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URA MAIL MAGAZINE

URA MAIL MAGAZINE vol.50

"ここ"だけで終わらせてはもったいない!人文学・社会科学振興の議論

2017年11月 発行

JSPS・大阪大学共催の人社振興をテーマにしたシンポジウム開催報告や、URAの組織マネジメントに関するセッション講演録などをお届けします。

大阪大学URAの近況として、大阪大学賞受賞やオフィスの引っ越しについてもご報告します。

■INDEX
  1. "ここ"だけで終わらせてはもったいない!人文学・社会科学振興の議論―日本学術振興会・大阪大学共催シンポジウム開催報告「人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計・活用のこれから Research for Tomorrow's Society, Tomorrow for Younger Researchers」
  2. RA協議会第3回年次大会セッション「URA組織のマネジメント」講演録
  3. 経営企画オフィスURAが大阪大学賞(大学運営部門)を受賞しました
  4. 大阪大学URAの執務室が移転しました
  5. [学内向け]ケンブリッジ大学出版局によるセミナー開催案内 "How to Publish Your Articles/ Books? Advice from Cambridge University Press"(12月6日)
  6. 日本生物工学会生物資源を活用した地域創成研究部会 シンポジウム開催案内「生物資源活用の世界展開~グローカルバイオテクノロジー~」(12月4日)
  7. 大阪大学Innovation Bridgeグラント/起業シーズ育成グラント・起業プロジェクト育成グラントの学内公募
  8. 大阪大学ホットトピック

     ○日経グローカル「大学の地域貢献度ランキング2017」で、阪大は第1位

     ○QS「アジア世界大学ランキング2018」で、阪大は国内第3位

     ○小溝裕一名誉教授(接合科学研究所)が紫綬褒章を受章

     ○阪大生4名が「第11回ベトナム語スピーチコンテスト」で最優秀賞受賞など入賞

     ○日本初!3大学連携で小中高生向け知財教育推進―大阪大学・大阪教育大学・大阪工業大学が知財の連携協定締結―

     ○Clarivate AnalyticsのHighly Cited Researchersに本学から8名選出

     ○最新の研究の成果リリース

【1】"ここ"だけで終わらせてはもったいない!人文学・社会科学振興の議論―日本学術振興会・大阪大学共催シンポジウム開催報告「人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計・活用のこれから Research for Tomorrow's Society, Tomorrow for Younger Researchers」

(川人よし恵/大阪大学 経営企画オフィス URA部門)

 2017年11月8日、大阪大学豊中キャンパスにて、人文学・社会科学研究振興をテーマにしたシンポジウムを日本学術振興会(以下、JSPS)・大阪大学の共催、文部科学省の後援により開催しました。このシンポジウムは、研究者や学生、大学・研究機関の職員、大学・研究機関の責任者、資金配分機関関係者と共に、日本における人文学・社会科学研究振興の将来像を制度設計と活用の観点から考えることを意図したものです。JSPS「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」の成果報告と、人文学・社会科学研究を組織として支える大阪大学の取組紹介を議論の手掛かりとしました。

 本稿では、大阪大学側の企画・運営担当者の一人である筆者が、私見も交えつつ、事前事後の話も含めこのシンポジウムについて報告します。


開催の経緯

 JSPSの「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」(以下、人社事業)は、人文学・社会科学振興を目的とする唯一のトップダウン型公的研究資金制度です。2012年7月、文部科学省に設置の科学技術・学術審議会学術分科会で取りまとめられた「リスク社会の克服と知的社会の成熟に向けた人文学及び社会科学の振興について(報告)」の議論に基づき、実社会対応プログラム、グローバル展開プログラム、領域開拓プログラムの3つのプログラムが設定され、2013年度から順に公募が行われています。

 人社事業のうち実社会対応プログラム(平成25年度採択分)に関する成果報告を通じて、人文学・社会科学分野における研究者と実務者との協働と今後の展開を考えることを目的としたJSPS単独開催のシンポジウムが、昨年度東京で一度開催されましたが、今年度2度目の成果報告を行うに当たり、より多くの方々、特に今後この資金プログラムへの応募可能性がある研究者に人社事業を知ってもらいたいという思いが、JSPS担当者の方にはあったようです。こうした背景の下、今年度の成果報告の対象である人社事業グローバル展開プログラム(平成25年度採択分)のうち、高評価を受けていたプロジェクトの研究代表者が所属する大阪大学のURAに、JSPSの担当者の方から共同開催についての相談をいただきました。

 大阪大学は、2012年度から2016年度の人社事業公募に毎回採択実績がありましたが、公募情報調査や応募支援を担当するURAとしては、まだまだ本事業は学内で認知されていないと感じていました。また、本学は、一般に「理系の大学」というイメージが強いかもしれませんが、約600名(全教員の約20%)という国立大学屈指の規模を誇る人社系教員が多彩な研究活動を展開しており、今後の人文学・社会科学のあり方についての議論も各所で進みつつあります。日本における人文学・社会科学研究振興についての議論への貢献を目指すのはもちろんですが、この機会に、本学の人文学・社会科学に関する取り組みを多くの方に知っていただくと同時に、学内での議論の更なる活性化のきっかけにもなると考え、大学として共催のお話をお受けしました。


主なプログラムの構成

 今回のシンポジウムのプログラムは、3時間半という限られた時間に、人社事業の概要紹介および成果報告に加え、有識者による基調講演、大阪大学の事例報告、パネルディスカッションを盛り込みました。

●基調講演「人文学・社会科学が支持されるには」
(大竹文雄氏 科学技術・学術審議会学術分科会臨時委員/大阪大学社会経済研究所 教授)

●JSPS「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」概要紹介
(立本成文氏 「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」事業委員会 委員長/人間文化研究機構 機構長)

●平成25年度「グローバル展開プログラム」採択テーマ成果報告
「エネルギー、化学物質、水管理政策における市民参加型の意思決定手法に関する国際比較」(大久保規子氏 大阪大学大学院法学研究科 教授)
・「政治と外交の対外情報発信に関する国際共同研究:日本と他国の比較、実験と内容分析によるアプローチ」(多湖 淳氏 神戸大学大学院法学研究科 教授)
・「アジア歴史空間情報システムによるグローバル・ヒストリーの新研究」(水島 司氏 東京大学大学院人文社会系研究科 教授)

●事例報告「大阪大学の人社系研究の組織的展開」
・大阪大学は人社系研究を組織としてどう支えているのか(菊田隆氏 大阪大学研究オフィス オフィス員/大阪大学経営企画オフィス 副オフィス長)
・大阪大学社会ソリューションイニシアティブについて(堂目卓生氏 大阪大学 総長特命補佐/大阪大学社会ソリューションイニシアティブ設置準備室長)
※社会ソリューションイニシアティブについては、本メルマガの別の号で詳しくご紹介する予定です。

●パネルディスカッション「人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計・活用のこれから」
・モデレーター:立本成文氏
・パネリスト :大久保規子氏、多湖淳氏、水島司氏、大竹文雄氏、吉澤剛氏(大阪大学大学院医学系研究科 准教授)

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(写真は左上から)大竹氏による基調講演、堂目氏による報告、パネルディスカッション


個人的に印象に残った議論等の例

 ここからは、当日の講演やディスカッションのうち、筆者の印象に残った議論をいくつか紹介します。なお、当日の講演録は、JSPSウェブサイト上で公開されていますので、詳しくは是非そちらをご覧ください。
【参考】日本学術振興会 課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業ホームページ
https://www.jsps.go.jp/kadai/symposium/20171108-02.html

●人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計・活用について
 まずは、今回の主な論点の一つ、人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計・活用についての議論等の一例です。

 大前提として、「人社系の教育・研究の成果は、それに直接関与した個人の所得や幸福度だけに影響を及ぼすにとどまらない。社会としての選択や意志決定、システムが良くなるといった意味で、広く社会に利益を与える公共財であるから、国レベル、組織レベルでしっかり支えていかなければならない」という大竹氏の主張は、人文学・社会科学研究振興に向けた制度設計の基本的な考え方として重要だと感じました。

 また、特に新鮮だったのは、水島氏の「日本だけの枠でどういうシステム設計を図るかではなく、常に"アジアの一員としての日本"ということを意識し、アジアのアカデミックコミュニティと協力しながら色々な研究者を巻き込んで、グローバルに通用する研究水準をつくっていくという発想が21世紀の日本に一番重要なのではないか」という指摘です。大久保氏の成果報告においても、「人社事業のプロジェクトにおいて、アジアと欧米とをつなぐ仲介ができたことが、欧米の研究者から非常に好評だった」との話がありました。

 資金配分の制度設計に関しては、選択肢の多様性に関連する指摘が複数なされました。「人文社会系はボトムアップ型の資金制度だけだったことが、社会に見えにくい原因の一つだった。学問の自由や研究者の自発的な意思に基づくボトムアップ型の研究を十分支援した上で、課題設定型(トップダウン)の研究も補完的に進めるのがよい」(大竹氏)、「科研費やこの人社事業など、多様なメニューが用意されており、自分の今の問題関心や公募の趣旨に応じて、その都度合ったものを選んでいくことが非常に重要である」(大久保氏)がその一例です。多様性のうち、次代を担う研究者育成のための制度については、若いうちから自分で資金を獲得して国際的・学際的にプロジェクトを運営することの重要性や、プロジェクトに学生が主体的に参画できるような資金の使い方の有効性が、多湖氏や吉澤氏を始めとする多くの登壇者から指摘されました。特別研究員だという参加者の方からの「ポストを探しているが、教員としての将来をイメージしづらい」というコメントに対しては、そもそも教員像が今後変わっていくという議論がパネルディスカッションでなされ、これも人材育成の制度を考える際の重要な視点の一つになると感じました。

 資金配分以外の制度としては、「論文をまとめる段階での翻訳や表作成、データベース構築といった取り組みにシリアル番号を振って登録し、オープンに利用できるデータ・デポジット・システムをJSPSに作ってほしい。それらも業績として評価されると、若手の評価システム、人文系の評価システムとして有効なのではないか」(水島氏)や、「リサーチ・アドミニストレーター等、研究プロジェクトマネジメントを支える人材を組織として継続的に確保してほしい」(大久保氏)といった意見が出ました。

●社会における人文学・社会科学の可視化について
 日本社会はもちろん、グローバル社会においても人文学・社会科学の可視化を促進するには何をすべきかという観点での議論にも、興味深いものがありました。

 研究成果の発信媒体としての学術ジャーナルの重要性は言うまでもないことですが、「政治学におけるワシントンポストのモンキーケージというブログのように、学術ジャーナル以外で国際的にインパクトの高い媒体を活用していくべき」(多湖氏)という提案もなされました。また、「小中学生向けに奈良の文化財研究所が行っているアウトリーチイベントのように、木簡を発掘する・洗う・読むといった体験を通じて研究プロセスを伝えることで、一人でも二人でも次代を担う人が出てくれば良い」(大久保氏)といった期待や、「単なるカルチャーセンターのようなもので我々の研究成果を発表するという形でのコミュニケーションとは別に、研究者としての思考スタイルや、どのように研究をしているかという現場を見せてはどうか。最終的な研究成果よりは、研究者がどう考えて、苦労しているかというところで語ると、より一般の方と通じるものがあるだろう」(吉澤氏)というアイデアも示されました。ちなみに、立本氏によると、実際に人文系の研究を専門外の方に伝える先駆的な取り組み事例の一つに、人間文化研究機構の人文知コミュニケータというものがあるとのことです。


多様な参加者とその反応

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図1 参加者の内訳

 参加者は110名(登壇者・関係者除く)で、所属機関の内訳は図1のようなものでした。教員・研究員、学生、大学・研究機関の職員、URA、研究組織の責任者、資金配分機関関係者、出版・マスコミ関係者など、所属だけでなく立場も多様な方々の参加のもと、議論できたことが、大きな収穫の一つだと思います。

 また、半数強の方に回答いただいた参加者アンケートの結果では、こちらが想像していた以上に、シンポジウムへの満足度が高かったので、まずはほっとしています。しかし、よくよく回答を見ていくと、立場や年齢層により、回答者の意識にはバラツキがあるようです。一例ですが、「先を行くのが人文であるはずなのに、未だにこうした議論をしているのか」、「人文社会系の内輪の議論におわらせるべきではない」、「既に理系は自分たちの成果だけでは課題解決できないことを認識している」、といった議論のあり方そのものへの指摘も複数の方からいただきました。これらは、更なる議論の発展や人文学・社会科学振興への期待が込められたものと受け止めています。

 重要な論点や意見が登壇者だけでなく参加者からも多数出された今回のシンポジウムは、「たくさんの参加者を得て、無事に終わってよかった」で済ませてしまうにはもったいないと感じているところです。


このシンポジウムを何につなげられるか(一URAの私見)

 最後に、大阪大学のURAとして、このシンポジウムでの議論を今後活かしていく方向性にはどのようなものがあるか考えてみます。

 ここ数年、筆者が知る限りでも、人文学・社会科学の存在意義についての議論は以前に比べて活発化しており、いくつかの大学や研究機関では、そうした議論の影響もあってか、人文学・社会科学研究推進の具体的な施策が新たに生まれているようです。ただ、上で紹介した参加者の方のコメント例のように、内輪の議論で終わっているものも少なからずあるように感じますし、基盤を支えるべき国の制度面では、今のところ大きな変化は見られません。今回のシンポジウムにおける議論は、JSPS人社事業委員会に報告される予定とお聞きしていますが、URAとしても文部科学行政担当者や審議会関係者等にお伝えするなどして、今後の施策検討の材料にしていただければと考えています。そして学内に関しても、各所で行われている人文学・社会科学のあり方に関する議論の場に報告し、何らか活かしていきたいと思います。

 また、大阪大学では、URAの役割の一つとして広報・アウトリーチ関連業務もありますので、社会における人文学・社会科学の更なる可視化に向けた取り組みも提案していきたいところです。例えば、大阪大学として人文学・社会科学を広く知っていただくための広報ツールの充実には、色々な可能性が考えられます。

 もちろん上述したような動きは、筆者ひとりではなく、大阪大学関係者や同僚URA(学外も含め)、今回シンポジウムをともに企画・運営したJSPSの担当者の方など、シンポジウムで生まれた、あるいは深まった人のつながりに基づいて動かしていくことで、よりよい形で展開させやすくなるでしょう。まずは、同じくシンポジウムの企画・運営を担当したURAの福島と、作戦会議を進めているところです。"シンポジウム本番の終わりは、次のアクションの始まり"と受け止め、ここで生まれた議論を実際の変化に結びつけていきたいと思います。


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【2】RA協議会第3回年次大会セッション「URA組織のマネジメント」講演録

【開催概要】

URA組織の構成員を、経営者(URA組織担当理事)、マネージャー(URA組織の⻑)、プレーヤー(URA組織のメンバー)に分けた時に、マネージャーのミッションは「経営者の視点」を汲み取り(かつ提⾔もして)、「プレイヤーの視点」を理解して組織を健全に運営すること、ということができます。すなわちマネージャーには経営者、プレーヤー、マネージャー全ての知識が求められます。URA組織のマネージャーが果たすべき役割は硬直化した⼤学組織の中においては⼀般の組織(URA以外の組織)のそれとは異なる可能性があります。したがって、URA組織以外で優秀なマネージャーであっても、URA組織でも同様に優秀な組織運営ができるとは限りません。特に、URA組織では教員組織と事務組織との間、執⾏部と教員組織との間をつなぐ役割を期待されているURAという⼤学特有の⽴場を常に意識した組織マネジメントが重要になるでしょう。また歴史ある⼤学組織の中に、不安定な資⾦の中、新しい機能を持った組織を⽴ち上げ運営する点での難しさもあるのではないでしょうか。

多くの⼤学にURAの配置が進み、複数のURAが配置されている組織も多くなっている現在、第3の職であるURA組織における望ましい組織マネジメント改めて振り返るために、実際に⽇々URA組織のマネージャーとして活躍されている⽅を講師に招き、参加者との間で議論を行いました。

■開催日:2017年8月30日(水)
■場所:あわぎんホール ― 徳島県郷土文化会館 ―
■講演者:
・関 ⼆郎(京都大学 学術研究⽀援室 副室長)
・杉原 伸宏(信州大学 学術研究支援本部 本部長)
・吉田一︓(神戸大学 学術・産業イノベーション創造本部学術研究推進部門)

■セッションオーガナイザー:
・高野 誠(大阪大学 経営企画オフィス シニア・リサーチ・マネージャー/特任教授)
・寺本 時靖(神戸大学 学術・産業イノベーション創造本部学術研究推進部門 特命准教授(URA))
・西村 薫(東京大学 医科学研究所 国際学術連携室 学術支援専門職員(URA))


【ディスカッションの抜粋】
(全文はこちら

質問者A:私は国立大学の研究センターで講師をしており、授業以外にURAの仕事も行っています。まず、杉原先生のご講演ですが、特にURAの評価方法については非常に細かい点数表等を出していただき、大変参考になりました。ここからは質問です。何億円も取ってくるようなプロジェクトを切り盛りするという業務と、これまで基盤Cを取れていない先生10人を支援するという、URA業務についての模擬質問がありましたけれども、そもそもどちらの業務も、そのURAの取組みの成果として評価できるのかどうか、わからないのではないかというのが、私の考えです。つまり、確実に資金を獲得できそうな先生、例えば、ERATOを取れる先生を支援した結果1億取れたとして、それを本当に評価していいのか。あるいは、例えば基盤Cを取れない10人の先生が全員、過去5年間論文を書いていないとしたら、おそらくどんな支援をしても採択されないのではないか、となりますね。そうすると、そのURAが何に携わったかということのみで評価しているように見えるのですが、アウトプットの質を、適正に評価する方法があるかということを、伺いたいと思います。

杉原:点数評価以外に、週1回のレポート提出と、それに基づくミーティングを行っています。そこでどういう業務をしているのか、どのように研究者と接点を持って、どんな支援をしているのか、ということはおよそ見えます。先ほど少し時間がなくて割愛したのですけれど、点数のところに、実はプラス、マイナスを付けられる評価点がありますので、ある程度寄与度などから判断して、多少の増減を付けられるようにしています。

質問者A:そうするとやはり、いい先生を担当したい、成果が出そうな仕事を取りに行くという、URA間の競争のようなものが、結果的に生じてしまうのではないでしょうか。

杉原:そういう視点で支援先を選ぶURAもいますが、私としてはあまり評価をしないですね。それは取れて当たり前なので、むしろそのURAがどう貢献したのか、実質の部分が重要だと思います。すなわち、点数ではない部分で評価しなければいけないと思います。実際、昇進については点数ではなく、定性の評価がかなりあります。

質問者A:評価については、そういった点も広く見て考えられているということですね。ありがとうございました。

続いて、京都大学の関先生に伺います。京都大学では普段から、URAは第3の職種であるということを強調しておられると思います。省庁との間で人事交流を行うとなった場合に、教員ならどのくらいのランクの人が、どういった職に派遣されるのか、事務職員であれば、このくらいのランクの人は、本省でどんな業務を行うかというのは、過去の事例で、漠然と決まっていると思います。第3の職種である京大URAの方が省庁に行くときには、向こうでどういう職位でどのような業務を経験して帰ってくるのかを知りたいのですが、もし具体的に何かあれば教えて下さい。

関:今、経済産業省に一般URAが行っていますが、確か課長補佐だと聞いています。

質問者A:課長補佐ですか。何となく高い職位にいるようなイメージがあったのですけれど、意外でした。

もう一点、神戸大学の吉田先生に伺います。適正な対価を得るということは、企業経営では最も大事なことですし、わかりやすいのですが、国立大学の場合、見合う対価を得るということは、実質的にはほぼ不可能といいますか、例えばそう簡単に学費の値上げをできないとか、そういったいろいろな要素があるのではないでしょうか。あと、学長が掲げた、世界ランキング100位以内、国内で5位以内という目標に関してもどうお考えでしょうか。企業の場合、前年度比でどのくらい高い目標を立てるかは、具体的に達成可能であるかどうかをしっかりと検討しています。それに対して、大学の場合はかなり大ざっぱといいますか、若干現実味が薄いとも言えるような目標が出てくることがあると思います。そういう企業との違いを、URAの責任者として、どう切り盛りしていったらいいとお考えでしょうか。

吉田:まず一点目の、適正な対価についてのご質問の答えですが、この適正な対価というものは、我々が勝手に決めるものではなく、市場が決める「適正な対価」なのです。例えば、神戸大学がこういう研究をしている、京都大学さんではこんな研究をしているといった場合、どちらにどれだけお金を投資するかというのは、企業さんが決めることですよね。企業さんにとって適正な対価で、神戸大学に、あるいは京都大学と契約するということだと思います。そうした中で、いかに神戸大学の良さをアピールして、理想的にはURAが付加価値をつけて、より高い対価を得るということが、課題になってくるかと思います。

次に目標設定に対するご質問ですが、私の話が批判的に聞こえておりましたら、意図するところではないのですが、学長がこういう目標を出されたことに対しては、極めてポジティブに受け止めています。非常に高い目標かもしれませんが、間違いなく学内でこの目標が、ひとつの旗印になったと言えます。これだけでも価値があると思います。企業の場合も、5年程度の中期的な計画は、かなり実現性の高いものが立てられますが、将来目指す姿となると、あるべき姿、なりたい姿が浮かびます。その違いだと思います。具体的な目標とするか、目指す姿と考えるかですね。その違いではないでしょうか。


質問者B:国立大学のURAです。4月以降は役割が変わっておりますが、この3月まで、組織マネジメントに関わっておりました。今日、皆さんのご講演を聞いてると、やはり企業がモデルになっているのですね。私が組織マネジメントに関わったときは違いました。URA組織を何かに例えるなら、私たちがプロ野球の監督だとして、その顧客が誰なのか、まだ曖昧な状況にあるのが現在のURAではないかと思います。先ほどからいろいろな議論があるように、執行部の方針というのは固定されたものではありませんし、トップ、オーナーが代わったら、方針も変わりますよね。だけど我々はチームを守らないといけません。執行部が変わったときも、確実にチームが生き残るためを考えると、企業の感覚よりも、プロ野球の監督の感覚、もちろんJリーグの監督でもいいのですが、そういう感覚の方が合っているのではないでしょうか。私はそんなふうに組織マネジメントをしてきました。
各大学のURAの現状は、まだ大学内での位置付けがある意味脆弱です。その脆弱さの下でどのようにやっていくかを考え、個々のURAがよりスキルアップする方法は、組織によって違いますけれど、URAがきちんと生きていけるように、組織の論理より個人を大切にしてきたということです。もちろん組織のマネジメントは、状況によって変わってきますので、URAが確固たる立場になったときには、またその時々で、企業的マネジメントができるようになるのかなとも思っております。以上が私の所感です。

吉田:ご指摘どうもありがとうございます。おっしゃる観点、私もよくわかります。実体験からわかるわけではないのですけれど、お言葉自体は、十分理解できると思います。私は先生のように、執行部が変わったときの修羅場というのを、経験しておりませんので、恐らくその点で若干温度差があるように受け取られたのかと思います。私が申し上げたいのは、我々の仕事の付加価値をどういうふうに示すかがやはり、一番のポイントだと思っているということです。率直に言うと、成果を示す、付加価値を示すということを、いかに具体的に、定量的に示せるかが悩みどころです。そのために今、明確な目標値、数値化した目標を掲げて、その達成を目指すということを、マネジメントの軸に置いています。先生がおっしゃったとおり、環境が変われば違う価値観の、違う要求が出てくることは想定されますが、今はそういう考え方でマネジメントをしています。

関:ご指摘ありがとうございました。このことは、人数の規模にもよるかと思います。私自身は、40人くらいの規模になってくると、やはりそれなりの組織マネジメントが必要かなと、思っています。本日は少し重たく話しましたので、かなり堅苦しい運営をしているようなイメージを持たれたかもしれません。もちろん企業とは異なる大学ならではの組織マネジメントが必要なところもありますし、URA個々人のバックグランドや成長も意識して、各URAの活動にかなりの裁量を持たせるなど、バランスを取りながらマネジメントしていきたいと思っています。

杉原:ご意見ありがとうございました。ずっと大学でやってきた私としては、とてもうれしいご意見でした。しかし、執行部の交代以外に、もう一つ論点があります。それは、信州大学のように多くの自己予算を投入してURA組織を維持する事に関する問題です。大学が自腹を切って、どう維持していくかという議論が、まだ大学の中で十分にできていないと実感しています。ですから、我々は我々なりに、大学が自腹を切って維持するのに見合う、URA組織の価値、そしてその将来的な理想形を描いて示していく必要があると感じているところです。

(全文はこちら


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【3】経営企画オフィスURAが大阪大学賞(大学運営部門)を受賞しました

経営企画オフィスのURAが科研費および学振特別研究員の申請マニュアル作成による外国人研究者及び大学院生支援に大きく貢献した功績で大阪大学賞を受賞しました。

大阪大学賞とは、今年度から新たに創設された3つの部門(大学運営・教育貢献・若手教員)からなる賞で、本学教職員のモチベーションを一層高めるとともに、いわゆる「縁の下の力持ち」的存在の教職員にもスポットを当てることを目的として実施するものです。本功績に中心的に貢献した望月 麻友美リサーチ・マネージャー、大屋 知子リサーチ・マネージャー、姚 馨チーフ・リサーチ・アドミニストレーターが代表して受賞しました。

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写真左から姚、西尾総長、大屋、望月


[関連リンク]

kakenhi_manualE.jpg H30_GAKUSHIN manual_JP.jpg H30_GAKUSHIN manual_En.jpg
写真は左から、外国人研究者向け科研費申請マニュアル、学振特別研究員申請マニュアル日本語版、同英語版

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【4】大阪大学URAの執務室が移転しました

2017年11月15日に経営企画オフィスURA部門の執務室が本部事務機構西隣の共創イノベーション棟に移転しました。この移転により、これまで産学共創B棟と最先端医療イノベーションセンター棟に分かれて業務を行っていたURA部門と経営企画部門、IR部門、評価部門がひとつの執務室で業務を行うことになり、経営企画オフィスが一体となって、これまで以上に連携を密にした活動がしやすくなりました。

URA一同新たな気持ちで業務に取り組んでいますので、各種相談についてもこれまで同様、お気軽に執務室をお訪ねください。

【新住所】
565-0871大阪府吹田市山田丘1-1 共創イノベーション棟401
(吹田キャンパス 本部事務機構西隣)
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/access/

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写真左から、共創イノベーション棟外観(左側の渡り廊下は本部事務機構につながっています)、URAの新しい職場風景ちらみせ(URA部門の実際のスタッフ数はこの3倍くらいです!)


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【5】[学内向け]ケンブリッジ大学出版局によるセミナー開催案内 "How to Publish Your Articles/ Books? Advice from Cambridge University Press"

■日時 / Date & time:
2017年12月6日(水)14:00 - 15:30 受付開始:13:30
14:00 - 15:30 (open 13:30), Wednesday December 6, 2017

■会場 / Venue:
豊中キャンパス 附属総合図書館6階 図書館ホール(地図の50番)
Library Hall, 6F Main Library, Toyonaka Campus (No. 50 on the map)
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka/toyonaka.html

■対象 / Open to:
英語で論文の発表や学術書の出版を目指している研究者研究者、研究員、大学院生等
Faculty, academic staff, and post graduate students of Osaka University, especially those who are planning to publish scholarly articles or books in English.

■講師 / Speakers:
Dr. Chris HARRISON, Publishing Development Director (Humanities and Social Sciences), Cambridge University Press
Mr. Joe NG, Acquisitions Editor (Social Sciences), Asia, Cambridge University Press
詳細はポスターの講師略歴をご参照ください / For more details please see the poster.

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2017-12-06 Cambridge Semianr poster

■内容 / Contents:
・What publishers look for in good publication?
・What is the publication process & selection?
・How peer reviews are conducted?
・Differences between publishing your research in a journal and in a book
・Open access options and other models available

■参加登録 / Registration:
事前の参加登録が必要です / Pre-registration is required
https://www.library.osaka-u.ac.jp/cup_2017ws/
* 定員(80名)になり次第締め切らせていただきます。
* Registration may close earlier if the full capacity (80) is reached.

■共同企画・運営 / Co-hosted by:
大阪大学附属図書館 / Osaka University Library
経営企画オフィスURA部門 / Research Management and Administration Section, Office of Management and Planning

■詳細はこちら / Further information:
https://www.ura.osaka-u.ac.jp/researchersupport/
how_to_publish_your_articles_books_advice_from_cambridge_university_press.html


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【6】日本生物工学会 生物資源を活用した地域創成研究部会シンポジウム開催案内「生物資源活用の世界展開~グローカルバイオテクノロジー~」(大阪大学工学研究科大政健史教授より情報をいただきました)

生物工学の切り口で地域の課題をグローバルに考える、グローカルバイオシンポジウムを開催いたします。今回はSATREPS※プロジェクトを始め、地域から世界に広がる生物資源の活用事例を紹介していただきます。

SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)とは
国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) 並びに国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) と独立行政法人国際協力機構 (JICA) が共同で実施している、開発途上国の研究者が共同で研究を行う3~5年の研究プログラムです。
対応分野は、環境・エネルギー問題・自然災害(防災)・感染症・食料問題などです。


■日時:2017年12月4日(月)13時30分~17時30分(交流会 17時30分~19時30分)
■場所:大阪大学吹田キャンパス C3棟メモリアルホール(大阪府吹田市山田丘2-1)
■主催:日本生物工学会 グローカルバイオ研究部会
■共催:大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻生物工学コース

■申込:氏名、ご所属、連絡先、交流会参加の有無を下記までご連絡ください。
(当日参加も可能ですが、人数把握のためご協力お願いします。)
大阪大学 古賀雄一 kogay★mls.eng.osaka-u.ac.jp(★を@に)

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シンポジウムチラシ

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【7】大阪大学Innovation Bridgeグラント / 起業シーズ育成グラント・起業プロジェクト育成グラントの学内公募(大阪大学産学共創本部 出資事業推進部門より情報をいただきました)

本グラントは、ベンチャー起業を通じた研究成果の実用化を目指す大阪大学の教職員(特任研究員を含む)のための支援制度です。社会ニーズ・市場ニーズを解決する可能性をもつ革新的な技術シーズについて、起業前段階からベンチャーキャピタルの事業化ノウハウ等を取り込むことで、市場や出口を見据え事業化を目指します。

起業シーズ育成グラントでは、JST-START(大学発新産業創出プログラム)、大阪大学-起業プロジェクト育成グラント等に申請するための実用性検証ステージ(起業準備を行うまでの不足を埋めるステージ)において、最長1年間・最大250万円の試作開発費、実証データ取得費、特許出願・維持費、特許調査費、市場調査費用等を助成します。

起業プロジェクト育成グラントでは、ベンチャーキャピタルからの投資を受けるための不足(起業に向けた開発、チーム組成、事業戦略・知財戦略の策定等)を埋める起業準備ステージにおいて、期間2年以内、原則として最大2,000万円/年を助成します。

WEBサイト:公募要領と申請様式は、下記からダウンロード下さい。
http://www.uic.osaka-u.ac.jp/1389/

研究成果の実用化を目指す大阪大学の教職員(特任研究員を含む)の方は、
積極的なご応募をお願いします。

■公募期間
随時公募中;予算がなくなり次第、公募を終了します。

■応募要件
本制度に申請する研究代表者は、以下の要件を共に満たす必要があります。
・大阪大学の教職員(特任研究員を含む)であること。
・ベンチャー起業を通じた研究成果の実用化を目指していること。

■問い合わせ先
大阪大学 産学共創本部 出資事業推進部門 内
起業シーズ・プロジェクト育成グラント事務局
(担当:小久保、田邊、東郷、鳥羽)
Tel:06-6105-5918 (吹田キャンパス)
E-mail: shusshi★uic.osaka-u.ac.jp(★を@に)


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【8】大阪大学ホットトピック

日経グローカル「大学の地域貢献度ランキング2017」で、阪大は第1位

QS「アジア世界大学ランキング2018」で、阪大は国内第3位

小溝裕一名誉教授(接合科学研究所)が紫綬褒章を受章

阪大生4名が「第11回ベトナム語スピーチコンテスト」で最優秀賞受賞など入賞

日本初!3大学連携で小中高生向け知財教育推進―大阪大学・大阪教育大学・大阪工業大学が知財の連携協定締結―

Clarivate AnalyticsのHighly Cited Researchersに本学から8名選出


○最新の研究の成果リリース


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2020年10月30日(金) 更新
ページ担当者:川人