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メールマガジン

URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.45

「こと」の支援を加えて研究力を強化する~大阪大学研究大学強化促進事業の取り組み~

2017年6月 発行

文部科学省 研究大学強化促進事業は、平成25年度の開始から5年目。
折り返し地点に立った今、総勢8名のURAが登場し、
本学における取り組みを振り返りながら今後を考えます。

その他、第7回学術政策セミナーの開催予告などもお届けします。

■INDEX
  1. 「こと」の支援を加えて研究力を強化する~大阪大学研究大学強化促進事業の取り組み~
  2. 大阪大学経営企画オフィスではURAを募集しています
  3. 第7回学術政策セミナー「社会から共感を得る大学となるために」を開催します(7月11日)
  4. 第5回異分野交流会(アカデミックバール)を開催します(学内向け、7月19日)
  5. リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会第3回年次大会が開催されます(8月29日-30日)
  6. 大阪大学ホットトピック

     ○大阪大学ニューズレター2017夏号を発行しました

     ●大阪大学NewsLetter読者アンケートのご協力について

     ○大阪大学とダイキン工業株式会社が包括連携契約を締結

     ●「大阪大学の集い in 名古屋」を9月23日(土・祝)に初開催!!

     ○最新の研究の成果リリース

【1】「こと」の支援を加えて研究力を強化する~大阪大学研究大学強化促進事業の取り組み~

大阪大学は、文部科学省の研究大学強化促進事業に採択され、研究力強化に向けた取り組みを推進しています。従来の「もの」(教員ポストや研究費)が主であった研究支援に対し、「こと」(知恵・アイディアや活動)の支援を加えることにより、より効果的な研究力強化を目指すのが大阪大学の取り組みの特徴です。
 平成25年の事業開始から5年目を迎えた現在、本学における研究大学強化促進事業の取り組みを振り返ってみたいと思います。経営企画オフィスURAの新澤がナビゲーターをつとめ、7名のURAによる紹介を「知る」という動詞を手掛かりにつなぎます。

 まずは「大阪大学URAを知っていただく」ためのご紹介です。


多彩なURA 確保とスキルアップ体制およびキャリアパスの構築

 大阪大学では、平成29年6月現在、2名の外国人を含む7名のURAが研究大学強化促進事業で雇用されており、国際性を有し、多様な専門分野をカバーできる体制をとっています。上記URAは自主経費等で雇用されているURAとともに、経営企画オフィスに配置され、大阪大学本部事務機構や研究科・研究所等の各部局と連携して、大阪大学の研究力強化に取り組んでいます。

 経営企画オフィスにおけるURAのスキルアップ・キャリアアップについては、主に以下の4つの特徴を有します。
①キャリアパス:「シニア・リサーチ・マネージャー」「リサーチ・マネージャー」「チーフ・リサーチ・アドミニストレーター」「リサーチ・アドミニストレーター」という4職階のキャリアパスを構築することで、各URAが長期的な視点に立ち自らのキャリアを設計することが可能となりました。
②新たな職種の導入:第3の職種である「学術政策研究員」および「特任学術政策研究員」を導入しました。特に、学術政策研究員は評価連動型年俸制で期間の定めのない職種であり、現在2名のURAが学術政策研究員として雇用されています。
③スキルの自己評価:「東京大学作成のスキル標準」を参照し、大阪大学のURA業務内容の観点から整理した「大阪大学URAスキル標準」を作成し、活用しています。
④スキルアップ:「早稲田大学作成の研究・育成プログラム」を参照し、「大阪大学URAスキル標準」の観点から整理した「大阪大学URAトレーニングプログラム」を活用し、申請書に対するアドバイスを実施する前のトレーニングや外部の講師を招いての外部資金獲得支援に関する研修を、大阪大学スキル標準の観点に沿って実施しています。また、新たに着任したURAに対しては、約2週間に渡るURA部門の全業務を俯瞰できる研修プログラムを整備しています。
 上記のキャリアパスとスキルアップ体制構築により、URAが各自の専門性および能力を高め、大阪大学の研究力強化に貢献することを目指しています。

 「④スキルアップ」に関して、当オフィスURAは複数の支援に関わることでURAとしてのスキルを向上させています。例えば筆者の場合は、英語論文投稿支援学内の生命倫理分野審査委員会への陪席・助言等の経験を、外部資金獲得支援に活かすことができています。 
また、外部資金獲得支援の場合、当オフィスURAは「経験の浅い若手研究者(日本学術振興会特別研究員申請者等)支援」、「若手研究者支援」から「シニア研究者支援」まで、申請書に対するアドバイスおよび模擬ヒアリング・面接等に段階的に関わることで、スキル向上につなげています。

 特に申請書に対するアドバイスについて、トレーニング体制は整備しつつありますが、トレーニングは支援業務を補助する手段の一つであり、様々な立場の研究者一人一人に合った支援を実施するためには、実務からの学びが欠かせないと筆者は考えています。そのために、現在当オフィスで実施している支援業務にURAそれぞれができるだけ携わり、支援経験から得られることを積極的に吸収してスキルを向上させることが不可欠だと考えます。筆者自身も、大学や研究者側のニーズに応じた業務をさらに進めることができるように、トレーニングおよび支援業務を通じてスキルアップを図りたいと思います。

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(大屋知子/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


質の高い支援を提供しながら、いかにURA自身がスキルアップしていくか、その好循環を築くのはどの大学・機関でも共通の課題かもしれません。とはいえ、実務を通じたトレーニング(OJT)は何にも勝るスキルアップの機会です。それでは、大阪大学研究大学強化促進事業の取り組み(Bメニュー)をご紹介していきましょう。1つ目の「知る」は学内の「知る・知り合う」です。


大阪大学が自らを知る・大阪大学で知り合う~研究力分析・部局を越えた研究グループの支援~

1つ目は、研究戦略立案のための情報収集と研究力分析、すなわち「大阪大学自らを知る」取り組みです。

研究戦略立案のための情報収集と研究力分析

 我々は、様々な情報源(データベースや聞き取り調査など)を用いて、大阪大学の研究力の現状分析、大学を取り巻く科学技術・学術政策の動向調査、他大学等の研究支援に関する情報収集等を行っています。これらに基づいて、大阪大学執行部・部局執行部に対しては研究戦略企画立案のための情報提供を行い、また研究者に対しては外部資金獲得のための支援を実施しています。

 具体的には、平成28年の4-12月を例にとると、研究データ分析による経営判断支援を多数実施、政策動向の情報提供(審議会傍聴・報告書作成6回、メールマガジンでの情報発信2回)、CREST・さきがけ・ACT-I公募説明会の17領域についての調査実施及びそれら公募の学内説明会にて得られた情報について3回の講演、そして事務職員に対して12回の情報提供(SD)を行いました。そのほか、IRワークショップや部局の分析担当者からの相談対応を少しずつ進めてきました。

 今後は、これまでの活動を基盤にして、意思決定を行う大学執行部・部局執行部のニーズを先取りした情報提供の実施、その際必要に応じて戦略オプションを提示できるよう努めたいと考えています。また、教育研究活動全体の状況を適切に把握するために、多角的に指標の開発を行い、書誌情報だけに頼ることのない調査・分析体制を整備することが必要であると思います。そして、各種分析活動を通じて構築されつつある学内のリサーチ・アドミニストレーション・ネットワークを充実させていきます。

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(阪彩香/大阪大学経営企画オフィス URA部門)

総合大学である大阪大学では、さまざまな分野の研究者が多様なシーズを持っています。上述はそれを把握する取り組みでしたが、次にご紹介するのはそれらが「知り合う」ことで生まれる、学内の共同研究を育む取り組みです。


新領域の創成と発展に向けた学内研究助成~平成28年度未来研究イニシアティブ・グループ支援事業・未来知創造プログラム・大阪大学「知の共創プログラム」合同報告会報告~

 2017年6月16日(金)15時~17時に、大阪大学吹田キャンパステクノアライアンス棟で、学内研究助成の合同報告会が開催されました。前半は参加した20グループの研究報告(1分間プレゼンテーション)、後半は1時間程度のポスター発表が行われました。筆者は、合同報告会の司会進行を担当いたしました。

 「未来研究イニシアティブ・グループ支援事業」は、大阪大学ならではの基礎研究の推進や、国家的課題解決に向けた研究にイニシアティブを発揮するための新たな研究分野の創出を目的としています。学内公募が行われ、平成25年度に11グループ、平成26年度に2グループが選定され、3年間の支援が行われました。本報告会には、平成26年度選定された2グループが参加しました。

 「未来知創造プログラム」は、大阪大学で活躍する若手研究者が連携する「学内共同研究の仕組みづくり」の支援により、本学の将来を支える多様な研究を育み、創造性に富んだ、独創的なアイデアと未来を拓く人材を輩出することを目的としています。異なる研究分野の若手研究者(45歳以下)3名によるグループ構成を必須とし、学内公募が行われ、平成26年度に12グループが選定され、3年間の支援が行われました。本報告会は、このプログラムの最終報告会となります。

 「知の共創プログラム」は、大阪大学で活躍する研究者が連携する「学内共同研究の仕組みづくりや研究力強化に向けた取り組み」を支援することにより、本学の将来を支える多様な独創的研究を育み、創造性に富み、挑戦的な未来を拓く研究力の強化と卓越した人材の輩出に繋げます。平成28年度に学内公募により6グループが選定され、3年間の支援が開始しています。

 3つの事業・プログラムの成果として、これまでに
 ・科学研究費補助金 新学術領域研究、日本学術振興会拠点形成事業 等、大型研究プロジェクトの採択
 ・大阪大学数理・データ科学教育研究センターの発足
 ・東京大学医科学研究所、新領域創成科学研究科との協定の締結
等が挙げられています。

 当日は、活発に意見交換が行われ、その後の情報交換会とともに、各グループからの参加者、大阪大学教職員が参加し、合同報告会自体が学内の交流の場となりました。ポスター発表に参加した大阪大学教職員からの投票で、未来知創造プログラムの満留グループ(研究課題名:二酸化炭素から基礎化学品を作る革新的グリーン技術の開発)が最多得票数を得、「大阪大学研究報告会2017未来創成賞」を受賞しました。
共同研究の実施や合同報告会などの様々な交流を通じて、大阪大学の未来に向けた研究がより強化されることが期待されます。

vol045_ito.jpg(左は、全体集合写真)

(伊藤京子/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


大阪大学経営企画オフィスでは、研究者同士に限らず、多様な研究人材が「知り合う」場の創出にも取り組んでいます。詳しくはURAメールマガジン vol.43【2】(福島担当)をご覧ください。
 さて、研究の発展を考えたとき、「知る、知り合う」ことは学内・国内にとどまるものではありません。次は海外に目を向けた「知る・知り合う」取り組みを、外と内の2つの視点から紹介します。


海外と知り合う・海外を知る〜研究の更なる国際化を目指した支援~

大阪大学の国際ジョイントラボと研究大学強化促進事業のこれから

 大阪大学の国際共同研究促進プログラムは、研究力強化に向けた国際的な連携基盤の構築を目的として平成25年度に開始されました。これは「国際ジョイントラボ(国際共同研究室)」の設置資金等を支援するもので、平成31年度までに60拠点、平成35年度までに100拠点の国際ジョイントラボを設置する目標に向かって、年々さらなる進化を続けることが期待されています。
 本プログラムでは、最先端の研究を展開している外国人研究者を大阪大学へ招へいし、大阪大学の研究者との共同研究を実施するための経費とともに、招へい研究者の研究室の若手研究者が来学するための経費や、招へい研究者の離日期間にも共同研究を続行するための研究員を雇用する経費も計上できるデザインになっています。この制度設計は、研究者の目線が意識された、海外の大学における制度と比較しても珍しい仕組みになっているようです。また、本学のクロス・アポイントメント制度の利用により、招へい研究者が本学研究者として活動することが可能になっています。

 平成25年度に15拠点であった国際ジョイントラボは、平成29年度には57拠点に達しました。個々の研究ステージは様々ですが、お互いの研究室あるいはネットワークの連携が進展するにつれて、海外での研究交流や成果発表の機会が増え、そこから生まれた研究成果は大阪大学における国際共著論文の約10%を占めるまでになりました。また、本プログラムの支援期間は限られているため、研究課題のさらなる発展に向けて、海外の研究資金も含めた外部資金獲得の動きも活発化しています。そのほかには、プログラムの一環として、招へい研究者が学生向けのセミナーや講義を本学滞在期間中に実施することになっており、学生がその分野の第一線の話を直接聞ける機会創出につながっています。すなわち国際ジョイントラボは、ダイナミックな国際共同研究の拠点であると同時に、教育面においても本学のグローバル化に向けた牽引役を担っています。

 筆者らは、平成26年度、研究担当理事の依頼を受け、本プログラムのフォローアップとして招へい研究者に対して意見聴取を行いました。その結果、調査した招へい研究者全員から本プログラムに対する高い評価を得ました。一方で、「事務手続きを軽減すること」や「外国人向けの情報の質と量を上げることができればなお良い」といった課題も明らかになりました。これらの課題に関する取り組みは、次の望月の稿で詳述します。
 
 最後に、本学の研究大学強化促進事業の中で、国際ジョイントラボを取り巻く事業とその関係性について、一部私見も交えながら今後の発展をイメージして思いを巡らせてみましょう。
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 研究情報の国際発信支援(B1)及び国際共同研究の奨励(B3)と研究者の交流支援(B3(派遣と受け入れ)・B8(交流の場作り))の効果として最も期待されるアウトカムは、共同研究の立ち上げによる新たな研究創出です。実際に、これらの事業が国際ジョイントラボの新規の形成や設置段階において効果を発揮している事例が出ています。学内の国際基盤環境整備(B4・B6)については、国際ジョイントラボの発展に不可欠な、海外との共同研究の持続的な創出を支援できる体制・機能の強化が進められています。
 さらに、大学が保有する知財及び個々の研究者の研究成果に基づく研究戦略の策定支援(B5)の事業は、「国際的」社学連携兼産学官連携におけるグローバルインパクト創出に向けた、各種情報分析や戦略立案による連携基盤構築という側面から、国際ジョイントラボの更なる発展を図る予定です。

(クリスチャン・ベーリン/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


海外と知り合い、そのつながりを深めて研究を発展させるとき、受け手となる学内の基盤整備が欠かせません。続いては「内」の視点の仕組みです。

研究の国際展開を支える学内の基盤環境整備

 大阪大学経営企画オフィスURA部門では、国際ジョイントラボなどの国際共同研究プロジェクトの推進といった研究の国際展開への支援に加え、それを支える学内の基盤環境整備にも積極的に取り組んでいます。本稿では、 研究大学強化促進事業の取り組みの中から「事務職員の海外教育研究機関等への研修出張」と「外国人研究者の外部資金獲得支援」の2つを例としてご紹介します。

1. 事務職員の海外教育研究機関等への研修出張
 研究の国際展開を支える学内の基盤環境整備には、手間のかかる国際系業務の効率化や改善はもちろん、その下支えとなるスタッフの増加が必要です。この事業では、事務職員が、海外の教育研究機関等における、研究支援・産学連携等に関する先進的な取り組み等のテーマを自主的に設定し、一週間程度の調査を実施します。これにより、個人の国際感覚や資質の向上、さらには学内の研究支援等における国際対応の事務体制強化を目指すものです。事業設計にあたり、URAが複数部署の事務職員とともに欧州の大学を訪問調査する試行的研修を行い、基本的な枠組みを設定しました(詳しくはURAメールマガジンvol.3【2】をご覧ください)。これまでに24回の研修が実施され、のべ119名が参加しました(同行したURAや教員系を含む)。枠組みは毎年見直しを図り、現在は以下の2つのタイプの研修を設けています。

①URA等の同行調査型の研修
 URAが同行する研修では、訪問先および調査内容の検討、訪問先とのアポイント取り、現地でのインタビュー、インタビュー内容の確認、報告書作成などの一連の動きを参加者と共有することを大事にしています。これまでURA同行型の研修は5回実施し、のべ18人の事務職員が参加しています。

②事務職員自らの企画・運営による調査内容提案型研修
 これまでに研究推進・産学連携部や財務部などの事務機構や人間科学研究科などの研究科に配属の事務職員が参加し、米国、北欧などの教育研究機関等の調査を行いました。URA同行の研修に参加後、自ら企画を立ち上げて、メンバーを募り研修を先導するようになった職員も現れています。

 この事業を通して海外の現場を体感し、少しでも国際的な場数を踏む経験をもつ事務職員が増加することは、大学全体の国際対応のレベルアップにつながると考えています。また、本学の中長期的な発展に活用しうる知見や洞察が海外の機関訪問や現地スタッフ等との意見交換から蓄積されつつあります。今後もURA等の同行調査型、調査内容提案型の研修を継続し、事務職員の自主的調査を通じた国際対応能力の強化を目指していきたいと考えています。

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2. 外国人研究者の外部資金獲得支援
 本学では外国人研究者の積極的な雇用とクロス・アポイントメント等の整備により、外国人研究者数が増加しています。外国人研究者が日本人研究者と同様に活躍することができる環境の整備を目指し、私たちURAにできることとして、科研費と特別研究員申請の際の英語による情報提供および申請書作成支援を中心に実施しています。

 科研費については、研究大学強化促進事業開始当初から、研究推進部と連携して説明会を開催しています。平成27年度からは外国人対象の説明会を特別研究員、科研費それぞれについて毎年度実施し、今までに計4回で161名の参加者がありました。さらに両公募について英語による申請マニュアルを作成し、学内の外国人研究者とその支援者に提供しています。公募情報を英語で提供するだけでなく、バックグラウンドが違う外国人研究者が日本で、あるいは本学で研究する際に必要な情報を整理して提供することを心がけています。

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 これからも外国人研究者の要望、大学の狙い、学内外の状況を整理したうえで取り組みの改善を進めていきます。また、今後増加する外国人研究者の支援に向けて、研究推進課等の事務組織とURA組織がさらに一体的に対応していくことを目指します。

 研究の国際展開を支える学内の基盤環境整備には、研究者の身近にある課題から、大学レベルの取り組みまで様々な階層での対応が必要になります。世界のトップ大学では、研究の国際的な展開に対応できることは当たり前で、むしろ国際的展開を加速させるような学内環境が整備されています。私たちURAは、限りあるリソースで効率的かつ効果的な基盤環境を整備していくための企画立案や改善を、できることから着実に今後も進めたいと考えています。

(望月麻友美/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


学際的な研究であれ、国際的な研究であれ、研究成果の発信は欠かせません。それは自らの研究を知らせ/知ってもらう、外とのつながりを作る手段でもあります。最後に「知らせる/知ってもらう(発信する)」取り組みをご紹介します。


海外と知り合う・海外を知る〜研究の更なる国際化を目指した支援~

大阪大学では研究者の研究成果等の発信力強化に取り組んでおり、研究大学強化促進事業においては5事業を展開しています。まずは「国際的発信支援」についてご紹介しましょう。


研究成果の国際的発信支援:模索の4年間

 大阪大学経営企画オフィスURA部門では、研究成果の国際的発信支援に積極的に取り組んでおり、英語論文の投稿支援及び関連セミナーもその一環として、それぞれ2014年、2015年より実施されています。今回は当支援立ち上げの経緯を回顧しつつ、その発展や実績を紹介したいと思います。

 「研究成果」とはなにか、分野、時代等によって状況も変わってくると思います。しかしながら、研究の国際化、国際競争力等が大学の発展に関わるキーワードになっている昨今、大学の研究力においても、研究者個人のキャリアにおいても、やはりジャーナル論文がその中心にあると言えるでしょう。特に国際の舞台で戦いたい、もしくは海外に強力な戦友を作りたいなら、英語での論文発表が当たり前になっている分野も少なくありません。一方で、英語を母語としない研究者にとって、研究成果を英語で書く、海外の雑誌に投稿する過程自体が一つの壁となっています。

 筆者自身は、前職でライティング・センターによるアカデミック英語支援に関わったことがあり、その経験をいかに「研究大学強化促進事業」における研究成果の発信支援に活用できるのかを、実地調査を行いながら考えていました。2013年度末から2014年度初にかけて、国内外のライティング・センターを実際見学し、英語ライティング支援の様々の仕組みについて勉強させて頂きました(URAメールマガジン vol.7【2】参照)。並行して、異なる研究分野の英語論文の校正を国内の主要校正業者に依頼し、協力研究者のフィードバックを集める学内モニタリングを実施しました。その結果とURAの評価に基づいて、校正業者数社を選定しました。

 これらの実地調査及びモニタリングの結果に踏まえ、2014年6月より、英文校正費用の補助と、投稿過程においてのコンサルティング(ライティング・センター機能の一部)を始めとしたURAによる一連のサポートを備えた「英語論文の投稿支援」を立ち上げました。当支援は「研究大学強化促進事業」の趣旨に沿って、多様な人材育成を念頭に、主に若手・女性・外国人研究者を対象としてきました。また、研究者からの要望も取り入れつつ、下表のようにプログラムの発展を遂げてきました。

年度 支援件数 主な発展
2014年度 14件
  • 支援開始:対象は第一著者で、若手または女性の常勤教員(特任除く)
2015年度 35件
  • 支援対象の拡大:第一著者または責任著者、若手、女性、または外国人の常勤教員・研究員(特任含む)
  • 関連セミナーの実施開始:詳細は下記参照
2016年度 34件
  • 研究推進課の協力により、投稿前ピアレビュー、英文校正・再校正、URAによるダブルチェック、投稿におけるコンサルティング、論文掲載料補助、国際会議での発表支援、アウトリーチ支援のように、研究成果の発信を最初から最後まで支援する体制を構築
  • 男女協働推進センター(ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)事業)との共同支援による、女性研究者支援枠のさらなる確保
2017年度 20件 (2017/6/14時点)
  • 支援対象の拡大:国際共著論文の支援対象化

 また、2015年より、附属図書館等関係部署と緊密に連携し、国内外から専門家を招き、研究成果の国際的発信をテーマとしたセミナーやワークショップを企画、実施してきました。2017年6月現在、若手研究者のための英語論文入門、中堅研究者向けの一流国際誌に挑戦するための論文書き方、プレゼンテーションのスキルアップ法、査読対策等様々なトピックを扱い、合計7回のセミナー等を主催し、1000名以上の参加者を迎えることができました。

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 今後の課題として、研究者にとってより利用しやすいよう、既存の取組みの実施方法を改善していくと同時に、研究情報の国際的発信支援について国内外のトレンドに注目し、新たな切口も探索していきたいと考えています。

(姚馨/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


最後にご紹介するのは、若手教員等を対象としたホームページ作成支援です。ホームページを作成するのは、外に「知ってもらう」のと同時に、自らを「知る(顧みる)」ことでもあるようです。

若手教員等ホームページ作成支援の支援内容について~対話と試作によって共に考える個別相談

予算(もの)と相談(こと)に応じるサービス
 若手教員等ホームページ作成支援とは、若手、女性または外国人の常勤の教員・特任教員が、個人のホームページを開設する際に、予算(もの)と相談(こと)の両面から支援するサービスです。サイト開設に際して外注が必要となった場合に、10 万円程度を上限に予算を配分しています。多くの場合、ウェブサイトは作って終わりというよりは、どのように運用するかが肝心ですから、制作に取り掛かる前に、よく考えて目的や目標を整理する必要があります。本サービスの利用方法はさまざまですが、サービス提供者としては、どちらかと言えばお金よりは相談に応じること、つまり、どのようなサイトを作ればよいのか対話と試作によって共に考える個別相談が重要な意味を持つのではないかと考えています。

まずやってみたらどうでしょう?
http://www.hs.ura.osaka-u.ac.jp/pilotsite1701/
 本事業に採択された先生のうち希望の方には、このパイロット(試作)サイトの複製品を準備して提供します。標準的な研究者サイトに必要な要素を備えています。研究業績やプロフィールを入れて自分で眺める、友人や家族に見てもらって意見をもらうといったプロセスを経て、しっくりくるまで修正するサイクルを繰り返すためのパイロット(試作)サイトです。

 本事業は募集に際して40 歳未満を対象となる「若手教員」としています。また特任教員については運営費交付金または間接経費により雇用されていることを条件としています。こうした制限はありますが、平成25年度の事業開始から現在までの4年間で、50名を超える先生方から寄せられた相談の全てに応じてきました。個人のウェブサイトを開設する理由は想像よりはるかに多様であることを、サービス提供側の我々も日々学んでいます。今後も研究力強化の目的にかない、かつ使い勝手の良いサービスを提供するよう努めてまいります。

 前述のパイロットサイトのほかにも、必要な知識をまとめたチートシート(※試作段階)やムービーによる手順解説といったコンテンツが徐々に整いつつあります。AWS(Amazon web service)を利用したよりセキュリティ強度の高い運用体制のテストも進めています。ウェブサイトの開設・運用に関して高度な知見をお持ちの先生、初心者・素人ではない段階の先生方の利用参加もお待ちしております(関心をお持ちの方はURA岩崎まで)。

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(岩崎琢哉/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。「知る」でつないだ大阪大学研究大学強化促進事業の紹介、いかがでしたでしょうか。

 ご紹介した事業は、研究推進・産学連携部を中心として、さまざまな部署が密接して連携することにより実施されています。我々URAの立場から見ると、URAシステム整備事業から続く「自らを知る(URAの検討・整備・育成の確立)」取り組みであるとともに、学内のさまざまな部署や研究者と「知り合い、知ってもらう(協働)」取り組みであるとも言えるのかもしれません。
 研究大学強化促進事業も折り返し地点を迎えました。大阪大学の更なる研究力強化に向けて、URAによる「こと」への貢献を、より一層強化していきたいと考えています。

(新澤裕子/大阪大学経営企画オフィス URA部門)


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【2】大阪大学経営企画オフィスではURAを募集しています
   Research Administrator (URA) Job Opening

当オフィスでは、リサーチ・アドミニストレーター(特任学術政策研究員(常勤))を2名、募集しています。
(2017年6月以降、毎月最終7日間応募書類受付。決定次第終了)
Research Administrator (Specially Appointed Academic Policy Researcher (Full-time))

URA業務に専従する意志をもち、URAとしてのキャリア構築を考えている方のご応募をお待ちしています。
Requirements: those who are willing to work on URA activities fulltime and make URA their life career, etc.

公募要領
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/images/open_recruitment_URA201706j-3.pdf
Application Procedures
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/images/open_recruitment_URA201706e-3.pdf

参考情報など、さらに詳しくはこちら/More information
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/aboutura/post_5.html

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【3】第7回学術政策セミナー「社会から共感を得る大学となるために」を開催します

 2004年4月に国立大学が法人化してから、十数年が経過しました。法人化される際に、国立大学は、財政的な面において国からの自律的な運営が求められました。また、ガバナンスという視点からも役員や経営協議会委員に学外者の参画を促し、学長中心に大学が運営されることが期待されていました。更に、国立大学内の改革と併せて、社会との関係も変化が生じています。2015年に出された「国立大学経営力戦略」では、「国立大学が、社会変革のエンジンとして「知の創出機能」を最大化」をしていくことなど、より一層社会とのかかわりも求められるようになり、社会のステークホルダーと共に課題を解決することが期待されています。

 本セミナーでは、話題提供1において上記のような大学が置かれた現状について、参加者との問題共有を行いたいと思います。次に話題提供2では、社会のステークホルダーから「共感」や「信頼」を得るためにどうすればよいかを考えるヒントとして、公益性の高い組織・仕組みへの寄附について話題提供を頂きます。
 その上で、「社会から共感を得る大学」の役割を考え、参加者一人一人がそのためにどのようなことをすべきかについて議論を行いたいと思います。

■日時:2017年7月11日(火) 13:30-15:30
■場所:吹田キャンパス サイバーメディアコモンズ
■対象:事務職員・技術職員・教員・研究者・URA業務等に関心のある方
    *本セミナーは、事務職員を対象とした大阪大学職員研修の一つと位置づけられています。
■言語:日本語
■プログラム:
  ・開会あいさつ :三成賢次氏(大阪大学理事・副学長)
  ・話題提供1  :小林傳司氏(大阪大学理事・副学長)
  ・話題提供2  :岸本幸子氏(公益財団法人パブリックリソース財団 代表理事)
  ・全体討論
■主催:大阪大学経営企画オフィスURAプロジェクト
■共催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
■問合せ先
  経営企画オフィスURAプロジェクト(担当:福島)
  メール:seminar@lserp.osaka-u.ac.jp

申込方法等、詳しくはこちらをご覧ください。

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【4】第5回異分野交流会(アカデミックバール)を開催します(学内向け)

 昨今、分野融合や分野横断といった言葉をよく耳にしますし、研究助成でもそのようなチームを求められることが増えてきました。しかし、いざ研究プロジェクトをつくろうと思っても、ウェブ上で検索した人が果たして研究プロジェクトに適しているのか。

 そもそも自分自身と肌があうのかなどわかりません。また、そのような提案を考えていなくても所属する大学においてどんな人が働いているのか、どんな研究をしているのかを知るための<場>があるといつもとは少し異なる視点から自身の研究や仕事を見ることができるかもしれません。

 いずれにせよ、いつもの自分のいる位置からちょっとだけはみ出す機会として下記のような<場>を設定しました。いつもとはすこしちがったワクワクした気持ちを味わいませんか?

 本企画の主催である経営企画オフィスのリサーチアドミニストレーター(URA)が全学的に活動をする中で多くの研究者から、「他の分野の研究の話しも聞いてみたいけれど機会がない」という声を耳にしたことからこのような場を過去に4回設けました。今回は、1年半ぶりに5回目を開催します(2017年7月19日(水)18時-20時、豊中キャンパスを予定)。

 詳しくはこちらをご覧ください。

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【5】リサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会第3回年次大会が開催されます

 RA協議会第3回年次大会が8月に徳島で開催されます。

 本大会では、「大学の新しい機能としてのURA」をテーマに、大学等の経営に資する人材としてのリサーチアドミニストレーター(URA)の在り方と育成、スキルアップ、各種活動内容の充実等に関するセッションや、口頭発表、ポスター発表が行われます。

■開催日時:2017年8月29日(火)・30日(水)
■開催会場:あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
■参加申込〆切:8月1日(火)

詳しくはこちらをご覧ください。

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【6】大阪大学ホットトピック

大阪大学ニューズレター2017夏号を発行しました

大阪大学NewsLetter読者アンケートのご協力について

大阪大学とダイキン工業株式会社が包括連携契約を締結

「大阪大学の集い in 名古屋」を9月23日(土・祝)に初開催!!


○最新の研究の成果リリース

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【企画・編集・配信】
大阪大学経営企画オフィスURA部門(旧 大型教育研究プロジェクト支援室)
川人・岩崎

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2020年10月30日(金) 更新
ページ担当者:川人