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メールマガジン

URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.10

「"目利き"を考える」特集

2014年7月 発行

今回は、"目利き"についての特集号です。どうしたら"目利き"ができるようになるのか、その役割は何なのか等々、いくつかの事例から考えます。

■INDEX
  1. 資金配分機関におけるPOシステム〜科学技術振興機構(JST)を例に
  2. 大阪大学学内研究助成「未来知創造プログラム」~「協奏・融合研究」創出に向けた期待~
  3. 高尾正敏URAによるエッセイ「開運!かねの草鞋を履いた鑑定団」― 一流の目利き、二流の目利き と URA ―
  4. 文部科学省ウェブサイトでURAの「スキル標準」及び「研修・教育プログラム」に関する報告書が公開されました
  5. URA関係イベント情報

    ●UNITT アニュアル・カンファレンス2014

    ●二頁だけの読書会vol.3「対話ってなんだろう―臨床哲学とサステイナビリティ・サイエンスの現場から考える―」
  6. 大阪大学ホットトピック

    ●平成26年度大阪大学部局主催国際シンポジウム等開催支援事業を選定

    ●研究成果の国際的発信支援プログラム: 英語論文の投稿支援を採択

    ●第3回大阪大学総長顕彰・総長奨励賞の表彰式を開催

    ●学術研究懇談会(RU11)による声明「大学における学術研究資源を活用した基盤の戦略的強化について」

    ●最新の研究の成果リリース
  7. 次号のお知らせ

【1】資金配分機関におけるPOシステム〜科学技術振興機構(JST)を例に

独立行政法人科学技術振興機構(以下JST)では、競争的研究資金の配分に関わるいわゆる「目利き」をどのように行っているのでしょうか。

 JSTでは、総合科学技術会議(現在は、総合科学技術・イノベーション会議に改組)によるPD(プログラム・ディレクター)/ PO(プログラム・オフィサー)制度の必要性の指摘を受けて、2006年から機構内部の資格としてJST-POの研修・認定プログラムを開始しました。POとは、競争的資金制度のプログラムや研究分野で、課題の選定、評価、フォローアップなどの実務を行う研究課題管理者のことです(JSTホームページより)。現在、研修プログラムを修了して認定された有資格者は、第1期2名、第2期6名、第3期7名、第4期4名の合計19名だそうです。

今回、2009年に初のJST-POに認定された古川雅士氏に、「目利き」という切り口から、JST-POの業務や役割についてお話をうかがいました。

(菊田 隆/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室URAチーム)


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古川雅士氏(独立行政法人科学技術振興機構(JST) 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ プログラムオフィサー)


■二人三脚体制のPO

 国の研究開発におけるPOは一般に、大学や企業等のシニアの研究者が資金配分機関からの依頼を受けて務めることが多く、彼らは研究コミュニティや研究動向の知識や理解は深いのですが、ファンディングの実務やマネージメントについて専門的知識や十分な経験を有してはいません。一方、JST-POはファンディングの実務やマネージメントの専門家ですが、研究そのものについては研究者と同等の十分な知識や洞察があるとはいえません。そこでアカデミア-POとJST-POの両者が互いの持ち味を活かし合い、二人三脚体制で理想的なPOを実現しようというのがJSTの取り組みです。
 国(文部科学省)が定める戦略目標の達成に向けて戦略的創造研究推進事業(ERATO、CREST、さきがけ等)の研究プロジェクトを具体化する際には、JSTにある公的シンクタンクの研究開発戦略センター(CRDS)での提言等も踏まえ、アカデミア-PO、JST-POなどが協力して検討を行います。

■JST-POの役割

 JST-POの役割の定義は明確ではありませんが、より業務に即した表現としてはサイエンス・マネージャーがそれに近いのではないでしょうか。国あるいはJSTの設定した目標を達成するために、競争的資金で実施する研究プロジェクトを物的にも人的にも支援してこれを運営するのがJSTの役割で、そのような業務を担うのがJST-POです。
 また、研究プロジェクトの実施前後では、"目利き"の業務も発生します。例えば、JST-POは、政策動向からみて何が重要なテーマなのかを検討する役割を担うのに対して、研究テーマのサイエンス・メリットや波及するインパクトについて洞察するのはアカデミア-POの役割です。このように、研究開発の一連のプロセスにおいて、直接研究を行う以外の部分を、それぞれの立場から専門的に支援するのがPOの仕事です。
 研究の社会的責任がより強く求められる今日は、研究者の弛まぬ努力に加え、知財や広報含め、戦略的にプロジェクトを運営する専門人材が必要になっています。JST-POは、単なる会議のロジスティクス担当や裏方・黒子ではなく、研究者の方々のよきパートナーとして競争的資金のプログラムおよび研究プロジェクトの推進を支援していく専門人材なのです。よきパートナーではありますが、研究者サイドには時には厳しいことも言わなくてはいけません。難しくも、やりがいのある職業だと思います。

■JST-POに必要な能力・資質

 JST-POは競争的資金の研究プロジェクトが国やJSTの目的に沿って実施されるように運営する必要があるので、研究者に対して研究実施の体制や進め方、進捗などについて積極的に提案していく能力や、受け身ではなくしっかりと意思表示していく能力が求められます。したがって、行政やアカデミア-PO、研究者との円滑な意思疎通を行うことのできる、優れたコミュニケーション能力や調整能力が必要になります。

 また必要な資質としては、自分がプレーヤーとして活躍したいと考える人にはJST-POは不向きで、スポーツでたとえるならば監督やコーチの役割に魅力を感じる人に向いているのではないでしょうか。

■POとURAの連携

 資金配分機関に所属するPOと大学・研究機関に所属するURAには似通った点が多くあり、広義にとらえると双方ともに「研究開発支援人材」と位置づけることができます。両者には競争的資金の配分と競争的資金の獲得及び執行管理という活躍の仕方の違いはありますが、共通して必要な情報があり、また、相互補完的に提供し合える情報もあると思います。これまではあまり行われてきませんでしたが、資金配分機関のPOと大学・研究機関のURAはもっと連携を図り、積極的な情報交換を行う必要があるのではないでしょうか。

 研究者は成果情報を研究者コミュニティあるいは学会レベルに届けることがまず大事ですが、社会の課題解決のためには政策レベルにも届けていただくとより効果的です。私たちが自ら最新の研究動向(国際的なベンチマーキングも含む)を把握することが求められますが、それにも限界があります。研究者に代わってURAが政策レベルに届けていけると、非常に良いのではないでしょうか。


【参考資料】科学技術振興機構におけるPO資格認定制度―我が国に最適なPO制度を求めて―
http://www.jst.go.jp/po_seminar/h18semi/pdf/takahashi.pdf

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【2】大阪大学学内研究助成「未来知創造プログラム」
~「協奏・融合研究」創出に向けた期待~

「未来知創造プログラム」は、大阪大学内の研究助成プログラムです。異なる分野の若手研究者3名(45歳以下の准教授、講師、助教)の連携による学内共同研究を支援するために本年度から開始され、7月に採択結果が発表されました。学内公募に対して多様な分野から58件の申請があり、12件の研究課題が選定されました。

◎採択結果はこちら

「未来知創造プログラムを選定」


今回、このプログラムを推進されているお一人である、北岡良雄理事補佐(研究担当/基礎工学研究科 特別教授)に、「未来知創造プログラム」に関して、お話を伺ってきました。


Q:どのような経緯で未来知創造プログラムが創設され、どのような成果が求められていますか?

A:大阪大学では、挑戦的にグループを構築し、視野を広げ、協働・協力体制をつくり、研究を進めていく若い力を求めています。次代を担う研究のマネージメント能力、リーダーシップをぜひ学んでいってほしいと期待しています。しかし、政府からは、若手研究者の分野横断的なグループ形成を推進する補助金はほとんどありません。大阪大学では、上記の問題に対し「学内で一体何ができるのか?」との問題意識から、「未来知創造プログラム」を着想しました。

このプログラムは、相本三郎理事(研究担当)の若手研究者を支援したいという思いから、リスクを見据えた上で、理事の推進力により実現したものです。若手に可能性を広げていってほしい、と思っています。

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北岡良雄理事補佐(研究担当/基礎工学研究科 特別教授)


Q:若手研究者が連携して共同研究を推進することに対して、何を期待されていますか?

A:異なる人たちが出会うことにより、視野を広げることができると思っています。そして、「融合」研究へと進めていってほしい。「連携」を進めるだけでなく、「融合」を達成することは難しいですが、融合研究が広く発展した一例として、分子生物学が挙げられます。分子生物学の創出は、物理学者が深く関わっています。次代を担うパラダイムシフトとなる研究が、融合研究の成果として期待できます。けれど、「融合」を目的として「融合」が達成されるわけではありません。例えば、素粒子・原子・分子のミクロの世界からマクロな「モノの世界」への階層構造の中で、階層をつなぐための融合や階層の"間"での融合が起こり得ます。そのような研究が大阪大学の中から創出され、結果として「協奏・融合」研究の成果となる、そんな未来を描くことができると期待しています。


Q:今回のURAメルマガの特集テーマ"目利きを考える"に関して、何かお考えはないでしょうか?

A:"目利き"とはなかなか難しいですね。目利きがどうすればうまくいくのかはわからない部分が多いけれど、選ぶ際に過度にリスクを恐れずに可能性に目を向けることが大切なのではないでしょうか。そして、選ぶだけではなく、その後を見届けることが重要であると研究推進連絡会で指摘され、そのような思いから、未来知創造プログラムにURAによるフォローアップ体制を敷くことになっています。


お話を伺い、若手研究者の「連携」により大阪大学から新しい「協奏・融合」研究が創出される、「未来知創造プログラム」がそのための1つの「きっかけ」となってほしい、そして、研究推進のために「未来知創造プログラム」を有効活用していってほしいといった期待が伝わってきました。

「未来知創造プログラム」には、学内研究助成プログラムとして初めて、URAによるフォローアップ体制が敷かれます。「融合」研究は一体どこが困難なのか、研究推進のための課題はどこにあるのか、それらの困難・課題を克服・解決するためには、何をすればよいのか。こうした対策を、若手研究者とともに私達URAも考え、大阪大学が新たな学問を創出する場として発展していくために、各課題に携わる方々とのパートナーシップの構築を進めていきたいと思っています。

(伊藤京子/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室 URAチーム)

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【3】高尾正敏URAによるエッセイ
「開運!かねの草鞋を履いた鑑定団」― 一流の目利き、二流の目利き と URA ―

研究活動、産学連携等で、いわゆる「目利き」の必要性が唱えられてきた。「目利き」とは何かについての定義は曖昧である。本稿では、「目利き」が骨董品鑑定についての本物と贋作を見分ける手法を参考に、研究活動での「目利き」のあり方について私見を述べる。特に、古美術鑑定と同様に、研究活動では「ひと」そのものが、再生産不可能な「お宝=財」あることを前提に、「目利き」が"Game Changing" な仕事をしてくれそうな人財を選ぶことが、重要であるという認識について述べる。目利きはさらに、選ばれた人の仕事の成果を見届けることにより、開運をもたらすこともミッションとしていることも確認する。

It has been discussed that connoisseur of Mekiki are necessary in both research activity and academia-industry collaborations. In this essay, I will discuss who is the best young researcher or the research project leader, by referring the eyes of connoisseur who can distinguish the true and false of the old goods. In the higher research activities, distinguished researching persons who cannot be reproduced anymore as well as the expensive and precious antiques, which are not also reproducible in the present days, are the human treasures. It is important that connoisseurs in research field should distinguish the leading person who will get game changing achievements or not, and that connoisseurs also follow up the work of the distinguished person until his research completeness. Then the good fortune will come true.

(高尾正敏/大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室 URAチーム)


本文はPDF形式でお読みいただけます。
OU-URA-mailmag-201407-essay.pdf

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【4】文部科学省ウェブサイトでURAの「スキル標準」及び
「研修・教育プログラム」に関する報告書が公開されました

文部科学省の「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」事業として平成23年度から平成25年度に行なわれた「スキル標準の作成」及び「研修・教育プログラムの作成」の成果報告書が文部科学省ウェブサイトで公開されましたので紹介します。

「スキル標準」はURAの業務として一般に想定される内容ごとに必要な実務能力を明確化・体系化した指標です。成果報告書ではURAの機能を22項目のスキルに整理し、それぞれの指標が上級、中級、初級の3段階のレベルに分けて示されています。さらに、各スキルのレベルごとに実績と能力がチェックできるスキルカードも作成されました。これはURA自身にとってはスキルアップの参考になり、また大学にとってはURAの組織作りや目標作りの参考になるものです。

「研修・教育プログラム」の成果報告は上のスキル標準を踏まえて作成された汎用性のある教材の形になっています。内容は初・中級レベルを対象としており、入門2科目、共通10科目、専門10科目の3カテゴリーに分かれていて、URA個人や組織で使用するときに、必要に応じて科目を選択できるようになっています。
このプログラムの作成には大阪大学から宮田URAと岩崎URAが作業に参加し、3科目の教材執筆を担当しました。

「スキル標準」・「研修・教育プログラム」ともに対象として広い範囲のURA、組織を想定しており、活用の仕方の説明もありますのでご一読をお勧めします。
この報告書は文部科学省ウェブサイトの下記に掲載され、ダウンロードできます。

○スキル標準
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1349663.htm
○研修・教育プログラム
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1349660.htm

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【5】URA関係イベント情報

●UNITT アニュアル・カンファレンス2014

http://unitt.jp/
2014年9月5日(金)・6日(土)、関西学院大学 西宮上ヶ原キャンパス
要事前申込
★大阪大学の望月URAが話題提供します!


●二頁だけの読書会vol.3「対話ってなんだろう~臨床哲学とサステイナビリティ・サイエンスの現場から考える」

https://www.ura.osaka-u.ac.jp/2pages.html
2014年9月10日(水)、大阪梅田
定員30名、要事前申込(8月18日受付開始予定)、無料

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【6】大阪大学ホットトピック

平成26年度大阪大学部局主催国際シンポジウム等開催支援事業を選定

研究成果の国際的発信支援プログラム: 英語論文の投稿支援を採択

第3回大阪大学総長顕彰・総長奨励賞の表彰式を開催

学術研究懇談会(RU11)による声明「大学における学術研究資源を活用した 基盤の戦略的強化について」

●最新の研究の成果リリース