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URA MAIL MAGAZINE vol.34

Dean's Night 始めました

2016年7月 発行

物理学者が文学部で、「超ひも理論」について講演する―そんな異分野交流会"Dean's Night"が今月開催されました。

主催者である大阪大学文学研究科長・金水敏教授によるこの交流会の開催レポート(裏話付き!)をお届けします。

■INDEX
  1. Dean's Night始めました―金水敏 大阪大学文学研究科長主催の異分野交流会
  2. 第2回学術政策セミナー講演録「なんのために研究をするのか-社会・学術への貢献」
  3. 大阪大学経営企画オフィスではURAを募集しています
  4. イベント情報

    ●KAKENHI "Grants-in-Aid for Scientific Research" Information Session for International Researcher/外国人研究者向け科研費説明会(学内限定・8月29日)

    ●ダブルディグリー・プログラムを考える(公開ワークショップ)(8月3日)

    ●リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会第2回年次大会(9月1日・2日)

    ●JSPS「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」シンポジウム・公募説明会(8月25日)
  5. 大阪大学ホットトピック

    ○平成27事業年度(第12期)財務諸表の公表について

    ○学術研究懇談会(RU11)提言: 「今後取り組むべき学術研究に関する施策について」(2016年7月8日)

    ○平成28年熊本地震に係る大阪大学未来基金特別奨学金について

    ●「平成28年度における大阪大学省エネ計画」夏季の取り組みを実施中!

    ●8月12日(金)~16日(火)、夏季一斉休業の実施

    ○21世紀懐徳堂だよりvol.27発行しました!【特集】小学生、中学生、高校生向け公開講座

    ○最新の研究の成果リリース
  6. 次号のお知らせ

【1】Dean's Night始めました
―金水敏 大阪大学文学研究科長主催の異分野交流会

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金水敏/大阪大学文学研究科長・教授

Toward the Dean's Night

2016年4月から2年間の任期で文学研究科長に就任しましたが、昨今の大学(特に人文系)を取り巻く環境の悪化の中で、執務と言えば基本、おもしろくないことばかりの連続と言えます。何かおもしろい、楽しいことがしたい、そういう心の叫びからDean's Nightは発想されました。

文学研究科長室は結構広くて、私の知る限り研究科の中で一番調度が高級できれいな部屋で、ここで飲み物を囲みながら談笑をすると結構いい感じになる、と常々思っていたので、まず夏休み前に研究科長室に来たい人を集めてDean's Loungeとでもいうようなことをやってみよう、と考えたのですが、ただ漫然とおしゃべりをするだけでは大学らしさがない、せっかくならゲストに話をしてもらおうと思い、しかし魅力あるゲストを呼んだら研究科長室では狭すぎる、じゃあ会議室で、そうするとLoungeというのはしっくりこないから、Dean's Nightにしよう! と考えが進んで、構想が固まった訳です。

では、ゲストはどうするか? 真っ先にピンときたのが、理学研究科の橋本幸士さんでした。さる食事会でお知り合いになり、著書の『超ひも理論をパパに習ってみた』を拝読し、またFacebookを通じて魅力あるご活動を知るにつけ、第1回ゲストは橋本さんしかいない、と感じました。文学研究科ではふだん聞けない話を聞きたい、という思いもありましたし、橋本さんが最近やっていらっしゃる「多次元小説」の試みも文学研究科の人たちにアピールするのではないか、と思ったのです。さっそく橋本さんに伺ってみたところ、二つ返事でご了解を得ることができました。

第1回 Dean's Night チラシ
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プログラムが固まったところで準備にかかりました。橋本さんはありがたいことにギャラ不要、とおっしゃって下さったので、トークは参加費無料、そのあとの飲食タイムに参加する人だけ1000円いただく、と決めて、チラシ、ブログ、ツイッター、Facebookで広報し、Googleフォームで応募を受け付けました。最終的に40名ほどの応募があり(文学研究科内外の大学院生、教員、職員、学外の知人の他、阪大出身のプロの作家の方や、上方舞のお師匠さんなど多彩な顔ぶれが集まりました。保護者付きで高校生も参加されました)、飲み物・食べ物の準備も終えて、当日を迎えました。

Dean's Night Open!

橋本さんは定番の「そりうし」Tシャツ(牛が反り返っているイラストが描いてあって、反り牛=素粒子のしゃれになっている)、短パン、サンダルというスタイルで文学研究科に現れました。これが理論物理学者の正装とのことです。橋本さんのご専門は、言うまでもなく理論物理学の最先端を行くご研究です。橋本さんによると、同じ事をやっている研究者は世界に1000人ほどいて、ジャイアントパンダとだいたい同じくらいだそうです。ガチでお話しされると文系人間には手も足も出ませんが、橋本さんは軽妙な語り口で、時折ユーモアを交えながら、というよりユーモア8割学問2割くらいのお話をされ、聴衆をたちまち魅了してしまいました。「超ひも理論知覚化プロジェクト」の一環としての多次元小説の話題をまずされて、そのヴァリエーションである「多次元俳句(多次元川柳)」を参加者にその場で作ってもらうという趣向も披露されました。後半では、理論物理学者の研究スタイル、素粒子の種類のこと、素粒子を「ひも」と考えることのメリット、光と重力についての新しい仮説など、最先端の研究動向を分かりやすく聞かせて下さいました。

トークのあとは、私の方から感想を述べさせていただき(人間・橋本幸士の本質、なぜ物理学者は尊敬されるか、数式という"言語"について、など)、フロアとのやりとりも活発に行われました。特に「はごろもチョーク」の倒産については、その後のマル秘情報なども教えていただいて有意義でした。

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写真左から:
 これが物理学者の正装です。導入は4×4の格子状に文章がつながる"多次元小説"のお話から。
 驚きの長さ、全ての素粒子を支配する方程式。超ひも理論が目指すのはもっとシンプルな方程式。
 ディスカッションタイム。物理学者にDeanが切り込む!

その後の飲食タイムでは、差し入れ・持ち込みも含めたおいしい食べ物、飲み物を囲んで、90分があっという間に過ぎ去りました。「理学研究科と文学研究科でこんな本格的な研究交流があったのは、おそらく初めてではなかったか」との評価もいただきました。理学研究科の寺田健太郎さん、URAのクリスチャン・ベーリンさんなど、何人かの方にはこの場で初めてお目にかかれました。お時間のある方はその後研究科長室にお移りいただき、本件の出発点Dean's Lounge開店と相成りました。私手作りの「居酒屋ジオラマ」も公開されて話に花が咲き、これも気がつくと閉店時間になっていました(用途不明の研究科長室のダウンライトが初めて役に立ちました)。ご参加のみなさまの楽しそうにしておられるお顔を見て、満足度の高いイベントとなったかと拝察、主催者として胸をなで下ろしました。

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写真左から:
 飲食タイムも盛り上がりました。
 その後、研究科長室で公開された「居酒屋ジオラマ」

Dean's Night, and beyond

実は、第3回目まで日程とゲストが確定しています。

■2016年10月7日 吉森保さん(大阪大学大学院生命機能研究科教授)
■2017年1月20日 山村若静紀さん(上方舞・山村流師範)

いずれも、ご専門を極めながら、同時にとてもお話がお上手な方々です。若静紀さんには山村流上方舞の実演もお願いします。さらにその2回先まで、ゲストと交渉が出来ています。大学ってこんなに楽しいところ、おもしろいことが出来るところ、ということを、全力で伝えていきたいと思っています。ご関心をもたれましたらぜひご参加下さい(今後の予定は、私のブログ SKinsui's Blogで公開していく予定です。)

(金水 敏/大阪大学大学院文学研究科長・教授)

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【2】第2回学術政策セミナー講演録(2015年11月5日開催)
「なんのために研究をするのか-社会・学術への貢献」

【開催概要】

運営費交付金が削減される中で、研究を進めるためにますます外部資金への依存度は高まっていますが、そもそもなぜ研究を進めるのかということを立ち止まって考える機会は多くありません。

そこで今回のセミナーでは、まずは民間財団の事例を参考に、限られた予算の中で研究助成プログラムをどのように策定しているのかについて学び、提案を行う側はどのようなことを意識して提案を行うことが望ましいかについて理解を深めました。次に、研究者は研究の社会的意義をどのように考えて研究を行うことが望ましいかについて話題提供いただきました。その後、参加者と講演者とのディスカッションを行いました。

日時:2015年11月5日 10:00-12:00
会場:大阪大学テクノアライアンス棟1F アライアンスホール

【講演の抜粋】

(全文はこちら

□話題提供1:「助成財団における助成プログラムの策定-配分からインパクトへ-」

本多史朗(公益財団法人トヨタ財団 プログラムオフィサー)

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助成をするという作業の中身は、最終的にお金の出し手が何を求めるかということによって決まってきます。我々はそれを「出捐者」とか「出資者」というように呼んでいますが、一番有力なステークホルダーになるわけです。これが、過去20年の間に非常に大きく変わりました。20年前には、「大過なく助成金を配分してほしい」というのが、このお金の出し手の基本的な希望でした。トラブルなしにお金を配ってくれれば、それで良し、ということです。ところが、それが現在は、「助成金の原資を出す以上は、つぎ込む助成金で社会に変化を引き起こしてほしい」というように変わってきています。こういう変化が起きてきた背景には、広くは、ベルリンの壁崩壊以降のグローバル化の進捗があります。さらに、具体的には、出捐者、出資者である日本企業の経営環境が格段に厳しくなったことが挙げられます。それから、大学に代わる主体として、課題解決に特化したNPOという組織が現れたことも考えられます。また、インターネットとパソコンの普及により、変化を引き起こすイメージのプレゼンテーションが格段に容易になったことも挙げられます。この三つの要素が相俟って、先ほど述べたように「助成金の原資を出す以上は、助成金で社会に変化を引き起こしてほしい」ということが主流になってきたと考えられます。一言で言えば、「配分」から「変化」へという考え方へ、変化が生じたということになります。

この考え方の中から、三つの新しい考え方が我々のような財団に導入されることになりました。①アウトカム、②プログラム、③ストーリー、というものです。

(全文はこちら

□話題提供2:「一研究者が考える研究の社会とのかかわり」

相本三郎(一般財団法人蛋白質研究奨励会/大阪大学前理事・副学長)

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1988年頃から、本格的に「蛋白質の迅速かつ精密な化学合成のための方法論的研究」という研究を始めました。その結果生まれたのが、ペプチドチオエステルを合成ブロックとするタンパク質合成法です。嬉しいことに、それ以降の新しい蛋白質合成法は、現在でも、すべてペプチドチオエステルを合成ブロックとしたものとなっております。

この時代、生物物理学の分野では、NMR(核磁気共鳴)やX線結晶構造解析装置などを使って、蛋白質の溶液中での構造や結晶構造を解明しておりました。もう一方で、分子生物学分野では、遺伝子解析をベースに、生命現象の解析が急速に進んでおりました。しかし、両者にはあまり交流がありませんでした。そこで、生物物理学者と分子生物学者に化学者も加えて、日本のライフサイエンスの発展のために、構造生物学グループを立ち上げようという計画が、蛋白研の京極好正先生をヘッドにして進められておりました。
以後、構造生物学の重点領域研究や特定領域研究に関係した研究者によって、定期的に勉強会や発表会が開催されました。イェール大学で経験していたことが、ようやく日本でもできるようになりました。
グループで研究を行う強みの例ですが、「蛋白なんて遺伝子操作でできるではないか」と言われる場面もあったのですが、我々は、遺伝子の専門家と共同研究を行っているため、正しく反論できました。構造生物学グループとの共同研究を介して、蛋白質合成法は格段に進歩していきました。そして、資金も十分あったので研究が進み、少しは世の中に貢献できる成果を出せたのではないかと思っております。

それからしばらくして、教授になりました。これから先、どのように研究を進めていこうかと考えておりました。すると、すでにご定年で辞められていた泉(学生時代の恩師・泉美治)先生から再び、「腰が抜けるくらい空振りするつもりで研究しなさい」という檄を飛ばされました。つまり、「野心を持て。とにかく、失敗してもいいから自分の思ったとおりにやれ」ということを言われ、何か少し肩の荷が下りたような気がしました。そして、「どんな蛋白質でもこの方法を使えば合成できる」という、ジェネラルな蛋白質合成法をつくり出すことを念頭に、研究を進めていきました。

合成ターゲットですが、先ほど申しましたように、構造生物学分野の研究者たちと協議しながら、DNA結合蛋白質や膜蛋白質の膜貫通ドメインなどをターゲットとして選んでいきました。膜蛋白質は、精製することから何から何まで、非常に困難でした。現在も膜蛋白質の合成法は完成していませんが、必要なものを個別に課題を解決しながら合成しました。一方で、糖蛋白質の合成などは、分子量が2万ぐらいのものまで正確にできるようになっています。そこまで我々の方法は発展してきています。
一例として、化学合成した膜蛋白質の膜貫通ドメインであるアミロイドβ蛋白質を用いて、ニューヨーク州立大学、イェールの研究者たちと共同で、アミロイドβ蛋白質の会合構造の遷移と細胞毒性の相関関係の解析を行っております。その成果は大変多くの研究者の論文に引用されています。今後、認知症の解決のために、いろいろな示唆を与えてくれるのではないかと思います。

(全文はこちら

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【3】大阪大学経営企画オフィスではURAを募集しています
Research Administrator (URA) Job Opening

当オフィスでは、
リサーチ・アドミニストレーター(特任研究員(常勤)または特任助教(常勤))
または
チーフ・リサーチ・アドミニストレーター(特任研究員(常勤)または特任講師(常勤))
を2名、募集しています。
(2016年7月以降、毎月最終7日間応募書類受付。決定次第終了)

Research Administrator (Specially Appointed Researcher (Full-time)) or Specially Appointed Assistant Professor (Full-time))
or
Chief Research Administrator (Specially Appointed Researcher (Full-time) or Specially Appointed Associate Professor (Lecturer) (Full-time))


URA業務に専従する意志をもち、URAとしてのキャリア構築を考えている方のご応募をお待ちしています。

Requirements: those who are willing to work on URA activities fulltime and make URA their life career, etc.


公募要領/Application Procedures
*日本語版の公募要領
*Application Procedures in English

参考情報など、さらに詳しくはこちら
More information

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【4】イベント情報

●KAKENHI "Grants-in-Aid for Scientific Research" Information Session for International Researcher(for OU members only)

Aug. 29th (Mon), 2016 13:30-16:00
https://my.osaka-u.ac.jp/admin/kensui/kakenhi/kakenhiseminar
(Login to My Handai is required)
You can learn about the KAKENHI system, techniques of proposal writing, and etc.
The first JSPS official presentation in English that has ever been held in Kansai area.
大阪大学の外国人研究者およびその支援者向け科研費説明会。関西初、JSPSによる英語での科研費概要説明あり!


●ダブルディグリー・プログラムを考える(公開ワークショップ)

2016年 8月3日水 10時~12時30分
大阪大学豊中総合図書館6階ホール
参加自由(事前登録不要)、無料
http://caren.eng.osaka-u.ac.jp/ddp_workshop_aug2016/
主催:大阪大学アジア人材育成研究教育拠点(CAREN)、 大阪大学グローバルイニシアティブ・センター


●リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会第2回年次大会

2016年9月1日(木)・2日(金)
福井駅前AOSSA 6F・8F
参加申込〆切 8月1日(月)
参加費要
http://www.rman.jp/meetings2016/
*大阪大学は、9月1日午後のセッション「大学経営におけるURAの役割」を担当しています。
(オーガナイザー:高野 誠シニア・リサーチ・マネージャー/大阪大学経営企画オフィス)


●JSPS「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」シンポジウム・公募説明会
~「学術への要請と社会的貢献」の視点からの先導的な共同研究~

2016年8月25日(木)13時30分~17時+説明会
東京大学伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール
要事前申込み、参加無料
http://www.jsps.go.jp/kadai/symposium.html

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【5】大阪大学ホットトピック

平成27事業年度(第12期)財務諸表の公表について

学術研究懇談会(RU11)提言: 「今後取り組むべき学術研究に関する施策について」(2016年7月8日)

平成28年熊本地震に係る大阪大学未来基金特別奨学金について

「平成28年度における大阪大学省エネ計画」夏季の取り組みを実施中!

8月12日(金)~16日(火)、夏季一斉休業の実施

21世紀懐徳堂だよりvol.27発行しました!【特集】小学生、中学生、高校生向け公開講座

○最新の研究の成果リリース

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【6】次号のお知らせ(予告なく変更する可能性があります)

最近の科研費の動向や大阪大学の科研費申請支援制度(日/英)を紹介する、科研費特集号を予定しています。

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2020年10月30日(金) 更新
ページ担当者:川人