による(英語での)科研費獲得への支援、その他英語で応募できる競争的研究資金獲得支援、海外の競争的研究資金獲得支援、これらに関する業務(情報収集、情報発信、説明会開催、申請書作成・レビューなど)の業務を担当しています。英語と日本語の言語能力は、例えば、研究資金に応募する時にガイドラインの理解などに活用できます。

Jason M. Sanderson: An understanding of the difference between kakenhi and international grants helps me to see where international researchers might be deficient so that I can provide advice on how to improve applications. Similarly, I can also see where a Japanese researcher would have difficulties with an international grant application and can help to clean up their proposal. Moreover, I can relate to many of the problems that international researchers have in Japan so I am usually able to point them toward the best possible solution. It goes without saying that English fluency is extremely helpful, even mandatory, in all areas of my job.

Hongxiang Wang: 母国語の中国語を活かした仕事にはまだ巡り会っていません。中国の学術の発展は著しい。研究環境の特徴、国際共同研究の創出、研究評価などに関する中国語で書かれた論文を時々読み参考になります。日本では、欧米と比較して科学技術政策やURA制度を考察することが多いのですが、中国のこれらの政策や制度との比較研究をやってみたい気持ちがあります。


Q3. 嬉しい成果が出た等、やり甲斐を感じた瞬間はどんな時でしょうか。

Chen Chen: 先生の研究の面白いところを知り、研究者と一緒に国際共同研究プロジェクトを申請し、採択された時に研究の可能性を発展させることにやり甲斐を感じました。

Charles DaSalla: Like other URAs, I try to help researchers acquire the tools they need to advance the cutting edge. When I see them make progress toward that goal, whether it be by winning a grant, getting published, or forming a new collaboration, that is when I feel that my efforts are worthwhile.

Marc Hansen: 例えば、分析での新しい発見を上層部に伝えることが出来て、ポジティブなフィードバックが返ってくる時やライティングセミナーにたくさんの参加者が集まった時などが挙げられます。

Kate Harris: 申請が採択されて、良い評価をいただくときにはもちろん嬉しいですが、日常的には、私が当たり前と思っているが相手が初めて聞いたアイディアを共有するときや、URAが支援するプロジェクトを通じて学生・若手研究員の視点が変わって、グローバルな研究者としての成長を目のあたりにするときにもやりがいを感じます。

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Harold Kusters: 研究者から「あなたの支援はとても役に立った」、「申請書はよくなりました」との一言をもらったとき。採択された時の教員からのお礼のメールなどもらったときに役立つ仕事をしていると感じました。また、その後の引き続きの支援の依頼(リピーター)を受けると、URAとしての仕事が評価されていることが嬉しいです。



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Jason M. Sanderson: Every time I receive a thank you note from a researcher that I have helped. Every time I see that one of "my" researchers has been awarded funding. Every time I get an inquiry from an international news/research agency about one of our English language press releases. And every time something that I create helps my co-workers be more efficient. (This typically takes the form of a computer program to do a job in seconds that would normally take hours or days.)

Hongxiang Wang: 外部資金獲得支援業務を通して、「研究を見つめ直す機会になったよ」と言われるときや、自分の活動がきっかけとなって、お互い知らない研究者同士が共同研究の話が始まったときは本当に嬉しいです。


Q4: 外国人研究者支援も含めた研究支援等に関し、今後やりたいことについて一言お願いします。

Chen Chen: 現在の業務は日本語と英語を中心に活用ができていますが、今後は中国語の言語力も活かし、中国と日本の架け橋となり、国際共同研究促進に貢献したいと思っています。

Charles DaSalla: True internationalization requires efforts in all aspects of an organization. As such, it is not something one person or one team alone can achieve. What URAs can do, however, is help others to find and accomplish their own goals in internationalization. I will continue trying to do so at my university, and with my URA colleagues at other universities doing so at theirs, I believe, collectively, we can effect change throughout the nation.

Marc Hansen: 分析になりますと、どうしてもパソコンの画面に向かっての仕事が多いため、現場に足を運んで、外国人研究者の生の声を直接拾い上げるような調査業務をやってみたいです。

Kate Harris: 今後、国際化や分野融合のための国際的なグラントを体制的に検索して、理学系研究科の応募を支援したいと思います。また、6月初旬のINORMS (International Network of Research Management Societies) 2018学会では国際的なURAネットワークを築きはじめて、それを活かして各国の異なる制度を理解して、国際関連のプロジェクトにもっと効果的に支援できるようになりたいと思います。広島で開催されるINORMS 2020にも参加して、海外のURAに日本の魅力を紹介したいと思います。

Harold Kusters: 現在の業務は、申請書レビューまで限られているが、プロジェクトの企画、申請書作成、その後のフォローも含めて、より幅広いサービスを提供できればいいなと思っています。また、外国人研究者の間の異分野研究をもっと推進していきたいと思います。

Jason M. Sanderson: There are two areas that I would like to become a part of that are outside of my usual URA duties. One is boosting the development of international research collaborations/networks. These types of collaborations are known to improve research output quality and could play a role in helping Japan to overcome it's current research stagnation. The other area I would like to move into is the implementation of open source initiatives (papers, data storage, software, etc.) in research. In the Information Age, knowledge is a resource that should be available to everyone. Keeping research hidden behind any kind of barrier is, in my opinion, indefensible.

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Hongxiang Wang: 英語で作成された外部資金申請書の査読を通して、異なる国の研究者と交流する機会があります。異なる文化への理解が、柔軟な思考力を身につける一助にもなると思いますので、色々な国の研究者の交流の場を増やす取組を深めたいと考えています。





終わりに

インタビューへのご協力を本当にありがとうございました!頂いた回答から、みなさんが、それぞれのバックグラウンドや経験の違いによる視点、提供しうるインプットを見出し、それを活かす方法を考えながら、日々の業務に携わり、研究者に接する姿が伝わってきました。

日本におけるURAの活動は、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まり、作ってきたもので、外国人URAの増加や活躍は、URAの活動に更なる強みを与え、多様性を広げうるものだと思います。回答いただいたみなさん、また私たちがまだお顔を合わせたことのない外国人URAの皆さんには、その強みを大いに発揮して日本の大学でさらに活躍いただきたいです。ぜひ一緒にがんばっていきましょう。


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【3】「国際化する」~免疫学フロンティア研究センターにおける外国人研究者支援~

(渡部祐司/大阪大学免疫学フロンティア研究センター企画室特任研究員)

2018年3月より大阪大学免疫学フロンティア研究センターIFReC(アイフレック)の企画室で、広報・アウトリーチ担当として勤務している渡部祐司です。私は京都大学大学院でエイズウイルスの研究を行っていましたが、研究の魅力をより多くの人に感じてもらいたいと思うようになり、広報の世界に飛び込みました。以前は京都大学で高大接続事業のコーディネータとして高校生の皆さんに大学の教育、研究に触れる機会をできるだけ多くお見せする仕事に関わっていました。
IFReCは2007年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラムに採択され、4つのミッション、すなわち我が国最高峰の免疫学研究を推進すること、異分野の研究領域と積極的に手を取り合って新しい融合領域を発展させること、研究環境の国際化を進めること、そしてその成果を波及させて大学の組織改革に結びつくように横展開することを目標に運営されてきました。10年後の2017年からは、文部科学省のWPIアカデミー拠点として、また、大阪大学においては世界最先端研究機構の研究拠点の一つに位置付けられています。

国内外から著名な先生方が集まっているIFReCに着任して初めて出席した運営委員会では、そうそうたる顔ぶれを目の当たりにし、採用面接の時よりも緊張したのを覚えています。IFReCでは外国人44名を含む168名の研究者(外国人研究者比率26%)が活動しています。コロキアムと呼ばれている定例の研究発表会で、様々な国々からの研究者、大学院学生らがそれぞれの訛りの英語で真剣に議論している様子を見ると、さながら国際学会のシンポジウム会場に入り込んだような錯覚を感じます。

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図1 IFReCの組織体制(クリックすると拡大)

IFReCの国際環境を支える私の所属する企画室についてご紹介します。IFReCは「研究グループ」と、企画室と事務室(総務セクション・会計セクション)からなる「事務部門」で構成されています(図1)。企画室では、トップダウン型の運営を取りまとめる阪口薫雄事務部門長、日本初の大学と民間企業との大型包括連携を締結してIFReCにおける産学連携を推進する高木昭彦准教授、論文のプレスリリースや広報記事の執筆が得意な坂野上淳准教授、また7月から新たに着任した末吉友基助教らのスタッフと一緒に、日々の業務に取り組んでいます(写真1)。私たちが中心となり、研究者と大学(事務)を繋ぐ架け橋としての役割を担い、双方が快適に業務を行うことのできる環境の整備(研究者支援・企画)に努めています。

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写真1 企画室のメンバー(一番左が筆者)

組織の国際化において最も必要なことは、外国人研究者が日本人と同じ環境/同じ条件で研究を行うことができるということです。そのため外国人研究者が、英語による情報が少ないことが原因で不利益を被らないように、就業規則や施設利用に関するコンプライアンス研修を英語で実施、競争的資金の獲得に関する情報などはほぼ全ての文書を英語化しています。その他、企画室では、若手人材の育成、サイエンスカフェ等のアウトリーチ活動を行っています。さらに外国人研究者が大阪で生活する上で必要なタウン情報などもHPにまとめて提供し、滞在手続きや生活インフラの整備等で必要な場合には役所へ同伴することもあります。日本語教育に関しては、どの大学でも行っておられますが、外国人の方からの要望を受けて、IFReCでも6年前から「初級クラス」と「中・上級クラス」に分かれた日本語教室を年間40回ずつ開催しています。部局で開催することにより開催日時が調整しやすく、大学院学生だけでなく仕事に支障のない範囲で事務職員やテクニシャンの方も参加できるといったメリットがあります。海外からの方が来日して間もないのに、日本語を駆使しているのを見るにつけ、彼らの外国語習熟の速さにはとても驚かされます。世界的な研究拠点のバックオフィスの一員に加わって4カ月、こんな風に、外国人研究者に対する生活面や言語面も含めた包括的なサポートの充実が如何に大切かを気づかされるとともに、これこそが優れた研究成果を上げていく上で重要なことなんだと、痛感しています。

このようにIFReCはトップダウンの運営体制、URAのスキルを高めながら研究環境を向上し国際化を進めるというスタイルを築いてきました。IFReCが培ってきたノウハウを、研究大学強化促進事業に基づいて全学的なURAネットワークを用いて連携し大学内で横展開できればと考えています。今後も私が取り組む寄附募集活動においても全学の皆さんにお役に立てる内容としていきたいです。

6月18日に大阪北部を震源とする大きな地震が発生し、大阪大学吹田キャンパスはこの地震の影響をまともに受けました。外国人研究者や留学生にとってはショッキングな出来事でした。IFReCでも、避難所の情報などが伝わっていないような状況のなか、構成員の安否確認を速やかに行った他、水道やガスの供給が停止した住居が多かったため、給水所への誘導といったフォローも必要でした。今後もこのような自然災害が発生する可能性がありますので、平常時だけでなく災害時も意識した様々な支援体制を整えていくことに努めていきたいと考えています。

こうした国際的な環境のなか、世界最高水準の研究施設で研究者をサポートすることは非常にエキサイティングな仕事です。大学の研究活動を支援するURAという職種はこれまでにそのお手本のない、新しいジャンルの職種だと思います。実際にこの仕事に就いて日は浅いですが、URAが担っている業務を従来は研究者自身が行っていた、あるいは事務系の方が行っていたと考えると、この仕事の重要性や意義をひしひしと感じています。IFReCでのエキスパートとして様々なプロジェクトに参画して、経験と実績を重ねていくことにワクワクしています。

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【4】平成30年度行政事業レビューにおける「研究大学強化促進事業」レビューの公開プロセスについて

(高野 誠/大阪大学経営企画オフィスURA部門)

「研究大学強化促進事業」が平成30年度の行政レビューの対象事業となり、6月26日にその公開プロセスが実施されました。この内容は、インターネットで配信されましたのでご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
大阪大学では、研究推進課やURA部門がこの配信を見て意見交換を行いました。本稿では、研究大学強化促進事業実施機関の一URAとして、公開プロセスでの議論をどのように捉えたかを簡単に紹介します。

会の冒頭、進行の方より、本件はEBPM(根拠に基づく政策立案)推進の一環であり、試行的実践としてレビューを行っているという趣旨の説明がありました。実際、文部科学省学術研究助成課の資料や説明には、本事業の効果の仮説検証を行う為のロジックモデルやエビデンスが明確に示されていました。6名の外部有識者と学術研究助成課の議論から、大阪大学URA部門としてこのEBPMにおいて特に意識しておく必要があると考えた点は、
1)ロジックモデルの設定
2)アウトプット指標、アウトカム指標の設定
3)仮説(効果)の検証方法
です。

1)については、事業の設計段階から検証の方法を意識して、ストーリー(因果関係)を立てておくことが重要だという議論がありました。また、検証の結果に基づいて、ストーリーの再検討を繰り返すことの重要性も指摘されていました。
2)については、事業の効果を示す指標として、定量的な指標だけでなく定性的な指標も組み合わせ、適切にアウトプットやアウトカムを設定することの重要性の指摘がありました。
3)については、母集団が小さいこと、施策実施有無の比較が単純にできないこと等から、できるだけモデルを単純化する必要があり、また、統計的有意性にもある程度割り切りが必要だとの指摘がなされました。
加えて、学術研究助成課からは、今後は研究大学コンソーシアムを通じて各研究機関でもデーターに基づいた分析を進めるという方向感も示されました。

大阪大学URA部門でも、年間事業計画の策定段階で各施策の内容・効果にいて議論を行い、年度終了後にその検証を行うことにより施策の改善に努めています。しかしながら、「公開プロセス」での議論と比較すると、我々が実施している改善サイクルはまだ詰めが甘いと感じました。今後は、学術研究助成課が行っている研究大学強化促進事業全体に関するEBPMを意識して、また、研究大学コンソーシアムでのノウハウ共有を通じて、さらに効果の高い業務改善サイクルに取り組み、大阪大学の研究力強化に向けたURAシステムの高度化を図っていきたいと考えています。

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【5】【学内向け】科研費説明会・セミナーのご案内

今年も科研費の季節が近づいてきました。
大阪大学では、以下の通り学内向けの科研費説明会・セミナーを開催します。
詳しくはマイハンダイでご確認ください。

◆平成30年度科学研究費助成事業学内説明会
※平成31年度科研費に申請予定の研究者、各部局科研費担当職員が対象
・豊中地区:7月24日(火)14時~15時35分
・吹田地区:7月26日(木)13時~14時35分
https://my.osaka-u.ac.jp/admin/kensui/kakenhi/kakensupport/setumeikaitouroku(マイハンダイにログインが必要)

◆科研費研究計画調書作成セミナー
※主に初めての科研費採択を目指す若手研究者が対象
(平成31年度科学研究費助成事業若手研究、基盤研究(C)の応募予定者)
・吹田地区:7月31日(火)14時~16時
      講師は理工系・生物系の科研費相談員、URA
・豊中地区:8月2日(木)14時~16時
      講師は人社系・理工系の科研費相談員、URA
https://my.osaka-u.ac.jp/admin/kensui/kakenhi/kakensupport/seminar/H30(マイハンダイにログインが必要)

◆科研費採択支援チラシ:本部が行う科研費採択支援メニューの全体像をお伝え
https://my.osaka-u.ac.jp/admin/kensui/kakenhi/kakensupport/chirashi/H31/view(マイハンダイにログインが必要)
H31kakenhi_flyer_omote.jpg

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【6】第7回学術政策セミナー「社会から共感を得る大学となるために」講演録を公開しました

<開催概要>

大学が社会から高く評価され、社会から支えられるためには、教育研究等を通じて社会に貢献しなければなりません。特に、財源の多くを税金に依存している国立大学は、大学の方針や活動内容を社会の方々によく知っていただき、フィードバックを得て、活かしていく必要があります。また、社会と共に課題を解決することも期待されています。

本セミナーでは、【話題提供1】において上記のような大学が置かれた現状について、参加者との問題共有を行い、【話題提供2】では、社会から「共感」や「信頼」を得るためにどうすればよいかを考えるヒントとして、公益性の高い組織への寄付について話題提供をいただきました。

■日時:2017年7月11日 13:30-15:30
■場所:大阪大学サイバーメディアコモンズ
■プログラム:
 ・話題提供1「大学の今」:小林傳司氏(大阪大学 理事・副学長)
 ・話題提供2「変わる日本の寄付文化~投げ銭型から社会変革型へ~」:岸本幸子氏(公益財団法人パブリックリソース財団 専務理事)
  ・全体討論

■主催:大阪大学経営企画オフィスURA部門
■共催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)


<岸本幸子氏による話題提供2の抜粋>(講演録全文はこちら

信頼感を醸成するために何を提供するか

大学の強さの一つは、世間的に非常に大きな信頼が寄せられているということです。それから、大学には潜在的支援者というのがはっきりいらっしゃるということです。ですので、このアドバンテージをちゃんと活かさないといけません。特に潜在的支援者である同窓会の人たちを集めて、先ほどのドナー分析のようなかたちでの分析をし、戦略を立てていくということが、支援者の方々を大学の力にしていくためには必要ではないかと思います。
弱さというか、恐らく課題であろうと思われるところが、ファンドレイジングをするにはコストと時間、体制が必要ですが、そのことを受け入れているかということです。ファンドレイジングの適正コストというのは20%と言われいて、これは平均なので、起ち上がり段階では50%ぐらいまでいくこともあります。低くても10%ぐらいはかかってしまうわけです。ですので、1万円を入れるためにはお金がかかるんだ、人がいるんだということを、やはり納得することが、受け入れるということの第一弾ではないかと思います。それから、潜在的支援者である卒業生の人数というものを把握し、しっかりとコミュニケーションしているのかということ、そして、彼らに感動や共感を与えるような提案をしているかということ、この辺が大学の課題であると思います。
また、大学への期待としては、していることをアピールするのではなく、大学に期待されていることに応えるというようなコミュニケーションが必要なのではないかと思います。すでに実績がおありなので、その実績を踏まえつつ、一歩ステップアップした企画を提案することで、繋がりが広がって、寄付者の方に幸福の連鎖が生まれるのではないかと感じているところです。

私自身、大学に対する期待というものが、2つあります。一つは、先ほど孫の将来の問題で申し上げましたけれども、2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」というものが国連で採択されました。世界全体で貧困をなくしていくということ、そして、持続可能な社会環境を保全していくということ、低炭素社会を実現するということ、あるいは、格差をなくし、女性の社会進出を推進していくということなど、17の目標が設定され、それに向かって今、国も地方自治体も企業もNPOも動き出しているところです。例えば、このSDGsを実現するためにどうしたらよいのかという切り口での研究は、個々には大学でなされているのだと思います。しかし、SDGsを達成するためにどういう基礎研究をしているかという大学全体でのアピールがあまりないのではないかと思います。それがあれば、大きな社会的期待に応えるということになるのではないでしょうか。少なくとも孫の将来を気にしている私にはとても重要なことなので、一つお話をいたしました。

もう一つは、今の大学が若者に何ができているかということです。人間が成長するのに時間がかかるような時代になってくる中で、22歳で世に出る若者に何を達成させるべきなのか、大学はもう一度考え直す必要があるのではないかと思っています。教養課程という話が、先ほど小林さんのお話にも出ましたが、教養を身につけるということは非常に重要なことではないかと思います。私は「教養」というのは、「他者のために自己の最善を尽くす」というある種の徳といいますか、様々な知の集積の中から「これが人類が生き残っていくために大事なことなんだ」というふうにわかってくるということだと思います。そういった非常に基礎的な人間としての行動の指針というものを持った若者をつくるということが、今日の教養主義として大事なことなのではないかと思っています。もし、そういったことに大学全体、つまり法人として取り組むというアピールがあるならば、これもまた、今の社会にとって人の心をつかむ非常に重要なコミュニケーションになるのではないかと思います。

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【7】リサーチ・アドミニストレータ―協議会 第4回年次大会の参加申込受付中です。大阪大学URAは2つのセッションを担当します

リサーチ・アドミニストレータ―(RA)協議会第4回年次大会 
大会テーマ「共創するURA ~学術の発展と価値の創出~」
日 時:9月19日(水)10時~20日(木)16時
場 所:神戸国際会議場
http://www.rman.jp/meetings2018/

【大阪大学URAが担当する2つのセッション】
・「EARMA Session/ SDGsとグローバルな課題解決に向けた日欧URA国際協力のシナリオ」(9月19日15時50分-)
・「URA組織における人材育成」(9月20日13時50分-)

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【8】「研究者のためのオープンデータセミナー」開催案内(関西大学学長室URAから情報をいただきました)

研究データの公開により、ジャンルを越えた新しい研究の創出や、共同研究の促進、研究の効率化が期待されます。しかし、公的研究費の獲得の条件にオープンデータへの対応がうたわれ始めており、今後は科研費にも求められると予想されます。今回、国立情報学研究所の武田英明先生をお迎えし、なぜ今オープンデータが注目されているのか、社会にどのような変革をもたらすのか、オープンデータの基本的な考え方についてご講演いただきます。研究者として、大学としてどのように対応すべきかを学ぶ機会にしたいと思います。

◆日程:2018年7月18日(水)13:00~15:00(受付12:30~)

◆会場:関西大学 尚文館1階マルチメディアAV大教室

◆対象者:関西大学、他大学の研究者
(すべての分野の研究者、PD、RA、院生、URA、図書館職員、研究支援業務を担当する大学職員)

◆プログラム(詳しくはこちら https://goo.gl/3MQEBZ
13:00 セッション1:「研究オープンデータにおける大学と研究者の役割」 
武田英明(国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授)
14:30 セッション2:「それぞれの研究費とオープンデータの条件」
関西大学 学長室URA 矢野周治
14:50 セッション3:「URAが研究者をサポートします-URAって何?-」
関西大学 学長室シニアURA 古宮行淳

◆参加費:無料

◆申込方法:以下の申し込みフォームより申し込み下さい。
https://goo.gl/Lih4Wy

◆併催:関西大学研究推進部、学長室URA、関西大学図書館

◆問い合わせ:関西大学 学長室URA 舘(やかた)
 TEL 06-6368-1111(内線3036) Mail:kenkyushien[a]ml.kandai.jp

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【9】リサーチ・アドミニストレーター協議会スキルプログラム専門委員会による「資格認証ワーキンググループ」報告書が公開されました

リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会は、リサーチ・アドミニストレーターの定着・発展を目指しており、「リサーチ・アドミニストレーターの資格認証制度」について、その是非も含めて議論を始めようとしているところです。平成29年1月の運営委員会での議論に基づき、スキルプログラム専門委員会の下に資格認証ワーキンググループ(WG)を設置しました。以降、RA協議会会員を対象としたアンケートの実施、WGでの情報収集や検討、分析を重ね、本報告書の完成に至りました。

くわしくはこちらをご覧ください。
http://www.rman.jp/news/post_32.html

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【10】阪大URAだより―2018年6月・7月の主な活動

2018年6月・7月の大阪大学経営企画オフィスURA部門の活動案件のうち、主なものを紹介します。

●年度初めの外部資金等の申請支援ラッシュが収束し、科研費シーズンに向かっています
JST 平成30年度 CREST・さきがけ・ACT-I 研究提案支援:学内説明会開催、研究提案書作成支援
AMED-CREST、PRIME 平成30年度 研究提案支援:学内説明会開催、研究提案書作成支援
JSPS 平成30年度 実社会対応プログラム応募支援:個別相談実施
JST 平成30年度 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)提案支援:個別相談実施
・平成30年度「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」申請支援
・平成30年度世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)応募支援
・科研費申請の準備
ほか

●学内支援プログラムを運営しています
平成30年度(前期)研究成果の国際的発信支援プログラム 英語論文の投稿支援(FY 2018前期)
・平成30年度教員等の採用における国際公募手続き支援(英文対応)
・平成30年度研究成果の国際的発信支援プログラム 若手教員等研究情報発信支援事業

●国内外のURAネットワークでの活動に参画しています
・世界各国の研究マネジメント関連の協会や団体からなるネットワークINORMS(International Network of Research Management Societies) 2020 広島大会の広報活動に協力しました
・研究大学コンソーシアム「研究力分析の課題に関するタスクフォース」への参画
第4回JINSHA情報共有会「研究推進・支援に役立つ資料リスト2018を作ろう―視野を広げ、より良い仕事をするための知識とは」【「人文・社会科学系分野を入り口に」編】開催(6月29日)
・第6回関西RA交流会参加(7月20日)

●その他
大阪大学研究大学強化促進事業ウェブサイトに平成29年度実績を掲載しました
・本部と部局の研究推進・支援業務担当者の情報共有や意見交換のためにURAミーティングを定例開催(2週間に1回)
・大阪大学URAスキル標準v2.0の完成
・各種学内会議・委員会への参画

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【11】大阪大学ホットトピック

【地震関連】学生のみなさんへ(小林副学長からのメッセージ)

大阪北部地震における大阪大学の被害状況等とその対応

8月18日(土)「大阪大学の集い in 福井」を初開催!!

大阪大学と独立行政法人日本貿易振興機構が包括的連携推進協定を締結

大阪大学「JFEウエルディング協働研究所」開所記念式典とシンポジウムを開催

熊谷信昭元総長・名誉教授の追悼講演会・メモリアルパーティーを開催しました


●最新の研究の成果リリース


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【企画・編集・配信】
大阪大学経営企画オフィスURA部門(旧 大型教育研究プロジェクト支援室)
姚・川人

◎配信停止やご意見・ご感想はこちらまで
info-ura★lserp.osaka-u.ac.jp(★を@に)

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-1 共創イノベーション棟401(2017年11月移転)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/
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2020年10月30日(金) 更新
ページ担当者:川人