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URA MAIL MAGAZINE vol.11

「知っておくとお得?最近の目玉施策解説」特集

2014年8月 発行

今月は、中央官庁から大阪大学に出向されている方・お二人に、最近の目玉施策についてわかりやすく解説いただきます。更なる分析や裏情報については、別の機会に...

■INDEX
  1. 総合科学技術・イノベーション会議とSIP、ImPACT―科学技術政策の流れに着目して
  2. 健康・医療戦略推進本部の本格始動―「日本版NIH構想」と医療分野の研究開発の司令塔
  3. 大阪大学における「研究大学強化促進事業」紹介ウェブサイトを開設しました
  4. URA関係イベント情報

    ●研究・技術計画学会 第29回年次学術大会

    ●SRA International Annual Meeting 2014
  5. 大阪大学ホットトピック

    ●臨時託児室の設置を支援します

    ●高エネルギー加速器研究機構と連携協力協定を締結

    ●最新の研究の成果リリース
  6. 次号のお知らせ

【1】 総合科学技術・イノベーション会議とSIP、ImPACT
―科学技術政策の流れに着目して

内閣府にある総合科学技術・イノベーション会議*が進めている新しい研究開発プロジェクトや最近の動きについてお話ししたいと思います。

*ちなみに、少し前までは「総合科学技術会議」という名称でしたが、新たな法案の成立により、本年5月より名称が変更されました。もちろん、単に名前を変えるためだけに法律ができたわけではありません。従来の「科学技術の振興」に加えて「研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の促進を図るための環境の総合的な整備」に関する事務が追加され、後で述べる「戦略的イノベーション創造プログラム」などを内閣府で執行することが可能となりました。


1 はじまりは

 SIP、ImPACT創設のはじまりは、平成25年3月1日に開催された第107回総合科学技術会議での安倍総理発言です。
 「私たちは再び世界一を目指します。世界一を目指すためには、何といってもイノベーションであります。安倍政権として、新しい方針として、イノベーションを重視していく。そのことをはっきり示していきたいと思います。」
 その後、平成25年6月に「科学技術イノベーション総合戦略」、「日本再興戦略」が閣議決定され、総合科学技術・イノベーションにおける政府全体の司令塔機能強化へとつながるのです。
 司令塔機能といってもいろいろあるかと思いますが、ここでは大きく3つのものが構成要素となっています。

① 政府全体の科学技術関係予算の戦略的策定
各府省の施策がばらばらにならないよう、また、お互いが相乗効果をあげ連携していくよう、各府省の概算要求の検討段階から「総合科学技術・イノベーション会議」が主導し、予算の重点配分等をリードしていく「科学技術イノベーション予算戦略会議」など新たなメカニズムを導入しています。
② 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
③ 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

2 科学技術イノベーション予算戦略会議

 科学技術イノベーション総合戦略(平成25 年6月7日閣議決定)に基づき、政府全体の科学技術関係予算に関し、イノベーション創出に向けた予算の重点化及び各府省の取組等について、関係府省の緊密な連携を確保し、必要な調整を行うため、内閣府に科学技術イノベーション予算戦略会議を設置しています。構成員は以下のとおりですが、議長は、総合科学技術・イノベーション会議との円滑な調整を図る観点から、総合科学技術・イノベーション会議有識者議員の出席を求めることを基本としています。

  議長  内閣府特命担当大臣(科学技術政策)
  副議長 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)
  構成員 内閣官房日本経済再生総合事務局次長
      警察庁長官官房技術審議官
      総務省大臣官房総括審議官
      外務省軍縮不拡散・科学部長
      文部科学省科学技術・学術政策局長
      厚生労働省大臣官房技術総括審議官
      農林水産省農林水産技術会議事務局長
      経済産業省産業技術環境局長
      国土交通省大臣官房技術総括審議官
      環境省総合環境政策局長
      防衛省大臣官房技術監

 平成25年6月に第1回が開催されてからこれまでで6回開催されており(平成26年6月末時点)、科学技術重要施策アクションプランによる予算の重点化の進め方や戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)などが議論されています。


3 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

 総合科学技術・イノベーション会議が、府省・分野の枠を超えて自ら予算配分して、基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据え、規制・制度改革を含めた取り組みを推進しようとするプログラムです。(平成26年度当初予算 500億円)

 既に10の課題のもと、各課題を担当するプログラムディレクター(PD)、研究開発計画、予算配分額が決定されており、この原稿を読まれる頃には公募により研究体制が整えられつつあるところだと思います。(現状はhttp://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/index.htmlでチェックしてください。)

 SIP対象課題とPDの概要は次のとおりです。PDの所属でいえば、大学5名、産業界5名となっています。PDは出口戦略を含めた研究開発計画を取りまとめ、関係府省の縦割りを打破し、府省を横断する視点からプログラムを推進することが期待されており、研究者というより、マネージメント能力、交渉能力が要求される役割となっています。なお、配分額は、重要度ではなく、必要な額という考え方に基づき決定されたとのことです。(公募説明会 説明)

http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui001/siryo1_2.pdf


4 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

 実現すれば我が国の将来の産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進しようとするプログラムです。(平成25年度補正予算 550億円)
 本年6月に12の個別プログラムとそのプログラムマネージャー(PM)が決定されており、今後研究開発機関の選定などが行われます。
(現状はhttp://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about-kakushin.htmlでチェックしてください。)

 6月に採択されたImPACTの個別プログラム及びPMの概要は次のとおりです。PMの所属は、大学及び公的研究機関が7名、産業界5名となっています。PMは、事業化を指向した研究開発活動や先端技術を核とした事業化活動に関する構想力、知見、マネージメント能力などが要求される役割となっています。

http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/5kai/siryo1-1.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/5kai/siryo1-2.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/5kai/siryo1-3.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/5kai/siryo1-4.pdf


5 そして

 総合科学技術・イノベーション会議は、「未来創造に向けたイノベーションの架け橋」と副題につけた総合戦略において、基本的な考え方を提示しています。

 つまり、「経済再生を確実にする原動力」、「グローバル社会でのプレゼンス向上の切り札」とともに、「将来の持続的発展のブレークスルー」としての役割を重視し、我が国の明るい未来に向けた「頼みの綱」「生命線」である科学技術イノベーションに国家戦略として取り組むこと、直面する困難な課題の解決に向けた取り組みだけではなく明るく活気溢れる未来を目指した「攻め」の取り組みも推進すること、などです。
 そして、同総合戦略では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の創設は「カンフル剤」であり、それを楔としてイノベーションシステムを実現していく、いわば「体質強化」の取り組みを進めていく必要があると述べられています。
 今回、ご依頼は「2つのプログラム」について書くようにとのことでしたが、流れについてお話しした方が良いと考え、少し話を付け加えさせていただきました。最後まで読んでいただいた方に感謝するとともに、もし関心を持っていただけたなら、総合戦略を斜め読みでも一読されることをお薦めします。全体像がより理解できると思います。

◎科学技術イノベーション総合戦略2014 ~未来創造に向けたイノベーションの懸け橋~

(岡野直樹/大阪大学産学連携本部 副本部長・教授)

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【2】健康・医療戦略推進本部の本格始動
―「日本版NIH構想」と医療分野の研究開発の司令塔

 昨年春頃、「日本版NIH」として、政府の産業競争力会議において議論が開始され、それに呼応する形で様々な関係学会等から要望が出されたため、「日本版NIH構想」と言った方が、馴染みのある方が多いかもしれませんが、先の通常国会において、「健康・医療戦略推進法案」と「独立行政法人日本医療研究開発機構法案」の2法案が成立し、それに基づいて、総理大臣を本部長とする「健康・医療戦略推進本部」が発足しました。

 この推進本部は、(語弊があるかもしれませんが)例えば文部科学省であれば基礎研究、厚生労働省であれば臨床研究といったように、これまで、関係の省庁がそれぞれ独立して、言い方を変えればバラバラに実施していた医療分野の研究開発について、強力なリーダーシップにより、省庁横断で総合調整を行うことを目的としたものですが、これがどういったものなのか、また、発足により何がどう変わるのかといったことについて、簡単に紹介したいと思います。

※ ちなみに、まず断っておくと、「健康・医療戦略推進本部って前からあったよね?」と思う方もいるかもしれませんが、それもそのはず、「健康・医療戦略推進本部」は、昨年8月の閣議決定により既に設置されていました。つまり、今回の「発足」は、法案の成立により、その設置根拠が閣議決定から法律に格上げされ、権限の強化・明確化が図られたということなのです。

 さて、推進本部を中心とした医療分野の研究開発の推進体制においては、今後10年程度を視野に入れて平成26年度からの5年間に講ずべき施策を大綱的に示す「健康・医療戦略」に基づいて、推進本部が総合調整を行うなどの司令塔機能を果たすこととなりますが、その中でも特に注目すべきは、以下の2点となります。

(1)政府が集中的かつ計画的に講ずべき施策をまとめた「医療分野研究開発推進計画」の策定
(2)医療分野の研究開発のファンディングについて、中核的な役割を担う「日本医療研究開発機構」の設置


(1)「医療分野研究開発推進計画」の策定

 医療分野研究開発推進計画は、本学の平野総長もCSTI有識者議員としての立場で参画する「健康・医療戦略推進専門調査会」の議論を踏まえて、7月22日に推進本部により策定されたものですが、基礎研究と臨床研究の間の循環によるある種のPDCAサイクルの構築が必要との認識のもと、「基礎研究成果を実用化に繋ぐ体制の構築」や「世界最先端の医療の実現に向けた取組」、「人材の育成」などの10の柱を掲げ、それらに基づく具体的な取組を推進することとしています。

(2)「日本医療研究開発機構」の設置

 日本医療研究開発機構は、医療分野の研究開発のファンディングについて中核的な役割を果たすこととされていますが、機構に集約される予算規模は、平成26年度予算ベースで1,215億円となっており、来年4月に機構が設置されると、JSTやNEDOと並ぶ予算規模のファンディング機関が誕生することとなります。
 ここで、気になるのが、この1,215億円の内訳です。冒頭述べた関係学会等からの要望書において、現在、また、将来の医療技術・サービスを支えているのは、純粋な知的好奇心や自由な発想に基づく多様な基礎研究の成果であるという認識のもと、科学研究費助成事業のようなボトムアップ型の基礎研究の果たす役割の重要性について指摘されていました。
 この点、平成25年8月に開催された推進本部の決定資料によれば、科研費については、機構に集約されず、その意味で、関係学会等の意見を反映した形となっています。ただし、いかにボトムアップ型の基礎研究が重要であると言っても、その成果は、そのままだと単なる知識に過ぎないことが多いため、それを如何に医療技術や医療機器、創薬等の実用化までつなげていくかという観点が重要となってきます。
 このため、推進計画においては、機構に期待される役割についても記載しており、そこでは、基礎研究の成果からシーズを発掘し、実用化につなげるまで、一貫した戦略のもとでのマネジメントが必要である旨が指摘されています。具体的には、例えば、プロジェクトごとの成果目標の達成に向けて、研究開発の開始や方針の転換等についての権限と裁量をPDに付与するとともに、PDの下に置かれた複数の研究チームが、シーズの探索・選択や個々のシーズごとの戦略に基づく開発研究を行い、あるシーズが頓挫した場合にはそれに替わる新たなシーズを選択するといった仕組みを採ることで、各チームの中で常に複数のシーズの開発研究が行われるようなマネジメント体制を構築することが考えられるとしています。
 これは、いわば、これまでの「研究内容」に着目したファンディングから、「シーズ」に着目したファンディングへの転換とも言えるもので、「死の谷」、「魔の川」、「ダーウィンの海」とも呼ばれ、我が国が長年抱え続けていた課題を克服するための画期的な方策として、実現が期待されるところです。

 今回の健康・医療戦略推進本部の発足により、我が国における医療分野の研究開発の推進体制は大きく変わることになりますが、その変化を原動力として、医療分野において我が国が世界をリードし、最先端の医療の実現、産業競争力の向上等につながっていくことを期待したいと思います。

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(宇高章広/大阪大学総長室 企画調整主幹)

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【3】大阪大学における「研究大学強化促進事業」紹介ウェブサイトを開設しました

文部科学省「研究大学強化促進事業」において、2013年8月に大阪大学が支援対象機関に採択されました。
本事業は、大学等(大学及び大学共同利用機関法人)における、研究戦略や知財管理等を担う研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む)群の確保・活用や、集中的な研究環境改革を組み合わせた研究力強化の取組を支援することを目的としています。

本サイトでは、学内公募プログラム等、研究大学強化促進事業における大阪大学の具体的な取り組みの内容を紹介しています。

●大阪大学における「研究大学強化促進事業」

http://www.ru.ura.osaka-u.ac.jp/

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【4】URA関係イベント情報

●研究・技術計画学会 第29回年次学術大会

http://jssprm.jp/wp/?p=839
2014年10月18日(土)・19日(日)、立命館大学びわこ・くさつキャンパス
9月中旬に大会プログラムが確定した後、参加申込方法について公開


●SRA International Annual Meeting 2014

http://2014.srainternational.org/
22014年10月18日(土)-22日(水)、San Diego, CA, USA
要事前申込

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【5】大阪大学ホットトピック

臨時託児室の設置を支援します

高エネルギー加速器研究機構と連携協力協定を締結

●最新の研究の成果リリース
  • 効率良く記憶免疫反応が起きる仕組みを解明

    ―記憶T細胞と記憶B細胞がお互いを活性化する 2014年7月29日
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    【6】次号のお知らせ(予告なく変更する可能性があります)

    今年もまもなく科研費申請の季節ですね。
    次号では、科研費の最近の動きや学内の支援制度等について紹介します。


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    2018年3月24日(土) 更新
    ページ担当者:川人